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令和の反三国志〜後漢のヤバい奴らを集めて王朝再興を目指す物語〜  作者: さきはるザメロンパン
第二章 躍進
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襲撃作戦前夜

栄華を誇った大帝国、後漢。

その都、長安の現状は地獄そのものであった。


そこへ荊州から馬車が数台入ってくる。

物資を大量に積み、治安の悪い都を走るにはあまりにも場違いであった。


その中の一台、そこにはまだ幼い子ども四人とその父親が乗っていた。

下の二人は兄二人に目を塞がれている。


「酷い有様だ…。どうしてこんなことになってるんだ。お前達、その手を離すんじゃないぞ。」


父親が言う。

その馬車を囲むように他の馬車が数台あった。

先頭には項樊、最後尾には郭嘉が大量の武器を積んで構えていた。

周囲には兵を配し、厳戒態勢で都を進む。


「しんがりは嫌だってのに…。ていうかなんで都を進むだけでこんなに警戒しなきゃなんねえんだ。」


郭嘉が不満そうにこぼす。

一行の馬車を、不穏な目線が何個も並んでいた。


「偵察隊の方々もここを通られたのか…。ご無事でなによりだ…。」


項樊は、武を磨いた者がいない中でよくここを抜けたと感心した。

視線は全て強い殺意と明らかな敵意を物語っていた。


「この辺りだ。全員、一つの場所に固まり周囲を警戒していてくれ。」


馬正は一人馬車を降りて寂れた民家に入る。

するとその中では禰衡と法正が一触即発の雰囲気で舌戦を繰り広げていた。


「てめーには頭が足りてねえんだよ。都で育ったボンボン野郎がよ。もっと奇襲で相手を撹乱するのが勝ち筋だろうがよ。」


「奇策とは定石を知って初めて意味をなすことだ。奇策のみで生きてきたはみ出し者は世の理を知らないようだな。」


「ほーう、じゃあこの天才様にご高説垂れてみたらとうだ?俺様が知らない世の理とやらをよ!」


「それならばまず最低限の礼節と品格、そして己の無能を知るのが先決だな。一人称を『馬鹿で傲慢な私め』に変えてはどうだ?」


孟達と魯粛は慌てふためいて二人を止めようとするが、それが火に油を注ぐような結果となってしまっている。


「協力者様、ですか?私は馬正と申します。遅れて申し訳ありません。」


馬正が法正と孟達に語りかける。

法正がゆっくりと馬正を見て、孟達は助けを求めるような目線で馬正を見つめた。


「馬伯常殿…お噂はかねがねお聞きしております。あなたの臣下の禰衡という男が非常に無礼極まりないのですが…。」


「それはとんだご無礼を。能力は自他ともに認めるものなのですが、いかんせん口が悪いもので。」


「まああなたに免じてここは身を引きましょう。それよりも早速本題といきましょう。私が考えた宮殿襲撃作戦はいかがでしょうか。」


法正は馬正に図面を見せた。


「なるほど…。私はどうやら戦の指揮は向いてないらしいので、みなさんの狙いを読み解くには少し頭脳が足りないようです。あ、そういえば…。」


「申し遅れました。私は法正。字は孝直と申します。」


「お、俺は孟達。字は子敬です。」


「ん?子敬と言えば魯粛殿と同じですな。面白い偶然ですね。」


孟達は魯粛と顔を見合わせる。


「まあとにかく役者は揃いましたね。一度皆で集まって作戦会議をしたいのですがいかがでしょう?ここにお呼びしてもよろしいですかな。」


「はい。私も皆さんにお会いしたいと思っておりました。…こいつはいらねえけど。」


法正が誰にも聞こえない声で言って禰衡を睨む。


「まあ奉孝にでも聞いてみたらいいと思ってたところだ。この拙い作戦をな!」


売られた喧嘩を買うとばかりに禰衡が法正を睨み返す。

二人が睨み合っているうちに馬正は待機していた者達を呼びに行っていた。


「おーどうした禰衡。お前喧嘩しやすいんだから気をつけろって言ったのに。」


「これはこれは。荒療治が必要ですかな?」


「頭脳戦は得意ではありません。腕相撲などで決着をつけては?」


続々と仲間が集まる。

不思議と和やかな雰囲気となっていく。

法正は不満そうにため息をつき、孟達は安心したような顔になる。


「皆さん集まりましたね。では作戦会議を始めましょう。」


馬正がその場を取り仕切る。

場は落ち着くかと思いきや、法正、禰衡、郭嘉、魯粛による白熱した議論が始まる。

馬正の目があるからか、法正と禰衡は喧嘩こそしないものの、常に喧嘩腰で話す。


数時間に及ぶ大議論の末、ようやく突入作戦の内容が固まった。


「決まりましたね。皆さん、お疲れ様でした。決行は明日、それまで英気を養いましょう。」


全員その場に倒れ込む。


「てめえは俺様がこの手でボコボコにしてやるからな。覚悟してろよ法正。」


「暴言に侮辱、さらには脅迫とはな。予想通りのクソ野郎で俺の予知能力が誇らしいな。」


禰衡と法正は相変わらず口喧嘩を続けている。

馬正は作戦を兵に伝えるため外に出る。

大きな声では言えないため、一人一人に伝えていく。


すると少し離れたところに賊がいるのを見つける。

よく見るといつぞやの賊であった。


「あ、あの時の!ここまで追ってきたのか?」


「お前は…郭嘉と一緒に居た!」


「ああ、奉孝殿に何か用か?」


「いいや、今お前への用に変わった。俺たち猛虎団を仲間に入れろ。」


「いいよ。経歴がどうであれ、仲間が増えるのは嬉しいことだ。」


即答した馬正に賊の頭領、白は唖然とする。

そして後ろから郭嘉が近づいてくる。


「おー白。決心は決まったのか?」


「郭嘉、癪に触るが仕方ねえ。生きるために力を貸してやる。猛虎団、ここに馬正軍へ降るぜ。」


白がひざまづく。

その後ろに続く賊も同じようにひざまづいた。


「心強い!これで私も強力な兵を得たんだな。」


「お前は楽観的なのか戦略的なのかわかんねえな。まあいいや。白、よろしくな。」


「ああ。お前は憎いが、同時に感謝もしてるんだぜ。」


こうして策、兵は揃った。

準備万端で挑む宮殿襲撃。

悪逆の徒、李傕と郭汜を討ち取ることはできるのか。

投稿時間遅くなりつつあるけど大丈夫です。

毎日投稿は維持します。

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