許昌の戦い前日譚・劉備陣営
徐州にて劉備軍の主要な将が一堂に会す。
大将である劉備を筆頭に、軍師の諸葛亮、龐統、徐庶、武将の関羽、張飛、趙雲などなど。
10年前に勢力に加わった軍師三人は、それ以来類稀なる才能を発揮し、曹操らとの水面下での同盟で辣腕を振るった。
しかしそれまでの劉備軍の経営を改革していったこともあり、関羽や張飛と折り合いが悪くなっていた。
「おい諸葛亮よお。許昌への侵攻作戦、絶対に勝てるんだろうな?」
張飛が高圧的に諸葛亮へ問い詰める。
「はい。皆様の連携が上手くいけば必勝の作戦となるでしょう。」
「なんだあ?俺が言うこと聞かねえせいで負けるかもしれねえって言うのか?」
張飛が更に諸葛亮へ圧力をかける。
「仲が悪いのはいいが、公私混同するなよ。」
劉備が張飛へ言う。
張飛はしばらく諸葛亮を睨んだ後、舌打ちして自分の席へ座った。
「許昌は街そのものが堅牢な砦となっております。力押しで突破できるほど楽ではありません。皆様、私と龐統、徐庶の指示に従ってください。」
関羽が不満そうに軍師三人を眺めていた。
徐庶が立ち上がり話し出す。
「ここからは私が。奴らは恐らく許昌の守りの硬さを生かして籠城戦を持ちかけるでしょう。大都市なだけあって、兵糧攻めや疫病の類は期待できないでしょう。ならばここは離間策といきましょう。」
「そう都合良くいくのか。仮にも奴らには帝という大義名分があるのだぞ。」
関羽が徐庶に問いかける。
「問題ありませんよ旦那。奴らの中心人物に賈詡がいます。今でこそ信頼されているものの、董卓や李傕、郭汜に仕えていたことを良く思わない者らも多々います。そこを上手く突いて離反を促すのですよ。」
龐統が関羽へ言う。
しかし関羽は食い下がる。
「ならばそれが成功したとしよう。だがどれほどの敵兵がこちらへ寝返るかわからない。それ以上にそいつらを使ってもし謀反でも起こされたらどうする。諸葛亮、何が必勝の策だ。」
作戦会議の雰囲気は悪くなる一方であった。
ここで静観していた劉備が口を開く。
「ならば私が指揮を取る。それならば文句はなかろう。」
関羽と張飛は何も言わず座った。
「…よろしいですかな?とにかく、力押しではなく策によって攻略いたします。お互いの兵力はほぼ互角、なれば策が成功した方の勝利となります。現地では劉備殿の指示に従っていただき、それぞれの責務を全うしてください。」
徐庶が具体的な策の内容について語り始める。
趙雲は一人不安を抱えていた。
離間策にかかるのはどちらだろうと。
このままでは劉備軍は何もできずに相手の術中に嵌り敗走するだろうと。
それぞれが独断で動く劉備軍、それが強みでもあり弱みでもある。
諸葛亮らはそれをやめて劉備と諸葛亮に権力を集中させようとしたが成功しなかった。
諸葛亮らは荊州から来た言わば新参者。
それまでの態勢を改革するなど到底叶わないことであった。
しかしここまでバラバラであっても兵は精強であることに変わりはない。
関羽や張飛、趙雲といった名だたる名将がそれぞれで許昌を攻めるとなると、逆に動きが読めずに厄介となるかもしれない。
不安が残る中劉備軍は許昌へと進む。
策と策のぶつかり合い、この攻城戦を制するのはどちらか。
史実では劉備と関羽、張飛は別に義兄弟の契りは交わしてないし、諸葛亮と劉備はめっちゃ仲良しってわけでもないし、関羽は神様じゃないです。




