8話
「隊長!魔物の多くが迫っています!!」
「A地点はαが、B地点がβが対応する様に。残りは私が対応する。」
「了解しました!」
ここは前線基地。
魔物を定期的に始末し、その境界線でもある。
つまりこれが軍隊がある意味であり、貴族という存在がある意味でもあった。
「ここは持ち堪えるぞ!私たちの背には国民の全てが!家族がいる!死してなお守り通せ!!」
「「は!!!」」
遠くにはオオカミ型の魔物が見える。
ソレはオオカミ等という生易しいモノでもないが、姿は似ている。
「おおっ!!」
標準的な盾と剣を装備した男性は勇猛果敢に飛びかかるがオオカミの腕力に耐えられず吹き飛ばされる。
「3人1組で対処しろ!回復系のスキルを持つ人は後ろに!!身体強化系のスキルの人は怪我人を運ぶんだ!!」
魔物にも知性がある程度はある事が知られている。
つまり死んだ人間は生き返ることは無いぐらいの事、怪我をした人は直ぐにかかってこないことを知っていた。
「はぁはぁはぁっっ!」
「かかれーー!!!」
3人が別方向から一斉に襲いかかり、順調に前足を中心に傷を増やしていく。
こちらの死人はもう後で数えよう。
それだけの被害が出ている。
「隊長の助けはないと思え!!!隊長は1人で戦っているんだ!俺達が1匹ぐらいは仕留めなければっ!!」
そう叫び魔物へと突撃する。
しかしハエを払うような動作で横に吹っ飛ばされる。
胴体は辛うじてつながっているが、どう見ても致命傷だった。
「………っ。」
最初は30人ほどいたが今では10人もいない。
戦線離脱した者もいれば、死んだ者もいる。
そこは軽い気持ちで来ていい場所でも無かった。
これが貴族が子供に対して、特に息子に対して優しい理由でもある。
「最後……最後だっ!これで決めるぞ!!!」
残りの人は返事をする元気も無い。
ある人は片腕が吹き飛んでいるし、腹がえぐれている人もいる。
全員が全員、満身創痍であった。
「かかれーー!!!!!」
それは最後まで抗おうとした綺麗な命でもあった。
だがそんなモノはココでは意味なかった。
「αが全滅しました。オオカミ型の魔物の様で……。」
「……そうか。」
青色の髪を振り解きながら剣を持ち立ち上がる。
「大丈夫ですか?先程……あれほどの量の魔物と対峙しましたのに。」
「国民の為に刻んだ命だ。今行かなくては隊長失格と言うものだ。」
「…………そうですか。」
その青色の髪を持ち、青色の瞳を持つ女性は英雄と呼ばれた。
7人の英雄と。
しかし、7人の中で1番弱かった。
否、限定的な強さであった。
だからこそ、ここに配属された。
「よく頑張った。」
もう既に事切れている男性を通り過ぎる。
「ここからは私が相手だ。ケダモノめ。」
剣を突き出し、再び鞘へと納める。
「ふぅ……。」
次の一瞬にはオオカミの頭は地面に落ちていた。
「…………。」
周りを見渡し、あるモノを集めていく。
集め終わると戦場を後にし、副隊長に断りを入れる。
「そういう所が私達が命を張る理由であります。後は任せてください。」
「……ああ。任せた。」
これから軍隊長であるトノザ=ミセリーは国へ行き、亡くなった人の生きた証を、戦った証を届けに行く。
例え恨まれようとも、泣かれようともこれだけは私が、私だけの仕事だ。




