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トランスブレイク  作者: ホウ狼
第5章:吸血姫
36/39

始祖 -後-

 振るわれた刃が、灼熱を纏って襲い掛かる。思考は一瞬。対処は可能だ。


 ――〔変化〕発動。


 霧と化した体を、フランベルジュの刃が素通りした。

 人間なら丸焼けで即死する熱量を纏っていた。ただの素振りで今の威力か。


『『――――』』


 等速の時間の中で、始祖の瞳が、見えないはずのオレの姿を捉えている。

 どうすれば戦えるのか、どうやれば勝てるのか。

 フル演算して、近未来の状況を予測する。


 〔変化〕を解除して、身体を実体化させた。

 そこ目掛けて振るわれたフランベルジュに、朽刀で対応を――。


(んぐぉっ熱いッ!! 目がッ、溶け――!!!)


 視界を一瞬で失った。迎撃はできたが、余波で体が焼けてめちゃくちゃに熱い。

 眼球を治癒後、表面を〔凍結〕させる。ほんの少しだけ戦いやすくなった。


 ――【血】よ射貫け。


 熱で蒸発した血を支配。始祖の全方位から、血の矢の雨を放った。

 2殺目。3殺、4殺と立て続けに心臓を破壊――が全て無傷でやり過ごされる。

 これは本当に戦っているのか? 時間が巻き戻ってるんじゃないのか?

 ……という荒唐無稽(こうとうむけい)な疑問すら湧いて来る光景だ。


『素晴らしい魔法の練度だ。〔凍結〕の能力も使いこなしているようだな』


 "真祖は魔術に傾倒する者ばかりだ。目新しさがある"という思考が漏れて来る。

 余裕の態度に腹は立つが、怒りを抑えて朽刀を振るい、血の魔法で確実に削る。


 肌に触れた朽刀は、推定〔運動干渉〕によって止められている。

 反射するまでにタイムラグがあるところ、全自動で処理できる能力じゃない。


 そしてやはり、こちらの血の魔法には干渉ができないようだ。

 魔法の影響下にあるオレ自身の身体も、止められないらしい。


『推測通りだ。超常の力を真っ向から受け止めるのは、あまり得意ではないのだ』

『――出来ないとは、言わないんだな?』


 5殺6殺と、殺害回数を重ねていき、同時に試行錯誤も並行して進めていく。


 始祖の心臓破壊時に体内に残った【血】は、復活と同時に吸収されてしまう。

 針のような血量では、常時展開されてる魔力の壁……<魔力衝壁>で防がれる。

 大量の血を用いて仕留めるか。もしくは生身で攻撃して守りを突破するか……。


 とはいえ100レベル差だ。血の魔法で底上げした膂力が、力負けしている。

 技量で勝負しようにも――こいつの剣の扱いの巧さは、異常そのものだ。


『『――――』』


 体勢と重心が崩れない、見栄えのいい優美な剣技。正統派の騎士らしい動きだ。

 振り1つ、モーション1つ取って見ても、恐ろしく極まっている。


 刀だけだと、どうあがいても勝てない。けれど使えるBP量は無限じゃない。

 血の魔法だけに頼っていたら、いずれ近い内にリソースが底を尽きて、詰む。


『ほう、見知らぬ戦闘術も扱えるのか。吸血鬼に適した動作に整えられている』

『……ッ!?』


 "ゆえに読みやすいぞ"と思念の捕捉が入り――直後に、両手首に衝撃が走った。

 朽刀が巻き取られて、上空へ弾き飛ばされた。


『ッ――【血】よ貫け!!』


 反射的に放った血の槍が、目標を見失った。始祖が視界から消失した?

 〔変化〕を行使したようだ。心臓を探知――既に実体化、斬撃姿勢に入ってる。

 回避、不可能。オレも〔変化〕をすれば――実体化後に詰む!


『どう対処する? 見せてみよ』

『――ッ!!!』


 <王女のビンタ>を起動。馬鹿みたいな名称だけど、能力の内容は堅実だ。

 手の平に力場を形成して、大剣の軌道を心臓の直撃コースから逸らす。


 しかしフランベルジュの威力と熱量に対して、込めたBP量が少なすぎた。

 力場が消えて片手が焼失。半身も焼ける。続く2連撃目を〔変化〕で回避。

 実体化後、職業能力を乗せた回し蹴りで、心臓を破壊しつつ、距離を取った。


『体術の心得もあったか。其方は中々の芸達者であるな?』


 攻撃と並行して行使していた〔念動〕で朽刀の回収に成功。

 再び正眼に構える。


『…………』


 大剣の1振り1振りが、即死の攻撃になっている。受けたら終わる。


 〔変化〕を習得してなければ、既に10や20で数えきれないほど死んでるな。

 凍結が無ければ視界を確保できず、血の魔法が無ければ、まともな攻撃手段すらなかった。それらに加えて、陰で地味に役立っているのが――。


『"紅竜のドレス"に熱は通らぬか。趣向を変えよう……<属性付与・雷(エンチャントサンダー)>』

『――――』


 始祖が構えたフランベルジュが放電して、眩い雷光を纏った。

 ……そんなのありなの?



 ◆



 玉座の間から戦場は移り、地下空洞の内部へ。

 〔念動〕で重力方向を変えて壁を走り。

 〔飛行〕で上空を飛び回り、空間を最大限に用いて殺し合う。


『『――――』』


 刃が衝突した瞬間に毛細血管が破裂、激痛と共に樹状の傷跡が全身に走る。

 筋肉が強制的に収縮させられて潰された。即座に高速治癒するが、痺れが残る。


 炎の次は雷だと。……魔法剣とかダメだろ。勇者とかが使う系の技でしょ?

 なんで使うの。吸血鬼の誇りとかいうのは、どこに行ったんだ?


『? なぜ吸血鬼の誇りと関わりがある? 魔導騎士ならば出来て当然であろう?』

『……。ちなみに、このドレスを選んでオレに着せたのは、あんたか?』

『我が眷属のコンソフだ』

『……そう。ならいいよ』


 全く良くないけど、まだましだった。

 こいつに着せ替えられてたら、一生の恥だ。

 滅ぼす理由がまた1つ増えるところだった。


『死に装束に変わり品質は落ちたが、性能は1級品以上であろう? 付与の内容は把握しておるぞ。以前に盟友が、これ見よがしに付与効果を自慢しておったからな』


 はいそうですかと、堀を流れる雪解け水を〔凍結〕させて蹴り上げた。

 フランベルジュで切り裂かれて迎撃される。散った氷片を〔念動〕で再利用。

 ドレスの幻影補助を受けて、背後からの奇襲に成功――朽刀で心臓を破壊した。

 初めて刀が通り、わずかに光明が見えた。


『其れは山人族(ドワーフ)の名匠"ビルロマー"が鍛えた大太刀だな。この身で受けたのは――117年ぶりだ。懐かしい気分に浸れたぞ』


 そして……無傷で、復活した……と。

 ダメ押しに放った氷柱は、謎の能力を受けて水に戻される。

 おそらくは吸血鬼の能力――〔相転移〕ってやつだろう。


『チッ……』

『舌打ちは止めよ。我が心に傷が付く』


 殺しても殺しても終わらない。いくらなんでもこいつはおかしい。


 これまでに86回も心臓を破壊した。


 なのに始祖エスマーガの思考からは、焦りがまったく感じ取れない。

 これまでと変わらず、ほぼ剣技のみで対応してくる。


 吸血鬼の能力の使用を控えて、BPを温存しているようだ。

 宴と称した舐めプじゃなければ……残量を考慮して戦っていると思われる。

 つまりなにか。100近く倒しても、まだそれだけの眷属がいる――って。


 どこにいる? どこまでが、対象なんだ?


『……血族の"総数"は何体だ?』

『ほう? その知識を得ていたとは、其方も命の共有が可能だったか』

『…………』


 驚きの笑みを浮かべる始祖の首を、素手で刎ねて、心臓を血の矢で射貫く。


『質問に答えよう。我ら血族の残りは――10258体だ』



 いちまん、おーばー?


『今宵も太陽国で新たな同胞が多数増えた。コンソフが補充しているようだ』



「……へぇ?」


 余裕が、あるはずだ。こいつの残機は、この城にいた吸血鬼だけじゃなかった。

 "世界中"に潜んでいる吸血鬼が、身代わりの対象だった。

 遠方で血族が増えれば、それが成りたての雑魚だろうと……成立するのか。


-〔ピンク頭。主と眷属は上と下、捕食者と被捕食者、たったそれだけの関係です。そんな簡単なことも分からないでどうするのです?〕-


 夜鬼ハッコの言葉の通り、たったそれだけの組織だった。本当にそれだけの。

 何処にいても対象なら、なるほど眷属だったら、更に下に生贄を作るだろう。

 眷属が減れば、身の危険を感じて、数を増やそうとするだろう。

 魅了と支配があれば、より簡単に増やせそうだ。くそかよ。


『どの口で、何が吸血鬼のプライドだ。ド畜生が……』

『王族の身体を持つ不死者だ。立場も含め、汚い言葉遣いは感心せんぞ』


 片腕を犠牲に、始祖の頭部を足裏で踏み砕いて、地面に叩きつける。

 肉体を拘束して、無防備な心臓めがけて、朽刀を突き出した。


『其方は恥じらいを学べ。盟主がそれでは、吸血鬼種そのものの品性が疑われかねん。城の書庫に何冊か、女性向けの蔵書があったが……あれらは悪影響になるか』


 反射された朽刀が手の中から離れて、頬を掠めて弾け飛んでいく。

 エスマーガの背から黒い羽が広がり、無傷の肉体が浮き上がった。


 ほんとに何だよ、このふざけた存在は……!


『――ッ!!』


 空いた両手の先を〔変化〕。アミノ糖を弄り、体細胞を硬質なキチンに変える。

 〔生命吸収〕を発動。一気に勝負を仕掛ける。


『ほう? 体質の変化はベニバの特技だったが、それも学んだか。実に多芸だな』


 職業能力でフランベルジュを手で弾き、足で蹴り飛ばして極近距離に接近する。

 凍結による幻影を囮に、頭上から強襲。〔吸血〕を狙い――黒い残光が、(はし)る。


『……。これは、付与の、能力か?』

『その通りだ。我が剣"黒竜の尾剣(ジラントプラーミャ)"が備える4つの能力が1つである』


 フランベルジュの刃が変形して蛇のようにうねり、迎撃に展開していた【血】の刃ごと、心臓が斬り裂かれた。

 目の前の光景が、青い炎に包まれていく。


『よもや其方、"我ら"を1人で相手できると踏んでいたのか? それとも――』


 ボロボロと体が崩れて落ちて、そして……。

 オレの身体が、灰へと変わり、死亡した。


――――――――――――――――

 職業レベル:41→42 Up!


※拠点『儀式用の石棺』で復活:残り5秒

 ログアウトしますか? →『いいえ』『はい』

――――――――――――――――


 5秒経過後に自動復活する。


「……はぁ」


 想定外だ。血族の総数、そして始祖エスマーガ本体の強さ。

 ODO開始日に1日中太陽に焼かれ続けても、死んだのは5000回程度だった。

 その倍の回数、倍の時間を日光下で拘束し続ける? いったい誰がどうやって?


(? ……地面の揺れが収まっているな?)


 ひとまず戦略を練り直してから、仕切り直しよう。

 朽刀には、わずかながらオレの血を魔法で定着させていた。

 遠くからでも場所は分かる。〔念動〕を使えば回収は可能だ――が、ぁ?


「復活を繰り返し、挑み続ければ、いずれは勝てると踏んだのか?」

「……本当に、想定外だよな」


 地下室の入り口に、始祖エスマーガが立っていた。


 どうやって……などとは問うまい。ここは奴の居城だ。

 城なら脱出経路の1つや2つあるだろうし、影から剣を取り出したように、魔術で移動も可能かもしれない。


「我らを倒す為だけに、己の記憶を消すとはな。貴様は"化け物"であるな」

「……オレが化け物なら、あんたは悪霊だな。さっさと棺桶で大往生しろ」


 眷属を気軽に使い捨てる奴に、化け物呼ばわりされてしまった。

 まことに遺憾なので、心臓をぶん殴って成仏させてやる所存だ。


『<属性付与・氷(エンチャントアイス)>』


 "儀式用の石棺"が冷気の刃を受けて、粉々に破壊された。

 そして中に納まっていた"物"も、ビリビリと……裂けた。


「……ぁぁ」


 まぁ当然の処置だろう。これで復活が出来なくなった、と。

 次死んだら、オレはどうなるんだ? 化けて出てくるのか?


「――では再戦といこうか、吸血鬼よ」

「可能な限り滅ぼしてやるよ吸血鬼ども」


 こいつを滅ぼす理由がまた一つできた。

 心のPポイントが溜まって殺意(モチベ)も回復した。


 〔念動〕で回収してきた朽刀を手に取り、第二回戦を開始だ。

 血と死と能力と魔法でまみれた、短く長い夜の始まりだった。



 ◆



 ――夜明けの近い薄明りの空の下。

 瓦礫の山の上でオレは、小さな血の球体を浮かべて、始祖と対峙していた。


『朝を迎える前に、其方の血は尽きた。……宴の終わりだな』

『…………』


 放った最後の血の魔法が、波打つ刃によって斬り裂かれる。

 超常を断つ付与を備えていると、この吸血鬼は言っていた。

 そんな異常を越える異常を前に、成す術が無くなっていた。


『この短時間で3千体も滅したのだ。我らの勝利……などとは思わぬよ』

『――――』


 状況は詰んでは、いない。まだ方法がある、はずだ。

 何か勝つための策が、どこかに――。


『其方は終始、情報を集めるのに熱心だったな。ならば1つ、教えてやろう』

『……ん?』


 今なお余裕綽々な始祖はムカつくが、耳を傾ける他に、取れる手段がない。

 油断しているなら、いいさ。隙をついて倒すまでだ。正々堂々騙し討ちで――。




「我は、この世界が*****の意思で築かれた箱庭だということを知っている」




「――なッ??」

『言葉の繋がりを禁じられたか。相も変わらず神とは身勝手で、理不尽な存在よ』


 何を急に、言っているんだこいつは?

 こいつは何を喋っている? なんでそれを、お前が知って、口に出している?


『不思議でもない。我がこの世で、何千年生きて来たと思っている。どれほど人を食らい、どれほどの命を世界に還して来たと?』


 ……お前も、ただの吸血鬼だろ?

 この世界にしか存在しない、血を吸うしか能のない怪物だ。


『その身で不死者(きゅうけつき)を侮るな』

『ッ――――』

『不死者は死の境界を祓った者だ。転生によって死を迎え、こちら側へ来た者。超常の反作用の受ける器を広げ、より深く歪に理を侵す冒涜者と成った者――そして、かくあれと神が求め、作り出した者だ』


 この男の口から出て来る、神という言葉に、おぞましさを感じた。

 淡々とした口調で、存在する当然のモノとして、肯定をしていた。


『王女は、生きながらその理の片鱗に触れ、探っていただろう? 理外の者らを狂人と断じたようだが、一度芽生えた疑問がそうそう消せるはずもない……』


 そして始祖の赤い眼が、"俺"を見た。


「"貴様"のような気軽に記憶を扱う異物(バケモノ)に触れ、どう感じたのだろうな……?」

「――――」


 明確に、アバター体ではない此方に、視線を向けていた。


『他愛もない話は終いだ。じきに夜明けが来る』

『…………』


 盟主エスマーガは剣を構えた。

 相対するオレも、折れた朽刀を構えるが……刃を修復する血も、もう無かった。


『力が足りぬなら、時間をかけて鍛えよ。仲間が足りぬなら、かき集めよ。我は何度も受けて立とう。我ら血族がある限り、吸血鬼の祖として立ちはだかろう』


 吸血鬼は謡うように言葉を紡いで、そして――。


『記憶を消す必要は無い。すべてを理解し噛み締めよ……<属性付与・闇(エンチャントダーク)>』


 世界が闇に閉ざされた。


 無音で無明の空間。〔飛行〕の翼を残していても、無視しきれない重力。

 全身の感覚が狂うほどの、途方もない重圧(プレッシャー)に晒される。


 やがて月明かりも消えた暗闇の中で、2つの赤い瞳が灯り――。


『心の底から我を憎悪せよ。感情が渦巻くほど、この世はより本物に変わる』


 瞬間。心臓を断たれた。

 2度目の青い炎が、闇の中で浮かび上がった。



『――今宵、我は其方の"眷属"を滅ぼす』



 闇が晴れた向こうで、始祖が剣を向けた先には……1人の少女がいた。

 純白の翼を広げた白い吸血鬼、ルピス・エライが上空に浮かんでいた。


『主様、到着が遅れて申し訳ございません。ただいま戻りました』


 ……あり得ない。

 子供を安全地帯まで送るという命令は、どうしたんだ? 放棄したのか?

 なんで帰って来た。それも今。死ぬ可能性が高い危険の中に戻ってきた?


『主様のいらっしゃる場所が、もっとも安全な場所になります』


 意味のわからないことを告げるルピスに、オレは酷く困惑した。


『私を信じてください。私も主様の言葉を信じてお待ちしております』


 紅のレイピアを引き抜いて、夜空で優雅に一礼する女吸血鬼。

 まったく思考が読めない(・・・・・・・)、人とは思えない透明な笑みを浮かべていた。


(――ッ!!)


 そしてオレは、身体が灰に変わる間際。

 これまでに得た全ての情報を、思念を、朽刀に乗せて、投げ渡した――。


――――――――――――――――

 職業レベル:42→46 Up!


 称号獲得:『ヴァンパイアスレイヤー』New!

 取得条件:対象-不死族-吸血鬼種を1時間以内に100体討伐する

 セット効果:吸血鬼を認識しやすくなる


 称号獲得:『ヴァンパイアキラー』New!

 取得条件:対象-不死族-吸血鬼種を10時間以内に1000体討伐する

 セット効果:吸血鬼に認識されやすくなる


・既に2つの称号がセットされているため、新たな称号がセットできません

・称号についてご質問があれば最寄りの虹竜シュガーくんへご相談下さい


※拠点『儀式用の石棺』が喪失


※墓地『ミルクロワ城-地下迷宮-王家の霊廟』で復活:残り15秒

 ログアウトしますか? →『いいえ』『はい』

――――――――――――――――



 ◆



 死んだ。


 いろいろ投げ捨てたまま、死んでしまった。


(なんとかなった、と思いたいけど……)


 死ぬ寸前に、始祖との戦闘で得た情報を、全てルピスへ引き継げた。

 別れた時点で、オレより総合レベルが高かった。戦おうと思えば戦えるはずだ。

 透明化の能力もある。BPが尽きなければ、逃走も可能だろう。だから大丈夫。


(大丈夫だ。きっと大丈夫……だいじょうぶ……)


 オレは、やりきった。これ以上ない、最高率の成果を出した。

 キルレートにして1770.5だ。クソゲーもびっくりな大戦果だ。


 だからもう――。




――――――――――――――――

※墓地『ミルクロワ城-地下迷宮-王家の霊廟』で復活:残り13秒

 ログアウトしますか? →『いいえ』『はい』


 職業レベル:46→48 Up!


◆解析:【α】-『ピーチトゥナ・ミルクロワ』-『N-01qV3eRfGwAq』


【私の敵を、滅ぼして】


――――――――――――――――




(……ん?)


 なんでここで、職業レベルが上がったの? それに解析結果も……?

 血の魔法だ、と思うが……いったい、いつ使われた魔法なんだよ?


(????)


 はよ始祖を滅ぼせと、合理的じゃない思考が湧いてきている、気がする。

 いやでも、もう無理だろう。オレの負けだし、死んで灰になっちゃったし。

 マイ拠点も粉々にされたぞ。勝手に復活地点が変わってデスル○ラだ。


(……あの棺、けっこう気に入ってたんだけどな。バカみたいな重量とか……)


 アバターが削除されたら、どうしようも無かったけど、まぁ復活ができるんだ。

 これから棺ではなく、ミルクロワ王家の霊廟とやらに送られるらしい。

 不死者に変わっても、いちおうは王族として認められてるってことだろう。


 幾つかの星とその仰角は記憶した。カスィ城に戻ろうと思えば戻れる。

 王族に直談判して、子供達の救助を要請しつつ、援軍を送って貰うのが妥当か。


(――そう。妥当な結果は得られた)


 俺として、やれることは十分やったんだ。

 再戦はまた今度。しっかりと準備をしてから――。




――――――――――――――――

※墓地『ミルクロワ城-地下迷宮-王家の霊廟』で復活:残り10秒

 ログアウトしますか? →『いいえ』『はい』


 職業レベル:48→50 Limit!!

 職業能力 :<怒らせボイス> New!


――――――――

-[言語:Cth]

-[開示:<許可>]

-[突破:<準備(レディ)>]

--[肉体:適応率50%]

--[精神:適応率50%]

-[同意:α:<取得済>]

-[同意:β:<未取得>]

――――――――

-[干渉:(α=γ)→β:<許可>]

--[NP:[No.06]:<起動>]

--[能力:[Princess-06]:<発動>]

――――――――


◆解析:【β】-『N-0037』


『羅生殿。お待ちくださいッこの先は危険じゃ。どうか御下がりくだされッ――』

『Mr,桃川。悪魔の処分は私にお任せください。不老研究の成果は優先的に――』

『ご再考ください御当主様!若様はイチ姫様の忘れ形見です!どうかどうか――』

『本家の施設は、アースというAIに掌握されてます。御身に危険が及ぶやも――』


退()け。幼子如きに、いったい何の価値がある? 何を期待しておるのだ?』


 >



『悪魔だの救世主だの持て(はや)されておるが、此処(ここ)では混ざり物の半端者に過ぎん』


『優羅。統星語は学習したな? 理解できる頭と知能は備えているか?』


『明日よりお前は"天海(アマミ) ユウラ"を名乗れ。天海殿の子として生きろ』



 >>




『……なぜ、まだ此処におる?』


『また戸籍データを改竄しおったか。そうまでして桃川に、しがみ付きたいか?』


『めそめそと泣きおって、見苦しい。お前は、それでも――』


『……愚か者が。はっきりと告げねば伝わらんのか……』




 >>>





「――儂の前から、消えろ」


「桃川において、お前は一花と同じ"期待外れの出来損ない(・・・・・・・・・・)"だ」





――――――――――――――――


(・・・・・・・?)

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