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序章〜旅立ち〜

「馬氏の五常、白眉最も良し」という言葉をご存知だろうか。


三国志の時代、劉備を生涯支え続け志半ばで若くして散った名参謀、馬良の眉に白毛が混ざっていたことから言われた言葉である。

馬氏の五常とは馬良ら5人兄弟のことで、全員のあざなに「常」の文字が入っていることから五常と称された。

五常といえども四男の馬良、五男の馬謖以外の3人は現代においては名前すら記録に残されていない。


しかしどこかの兄が「兄より優れた弟などいない」と言うように、もしも長男が最も優れた人物であったなら?その活躍の場があったなら?


 我らの知らない三国志が今幕を開ける。

 馬正(ばしょう)あざな伯常(はくじょう)。荊州の馬氏の長男。

後世で白眉と称される馬良の一番上の兄である。類稀なる慧眼と並外れた行動力により幼少より並々ならぬ器量を発揮した天才である。


後漢末期、政治は宦官(かんがん)の専横により腐敗しており、太平道による反乱(黄巾の乱)、董卓(とうたく)による独裁により天下は疲弊しきっていた。


董卓が呂布により暗殺された際に馬正は決心をする。


「父上、このままでは天下は混迷を極め戦乱の世になるでしょう。この荊州が激しい戦に晒される未来が私には見えます。来る戦乱に向けて、私は名士の方々にお会いし荊州を守るための智勇を身につけたいと存じます。」


「正よ、焦らずともよい。おぬしはまだ幼いではないか。おぬしの才は私が最も良く知っている。出て行かずともこの地でその叡智を奮えばよいではないか。」


この時馬正は齢14であった。さらに父の言う通り荊州には水鏡先生・司馬徽(しばき)がおり、この地に留まっておいても十二分に才智を発揮できる環境にあったはずである。


しかし馬正は、それでは井の中の蛙となることがわかっていた。


各地へ赴き、さまざまな意見を取り入れていくことこそが戦乱の世を治める最たる近道であることを直感で悟っていたのである。


「董卓が倒れた今、その座を狙って数多の群雄が動くでしょう。各地で戦が起き、我らの命も危ぶまれます。ならばその者らが様子見をしている今こそ好機ではござらぬか。」


馬正はもはや一刻の猶予もないことを父に訴える。


「正…。おぬしの思いは伝わった。されど我らはここ荊州に根差す一族。私はここから動くことはできぬ。わかってくれ正。」


「ならば私が一人で参りましょう。仲常、淑常、季常、幼常は未だ幼い。長男たる私が動くのが道理というものでしょう。」


馬正の弟たちは幼く、特に末弟の馬謖は2歳であった。


「そこにおぬしの思い描く天下はあるのか?正。」


「ええ。必ず!」


「ならばもはや何も言うまい。我が息子、馬伯常よ、我らと荊州の民の安寧…おぬしに託したぞ!」


 こうして馬正の旅が始まった。

目指すは北東、徐州。馬車は足取り軽くただ進む。

初めまして、さきはるザメロンパンと申します。

この度は「令和の反三国志〜後漢のヤバい奴らを集めて王朝再興を目指す物語〜」序章をお読みいただき、ありがとうございます。


私はこれがはじめての執筆ということで、物語の構成が下手であったり、誤字脱字が散見されたりと至らぬ点があると思いますが何卒温かい目で見ていただければ幸いです。


この先何話続くかわかりませんが、最後までお付き合いいただけたらと思います。

またよろしくお願いします。


以下、用語解説です。


あざな:この時代、姓(氏)と諱(名)のうち諱を軽々しく呼ぶことは無礼であるとされた。そのため、字と呼ばれるもう一つの名前で呼ぶこととなっていた。


宦官かんがん:皇帝の身辺の世話をする男性たち。皇后などの女性の世話もするので、悪さをしないように去勢されている。卑しい身分であるとされたが、後漢末期では権力を振りかざして好き勝手していた。


水鏡先生:多くの逸材を育成した名士。その門下には臥竜・諸葛亮、鳳雛・龐統など錚々たる面子がいる。


名士:後漢の時代に最も重視された思想「儒教」を修め、その知識でもって名声を得た人物の総称。有力者の人物鑑定や名士同士の情報共有など、群雄割拠の世の中において重要な役割を果たした。

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