始祖 -後-
振るわれた刃が、灼熱を纏って襲い掛かる。思考は一瞬。対処は可能だ。
――〔変化〕発動。
霧と化した体を、フランベルジュの刃が素通りした。
人間なら丸焼けで即死する熱量を纏っていた。ただの素振りで今の威力か。
『『――――』』
等速の時間の中で、始祖の瞳が、見えないはずのオレの姿を捉えている。
どうすれば戦えるのか、どうやれば勝てるのか。
フル演算して、近未来の状況を予測する。
〔変化〕を解除して、身体を実体化させた。
そこ目掛けて振るわれたフランベルジュに、朽刀で対応を――。
(んぐぉっ熱いッ!! 目がッ、溶け――!!!)
視界を一瞬で失った。迎撃はできたが、余波で体が焼けてめちゃくちゃに熱い。
眼球を治癒後、表面を〔凍結〕させる。ほんの少しだけ戦いやすくなった。
――【血】よ射貫け。
熱で蒸発した血を支配。始祖の全方位から、血の矢の雨を放った。
2殺目。3殺、4殺と立て続けに心臓を破壊――が全て無傷でやり過ごされる。
これは本当に戦っているのか? 時間が巻き戻ってるんじゃないのか?
……という荒唐無稽な疑問すら湧いて来る光景だ。
『素晴らしい魔法の練度だ。〔凍結〕の能力も使いこなしているようだな』
"真祖は魔術に傾倒する者ばかりだ。目新しさがある"という思考が漏れて来る。
余裕の態度に腹は立つが、怒りを抑えて朽刀を振るい、血の魔法で確実に削る。
肌に触れた朽刀は、推定〔運動干渉〕によって止められている。
反射するまでにタイムラグがあるところ、全自動で処理できる能力じゃない。
そしてやはり、こちらの血の魔法には干渉ができないようだ。
魔法の影響下にあるオレ自身の身体も、止められないらしい。
『推測通りだ。超常の力を真っ向から受け止めるのは、あまり得意ではないのだ』
『――出来ないとは、言わないんだな?』
5殺6殺と、殺害回数を重ねていき、同時に試行錯誤も並行して進めていく。
始祖の心臓破壊時に体内に残った【血】は、復活と同時に吸収されてしまう。
針のような血量では、常時展開されてる魔力の壁……<魔力衝壁>で防がれる。
大量の血を用いて仕留めるか。もしくは生身で攻撃して守りを突破するか……。
とはいえ100レベル差だ。血の魔法で底上げした膂力が、力負けしている。
技量で勝負しようにも――こいつの剣の扱いの巧さは、異常そのものだ。
『『――――』』
体勢と重心が崩れない、見栄えのいい優美な剣技。正統派の騎士らしい動きだ。
振り1つ、モーション1つ取って見ても、恐ろしく極まっている。
刀だけだと、どうあがいても勝てない。けれど使えるBP量は無限じゃない。
血の魔法だけに頼っていたら、いずれ近い内にリソースが底を尽きて、詰む。
『ほう、見知らぬ戦闘術も扱えるのか。吸血鬼に適した動作に整えられている』
『……ッ!?』
"ゆえに読みやすいぞ"と思念の捕捉が入り――直後に、両手首に衝撃が走った。
朽刀が巻き取られて、上空へ弾き飛ばされた。
『ッ――【血】よ貫け!!』
反射的に放った血の槍が、目標を見失った。始祖が視界から消失した?
〔変化〕を行使したようだ。心臓を探知――既に実体化、斬撃姿勢に入ってる。
回避、不可能。オレも〔変化〕をすれば――実体化後に詰む!
『どう対処する? 見せてみよ』
『――ッ!!!』
<王女のビンタ>を起動。馬鹿みたいな名称だけど、能力の内容は堅実だ。
手の平に力場を形成して、大剣の軌道を心臓の直撃コースから逸らす。
しかしフランベルジュの威力と熱量に対して、込めたBP量が少なすぎた。
力場が消えて片手が焼失。半身も焼ける。続く2連撃目を〔変化〕で回避。
実体化後、職業能力を乗せた回し蹴りで、心臓を破壊しつつ、距離を取った。
『体術の心得もあったか。其方は中々の芸達者であるな?』
攻撃と並行して行使していた〔念動〕で朽刀の回収に成功。
再び正眼に構える。
『…………』
大剣の1振り1振りが、即死の攻撃になっている。受けたら終わる。
〔変化〕を習得してなければ、既に10や20で数えきれないほど死んでるな。
凍結が無ければ視界を確保できず、血の魔法が無ければ、まともな攻撃手段すらなかった。それらに加えて、陰で地味に役立っているのが――。
『"紅竜のドレス"に熱は通らぬか。趣向を変えよう……<属性付与・雷>』
『――――』
始祖が構えたフランベルジュが放電して、眩い雷光を纏った。
……そんなのありなの?
◆
玉座の間から戦場は移り、地下空洞の内部へ。
〔念動〕で重力方向を変えて壁を走り。
〔飛行〕で上空を飛び回り、空間を最大限に用いて殺し合う。
『『――――』』
刃が衝突した瞬間に毛細血管が破裂、激痛と共に樹状の傷跡が全身に走る。
筋肉が強制的に収縮させられて潰された。即座に高速治癒するが、痺れが残る。
炎の次は雷だと。……魔法剣とかダメだろ。勇者とかが使う系の技でしょ?
なんで使うの。吸血鬼の誇りとかいうのは、どこに行ったんだ?
『? なぜ吸血鬼の誇りと関わりがある? 魔導騎士ならば出来て当然であろう?』
『……。ちなみに、このドレスを選んでオレに着せたのは、あんたか?』
『我が眷属のコンソフだ』
『……そう。ならいいよ』
全く良くないけど、まだましだった。
こいつに着せ替えられてたら、一生の恥だ。
滅ぼす理由がまた1つ増えるところだった。
『死に装束に変わり品質は落ちたが、性能は1級品以上であろう? 付与の内容は把握しておるぞ。以前に盟友が、これ見よがしに付与効果を自慢しておったからな』
はいそうですかと、堀を流れる雪解け水を〔凍結〕させて蹴り上げた。
フランベルジュで切り裂かれて迎撃される。散った氷片を〔念動〕で再利用。
ドレスの幻影補助を受けて、背後からの奇襲に成功――朽刀で心臓を破壊した。
初めて刀が通り、わずかに光明が見えた。
『其れは山人族の名匠"ビルロマー"が鍛えた大太刀だな。この身で受けたのは――117年ぶりだ。懐かしい気分に浸れたぞ』
そして……無傷で、復活した……と。
ダメ押しに放った氷柱は、謎の能力を受けて水に戻される。
おそらくは吸血鬼の能力――〔相転移〕ってやつだろう。
『チッ……』
『舌打ちは止めよ。我が心に傷が付く』
殺しても殺しても終わらない。いくらなんでもこいつはおかしい。
これまでに86回も心臓を破壊した。
なのに始祖エスマーガの思考からは、焦りがまったく感じ取れない。
これまでと変わらず、ほぼ剣技のみで対応してくる。
吸血鬼の能力の使用を控えて、BPを温存しているようだ。
宴と称した舐めプじゃなければ……残量を考慮して戦っていると思われる。
つまりなにか。100近く倒しても、まだそれだけの眷属がいる――って。
どこにいる? どこまでが、対象なんだ?
『……血族の"総数"は何体だ?』
『ほう? その知識を得ていたとは、其方も命の共有が可能だったか』
『…………』
驚きの笑みを浮かべる始祖の首を、素手で刎ねて、心臓を血の矢で射貫く。
『質問に答えよう。我ら血族の残りは――10258体だ』
いちまん、おーばー?
『今宵も太陽国で新たな同胞が多数増えた。コンソフが補充しているようだ』
「……へぇ?」
余裕が、あるはずだ。こいつの残機は、この城にいた吸血鬼だけじゃなかった。
"世界中"に潜んでいる吸血鬼が、身代わりの対象だった。
遠方で血族が増えれば、それが成りたての雑魚だろうと……成立するのか。
-〔ピンク頭。主と眷属は上と下、捕食者と被捕食者、たったそれだけの関係です。そんな簡単なことも分からないでどうするのです?〕-
夜鬼ハッコの言葉の通り、たったそれだけの組織だった。本当にそれだけの。
何処にいても対象なら、なるほど眷属だったら、更に下に生贄を作るだろう。
眷属が減れば、身の危険を感じて、数を増やそうとするだろう。
魅了と支配があれば、より簡単に増やせそうだ。くそかよ。
『どの口で、何が吸血鬼のプライドだ。ド畜生が……』
『王族の身体を持つ不死者だ。立場も含め、汚い言葉遣いは感心せんぞ』
片腕を犠牲に、始祖の頭部を足裏で踏み砕いて、地面に叩きつける。
肉体を拘束して、無防備な心臓めがけて、朽刀を突き出した。
『其方は恥じらいを学べ。盟主がそれでは、吸血鬼種そのものの品性が疑われかねん。城の書庫に何冊か、女性向けの蔵書があったが……あれらは悪影響になるか』
反射された朽刀が手の中から離れて、頬を掠めて弾け飛んでいく。
エスマーガの背から黒い羽が広がり、無傷の肉体が浮き上がった。
ほんとに何だよ、このふざけた存在は……!
『――ッ!!』
空いた両手の先を〔変化〕。アミノ糖を弄り、体細胞を硬質なキチンに変える。
〔生命吸収〕を発動。一気に勝負を仕掛ける。
『ほう? 体質の変化はベニバの特技だったが、それも学んだか。実に多芸だな』
職業能力でフランベルジュを手で弾き、足で蹴り飛ばして極近距離に接近する。
凍結による幻影を囮に、頭上から強襲。〔吸血〕を狙い――黒い残光が、奔る。
『……。これは、付与の、能力か?』
『その通りだ。我が剣"黒竜の尾剣"が備える4つの能力が1つである』
フランベルジュの刃が変形して蛇のようにうねり、迎撃に展開していた【血】の刃ごと、心臓が斬り裂かれた。
目の前の光景が、青い炎に包まれていく。
『よもや其方、"我ら"を1人で相手できると踏んでいたのか? それとも――』
ボロボロと体が崩れて落ちて、そして……。
オレの身体が、灰へと変わり、死亡した。
――――――――――――――――
職業レベル:41→42 Up!
※拠点『儀式用の石棺』で復活:残り5秒
ログアウトしますか? →『いいえ』『はい』
――――――――――――――――
5秒経過後に自動復活する。
「……はぁ」
想定外だ。血族の総数、そして始祖エスマーガ本体の強さ。
ODO開始日に1日中太陽に焼かれ続けても、死んだのは5000回程度だった。
その倍の回数、倍の時間を日光下で拘束し続ける? いったい誰がどうやって?
(? ……地面の揺れが収まっているな?)
ひとまず戦略を練り直してから、仕切り直しよう。
朽刀には、わずかながらオレの血を魔法で定着させていた。
遠くからでも場所は分かる。〔念動〕を使えば回収は可能だ――が、ぁ?
「復活を繰り返し、挑み続ければ、いずれは勝てると踏んだのか?」
「……本当に、想定外だよな」
地下室の入り口に、始祖エスマーガが立っていた。
どうやって……などとは問うまい。ここは奴の居城だ。
城なら脱出経路の1つや2つあるだろうし、影から剣を取り出したように、魔術で移動も可能かもしれない。
「我らを倒す為だけに、己の記憶を消すとはな。貴様は"化け物"であるな」
「……オレが化け物なら、あんたは悪霊だな。さっさと棺桶で大往生しろ」
眷属を気軽に使い捨てる奴に、化け物呼ばわりされてしまった。
まことに遺憾なので、心臓をぶん殴って成仏させてやる所存だ。
『<属性付与・氷>』
"儀式用の石棺"が冷気の刃を受けて、粉々に破壊された。
そして中に納まっていた"物"も、ビリビリと……裂けた。
「……ぁぁ」
まぁ当然の処置だろう。これで復活が出来なくなった、と。
次死んだら、オレはどうなるんだ? 化けて出てくるのか?
「――では再戦といこうか、吸血鬼よ」
「可能な限り滅ぼしてやるよ吸血鬼ども」
こいつを滅ぼす理由がまた一つできた。
心のPポイントが溜まって殺意も回復した。
〔念動〕で回収してきた朽刀を手に取り、第二回戦を開始だ。
血と死と能力と魔法でまみれた、短く長い夜の始まりだった。
◆
――夜明けの近い薄明りの空の下。
瓦礫の山の上でオレは、小さな血の球体を浮かべて、始祖と対峙していた。
『朝を迎える前に、其方の血は尽きた。……宴の終わりだな』
『…………』
放った最後の血の魔法が、波打つ刃によって斬り裂かれる。
超常を断つ付与を備えていると、この吸血鬼は言っていた。
そんな異常を越える異常を前に、成す術が無くなっていた。
『この短時間で3千体も滅したのだ。我らの勝利……などとは思わぬよ』
『――――』
状況は詰んでは、いない。まだ方法がある、はずだ。
何か勝つための策が、どこかに――。
『其方は終始、情報を集めるのに熱心だったな。ならば1つ、教えてやろう』
『……ん?』
今なお余裕綽々な始祖はムカつくが、耳を傾ける他に、取れる手段がない。
油断しているなら、いいさ。隙をついて倒すまでだ。正々堂々騙し討ちで――。
「我は、この世界が*****の意思で築かれた箱庭だということを知っている」
「――なッ??」
『言葉の繋がりを禁じられたか。相も変わらず神とは身勝手で、理不尽な存在よ』
何を急に、言っているんだこいつは?
こいつは何を喋っている? なんでそれを、お前が知って、口に出している?
『不思議でもない。我がこの世で、何千年生きて来たと思っている。どれほど人を食らい、どれほどの命を世界に還して来たと?』
……お前も、ただの吸血鬼だろ?
この世界にしか存在しない、血を吸うしか能のない怪物だ。
『その身で不死者を侮るな』
『ッ――――』
『不死者は死の境界を祓った者だ。転生によって死を迎え、こちら側へ来た者。超常の反作用の受ける器を広げ、より深く歪に理を侵す冒涜者と成った者――そして、かくあれと神が求め、作り出した者だ』
この男の口から出て来る、神という言葉に、おぞましさを感じた。
淡々とした口調で、存在する当然のモノとして、肯定をしていた。
『王女は、生きながらその理の片鱗に触れ、探っていただろう? 理外の者らを狂人と断じたようだが、一度芽生えた疑問がそうそう消せるはずもない……』
そして始祖の赤い眼が、"俺"を見た。
「"貴様"のような気軽に記憶を扱う異物に触れ、どう感じたのだろうな……?」
「――――」
明確に、アバター体ではない此方に、視線を向けていた。
『他愛もない話は終いだ。じきに夜明けが来る』
『…………』
盟主エスマーガは剣を構えた。
相対するオレも、折れた朽刀を構えるが……刃を修復する血も、もう無かった。
『力が足りぬなら、時間をかけて鍛えよ。仲間が足りぬなら、かき集めよ。我は何度も受けて立とう。我ら血族がある限り、吸血鬼の祖として立ちはだかろう』
吸血鬼は謡うように言葉を紡いで、そして――。
『記憶を消す必要は無い。すべてを理解し噛み締めよ……<属性付与・闇>』
世界が闇に閉ざされた。
無音で無明の空間。〔飛行〕の翼を残していても、無視しきれない重力。
全身の感覚が狂うほどの、途方もない重圧に晒される。
やがて月明かりも消えた暗闇の中で、2つの赤い瞳が灯り――。
『心の底から我を憎悪せよ。感情が渦巻くほど、この世はより本物に変わる』
瞬間。心臓を断たれた。
2度目の青い炎が、闇の中で浮かび上がった。
『――今宵、我は其方の"眷属"を滅ぼす』
闇が晴れた向こうで、始祖が剣を向けた先には……1人の少女がいた。
純白の翼を広げた白い吸血鬼、ルピス・エライが上空に浮かんでいた。
『主様、到着が遅れて申し訳ございません。ただいま戻りました』
……あり得ない。
子供を安全地帯まで送るという命令は、どうしたんだ? 放棄したのか?
なんで帰って来た。それも今。死ぬ可能性が高い危険の中に戻ってきた?
『主様のいらっしゃる場所が、もっとも安全な場所になります』
意味のわからないことを告げるルピスに、オレは酷く困惑した。
『私を信じてください。私も主様の言葉を信じてお待ちしております』
紅のレイピアを引き抜いて、夜空で優雅に一礼する女吸血鬼。
まったく思考が読めない、人とは思えない透明な笑みを浮かべていた。
(――ッ!!)
そしてオレは、身体が灰に変わる間際。
これまでに得た全ての情報を、思念を、朽刀に乗せて、投げ渡した――。
――――――――――――――――
職業レベル:42→46 Up!
称号獲得:『ヴァンパイアスレイヤー』New!
取得条件:対象-不死族-吸血鬼種を1時間以内に100体討伐する
セット効果:吸血鬼を認識しやすくなる
称号獲得:『ヴァンパイアキラー』New!
取得条件:対象-不死族-吸血鬼種を10時間以内に1000体討伐する
セット効果:吸血鬼に認識されやすくなる
・既に2つの称号がセットされているため、新たな称号がセットできません
・称号についてご質問があれば最寄りの虹竜シュガーくんへご相談下さい
※拠点『儀式用の石棺』が喪失
※墓地『ミルクロワ城-地下迷宮-王家の霊廟』で復活:残り15秒
ログアウトしますか? →『いいえ』『はい』
――――――――――――――――
◆
死んだ。
いろいろ投げ捨てたまま、死んでしまった。
(なんとかなった、と思いたいけど……)
死ぬ寸前に、始祖との戦闘で得た情報を、全てルピスへ引き継げた。
別れた時点で、オレより総合レベルが高かった。戦おうと思えば戦えるはずだ。
透明化の能力もある。BPが尽きなければ、逃走も可能だろう。だから大丈夫。
(大丈夫だ。きっと大丈夫……だいじょうぶ……)
オレは、やりきった。これ以上ない、最高率の成果を出した。
キルレートにして1770.5だ。クソゲーもびっくりな大戦果だ。
だからもう――。
――――――――――――――――
※墓地『ミルクロワ城-地下迷宮-王家の霊廟』で復活:残り13秒
ログアウトしますか? →『いいえ』『はい』
職業レベル:46→48 Up!
◆解析:【α】-『ピーチトゥナ・ミルクロワ』-『N-01qV3eRfGwAq』
【私の敵を、滅ぼして】
――――――――――――――――
(……ん?)
なんでここで、職業レベルが上がったの? それに解析結果も……?
血の魔法だ、と思うが……いったい、いつ使われた魔法なんだよ?
(????)
はよ始祖を滅ぼせと、合理的じゃない思考が湧いてきている、気がする。
いやでも、もう無理だろう。オレの負けだし、死んで灰になっちゃったし。
マイ拠点も粉々にされたぞ。勝手に復活地点が変わってデスル○ラだ。
(……あの棺、けっこう気に入ってたんだけどな。バカみたいな重量とか……)
アバターが削除されたら、どうしようも無かったけど、まぁ復活ができるんだ。
これから棺ではなく、ミルクロワ王家の霊廟とやらに送られるらしい。
不死者に変わっても、いちおうは王族として認められてるってことだろう。
幾つかの星とその仰角は記憶した。カスィ城に戻ろうと思えば戻れる。
王族に直談判して、子供達の救助を要請しつつ、援軍を送って貰うのが妥当か。
(――そう。妥当な結果は得られた)
俺として、やれることは十分やったんだ。
再戦はまた今度。しっかりと準備をしてから――。
――――――――――――――――
※墓地『ミルクロワ城-地下迷宮-王家の霊廟』で復活:残り10秒
ログアウトしますか? →『いいえ』『はい』
職業レベル:48→50 Limit!!
職業能力 :<怒らせボイス> New!
――――――――
-[言語:Cth]
-[開示:<許可>]
-[突破:<準備>]
--[肉体:適応率50%]
--[精神:適応率50%]
-[同意:α:<取得済>]
-[同意:β:<未取得>]
――――――――
-[干渉:(α=γ)→β:<許可>]
--[NP:[No.06]:<起動>]
--[能力:[Princess-06]:<発動>]
――――――――
◆解析:【β】-『N-0037』
『羅生殿。お待ちくださいッこの先は危険じゃ。どうか御下がりくだされッ――』
『Mr,桃川。悪魔の処分は私にお任せください。不老研究の成果は優先的に――』
『ご再考ください御当主様!若様はイチ姫様の忘れ形見です!どうかどうか――』
『本家の施設は、アースというAIに掌握されてます。御身に危険が及ぶやも――』
『退け。幼子如きに、いったい何の価値がある? 何を期待しておるのだ?』
>
『悪魔だの救世主だの持て囃されておるが、此処では混ざり物の半端者に過ぎん』
『優羅。統星語は学習したな? 理解できる頭と知能は備えているか?』
『明日よりお前は"天海 ユウラ"を名乗れ。天海殿の子として生きろ』
>>
『……なぜ、まだ此処におる?』
『また戸籍データを改竄しおったか。そうまでして桃川に、しがみ付きたいか?』
『めそめそと泣きおって、見苦しい。お前は、それでも――』
『……愚か者が。はっきりと告げねば伝わらんのか……』
>>>
「――儂の前から、消えろ」
「桃川において、お前は一花と同じ"期待外れの出来損ない"だ」
――――――――――――――――
(・・・・・・・?)




