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令和の反三国志〜後漢のヤバい奴らを集めて王朝再興を目指す物語〜  作者: さきはるザメロンパン
第一章 出会い
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傲慢、天才、毒舌

馬車はまもなく豫州を抜ける。

賊に襲われたりもしたがなんとか目的地近くまで来た。


三人は休憩のために茶を啜りながら道に座り込む。


「奉孝殿、お聞きしたいことがございます。」


「なんだ。財力か?それはだな…。」


「いえ、奉孝殿への使者のことでございます。私たちがお会いした時にいらした使者の方はどなたからの者なのでしょうか。」


「そういや言ってなかったっけな。確か…。」


「曹操からだろ。俺様の勘がそう言ってるぜ。」


馬正と郭嘉の会話に突然聞き慣れない声が入る。


「何奴!」


項樊がすぐさま首元へ刃を向ける。

しかしその者は全くもって動じない。


「おいおい…。吠えるのもその辺にしとけよ番犬はよ。」


「あなたは…?あ、私は馬正、馬伯常と申します。」


「お前は礼儀ってもんをわかってるみたいだな。だが飼い主としての責務はちゃんと果たせよ?」


馬正は項樊に戟を収めさせる。


「そうだそれでいい。俺様は知る人ぞ知る禰衡(でいこう)禰正平(でいしょうへい)だ。」


名前を聞いた瞬間、郭嘉と馬正がなぜかすごく納得したような顔になる。


「おいお前ら。俺様のことをどう思ってんだよ!」


「天下一の頭脳をお持ちの真の天才だとお聞きしております。一度見た文書をすぐに暗記できるとか!」


「…あんまりいい噂は聞かねえんだけどな。」


禰衡は馬正に胡麻をすられて、馬正の予想に反してしかめっ面となる。


「俺様は媚びへつらって生きるのは大嫌いなんだよ。もちろんそういうことをする奴もな!人は思うままに生きるべきだ!」


「だろうと思ったぜ。はっきり言ってやろう。お前は才能を鼻にかけて傲慢すぎるぜ。だが能力の高さは俺以上ってことは認めてやる。」


郭嘉が歩み寄り禰衡へ言う。


「はっきり言うやつだな郭嘉。俺様の才能がお前を上回ってるなんて自明だけどな。」


一触即発、郭嘉と禰衡が睨み合う。


「あの、ずっと後ろからついてきていたのは正平殿ですか?あと、媚びへつらう気はございません。私はただその才能をただ讃えたいだけです。」


馬正が割って入る。

混りっけの無い目で禰衡を見つめる。


「ああ。賊に襲われてるのを見つけてからついてった。お前らと喧嘩しに来たんじゃねえ。」


緊張がほどけ、郭嘉が馬正を安堵の表情で見つめる。

項樊はただ戟を手に禰衡を睨む。


「俺様の悪い癖だ。ひたすら敵を作っちまう。いや、それ自体は何にも思ってねえんだけど仲良くしたい奴にも嫌われちまう。」


「仲間になりたいってことは私たちと共に徐州へ?」


「そう思ったんだが郭嘉と項樊は反対らしいな。」


禰衡が二人へ視線をやる。

そこで意外な人物から提案がされる。


「傲慢なばかりで実力がわかりませぬ。ここは一つ、私と組み手をしてその才能をお見せくだされ。」


その発言の主は項樊であった。


「そんな筋肉の塊に立ち向かう馬鹿がどこにいんだよ。賊を蹴散らすのも見たんだぜ。」


「逃げるのですかな。」


「…やるじゃねえか。弁舌も達者とはな。そう言われちゃ引けねえってもんだ。」


禰衡と項樊は向かい合う。

固唾を呑んで見守る馬正と呆れた顔で見ている郭嘉。


まず動いたのは項樊。

掌底を禰衡へ飛ばす。


禰衡は紙一重でそれを避ける。

さらにその腕を掴んで背負い投げの構え。


項樊は自分から跳んで投げられる。

そして禰衡の服を掴み投げ飛ばした。


禰衡は背丈の二倍ほどの距離を飛び、ゴロゴロと転がった。


勝敗は決したように見えたが、項樊が片膝をつく。


「どうした項樊!?」


馬正が叫ぶ。


「やっぱり筋肉野郎にはあんまり効かねえな。」


禰衡が身体中をさすりながら立ち上がる。

その手には葉が握られていた。


「あれは…!奉孝殿が使った神経毒!」


「孫子曰く、相手が予想しないことをするのが戦ってもんだ。卑怯なんて言うなよ。こっちだって命懸けなんだ。」


「いえ、最後に立っていた者の勝利。この項子達、完敗でございます。」


項樊がゆっくりと立ち上がった。

ふらつく様子もなく、しっかりとした足取りである。


「大丈夫か?項樊。」


「伯常殿。見ての通り大事ありませぬ。」


「これがなけりゃ俺様は負けてた。智略では勝ったが武術は負けだ。」


「正平殿、またお手合わせ願います。」


「俺様の才能ならお前なんかすぐ抜かすぜ。」


黙って見ていた郭嘉は釈然としない。

この男だけは全てを見抜いていた。


「禰衡ちょっと来い。」


馬正と項樊から少し離れたところへ呼び出す。


「とんだ茶番だぜ。俺の目は誤魔化せねえよ。」


「何怒ってんだよ郭嘉。仲良く行こうぜ。」


「しらを切るな。お前自身も気づいてんだろ?」


「冗談だよ。試すような真似して悪かったって。」


禰衡は懐から小刀を取り出した。

本当は毒で動きを止めるだけの予定ではなかったのである。


「何が目的だ。」


「お前らを見極めたんだ。俺様の才能のために利用する価値があるかどうかな。だが俺様の見当違いだったぜ。」


「そうかよ。えらく理想が高いもんだ。」


「逆だ逆。俺様は負け知らずだったけど今回事実上負けた。人生初の負けを経験したんだ。これで目が覚めた。」


「だとしても俺らを殺そうとしたことは消えるわけではない。俺はお前がくるのには反対だ。」


「それは勝手にしてくれ。だが馬正は来てもいいみたいだぜ。お前一人抜けるんなら勝手にしたらどうだ。」


「てめえ…。わかってながら…!」


郭嘉は家を出奔した以上、帰る場所はない。

禰衡はそれをわかっていて発言した。


「お話は終わりましたかー?」


馬正が二人を呼ぶ。

郭嘉は禰衡としばらく睨み合い、何も話さず馬正の元へ戻った。


「あいつの才能は本物だ。俺も来てもいいと思う。」


「よかった。仲間は多い方がいいですもんね。」


「そういうこった。世話になるぜ。」


(絶対に目を離さねえ。少しでも怪しい動きをしたら俺があいつを…。)


郭嘉は強い思いを胸に秘めた。

彼は知らず知らずのうちに馬正へと惹かれていた。


わだかまりを残しつつも新たな仲間が加わる。

しかし少し均衡が崩れると全てが崩壊する危うい関係であった。

馬車は豫州を抜け、いよいよ徐州へと踏み入れる。

ついに禰衡来ました。

私が一番好きかもしれない人です。

天才なのにプライドが高いせいで身を滅ぼすってなんか鍾会に似てますね。

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