戦乱の地
法正が孫策へ使者として向かっている頃、英雄がまた行動を起こしていた。
以前曹操、袁紹と敵対し、仮初でも孫策と手を組んだ英雄。
董卓殺しで武名をあげた呂布である。
彼は劉備と行動を共にし、群雄として天下を狙っていた。
その参謀の陳宮も、呂布を天下人へと導くべく劉備と連携して暗躍していた。
袁紹と袁術の雌雄を決する鄴城の戦い。
その勝敗は劉備が予見していた。
この戦いは劉備にとって邪魔な袁術を排除し、口実を作って曹操らと組むために利用したに過ぎない。
全ては天下を掴むため。
呂布も劉備と天下を狙うべく、張邈、張遼、陳宮らと共に、曹操らに見つからないように秘密裏に動いていた。
劉備は今でこそ捕虜であるが、形の上では曹操の客将である。
そのため自身の領土を持てない。
劉備は天下への足掛かりとする領土を欲していた。
しかし客将の立場では好き勝手に動けないため、密かに結んでいた呂布たちにその役目を任せた。
自ら都に乗り込んで反乱を起こしたのも、孫策と組もうと動いているのも全て陽動、領土確保こそが本命であった。
呂布らには領土確保の暁には権利と地位を約束し、支配している都市には好き勝手していいと言っていた。
「劉備の言うことは信用していいのか、陳宮」
呂布が陳宮へ言う。
陳宮は少し考えて答える。
「奉先殿、私は信用してもよろしいと考えています。なぜなら奉先殿の武は劉備も欲しているところ。我らにとっても劉備は頭の切れる協力者。彼我の利害は一致しているのであります。」
「確かにその通りだな。しかし俺たちが占領したところをやすやすと劉備にやるのも惜しい。少し条件を釣り上げてやるか。」
「いえ、それは得策ではないでしょう。なぜなら我らの繋がりは秘密裏。我らが領土を確保したとなれば劉備は容易く我らを見捨て、曹操と孫策らとともに挟み撃ちにて排除するでしょう。」
「劉備め…。そこまで考えてのことだったか。ならばここは劉備に従うしかないのか。」
「ええ、今は。ですがいくら劉備といえど人であります。必ずや隙を晒し、その隙に我らが優位となれるでしょう。それまで我慢ですな。」
「いつまでも奴の言いなりはだめだ。早く奴の支配から逃れるぞ。」
「ええ。可及的速やかに隙をつきましょう。」
呂布は劉備へ向けても謀反を画策する。
董卓の時とは違い、相手は英雄たる劉備。
しかし呂布にも陳宮という頼もしい知者がいる。
そしてまずは劉備の言う通りに動くという計画の元、呂布軍は侵攻を開始する。
その標的となった領土は徐州であった。
関係性が複雑になってきました。
ここで一度まとめを。
馬正視点
劉備→曹操に与する反乱分子。超危険人物なので見張りをつけて捕縛。
曹操→袁紹と手を組む打倒すべき相手。自分の命を狙ってきている。
袁紹→大軍勢を持つ強敵。今のところ勝ち目はない。
劉備視点
馬正→いきなり権力を持った危険人物。自ら戦を起こすことはなさそうなのでとりあえず放置。
曹操→仲良くしておくべき相手。しかしいずれは倒さなければならない。
袁紹→雑魚。放っておいたら自滅する。
曹操視点
馬正→帝を保護しているのでうかつに手を出せないやばい奴。しかし自分たちの天下のために打倒しなければならない相手。
劉備→いちおう自分の下についているものの、安心できない相手。寝首をかきにくることもなくはなさそうで常に警戒。
袁紹→協力すべき親友。ずっと協力関係であればいいと思う。
袁紹視点
馬正→第二の董卓。速攻排除しなければならない。
劉備→有能な部下。親しくすべき。
曹操→有能で親しい友人。共に馬正を討伐したい。




