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令和の反三国志〜後漢のヤバい奴らを集めて王朝再興を目指す物語〜  作者: さきはるザメロンパン
第一章 出会い
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徐州の戦い(後編)

郭嘉は一人で椅子に座り地図を眺めていた。

彼我の戦力差は歴然、であれば奇策を用いて戦うより他ない。

しかし未だこちらの具体的な戦力はわからずにいた。

それもそのはず、民兵を募ることと策を練ること、戦闘用に砦を築くことを全て同時進行で行なっているからである。

禰衡が打ち出した作戦、それはそれぞれに策、募兵、建設を一任し、ぶっつけ本番で曹操軍に備えるといった常識外れのものであった。


郭嘉は策を一人で考え、土壇場で兵に指示を出して勝利へと導かねばならない重役を任されていた。

郭嘉は一人で頭を抱えた。


その頃馬正は禰衡と共に建築の指示を出していた。

街の建築士を募り、曹操との戦に備えるための砦を作っていた。

当然、建築士全員が工事に協力するはずもなく、少ない人材と素材で最大限に戦えるように効率を考えなければいけなかった。


禰衡が作った図面を元に馬正が現場の指揮を取る。

櫓、城壁、柵などの必要最低限の設備を建設した。


「これである程度は耐えられるだろうな。あとは策と兵の練度次第だ。」


「資材が少し余っていますね。正平殿、作りたい物があるのですがよろしいですか?」


「お前が考えたなら間違いねえだろうな。残った資材は好きにしてくれや。」


馬正は余った資材を集め、建築士へ兵器の建造を申し出る。


一方項樊と魯粛は民兵を募っていた。

魯粛の財をばら撒き、項樊が見定めた民を兵にする手筈だ。


「最低でも何名が欲しいのであろうか。」


「そうですなぁ。小生の私兵が少しばかりおりますのでな。せめてまともに戦をするならば合わせて5千は欲しいところでございますな。」


「ふむ。頭数だけであれば揃いそうではあるが…。直接剣や槍を持たずとも、投石や熱湯などで役には立つだろうか。」


「練度に心配はありましょうが、いないよりはましでありましょう。」


二人は褒賞を目当てに集まった民へ此度の曹操の侵攻を説明し、付け焼き刃であるが兵の鍛錬を始める。


それぞれが粗方仕事を終えたところで5人は宿へと戻る。


「奉孝、どんな奇策を用意してくれたんだ?」


「こんな初めての土地で自軍の規模もわからんままで策を考えろって無茶にもほどがあるぜ。」


「ですが出来上がったのでしょう?」


「ああ。この郭奉孝を舐めてもらっちゃ困るぜ。お前らも首尾よくいってんだろうな。」


「小生らは兵をざっと5千ほど集め申した。砦の出来に期待ですな。」


「砦はほぼ完成いたしました。籠城戦といきましょう。」


それぞれ、不十分なれど責務を果たした。

曹操の軍勢は明日にでも徐州へ到達しそうである。

強大な軍を前に賢人4人は議論を重ねる。

項樊は何があろうともただ眼前の敵を倒すのみと、決意を新たにした。


翌日、嵐の前の静けさのごとく街は活気が失われていた。

民間人は避難し、来たる戦に備えて兵が隊列を整えていた。


軍は大将に馬正を置き、総司令官として郭嘉、分隊長として魯粛と禰衡がついた。

項樊は先鋒の部隊の筆頭として最前列にて構える。


「向こうに土煙が…。」


馬正が遠くを見てつぶやく。


「俺の指揮に従え!全軍、この城壁を突破されるでないぞ!」


郭嘉が兵へと叫ぶ。

項樊率いる先鋒が城壁の外へ出て構える。

相手は偵察隊、騎兵数十騎であった。


「あんな砦があるなんて聞いてねえぜ。」


「すぐ曹操様へ連絡だ!」


と数騎が引き返していく。

しかし項樊はそれを見逃さず、身の丈ほどもある剛弓に矢をつがえる。


先頭を走る騎兵の馬に矢を当て、その馬が倒れるのに巻き込まれて引き返した騎兵全てが落馬した。


矢の一本で数騎を撃破する光景を目の当たりにした偵察隊は恐れ慄いて逃げ帰る。

逃がさんとばかりに項樊が矢を放つが、数騎を取り逃してしまう。


その後、本隊が近づいてきた。

先頭を走っていた将が馬上から名乗る。


「我こそは許褚!曹操軍が先鋒である!兵力差は歴然、今降伏するならば命は助けよう!」


しかし項樊は対抗する。


「許褚よ!我が名は項樊!徐州を戦場とするならば我らは徹底的に抗戦しよう!降伏の意思はない!」


「ならば致し方なし。項樊よ、お手合わせ願おう!」


双方馬を降りて対峙する。


一騎討ち。それ自体は勝敗を分けるものではないが、その後の戦の流れに大きな影響を及ぼす戦い。

手出しは無用、二人だけの純粋な戦闘力の勝負。

互いに持てる限りの力で激突する。


その頃、知者四人はそれぞれの作戦実行の為動いていた。

項樊の一騎討ちの勝敗を気にすることなく四人は暗躍する。


意外にも早く一騎討ちは決着がついた。

崩れ落ち、首元に刃を突きつけられていたのは許褚であった。

しかし曹操軍の後詰の部隊が接近していた。

項樊は首を取らずに後退する。

曹操軍本隊到着。

夏侯淵率いる大軍の後方には荀彧、荀攸、陳宮といった参謀がおり、その奥には英雄の覇気を放つ曹操がいた。

その数1万。彼我の兵力差は二倍。

さらに兵の練度も圧倒的に負けており、この上ない劣勢である。


項樊率いる先鋒数人と大軍勢が睨み合う。

もはや一刻の猶予もない。


そのとき、砦から矢の雨が降る。

しかし曹操軍はそれにも動じず、突撃を開始する。


「まずは一段階。」


弓兵を指揮している禰衡がつぶやく。


項樊はその武で襲い来る曹操軍を蹴散らすが、物量の差は埋められず次第に追い詰められていく。


そのとき、曹操軍の側面から兵が突撃してくる。

民兵ではなく、陶謙の軍であった。


「二段階…!」


郭嘉が言う。

自身と魯粛が使者となり、陶謙へと派兵を願い出ていた。

陶謙としても民や物資を失うのは惜しいとのことで、少数の兵を貸し与えた。


少数なれど心強い援軍である。

しかし曹操軍はそれでも動じない。

馬正軍への攻めの手を緩めない。


しかし突然曹操軍は部隊を二つに分け、片方を曹操自ら率いてどこかへ向かった。


「あちらは…陶謙のところへ!?」


禰衡が気づいた時には曹操はもはや狙撃できない距離にまで遠ざかっていた。


「逃したか!だが今更作戦は変更できん!」


陶謙から預かった軍を率いるのは魯粛であった。

魯粛は兵を曹操軍の背後へ回して砦と挟撃する形にした。


「今だ!打って出るぞ!」


郭嘉が砦の兵を率いて出撃する。

そして曹操軍を包囲した。


しかし曹操が離れたとはいえこの軍を指揮するのは夏侯淵と荀彧である。

曹操配下の中でも最有力の二人である。

しかしただの民の反乱であるという油断がこの戦の勝敗を分ける。


曹操軍を包囲した魯粛と郭嘉は突撃の司令を下さずに両者睨み合いの状態となる。

荀彧は警戒する。

包囲殲滅をできる状況であるならすぐ実行するのが戦の定石であるはずである。


すると包囲している兵が木箱を曹操軍へ向けて投げつけた。


「夏侯淵将軍!!砦に向けて突撃してください!」


「やな感じがするぜ!突撃だ!」


すると郭嘉の指揮で兵は砦へ道を開ける。

同時に城門が開き、大きな木牛が曹操軍へ突撃した。

木牛は兵を蹴散らし曹操軍の中央で止まる。


「この匂いは…!まずい!撤退だ!」


荀彧は方向転換をする。


「三段階!!とどめだ!」


禰衡の指揮により矢が放たれる。

先程の矢とは違い、火矢であった。


火は瞬く間に燃え上がる。

禰衡が最初に放った矢、包囲した時に投げつけた木箱、城門より突撃した木牛、全て油が染み込ませてあった。

曹操軍の被害は甚大。

馬正率いる徐州の兵は少ない手勢で大軍を一網打尽にした。


しかし荀彧と夏侯淵は一足先に抜け出して九死に一生を得ていた。


徐州で起こった曹操軍と馬正軍の武力衝突は馬正軍の大勝で終わった。


しかしここからが試練の始まりであった。

陶謙って名士嫌いですよね。

劉備の重用の仕方を見たら単に劉備が好きなだけかもしれないですけど。

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