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令和の反三国志〜後漢のヤバい奴らを集めて王朝再興を目指す物語〜  作者: さきはるザメロンパン
第一章 出会い
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運命の出会い

強力な用心棒、項樊と共にひた進むと馬正。

この日は馬正にとって、天下にとって大きな意味を持つ一日となる。

父と弟達に見送られ、馬正は荊州を後にした。心強い用心棒・項樊を連れて。


目指すは東の果て、徐州。そこを目的地とするには馬正なりの理由があった。


「伯常殿。我らが目指すは徐州。何故そこを目指すとされたのか?」


「そうだな。私を守ってくれる以上、それは知ってもらっておかなければいけないな。項樊、宦官には汚職に手を染め、自らの邪魔な存在は処刑するような者もいる。

いや、ほとんどがそうであろう。」


「恐れながら、私は宦官とはそういうものであると認識しておりまする。自らの正当な後継ぎを作らず、自身のみが権力を思うままに手にする者たちであると。」


「誠残念であるが概ね正しい認識であろうな。だがその中でも誇りを捨てず、権力に驕らずに己が責務を全うする方もいらっしゃる。」


「そのような方が徐州におられると?」


「ああ。今やご高齢なれど、その誇りは決して消えはしない。宦官を目指すわけではないが、あのように立派な名士になるには直接お会いして学ばせていただくのが一番であると思ってな。」


「その方というのは…。」


「中華一の宦官、曹騰殿が御子息、曹嵩(そうすう)殿だ。」


「曹嵩殿…。」


宦官・曹騰。汚職が横行した朝廷で清廉潔白を貫いた宦官。その孫、曹操は後に天下統一を成し遂げる帝国、西晋の前身となる魏国の礎を作り上げた英雄である。


「伯常殿、曹嵩殿にお会いされた後はいかがされるご予定で?」


「天下には多くの名士と英傑がいらっしゃる。特にあの孫子の末裔と言われる孫策殿は、華雄を討った孫堅殿の風格をお持ちとの噂だ。できるならばお会いしたいものだ。」


まもなく、馬車は豫州へ入った。


「腹が減ったな。ここらで休憩とするか。」


「御意にございます。」


そこでとある家が目に止まった。

門前で二人の男が押し問答していた。

どこかの役人のようなきっちりした服装の者と、それとは対照的に服を着崩しまるで寝起きのような顔つきの眠そうな者であった。

どうやらだらしない男がその家の者であるようである。


「項樊。あそこが気になる。私が行ってくるから少し待っててくれないか。」


「なりませぬ。御身にもしものことがあればいけません。」


「遠巻きに見ておいてくれ。何かあればすぐに来てくれ。」


「せめてもう少し近くへ寄らせてください。」


「心配性だな項樊は。」


項樊の説得により、その家から20mほどの距離での見守りを許可した馬正は二人に歩み寄る。

どうやら何者かからの使者が、だらしない男へ士官するよう伝えにきた場のようだった。


「殿はそなたの才を買っておるのですぞ。お会いするだけでも断ると申されるか。」


「だからずっと言ってんだろ。俺はこっから動きたくねえんだ。」


押し問答を続ける二人に馬正が話しかける。


「あの、遅くなりました。こちらのお宅でよろしかったですか?」


突拍子もない、全くもって脈絡もない発言。話しかけられた二人は目を丸くして開いた口が塞がらない様子。


しかしだらしない男はその真意を瞬時に汲み取り、すぐさま馬正へと鋭い目線をやった。


それまでのその男からは想像もつかないほど鋭く、まっすぐで、心の底を見ているかの如く目線だった。


「日が傾くまでに着きましたので約定通りでございます。」


「なるほど、噂通りの方だ。着飾らなくともその智勇がひしひしと伝わってくる。」


おそらく二人にしか把握できていないであろうこの状況を、ぽかんとしか様子で使者は見つめていた。


「あの…郭嘉(かくか)殿へ何か御用ですかな、お坊ちゃん。」


使者がそう言った途端、郭嘉と呼ばれるそのだらしない男はすごい剣幕で使者へ向き直った。


「お坊ちゃんだぁ…!?この方に舐めた口を聞いたなてめえ…。」


「奉孝殿、抑えてくだされ。この馬伯常、幼年ゆえにこの名は知られておらぬ。」


馬正、郭嘉はお互いに確信した。この者こそが天才と呼ばれるべきであると。

馬正は父の人脈により、各地の名士を大まかに把握していた。

その中でも、素行が良くないが若いながらも天才的な頭脳を評価されていた郭嘉のことは、何故かしっかり覚えていた。


「先約がいらしたようで。お邪魔でしたかな。」


使者は背を向け、歩き出した。

それを見計らって郭嘉が項樊へ目をやる。


「側近殿もこちらへ。伯常殿、立ち話もなんですから中へどうぞ。」


「かたじけない。」


項樊は状況が掴めず、まるで狐に化かされたかのような様子で郭嘉の家へ招かれた。


家の中に入るなり、馬正と郭嘉は固い握手を交わした。


「お見それいたしました郭嘉殿。これほどまでのお方とは思いませんでした。」


「お前こそな!俺があの時察してなかったらどうしてたんだよ!ありえねえよ!」


「そ、そうですよね…。」


そう話す二人を目を見開き交互に見る項樊。

そんな項樊を面白がるように郭嘉は馬正に聞く。


「それで、お前らはどこへ何しに行くところだったんだ?そもそも誰だ?」


「荊州の馬氏が長男、馬正・伯常と申します。郭嘉殿、お噂はかねがねお伺いしております。我らは来る戦乱の世に備え、名士の方々との交流を目的として、徐州へ赴く道の途中でございます。」


「すげえな。殊勝な心がけだ。徐州ってことは曹嵩殿か。でも陶謙(とうけん)は名士嫌いだぜ。」


「承知の上です。行かねばならぬのです。」


「仕方ねえ。俺が特別に案内してやらあ。お前を見てっと危なっかしくてしゃーねえ。あいつらの勧誘もしつこかったから逃げるいい機会だぜ。」


「そういえばさきほどの使者の方はどちらから…。」


馬正が言いかけた瞬間、そこまで黙っていた項樊が突然叫ぶ。


「そろそろ!ご説明いただいてもよろしいですかな!?」


馬正と郭嘉はにやついた顔で項樊を見る。


「すまない項樊。行き当たりばったりで心配をかけたな。」


「あー多分そういうことじゃねえぞ?それすらわかってねえと思うぞ?」


馬正は郭嘉と先程の使者を見比べ、郭嘉が優れた名士であることを見切り、先に郭嘉と会うことを決めていた者を装って話しかけた。郭嘉はそれを瞬時に読み取り、馬正と主従の関係であることを匂わせる流れを作り、馬正もそれに合わせて自然な形で使者を追い払い郭嘉の家に入ったということである。お互いに思考を読み合い、初対面であるにも関わらず二人で作り上げた即興の芝居は見事と言う他なかった。


馬正と郭嘉は項樊にことの次第を説明した。


「すまない項樊。意地悪するつもりはなかったんだ。」


「いや、俺はあったけどな?」


「いえ、謝罪は不要でございます。ご説明、感謝いたします。」


「なんだお前図体だけじゃねえんだな。伯常の用心棒なだけはあるな。」


「恐れ入ります。して、馬正殿と共に来られるとは?」


「俺だってここから出たかったところだ。いいだろ?馬正。」


「願ってもない申し出、お受けいたしましょう。あなたが共にあれば百人力でございます。」


「かしこまっちまって。ま、名士っていうなら目上の者にはそんなもんじゃねえとな。」


「馬正殿がそう言われるならば、私はお二人を守るのみ。よろしくお願いいたします奉孝殿。」


「すまねえな、お邪魔するぜ。頼りにしてるからな。」


こうして馬正は郭嘉という傑物を供とした。戦乱の世を迎える上でこの上なく強力な助力、そして馬正と郭嘉双方にとっての運命の出会いである。


これよりの旅路、順風満帆に進むと思われた。


しかし徐州には暗雲が立ち込めていた。

馬正、人生の転換点を迎える。

こんなに長文になるなんて自分でもびっくりしています。

郭嘉はかなり好きな人物なので早い段階で出せてよかったです。

ていうか史実ではまもなく曹操に士官してしまうのでこのタイミングしかないです。


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