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令和の反三国志〜後漢のヤバい奴らを集めて王朝再興を目指す物語〜  作者: さきはるザメロンパン
第一章 出会い
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天下に馬伯常あり

「伯常殿…ご心配をおかけして申し訳ない…。私などのせいでいらぬご心労を…。」


「喋らないでください!傷が深くなります。伯常殿、布をもっと持ってきていただけますか!」


「は、はい。ただ今。」


馬正は魯粛に言われるがまま奔走するが、普段の馬正の冷静さは完全に失われていた。


自分がもっと的確に判断できていれば、決断が早かったら、項樊や仲間のことをもっと思いやれていたならば。


いつしか馬正は涙を流していた。


自分はどうすればいいのか。


一方その頃郭嘉と禰衡は目的の相手に辿り着いていた。


「おやおや、そんなに急いでどうなさいましたかな。急患か何かですかな。」


「私の名は郭嘉。貴方の医の技術は天下に知らぬ者はいないと存じます。」


「俺様…いや、私は禰衡。お願いします。貴方様のお力をお借りいたしたい!」


郭嘉と禰衡は頭を下げる。

身分が低いとされていた医者に対し、名士二人が頭を下げるなど異例の事態である。

ましてやあの禰衡がこのような行動に出るのはありえないことである。


「このような下賤の者にそのような…。頭を上げて下され。火急の事態とお見受けいたします。ご案内をお願いいたしまする。」


「お願いいたします!」


三人は駆け出す。

大切な仲間のために。


「奉孝殿と正平殿はまだか…!我らではこれ以上は!」


「項樊…。私が不甲斐ないばかりに!」


横たわる項樊は既に気を失い、呼吸が荒くなっている。

余談を許さない状況、それは誰もが分かっていた。

しかし馬正はわかっていてもなお動けなかった。


「お連れしたぞ!偉大なる神医…華佗先生だ!」


郭嘉の声が響く。


「これはこれは…。非常に危険な状態ですな。」


華佗。字を元化。身分が低い者がする仕事とされていた医学の道を選び、あらゆる病気をたちどころに治療する天才医師。


華佗は一人一人を指差して言う。


「あなたは包帯を出来るだけ集めてくだされ。あなたは針と糸を。あなたは血を拭き取ってくだされ。そしてあなたは…。」


馬正を見た華佗が一瞬止まる。

そして微笑んで優しく語りかけた。


「あなたは患者の手を握ってくだされ。病は気から。あなたが頼りです。」


馬正はただ必死に項樊の手を握った。

自分が希望を捨ててはいけない。

全員で繋いだ希望を。


まもなく必要な物品が集まる。

徐州の民は、自らを守ってくれた英雄を救えるならばと物資を渡すことを快諾してくれた。


華佗は外科的処置を項樊に施す。

血管や皮膚をしっかり縫い合わせ、上から包帯で圧迫して止血した。


「これでひとまず安心でしょう。それにしてもご本人の精神力と、私が来るまでの適切な処置がなければどうなっていたことやら。私からお礼を申し上げます。」


全員が安心して座り込む中、馬正は直立し、すぐ華佗へ深々と頭を下げた。


「本当に…ありがとうございました!」


「いえいえ…私は職務を全うしたまでです。あなたが…先の戦いで民を守ってくださった方ですかな?」


「そう…ですが、民を守るためとはいえそのために相手を殺してしまっては…。」


「もはやこの世では戦を避けられませぬ。なれば、守るべき者のため戦うことが、平和への最たる近道であると存じますがいかがですかな?」


「守るべき者…。」


「馬正、みんなお前の号令を待ってんだ。わかってんだろ、俺様たちはお前の元に集い、お前と戦う覚悟はもう決まってんだよ。それとも劉表と犬死にするか?」


「いえ、覚悟は決まりました。項樊が命を懸けてくれたように、私も戦乱を鎮めるため命を賭して戦いましょう!」


「そうこなくっちゃな!」


郭嘉と禰衡が拳を合わせた。


「伯常殿、小生も私兵と共に貴方様の目指す平穏へ御助力いたそう。」


「危なっかしくて見てられませぬな。これからは私も放浪の身をやめ、貴方様の専属の医師となりましょう。」


大富豪魯粛、天下の医師華佗、強力な兵。

馬正の元に心強い味方が集う。


目指すは漢室の復興。

馬正の旅は新たな局面を迎える。

第一章完結です。

これからもよろしくお願いします。

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