本来の目的
「奉孝殿、ご相談がございます。」
徐州への道中、馬正が口を開く。
「お腹が空きました…。」
「恐れながら、私もです…。」
馬正、項樊の二人が腹をさする。
獣の咆哮がごとく音が腹から鳴り響く。
「なんだお前ら。なんも食ってねえのか?」
「恥ずかしながら、朝から何も…。」
郭嘉と出会ったのも、元はと言えば食事と休憩のためである。
「そういや荊州からって言ってたな。ご苦労なことだ。おあつらえ向きな場所があるぜ。ちょうど日も陰ってきたからここいらで休むとするか。」
そう言った郭嘉は馬車を停め、近くにあった食事処へ三人で向かった。
「これで頼む。」
と郭嘉が金を店の者に渡した。
その瞬間目を見開いた店の主人は大急ぎで料理を始める。
「あの…。」
馬正が口を開くが、
「おっと、そいつは野暮ってもんだぜ。」
郭嘉が人差し指を馬正の口へ当てた。
(一体いくら渡したんだ…。)
馬正の心配をよそに、豪勢な料理が次々運ばれてくる。
どれも熱々でいい香りを際限なく放っている。
「さ、食べようぜ。冷めないうちにな。遠慮なんかすんなよ。」
郭嘉が一際大きな鳥の丸焼きに手をかける。
「で、ではいただきます。奉孝殿、ありがとうございます。」
「おう、食え食え。」
馬正、項樊は最初は遠慮していたが、相当気に入ったのか、段々喋りもせずに食事に夢中になっていく。
「はっはっは。気に入ってもらえてなによりだ。おっちゃん、ここの飯は天下一だ!」
「ありがとうございます!」
完食した頃にはすっかり外は暗くなっていた。
あまりに食べることに集中しすぎた馬正と項樊は、満腹であることを忘れて食べてしまったので動くのも辛そうである。
「奉孝殿、ごちそうさまでした。す、すぐにでも休憩したいのですが…。」
「俺もそう思ってた頃だ。宿を探して休むか。それにしても食い過ぎだ。」
「用心棒でありながら面目ない。」
こうして何気ない幸せが訪れた。
月はただ三人の旅路を照らしていた。
郭嘉めっちゃ金持ちです。
項樊は今まであんまりまともなご飯を食べてなかったので、今回の衝撃は想像を絶するでしょうね。




