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令和の反三国志〜後漢のヤバい奴らを集めて王朝再興を目指す物語〜  作者: さきはるザメロンパン
第二章 躍進
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長安の乱

日が落ちて夜が深まる頃、二人の男が堅牢な宮殿の中に侵入する。

すると宮殿の中から、周囲の目を気にしながら役人が一人出てきた。


「お待ちしておりました。ここでは危険です。さあこちらへ…。」


「おい、本当に安全なんだろうな?」


「お前一人を始末したところで何になる。いいから行くぞ。俺たちが要なんだ。」


役人に案内されるまま二人は宮殿の小部屋へと入る。

するとそこには武装した兵が所狭しと並んでいた。


「手筈通りでございます、孝直殿。反乱分子を集めて内部から瓦解させるといたしましょう。」


「よくやった。郭嘉、こいつらの指揮は任せたぞ。」


「疑って悪かったな。だがお前はどうするんだ?」


「俺には俺のやるべきことがある。安心しろ。俺の目的はただ一つ、奴らの暗殺だ。」


法正は郭嘉へと兵を預けて暗闇の中へ去っていく。


「そんじゃ、始めるとしますか。俺っていつもこんな危ない役ばっかだな。」


郭嘉は初対面の兵でも不安一つ抱えずに作戦を開始する。

初めての場所、初めての兵。

だが彼は自身の才能に絶対の自信を持ち、なおかつ兵を信じているからこそ堂々と役割を果たせる。


宮殿の裏口から少し離れた場所にもまた暗躍する影があった。

しかしその数は二人どころではなかった。


「俺様の言う通りに動けよ。ここで撃ち漏らしたらまた面倒なことになっちまう。」


「はい。この戟にかけて、ここは通しません。」


兵を率いるは禰衡と項樊であった。

手勢は少ないながらも、ある奇策を用いることにした。


「あいつめ俺様の才能に嫉妬しやがって。定石なんてクソ喰らえ。奇策がどれだけのもんか思い知らせてやる。」


禰衡は敵を倒すことよりも法正を見返すことを重視していた。

彼の場合、いままでそのようなことが原動力となり名声を高めてきた。


宮殿正面に布陣するは馬正率いる本軍である。

兵の指揮は魯粛、後方に華佗による治療を控え、孟達と白を筆頭とする兵が陣形を作る。


「伯常殿、内部よりの鳴り物が合図ですぞ。」


「はい。子敬殿、お任せいたします。」


馬正と魯粛が法正と郭嘉の合図を待つ。


「出自だのなんだのは関係ねえ。強い奴が残る。それが真理だ。」


「同感だな。お前とは仲良くできそうだ、孟達。」


孟達と白は魯粛の号令を待つ。


「皆さま、健全な天下の実現…頼みましたぞ。」


華佗が兵へ目をやる。


緊張感が最高まで高まったその時、宮殿から銅鑼が鳴り響く。


「やってやるぞ!俺たちで地獄を潰してやるんだ!」


郭嘉が兵へ号令する。

瞬く間に大量の敵兵が宮殿から飛び出し、騒乱が始まる。


「皆の者!義は我らにあり!逆賊、李傕と郭汜を討ち、帝をお救いするのだ!」


魯粛が兵へ告ぐ。

号令に孟達、白に続く兵たちは奮い立ち、気炎万丈とばかりに正門へ突入する。


「おーおー始まってんな。そんじゃこっちも気合い入れるぞ。」


「伯常殿の天下のため…。項子達!いざ参る!」


裏門で待機している禰衡らは臨戦態勢に入る。


内部では郭嘉がせわしなく指示を飛ばしていた。


「西と東に分かれて敵を誘引しろ!裏口には近づかせるな!帝と思しき影を見たならすぐに保護しろ!なるべく正門組と挟撃の態勢を取れ!」


圧倒的不利な状態で、郭嘉が指揮する兵は要領良く東西の門を制圧する。

そして門を閉ざして土嚢を積み、すぐさま周囲の建物を倒壊させた。


「すげえ使い勝手いいじゃねえか。是非とも手元に置いときたい兵だぜ。」


しかしいかに迅速な戦運びであろうと、多勢に無勢、戦局は変わらない。


しかしまもなく馬正率いる本軍が正門へと突撃した。

孟達と白が先頭に立ち、勢いに任せて一気に雪崩れ込んだ。


「おらおらどきやがれ!命が惜しくば退けぇ!」


その気迫に、敵軍は少したじろぐ。

しかし本軍突入とはいえやはり兵力は馬正が圧倒的に劣っていた。


「敵襲だぁ?警備の奴らは何やってたんだ!全く使い物になんねえじゃねえか!」


「だがこっちには帝がいるんだ。いざとなりゃ帝を人質にして逃げるしかねえ!」


「こっちの方が数では圧倒してる。負けることはねえと思うが…。」


全ての元凶、李傕と郭汜。

その二人が宮殿の中で話している。

少し離れた場所で外の惨状と中の二人の会話を交互に見比べる者がいた。


「綿密に練った策だな。相手は相当な切れ物と見える。私の策で挽回できるかどうか。」


彼の名は賈詡。かつて董卓に従い、今はその臣下であった李傕に仕える男。

すでに50近い年齢であったが、その知謀はますます冴え渡っていた。


「おい賈詡!お得意の小細工でなんとかしやがれ!」


「仰せのままに。しばしのお待ちを。」


賈詡は足早に宮殿を出る。

もはや外は乱闘の様相を呈していた。


そこで賈詡は近くの数人を集めて指示を出す。

近くの兵も吸収しつつ宮殿を取り囲むように配置。

敵の誘いに乗らずにその場を守れと指示を出した。


「なんだ?いきなり統率の取れた動きをし始めたな。まさか賈詡が出てきやがったのか。」


郭嘉の予想は的中。

馬正軍は一層苦しい状況となる。


「子敬殿、どうやら相手に司令官がついたようです。」


「そのようですな。これは厳しいことになりましたな。」


宮殿を囲むように守る官軍。

正門、東門、西門を占拠して宮殿を包囲する馬正軍。


両者睨み合いの状態となる。

膠着状態の最中、裏口の方から声が上がる。


「帝はここだ!逆賊よ!神妙にいたせ!」


そこには皇帝を保護した法正がいた。


「奴め!いつの間に!ええい、はようひっ捕えよ!」


李傕が賈詡に向けて叫ぶ。

しかし賈詡はしてやられたといった顔で号令を出さない。


「もはやここを守る大義名分はない。ここでこちらが力づくで帝を奪い取っても、天下に汚名のみが轟くだけよ。」


法正は帝へ言う。


「手荒な真似をして申し訳ありません。しかしもう奴らの好きにはさせませぬ。陛下のお声一つで未来は変わります。さあ!」


「ち、朕は…。もうあのような生活を強いられたくない!宮殿内の将兵に告ぐ!そなたらは逆賊である!今すぐに投降するのだ!」


未だ幼子。

しかしそれ故の純粋な号令。

李傕と郭汜は仲間割れを始める。


「貴様がちゃんと見張っていなかったからであろうが!これから俺たちは打首は免れんぞ!」


「ええい貴様こそ何をしておった!あのようなガキ一人の面倒を見れんとは!」


その二人をよそ目に賈詡は兵に武器を置くように命じる。


「もはやこれまでだ。私たちは戦う意味がない。李傕が参謀賈詡、ここに兵とともに降伏する。」


「か、勝ったのか…。都を奪還できたのか!」


馬正は思わず歓声を上げる。

同時に魯粛の号令により兵が勝ち鬨を上げた。


まもなく、自らの手勢であった者たちに捕縛されて李傕と郭汜が宮殿から連れ出された。

そんな状況でもお互いを口汚く罵っていた。


「ここから先は任せます、孝直殿。私たちは戦後処理に赴かなければいけないので。」


法正の前に逆賊二人が並べられたまま、馬正たちはその場から去っていく。


その後の法正の仕打ちは想像にお任せする。


ここに悪政の元凶は断たれ、後漢に再び帝の権力が舞い戻ってくる。


しかしそれは順風満帆とは言い難いことであった。

北には袁紹、曹操の軍勢、北西には馬騰や韓遂といった反政府を掲げる精強な軍勢、南は孫策や南中の軍勢といった、反抗的な勢力もいる。


争乱の天下を治める馬正の戦いは、今この時点で始まったばかりであった。


ちなみに裏口で待機していた禰衡と項樊たちは夜明け前まで放っておかれるのであった。

とりあえず第二章終了です。

まだまだ天下統一のスタート地点に立ったばかりです。

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