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令和の反三国志〜後漢のヤバい奴らを集めて王朝再興を目指す物語〜  作者: さきはるザメロンパン
第三章 安帝将軍
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小覇王堕つ

悪い事というのは重なるというもので、あの鄴城の戦いや長安の乱も同時に勃発した。

そしてまた今ここに歴史的出来事が二つ同時に起こる。


まず一つ。

舞台は徐州であった。


鄴城の戦いののち、劉備の指示により各地に潜伏していた呂布軍はついに行動を起こす。

198年、徐州に押し入った呂布軍は瞬く間に徐州全土を占拠。

更に下邳城を拠点として、隣接する領土へ戦線を敷く。


まさに神速の占拠であった。

張邈や陳宮が住民に手を回し反乱を未然に防ぎ、その間に呂布と張遼を筆頭として兵が臨戦態勢を即座に取る。

このような統率の取れた動きは呂布軍のみではできず、影に劉備がいてこその動きであった。


呂布が徐州を占拠したという報が各地に伝わるよりも早く、呂布は馬正へ書状を送る。


『劉備を解放せよ。さもなくば孫策への使者の命はない。』


法正が孫策に使者として出向いていることを予測しての脅迫だった。

もちろんこれは呂布はおろか陳宮ですらこの書状の本当の意味を理解していなかった。

徐州を占拠したのち、このような書状を馬正に送れと劉備から指示されてのことだった。


すなわち、法正による孫策の反乱防止を止め、呂布軍が孫策と結びつき、あわよくば袁紹や曹操と馬正を攻めることを示唆する内容であった。


牢に繋がれてもなお恐ろしい劉備の影響力。

しかしいかに劉備でも誤算はある。

呂布軍の杜撰さがこの書状によって透けて見える出来事が起こる。


歴史的出来事二つ目。

孫策の暗殺。


元より軍事力に物を言わせて江東を併合してきた孫策。

その迅速さにより『小覇王』と称されるほど武力が優れていた。


しかし強行手段は必ず綻びが出るもので、小覇王といえどそれは例外ではなかった。


山間部の異民族を討伐してきた孫策であったが、次第に討伐反対派の意見が力を持ち始める。

それすらも力によって押さえつけていたが、ついに異民族と内通した者によって暗殺される。


暗殺される前に孫策は弟の孫権を後継に指名していたため、跡継ぎ争いこそ起きなかったものの、それ以上に家臣に大きな分裂が起こる。

異民族友好派と討伐派。

もはや外に目を向けることなどできないほどの混乱に陥っていた。


孫策へ使者として出向いていた法正は、既に目的地は目前に差し掛かっていたが、孫策暗殺の報を聞くやいなや即座に反転、大急ぎで長安へと引き返す。


彼は孫策へ使者として向かっていたのであって、孫権への使者ではない。

任務を遂行できないとなると迅速に戻るのが吉である。


また、法正より遅れて孫策暗殺の報が入った馬正は、法正へと帰還の命を送る。

そして孫権は領内の立て直しに追われることを予測して江東は放置すると決める。


呂布による徐州占拠、孫策の暗殺。

これらが同時に起こった。


そのため、呂布が馬正へ書状を送った時点で、呂布は孫策が暗殺されたことを耳にしているはずである。

しかし法正が使者として向かっているということを予測した書状が送られてきている訳である。


これらのことから馬正は、呂布が劉備の傀儡であることを即座に見抜く。

そしていかに呂布軍が何も考えていないかに目をつける。


劉備を解放せよとの脅迫であったが、絶対に解放できないとの確信に変わる。

さらに法正の命が狙われたとしても、使者として少数で動く法正の方が軍よりも機動力は圧倒的に上。

法正が殺される心配もない。


しかし孫策が暗殺されなければ劉備を解放しなければいけない状況だったかもしれない。

綱渡りのような状況は変わらなかった。


「劉備殿、この書状はあなたの差金ですね?」


「さあな。心当たりがない。」


「呂布はあなたの言いつけをきちんと守り、孫策への使者を殺すと書いてあります。陳宮殿でもあなたの真意を計りかねたようですね。」


「何を言っているのかさっぱり。」


「あなたの領土となるはずだった徐州は元々曹操殿のもの。この状況に曹操殿が黙っていないでしょうね。」


「呂布を始末してくれるなら願ったり叶ったりだ。」


「どうでしょうね。一筋縄ではいかないと思いますけど。」


「どういうことだ?」


「さあね。私はただそう思うだけです。」


そしてここから中華の東は大乱の様相を呈する。

劉備が呂布を動かしたことでもはや避けようのない戦乱が起こるのである。

史実では孫策暗殺はもう少し後なんですがね。

呂布による下邳占拠は史実と大体一緒です。

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