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令和の反三国志〜後漢のヤバい奴らを集めて王朝再興を目指す物語〜  作者: さきはるザメロンパン
最終章 乱世の行く末
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洛陽会戦

洛陽を守備する馬正陣営は、洛陽の東側に強固な城壁を築く。

そして道中の関を強化し、道は隘路になるように工事を施していた。


対する曹操軍は軍を10に分け、それぞれの将軍に指揮を任せる。

項樊の討伐、洛陽の占拠、指揮官の無力化を目的として進軍する。


要塞と化した洛陽を遠巻きに眺める曹操軍は早速包囲を開始する。

遠征軍である曹操軍はなるべく早く決着をつけにきていた。

しかし荀彧は相手が持久戦を持ちかけることも予想済み、安い挑発には乗らないように警戒する。


項樊は一人要塞の前に立つ。

圧倒的な大軍を前にたった一人で立っていた。


「私こそが一騎当千…。いや、一騎当『万』だ!」


戟を天高く掲げた。

その鋭い光は遠く離れた曹操軍まで届いた。


「あの時の再現ってか?見えすいた挑発だぜ。荀彧、あれはほっといていいか?」


「それすら読まれている可能性もあります。夏侯淵将軍、重装歩兵で圧力をかけつつ進軍してください。」


「あいよ。俺は正面からいく。于禁、楽進!両翼から援護してくれ!」


夏侯淵の部隊を中央として、左右に于禁、楽進の部隊を配置して項樊へ詰め寄る。

3万の部隊がたった一人の猛者へ警戒しながら寄っていく異様な光景だった。


その間、項樊は戟を地面に突き立てて微動だにしなかった。


しかし曹操軍も統率がとれた動きでじわじわと項樊との距離を詰めてくる。

功を焦った者が突出して項樊に襲いかかるわけでもなく、ただゆっくりと着実に近づいて来ていた。


「やはり荀彧は相当な知者だな。これに釣られないとは。」


「何言ってんだ。あいつなんか見た目だけだっての。これが罠なことぐらい誰が見てもわかるだろうが。こんなもん想定済みだ。」


法正と禰衡が合図を出すと、砦から矢が放たれた。

しかし曹操軍は重装歩兵、盾で難なく矢を防ぐ。


「矢が刺さった盾はすぐに放棄しろ!そのまま隊列を乱さず前進だ!」


夏侯淵がすぐさま司令を出す。

部隊は少しも乱れずに盾を放棄する。

予備の盾を持って再び前進を始める。


まもなく火矢が放たれる。

しかし矢は盾によって防がれ、大した損害を出さずに炎上もせずに対処された。


「やっぱりな。もうその手には乗らねえぜ。最初の矢も油を塗ってたってのもわかってんだよ。」


夏侯淵は徐州での敗戦から学び、同じ手口で攻撃してくると読んで対策していた。

于禁、楽進の部隊も予め夏侯淵の経験を知っていたので損害はほぼなかった。


「ま、そうなるよな。10年くらい前はこれで倒せたんだけどな。」


「こんな拙い策で撃退できるなら相当油断してたんだろうな。次だ次。」


「ああん?」


凄む禰衡をよそに法正はさらに指示を出す。

曹操軍はもはや項樊の目と鼻の先にまで迫っていた。

さらに項樊へ向けて進軍した3部隊以外による包囲も間もなく完了する。


しかし洛陽を包囲しようとした李典は驚くべきことに気づく。


「遠くからじゃあわからなかったが…なんだこの堀は!?」


洛陽を囲むように深い堀が掘られていた。


夏侯淵は十分に項樊を包囲したと判断し、3部隊に突撃司令を出す。


しかしその瞬間二度目の火矢が放たれた。

今度は部隊を狙わずに少し後ろに火矢は着弾する。

同時に、堀から兵が飛び出してくる。


「さあ見せてみろ。天下一の武勇、ここにありとな!」


項樊は戟を前に突き出す。

二度目の火矢により放棄した盾に引火、項樊討伐部隊は退路を断たれ、さらに堀から出てきた兵は黒い丸いものを手にしていた。


「俺様が発明した最強兵器の味をたーーーっぷり味わえよ!!」


洛陽を包囲した曹操軍に対して、堀から出てきた兵は手にした最強兵器に火をつけて投げつけた。


その瞬間、爆音とともに曹操軍数人が吹き飛んだ。

それを合図と言わんばかりに項樊は戟を手に単騎で夏侯淵の部隊へ突撃する。

そこからは流石の剛勇、どれだけ堅固な装甲を見にまとった兵ですらも軽々と薙ぎ倒していった。

容赦などかけらほども持ち合わせていない。

項樊は鬼神と化していた。


「見たか!俺様の最強兵器、爆弾の威力は!」


「あまり調子に乗るな。見苦しい。」


部隊を預かる指揮官は動揺する。

しかしすぐさま荀彧の言葉を思い出して冷静に戻る。


だがそれができない指揮官も当然いるわけである。

焦った者から死ぬ。

戦場とはそういうものである。


「な、なんだこれは!あの音が鳴れば誰かがやられる!一度退くべきか…。兵も動揺している…。」


曹休は撤退を考え始めた。

撤退の許可を得るために荀彧へ兵を派遣する。

しかし荀彧へ通じる道は炎によって閉ざされていた。

それを知る由もない曹休は完全に荀彧からの指示をあてにして、自分で考えることを放棄してしまっていた。


「まだまだここからだ。俺たちを殺そうとしたこと、地獄へ行っても後悔するがいい。」


「法正…お前の方がやべえよ。」


人間というのは冷静さを欠いた瞬間、正常な判断ができなくなるもの。

たとえ見知った事柄に対しても間違った対応をしてしまって、それが命取りとなる。

その冷静を崩すのに爆弾は最適であった。


轟音、威力、未知。

全てが脅威となりうる兵器の登場で曹操軍は突撃を躊躇することとなる。


さらに荀彧という総司令官との連絡断絶により、部隊はそれぞれの独断で行動することを余儀なくされる。


「火をつけたら爆発する…となると水をかければいいんだな。」


部隊を任されている将軍の一人、曹仁はある答えに辿り着く。


「すぐさま他の部隊にも知らせろ!水をかければ無力化できる。これがなければ奴らなど恐るるに足りん!」


爆弾を無力化すれば馬正軍はただの歩兵と成り下がる。

そうなれば曹操軍の圧倒的物量によって押し潰せる。

そう考えた曹仁はすぐさま他の部隊へ伝令を発した。


「そろそろわかってきた頃合いか。次。」


法正の指示によって砦の兵は城壁より投石を開始する。


「兵器が来たぞ!水をかけろ!」


この時に投石を開始したならば、それを爆弾と思うのは必然。

曹操軍は何の疑いもなく手持ちの水を石へ向けてかけていく。


「な、なんだ。ただの石じゃないか。」


「砦から投げてきてるのはただの石だ!水をかけるな!もったいない!」


曹操軍は砦からの投石は爆弾ではないとすぐに看破し、水の浪費を防ぐ。


「さぁてそれはどうかな?俺様の爆弾が恐ろしいのはここからだぜ?」


曹操軍がそれを看破することも想定済み。

今度は砦の投石部隊は爆弾も混ぜて投げ始める。


そうなれば曹操軍は更なる混乱に陥る。

爆弾か石かを判断してから水をかけるのでは遅いので、とにかく飛来するもの全てに水をかける。


ついに曹休の部隊は独断で撤退を始める。

体制を立て直して荀彧の指示を仰ごうと隊を反転させた。


それを見た禰衡はこれを好機と捉える。


「こいつは効くぜ?俺様特性改造爆弾だ。」


禰衡は部隊に合図を送る。

すると砦から少し違った爆弾が投げられる。

撤退を始めていた曹休の部隊は、投げられた爆弾に対して水をかけることを怠った。


轟音が鳴った瞬間、爆発の範囲よりも広範囲の兵が倒れた。

辺りに飛散したのは鋭く尖った石の破片であった。


「どうだ!爆発の勢いで中に仕込んだ石が飛び散る!まさに俺様でなければ思いつかない改造だろ!」


「確かにお前ほど性格が悪くなければ思いつかないだろうな。」


一方項樊は単騎で夏侯淵隊の中を突き進んでいた。

どれほどの兵が一気に襲いかかろうと、まるで赤子の手を捻るように容易く蹴散らされていく。

砦の正面を守る部隊は、項樊に当たってはいけないと爆弾の投擲は行っていなかった。


「項子達、推して参る!命が惜しくば武器を捨てろ!」


凄まじい勢いで一直線に夏侯淵を目指して突撃する。

夏侯淵は冷静に指揮していたが、その距離が縮まるにつれて気が気でなくなっていく。


「荀彧の言った通りだ!あいつには何人当てても足りねえぐらいだ!包囲してる奴らも呼び戻して項樊を討て!このままじゃ共倒れだ!」


夏侯淵は他の部隊を集めて、全軍で項樊を迎え撃とうとする。


「無駄無駄。連携なんてさせねえぜ。」


禰衡がまるで狩りをするかのように伝令の兵を矢で射る。

天才を自称するだけあって、かなりの命中率で曹操軍の兵を仕留めていく。


「夏侯淵!覚悟!」


項樊が夏侯淵に迫る。

その距離およそ3馬身。

戦において、将へここまで兵が迫ることなどありえないことであった。


「わかった!ここは一騎打ちといこうじゃないか!」


夏侯淵が項樊へ言った。


「問答無用!天下一の武勇に討たれること、光栄に思うがいい!」


項樊が近くに居た兵の槍を取り上げて思い切り夏侯淵に投げる。


槍は一直線に夏侯淵に飛んでいったが、間一髪で夏侯淵はそれを回避する。


だが、もはや時すでに遅し。

次の瞬間、戟の一閃によって夏侯淵の首は飛んでいた。


「敵将夏侯淵!討ち取ったり!」


項樊は夏侯淵の首を拾い上げ、敵兵に囲まれた中でただ一人勝鬨を上げる。


その光景を見た夏侯淵隊は恐れ慄く。

万の軍勢に一人で突入しただけでなく、その司令官すら一人で討ち取るというありえない光景を目にしたからである。


「次は貴様らだ。覚悟するがいい!」


項樊が周囲の兵を眼光を飛ばすと、兵は戦意を失い槍を捨てて逃げ出していった。


「夏侯淵将軍が討たれただと?たった一人と侮っておられたか。それにしても逃亡兵は厳罰に処さなければな。」


于禁が警戒しつつ項樊を包囲する。

楽進も項樊による惨劇をその目で見ていたので、于禁とともに挟撃の構えを示す。


今度は逃がさないとばかりに項樊へ向けて弓矢を構える。


「こうなれば項樊の討伐が最優先だ。もし味方に矢が当たりそうでも構わず矢を放て。例えそれが俺でもだ。項樊を討てない方が損害が出るんだからな。」


楽進は兵を指令をだす。

もはやなりふり構っていられない。

味方ごとでも無理矢理にでも項樊を討伐せねばいけない。


「放て!」


于禁の一声で一斉に矢が放たれる。

すると項樊は人間離れした跳躍力で矢を回避、そのまま于禁へ向けて突撃する。


「何を戸惑っている!私ごとやれ!」


于禁はさらに声をあげる。

項樊へ向けて矢が放たれ、さらに歩兵が槍を構えて一気に突撃する。


しかしどれだけ矢を放てど、どれだけ槍で突けど、項樊は全てをいなしてただ突撃する。


もはや止められる手段はない。

于禁隊、楽進隊の兵は段々と戦意を喪失し始める。

あの夏侯淵を討って、勢いそのままに自分たちを狙ってきているとなると、勝てるはずもないからである。


そしてまもなく項樊は于禁の元へ辿り着き、于禁は夏侯淵と同じ運命を辿ることとなる。


砦の包囲部隊は投石と爆弾、そして改造爆弾の雨によって進軍できていなかった。

攻城兵器も多数用意していたが、梯子をかけることすらままならない。

爆発と破片の貫通力によって盾が意味をなさないので進むことができなくなっていた。


「曹休殿が独断で撤退したか…。荀彧殿からの司令が来ない。つまり分断されているのか。」


張郃はいち早く事の重大さに気づく。


「ならばここは確かに撤退が得策。我らも項樊討伐に注力しよう。」


張郃隊は包囲を解き、夏侯淵隊に合流するべく撤退を始める。

張郃が退くことを見た他の隊も、このままでは進軍できないことを悟り撤退を始める。


「撤退を始めたか。そろそろ締めにかかるか。」


「やっとか。やっぱ馬鹿どもは判断が遅いぜ。」


砦を包囲していた曹操軍は全軍、対項樊隊に合流する。

そこで初めて項樊のやばさを目の当たりにする。


夏侯淵が討たれたことを知るや否や、全軍が項樊へ向けて突撃を始める。


ここまで快進撃を進めてきた項樊であったが、何万という軍が一気に襲いかかるとひとたまりもない。


だが最後の締めの策が禰衡と法正にはあった。


「頼むぜ項樊。もう一踏ん張りだ。」


法正の合図で外の堀に居た爆弾兵は全員砦の中に入る。

すぐさま弓矢に持ち替えて、集結した曹操軍に矢の雨を降らせた。


「夏侯淵がいなきゃこいつらは楽勝だぜ。こいつを直に食らったのはあいつと荀彧だけだもんな!」


その矢には例の如く油がしっかり染み込んでいた。

そして仕上げの火矢が曹操軍に襲いかかる。


「もはやここまでだな。私の役目は果たした。我らの炎に焼かれよ!」


項樊はそこらに居た馬に乗り、直ちに離脱。

燃え盛る大軍を背に洛陽へ走り出した。

読み合いアンド読み合い。

禰衡と法正の智略が光ります。

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