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トランスブレイク  作者: ホウ狼
第4章:血族 -後編-
32/39

魔法

 視認できない矢が、全身を射抜いた。


 Nプログラム[No.13:死神]起動。1/1000秒の体感時間を1秒に加速。

 静止した世界の中、大急ぎで対策を練る。


(どこから――の前に治癒だ。この矢はマズイ(・・・)ッ!)


 最初に、手を射抜かれた光景を目撃した時点で、防御は完了していた。

 例によって心臓周辺を凍らせて、辛うじて心臓が貫かれる事態は回避した。

 しかし、この矢は、それだけれは済まない。当たるだけで危険な代物だ。

 体の一部が結晶化している。痛覚が鈍い吸血鬼でも、無視できない激痛だった。


『――ッ!!』


 〔念動〕による排出、不可。今も矢は、敵の制御下にあって干渉ができない。

 次善策の[No.7]起動。高速治癒の応用で、体内から異物の排出を――。


『ッ?! 出来ない! んな、んだこれ!?』


 体内に入った(やじり)が分裂。枝分かれして根を生やしていた。

 それどころか脳の領域が占領されて、[No.13]が強制中断される。


(ヤバいっ。時間の感覚が戻ッ――?!)


 [No.14:節制]起動。ダメージ最小計算用のNプログラム。

 このままでは絶対に死ぬという、大変ありがたい予測結果が出力された。

 だったら、損害を最小に抑える為の方法は……これしかないの? 嘘でしょ?


『――ンぐゅッ!!』


 オレはまだ無事な右手の平で、凍結した自身の心臓(・・・・・)を攻撃した。

 <王女のビンタ>を纏った掌を叩きつけて、後方の上空へ、心臓を押し出した。

 ダイレクトに肋骨が砕ける感覚。そして肉体から精神が剥離する感覚――。

 これが、精神ダメージか。意識にラグも生じたが、連続性は保たれている。


(だったら、問題は、ない!)


 心臓を強引に矢の影響から逃がした後、[No.7]で高速治癒を開始する。

 張り付いていた片翼で〔飛行〕を維持しつつ、全身をゴリゴリ再生していく。

 〔念動〕でランダム回避機動。治癒の優先順位は上から頭、胴、腕、足だ。


『――っ!!』


 治癒再生が半分を越えた時点で、精神の"起点"が心臓側に移動した。

 退避は成功。ただ今の行動で、BPがガクンと減った。

 体感で2500は持って行かれている。……けっこう低コストかも?


 刀を〔念動〕で回収する。

 地上で大量発生したガーゴイルが、飛翔を開始した。


(ガーゴイルを作る職業能力か? それとも――ぉゎッ?!?!)


 新たに生やした足に、不可視の矢がヒットしていた(・・・・)

 まるで分からなかった。着弾が、認識できなかった?


『――ッチ!!』


 即座に脚を斬り落として、結晶化の影響から逃れる。

 治癒しつつ、さらに上空へ。地上の敵から離れてしまうが仕方ない。

 無数の飛翔音を立てて、上空に押し寄せて来るガーゴイルの軍勢が見える。


(大した能力だ。けどさすがに、全ては精密制御されてはいないか?)


 数が多い分、与えられている命令は単調なもののようだ。

 ガーゴイルは5体1組で分散しながら、こちらを囲うように向かってくる。


(…………)


 はるか下方に、無残な姿になった"オレ"が落下していた。

 心臓を失ったアバター体だ。注意深く観察する。

 形をそのままに鉱物と化して、地上に向かって落下していた。


(――視認できない矢から、無色透明の矢に変わった。同一物質とすると……)


 これまでの戦闘で、魔術を何発も食らった。その経験から推測ができる。

 矢の形で飛来して――体内で成長して――さらに肉体を鉱物に置換する?

 あれ程アバターに深く干渉できる魔術なんて、1つも存在しなかった。


(魔石……宝石……物質そのもの。それを操る、"魔法"?)


 仮定。あれは魔術ではなく、魔法である。

 恐らく鋼玉(コランダム)の結晶を直接生成・操作する魔法。


 ネオマ曰く、ガーゴイルに用いられている核は"魔石"。

 そもそも魔石が何なのか不明だが、この世界では宝石にAIを搭載できる技術が成立しているようだ。それも異常な低コスパで成立させている。


(気軽にガーゴイルを生み出せるだけでも、厄介極まりないのに……)


 それに加えて、あの不可()の矢。

 見えず、分からず、軌道もめちゃくちゃに飛んでくる矢。

 それらは吸血鬼の備える種族能力の併用と思われる。


 〔念動〕による速度上昇と軌道の屈折。

 そして認識阻害は〔透明化〕の応用だろうか。


『よくできました! 大当たりなのですよ!!』

『っ!?』


 とつぜん念話が届いて来た。

 それは、死んだはずのハッコに、よく似た声だった。



 ◆



 思考を読んでくる吸血鬼が他にもいた。

 警戒レベルを一気に引き上げる。


『貴女の推察通り、それが(・・・)鋼玉(アルミナ)】の魔法です!』


 飛来した矢が、オレの肩を貫いていた。

 受けた反動だけを頼りに、即座に身体部位を〔凍結〕

 わずかに結晶化の速度を遅らせている間に、刀で負傷箇所を削ぎ落とす。


『今晩わピーチトゥナ、私の名は"フワフラー"! 貴女を屠ります!!』


 清々しいまでの処刑宣告だ。宣言するなら姿を見せろと言いたい。

 念話は聞こえてきても、距離どころか方向すら掴めない。掴ませない。

 届いて来るのは、不可視の矢の雨。あとガーゴイルガーゴイルガーゴイル!


『こんばんはだフワフラー! お前が先にッ、滅べッッ!!!』


 朽刀で多数のガーゴイルを石クズに変えながら、無差別に念話を発信。

 こいつら死んでも死んでも向かってくるから、下手したら吸血鬼よりも面倒だ。

 数が多くて、ひたすら邪魔くさい! しかも倒したら倒した分だけ復活する!


『生き汚さに感服です! 私の矢から生きて逃れたのは、貴女で7人目ですよ!』


 それけっこう多くないか? ODO世界は怪物だらけか?

 と、考えてる合間にも、ガーゴイルの群れの間を縫って、矢が飛んでくる。

 思考パターンを割り出して、辛うじて刀で分解できたのが6割。残りは直撃。

 口調も攻撃の嫌らしさ(・・・・)もハッコと似てる。それが分かっただけマシか。


『ふはああ! それは朽刀ですね?! でしたらでしたらこれも如何(いかが)です?』


 なぜかフワフラーのテンションが、鰻登りに高まっている。

 そして〔念動〕を纏った巨大矢が飛んでくるようになった。

 経験を頼りに刀を振るい、矢を叩き落す――とし、きれない!


『――っ!!』


 刀が折れて、衝撃波と共に視界が消失。頭が持って行かれたようだ。

 結晶化する前に、即座に首を切断する。折れた刃もBPで修復する。

 重力も空気抵抗も、まとめて取り込んで加速し続ける宝石の矢だ。

 視認できず、音速を超えているために、当たるまで音すら聞こえない。


(上空へ行き過ぎたかっ!)


 それが1秒間に複数発、四方八方からまとめて飛んでくる。

 距離が離れるほど速度と威力が増す、非常に強力な攻撃だった。


 射撃方向には無論、吸血鬼の姿はない。代わりに有るのはガーゴイル。

 早急に本体を滅ぼさないと、ここで詰んでしまう。


『貴女には、まだ余裕がありますよね? 私は嘘つきが大嫌いなのです!』


 汚いやり方、などとは思うまい。これが吸血鬼だ。


『ピーチトゥナ。もっと私と、もっともっと遊び(戦い)ましょう!!』


 これが吸血鬼(フワフラー)の、戦い方だ。

 変にプライドの高い奴らが大勢いたせいで、オレも勘違いしていた。

 吸血鬼は暗殺に特化した種族だ。いっさい姿を見せず殺しきれる能力を備えている。それを最大限に使ってくるのは自然で、極めた奴がいても不思議じゃない。


『ハッコを屠った時のように、もっと本気になるのです! ほらほら頑張って♪ 頑張ってください!!』

『…………』


 まぁそれ以前に、イラッと来る奴だが……。

 あからさまな挑発に乗るほど、オレも馬鹿じゃない。

 冷静さを失った奴なんて恰好の獲物だ。相手の思考に、乗せられてはダメだ。

 いったん頭を冷やして、クールダウンするべきだな。


『……。オレが、そんな挑発に乗るか。黙って、滅べ』


 熱くなればなるほど、分かりやすく情報を吐き出すようになる。

 行動と思考パターンを読まれたら、より矢の精度は高まるだろう。


『? なぜです? 先程のラブールの言葉には、あれほど怒りを露わにしていたではありませんか。気にされているのでしょう?』

『……ラブールって誰。オレが何を気にしてるって?』


 与えずに奪う。淡々と少しでも多くの情報を収集して、相手より優位に立つ。

 幼稚園児でも知っている情報戦の常道だ。大昔から変わらない戦いの基本――。


『貴女の(つつ)ましいお胸ですよ。動きやすくて羨ましいのです』



 。



『――はぁ???』


 はあ?


『おまえ、あんまり、ちょーし、のってっと、スリ潰すぞ????』

『ふはあ! 急にお口が悪くなりましたねぇ! なにをいまさら仰るのですぅ? 今夜で血族全てを屠るつもりなのでしょう――貧乳(**)王女さま?』




 ひんやりと。ピキピキと。

 体中の血管が、バキバキと、音を立てて凍結していく。


『……ブチコロッッッ!!!!』


 頭の奥で、ブチんと弾けた音がした。



 ◆



 心を読んでいる? だから何だと言うのか。

 そんなものは、ハッコとの戦闘を経て対策はできている。


 オレの思考も精神も心も、しょせんは情報(データ)の塊。

 扱えて当然。変わって当然。そう確信すれば、手を加えることに恐怖など無い。


 ――[No.1:魔術師]起動。


 修復不能な強度で、自己暗示を掛けるNプログラム。別名、精神改造とも呼ぶ。

 精神体に干渉。精神を2つに分裂。本能と理性を同期。思考を排除する。

 身体を能動的に暴走させ、全自動の戦闘行動を――許容した。



 ↑↓



 多少精神が歪んでも、記憶消去用の[No.0]で抹消すれば、後遺症もない。

 完全無欠の布陣である。


『叩っ潰れろラァア!!!』


 マイボディが叫び、限界を超えた加速で、ガーゴイルの集団に突撃していく。

 その結果……オレが潰れた。当然の帰結、突然の自殺である。なぜに?


『ふあっ!? 正気なのですか貴女!!』


 しかし、潰れて散った後の血肉は、ガーゴイルの集団の包囲網を突破した。

 凍結されて無事だった一部の血管と心臓に向かって、念動で集結していく。

 高速治癒しつつ、再構成されるマイボディ。


 そこに、フワフラーの放った矢が直撃した。

 触れた肉体が結晶化する。


『っ!?!?』


 ただ当たったのは、治癒が不十分の肉片だった。

 全体の結合は弱くて脆く、結晶化した部分は即座に分離して、投棄された。

 最小限の被害だけで矢を防いでみせた。


 地上に向かって急降下していくのは、スライムのような不定形の肉の塊だ。

 ちょっとオレ自身だとは思いたくない、ハッキリ言うとキモイ物体である。


(んひー……)


 これは、アレだな。

 血粘体(ブラッドスライム)が強いよーみたいな事をN1000が言ってたので、参考にしたのだろう。やっぱりスライムにならなくて良かったなぁと、心底思う光景である。


『私の魔法がっ、効かない?! どうしてですっ!!』


 マイボディに無数の矢がヒット。その度に剥がれて落ちていく結晶片。

 フワフラーは焦っていても、矢の命中精度は相変わらず正確だ。

 ただ失った部位よりも、細胞分裂による治癒の方が速い。

 ゴリ押し感がひどい。BP消費も、ちょっと心配になってくる。


(やっほ、来たよ、はよ滅べ)

『こっち来ないでください!! 貴女、気持ちが悪いですよ!!!』


 酷い言い草である。そうしている間にも、マイボディは地上に到達。

 発動した〔念動〕で砂粒子を巻き上げて、地上に小規模な砂嵐を発生させた。

 その中に突っ込んでいき、申し訳程度に姿を隠す。


 さらに砂の動作で、矢の接近と本体の位置を探ろうとしているようだ。

 暴走したマイボディは、オレより賢いかもしれない。


『+++レ、@@####が!!』

『ぎィっ――!?』


 マイボディは周辺情報を[No.2]で習得。

 罵声と共にフワフラーへ発信した。


『これが例の精神攻撃ですか!!』


 きっちり防いでいるところ、あちらも対策済みか。ハッコ同様の種族なのか?

 砂塵の中で地形情報を得ても、やはりフワフラーの情報は取得できなかった。


 やがてガーゴイルが追い付いて、次々と地上へ突貫。

 ガーゴイルの胸に付いた魔石が一際赤く発光し、石片を撒き散らして爆散した。


(躊躇なく自爆させるとか、ガーゴイル君が可哀想だと思わないの?)

『さんざん滅多斬りにした貴女が、言う事ですか!!』


 横から雑談(ぼうがい)をしている間も、マイボディは回避機動をとってくれる。

 全自動で動いてくれるので、完全な観戦気分である。

 マテリアルドリンクを片手に眺めていたいが、まぁそろそろ出番だな。


 最後に一仕事するとしようか。



 ◆



 流れて来る感情は暴力に満ちていて、思考はすべて吸血鬼を屠るためのもの。

 もう一方の感情は冷静で、思考も整っている。


 2つの同種の思念が、同時に異なる内容を届けて来る。

 それが意味することは、1つしかない。本当に実行したのだ。


 ピーチトゥナは、自身の精神を2つに分けた。


 矛盾せずに正気を保ち続け、さらには不足なく戦闘行動を行える。

 フワフラーの知識と経験に、そんな者は存在していなかった。


『驚きのバケモノですね! 次は、何をするつもりなんですか?!』


 彼女が喜びを溢れさせていると――。


 不意にどこからか、視線を向けられた気がした。

 〔透明化〕によって希薄となった存在に、目を向ける存在がいた。


(ありえません。どうやって? 真祖に探知能力が? いいえ、これは――)


 フワフラーは、砂嵐の中に2対の金色の瞳を幻視した。


(……魔法?)


 殺意に満ちた思念が、彼女の姿を正確に捉えていた。



 ◆



 心臓が脈打ち、ドクドクと動く。

 確かに確実に、血は流れて――。


(……動いている?)


 冷たい血液が流れていても、吸血鬼の心臓は止まることはない。

 生きている限り、ソレは、確実に其処(ソコ)に有った。


(ようやく見つけたぞ。吸血鬼)


 止めるべき心臓は、すぐ近く。

 手の届きそうな場所にあった。



 ◆



 上空に向けて放った矢は、空中で分裂して、周囲に分散する。

 フワフラーは〔透明化〕を維持したまま、その場から一歩も動かず――。

 ガーゴイルの視界を頼りに、捉えていたピーチトゥナの姿を、射抜いた。


『私の弓で、屠ります!』


 飛来した矢は、不気味な肉塊のピーチトゥナを深々と貫く。

 着弾した矢を中心に、肉体が置換・結晶化されていく。


 しかしそれは偽物だった。動かず、心臓も入っておらず、発火も起きない。


(案の定あちらは偽物でしたか。いつ入れ替わって、本体はどちらへ――)


 フワフラーは翼を広げて、移動をした。


『見つけたぞ! 吸血鬼!!』


 思念が漏れ聞こえて、雑音にまみれた情報の渦が、フワフラーの精神を叩く。

 次の瞬間――ソレは、フワフラーの背後から現れた。


『見つけさせた(・・・)のですよ。お馬鹿な姫さま!』


 背後から伸びた手を、逆にフワフラーは掴んだ。

 正確には、フワフラーとよく似た物が、ピーチトゥナの身体を固定した。


『が、ガーゴイル?!』


 それはフワフラーの姿を完全に模した、影武者のガーゴイル。

 触れた腕は、急速に硬化して固定。結晶化したルビーに置換された。


 生成した宝石に魔力を注ぎ、偽りの精神(AI)を込めて、遠方から使役する。

 彼女の魔法【鋼玉(アルミナ)】は、それだけの事ができる汎用性があった。


『それで終わりのようですね?』


 〔変化〕してガーゴイル集団に紛れていたフワフラー本人が、魔法を放った。

 偽りのガーゴイルの核が、矢に転じて、高速で射出される。

 そしてピーチトゥナの心臓部は、至近距離から、あっけなく射貫かれた。


『私の勝ちです。さようなら、吸血――』




 トンっと、背中が押されたような、衝撃が走る。

 赤くて長い刃が、ズルリと伸びて、フワフラーの視界に入った。


『――っ?!?!』


 何も無い空間から、朽刀が発生して、女吸血鬼の心臓を串刺した。



 ◆



 上空に居たフワフラーを背後から刺して、オレは長い溜息を吐いた。

 心臓破壊による発火現象。これで、ようやく戦闘が終わった。

 今回は本当に疲れた。今まで一番大変な戦いだったかもしれない。


 ――[No.0:愚者]起動。


 戦闘データの要点を記録(メモ)した後で、その記憶をすべて消去。

 複製した精神も、危なくて残せない。リスクを負ってでも消しておかないと。

 見境なく増やすと、統合と管理が面倒だからなぁ。


 ――[No.16:塔]起動。


 対象に"関わる"あらゆる情報を、徹底的に破壊するNプログラム。

 複製した精神体+それが記録した情報の全ても、完全に破壊する。

 特に問題なく消えてくれたな。反抗されずに済んだと、自画自賛。


『どう、やって……?』


 フワフラーの思念(・・)は、"どうやって"で埋まったままだった。

 身体を燃やしながらも、顔は不満そうで、納得できていないようだった。


『化かし合いが現代人の十八番だよ。というか暗殺された経験はなかったのか?』


 一言で言うと、騙して隠れて刺した。

 答え合わせ。という程のこともしてない。


 まず初手で暴走。理性を残して思考していた方が、複製した精神だ。

 オレ本人は戦っていたし、肉団子スライムになる感覚も新鮮だった。

 何も考えずに暴れるというのは、なかなかどうして悪くない。良い経験だった。


 次に〔凍結〕で凍らせた空気中の水分子を〔念動〕で整えて幻影を作った。

 数分前に、吸血鬼ホイップから学んだばかりの、氷粒子の制御だ。

 これまで1度も見せていない[No.9:隠者]による皮膚の迷彩化も併用した。

 千切ったドレスの破片も身に付けたが、付与効果があったかは不明だ。


 最後に、(にせ)の身体を1つ作った。心臓ぶちって作った。

 心臓を壊さない限り、死体は残る。1つ作れるなら、2つ目も当然できる。

 そして分割した精神に、アバターのリソースを与えて、念動を操作させて、適当にポイーと特攻(しごと)させて陽動。

 補強に精神攻撃を混ぜつつ、2重の騙し討ちをして、暗殺。


 言葉にすると簡単なものだ。


『だいたいそんな感じ』

『…………』


 異常者を見るような目を向けてきたフワフラーに、オレは無言で噛みついた。

 もう抵抗はしないようだ。心臓に刀が刺さったままだし、納得できたのだろう。

 ちょっと刀を緩めて、火加減を調整――ガブリ。


 血の味は……やっぱりハッコと似ているか?

 やや"硬い"が、透明感があって濃厚で美味しいテイストだった。


――――――――――――――――

 対象:フワフラー [125]

 種族:夜鬼(ナイトゴーント) [Lv:75]

 職業:射手 [Lv:50]

 HP: 436/1318

 BP:3679/8500

 血族:エスマーガ血族-第2世代

 主君:[ハッコ]*

 眷属:未統合

 能力:〔吸血〕〔暗視〕〔念動〕〔状態異常耐性〕

    〔魔眼:複視〕〔支配〕〔飛行〕〔変化〕

    〔透明化〕〔ダメージ耐性:精神〕

    <冷静><弾道予測><視力強化>

    <腕力強化><健脚><潜伏>

 魔法:【鋼玉(アルミナ)


※吸血鬼化――不可

※血族加入――不可

――――――――――――――――


 強いな。そしてやっぱり夜鬼だったのか。

 これで〔転移〕持ちの種族レベルだったら、完全に詰んでたな。


『弓の扱いや隠密術は参考になった。ありがとう……さようなら、吸血鬼?』

『…………』


 ぶすっーとした表情で睨んでくる夜鬼フワフラー。

 というか、貧乳言ってた割に、君もたいして大きくないじゃん?

 嘘つきは嫌いとか、言ってなかったっけ? どういうことなのです?


『ふ、ふふっ! もし、血族に入れてくださいと頼んだら、加えてくれますか?』

『――断るよ。血だけ、寄こして、さっさと、滅びなさい』


 大群のガーゴイルで王都襲ったくせに、なに言ってんだこいつ……。

 絶対に滅ぼしておかないと駄目なヤツ筆頭、その2だろ君?


『ァA!! それでこそッ……ふふふッ!!』

『???』


 何がおかしいのか。どこに笑える要素があったんだろうか?

 少しビビりつつも、血をチューチュー吸い取っていく。


『楽しかったの、ですよ。……わたし、の……さい、ごの――』


 そうして、夜鬼フワフラーは、灰になって滅んだ。

 飛んでいた大量のガーゴイルも、動きを止めて、次々と地面へと落ちていく。

 彼女は最後の最後まで、やりきった者特有の、満ち足りた笑みを浮かべていた。


(……んー)


 真面目に戦って、きっちり倒して勝利した筈なのに、納得がいかないな。

 してやられた感がある。オレは腕を噛んだ。自棄(やけ)飲みの情報確認である。


――――――――――――――――

 種族レベル:45→50 Limit!!

 種族能力 :〔変化〕 New!

 職業レベル:25→31 Up!

 職業能力 :<王女の踏み付け> New!


★P専用夢想ストーリー:『遺志執行者(プレイヤー)[P]』Clear!

┣ルート消失:『忘我の君主』『血狂い王女』 etc.

┗職業レベル:31→41 Up!

 職業能力 :<癒しのボイス> New!


 対象:ピーチトゥナ・ミルクロワ [91]

 種族:真祖吸血鬼 [Lv:50*]

 職業:プリンセス [Lv:41]

 HP: 896/ 896

 BP:73182/82000 [共有100%]

 血族:ミルクマ血族-盟主

 眷属:ルピス・エライ

 能力:〔吸血〕〔暗視〕〔念動〕〔状態異常耐性〕

    〔生命吸収〕〔凍結〕〔飛行〕〔変化〕

    <演技:プリンセス><オーラ:プリンセス>

    <王女のビンタ><王女の踏み付け>

    <癒しのボイス>

 魔法:【自動復活(アバター)】【(ブラッド)

――――――――――――――――


「……血?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 91…ほぼピーチトゥナじゃん! 血魔法も解禁でようやくボス戦にいけますね!
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