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Do you still love humans?

作者: てあ


ーこれはとある愚かな人間たちと神々の物語ー


「あの人間たちはいったい何をやっているんだ!」

シルーザがテーブルを思いっきり殴る。あいつ、今日はいつにも増していらいらしてないか?今はとりあえず嵐が過ぎるのを待つか。

「まぁまぁ、シルーザ、落ち着けよ。」

「これが落ち着いていられるか?今、ヴォライユ王国はつい最近まであんなに仲良くしていた隣の国、アスペルジュ王国を攻めてアスペルジュ王国の資源を独り占めする計画を立ててるんだぞ?!だから俺は人間が嫌いなんだよ。だって今までアスペルジュ王国がヴォライユ王国に資源を売り、ヴォライユ王国がその資源で製品を作ってアスペルジュ王国に売るっていう関係ができてたのになんでヴォライユ王国はその関係を壊そうとするんだ?他国の人の命より自国の発展の方が大事なのか?笑わせるなよ。マルディークはこんな愚かな人間を見ても嫌にならないのか?」

シルーザは早口にまくしたてた。

「確かに人間は僕ら神よりかなり愚かだと思う。でも、僕は人間のそんなところが好きなんだ。人を愛する神、という肩書きでの贔屓目なしにしてもね。」

「正気か?マルディーク。ついに人間が大好きすぎて狂ったか?俺にはどうしても理解できないね。」

「シルーザもきっとそのうち人間のよさに気づくから。」

「マルディークこそきっとそのうち人間がどんなに最悪で愚かな生き物か思い知るだろうよ。」

…そうか?僕は人間が好きだけどな。たしかにシルーザが言うとおり人間は愚かだけどそこがいいんじゃないか。僕は人間たちが愚かなりに自分達でてを取り合って一歩一歩前に進んでいくところが好きなんだ。

「まぁ、とりあえず今はもう少し人間の様子を見てみないか?もしかしたら思いとどまるかもしれない。」

「絶対に、断じて、そんなことはない!」


ーそして月日は流れ、ついにヴォライユ王国はアスペルジュ王国を攻め始めた。アスペルジュ王国は王はいたものの皆で協力して生きていくという平和な日々を送っていたため法制度などは全くと言っていいほど整っておらず、突然のヴォライユ王国の襲撃により壊滅的な被害を受けたー


…これは放っておくわけにはいかないな。シルーザに相談しなくては…。でもあの人間嫌いのシルーザのことだから相当怒っているだろうな…。

「だから人間は嫌いだって言っただろ?!」

やっぱり顔を真っ赤にして怒っていた。…でも、俺が思ってたよりシルーザは怒ってる。やっぱりここのところシルーザのやつ、いつもいらいらしていないか?

「はいはい、分かったから。今はそれよりこれからどうするかを考えよう。僕が考えているのは、僕が人間になり、アスペルジュ王国の国王になる。そしてヴォライユ王国と平和条約を結び、平和な世界を実現させることだ。」

「マルディークが人間か…。慎重なマルディークにしてはずいぶんと大きな決断だな。…でも、まぁ、マルディークがやりたいことをすればいい。」

「ありがとう。」

「でもこれだけは忘れるな。俺はマルディークが言っているから認めて協力しているんだ。決して、人間が好きなわけじゃない。」

そんなことを言って1人で照れて恥ずかしがってるシルーザが僕は大好きだ。決して恋愛的な意味ではないが。

「シルーザ、僕のために本当にありがとう。」

「いいんだ。じゃあ、人間になるときの条件確認するぞ!まず、人間になると神だった頃の記憶はなくなる。でも、人間としての寿命が近づくと思い出すから大丈夫。」

「わかった。」

「じゃあオッケーだ。人間界での生活、楽しんでこいよ!」


ーそしてシルーザは人間として生まれてサフリスと名付けられ、両親からの愛を受け、順調に育っていった。また、魂が神だからか学力、運動能力共に卓越していたので周りの大人たちに将来を期待されていたー

ーそして時は経ち、サフリスはアスペルジュ王国の国王となった。サフリスはいつも国民の意見を反映して政治を行ったし、サフリス自身が質素倹約を心がけて国民の税金を減らしていったので、支持率は過去最高だったという。そして、サフリスは遂に人間として生まれ変わる決意をさせたヴォライユ王国との条約を締結させようとしていた。だが、はっきり言って状況はあまりよくなかった。ヴォライユ王国が条約の締結に後ろ向きなのだ。ここ何年かサフリスはヴォライユ王国の条約締結に対する姿勢に頭を悩ませていたー


どうしてヴォライユ王国はこんなにも条約締結に対して後ろ向きなのか?ヴォライユ王国にとって不利な内容ではないはずなのに…。また我が国を襲撃しようとしているのか?僕はまだ生まれていなかったが、あの襲撃により甚大な被害が出たと幼少期から何度も聞かされてきた。僕の叔父叔母もその襲撃により亡くなったと聞いている。それに、40年たった今でもまだ復興は終わっていない。もう2度とあのような争いを起こしてはいけないと私は国民に…そして愛する家族に誓ったのだ…!

…そうだ!今度2国の国王で会談を開き、絶対に条約を締結させよう!だが、果たしてヴォライユ王国の国王が会談を開くことを了承するか…。

後日、ヴォライユ王国の国王に会談を開き、話す場を設けたいと連絡をしたら了承してくれたので驚いたが、安心する気持ちの方が大きかった。

そして、両国国王会談当日。緊張したし、自分にできるのかとても不安だったけど、諦めずに相手にぶつかっていったら、無事条約を締結させることができた。条約の内容はお互いの国に攻めこまないこと、お互いの資源を盗まずに貿易をすることの2つだけだったが僕は大きな進歩だと思っている。これも国民の応援と協力があったからこそ叶ったことだったと思う。きっと僕も先はあまり長くない。この仕事で大きな仕事はもう最期だろう。子供もできたし、いつ死んでもきっと後悔はないはず。今は国王としての仕事を全うすることだけを考えよう。

そんなことを考えていたら、かつて神マルディークとして生きていて、アスペルジュ王国とヴォライユ王国との平和条約を締結させるために人間になったこと、あともう少しで人間界を旅立って元の世界に戻らなくてはいけないことを思い出した。そして、身辺整理などを少しずつ始めていった。まず、次の国王に誰を推薦するか決めなくては。僕が次の国王に推薦したいのは息子ではない。僕の息子はいつもぼーっとしていて何を考えているか分からない。だから、次の国王には1番信頼している家臣のホアキンを推薦しようと思う。僕が人間界を旅立つ前に伝えておかなくては。あと、遺書も書かなくては…。

そんなことを考えていたら、いつの間にか人間界を旅立つ日が明日に迫っていた。

誰にも見つからないように庭の隅で丸くなる。人間のしての人生、辛いこともたくさんあったけどそれ以上に楽しいことが本当にたくさんあった。シルーザ、人間界でお世話になった人たち、ホアキン、そして愛する家族たち、本当にありがとう!

そして僕は光に包まれて、どこまでもどこまでも昇っていった。


「おかえり、マルディーク。人間界で人間として過ごしてどうだった?…まぁ、どうせ人間は最悪だったんだろうけど。」

「ただいま!シルーザ!やっぱり人間界は最っ高だったよ!人間たちもすごく優しいし。そりゃあ、大変なことはたくさんあったよ?でも、大変なことをするといいことが何倍にもなって返ってくるんだよ!こんなにいいことは他にはない!シルーザもそう思うだろ?」

「少しはマルディークの人間好きがましになるか期待してた俺が馬鹿だったな。余計ひどくなってる。」

「シルーザも人間界に行ってみたらどうだ?どんなにいい所か、人間がどんなに素晴らしいか身に沁みて分かるだろうよ。」

「マルディークには悪いが、俺はごめんだね。あの醜くて愚かな人間がたくさんいる人間界に行くなんて…。なんの罰ゲームだって話だよ。」

やっぱりシルーザの人間嫌いは直っていない。むしろひどくなってないか?…いや、そんなことはないと祈ろう。僕がやるべきことは終わったんだ。 しばらくヴォライユ王国とアスペルジュ王国の様子を見ることにしよう。


ーサフリスがマルディークに戻った後、アスペルジュ王国は混乱していた。まず、急にもっとも国民に信頼され、慕われていた国王、サフリスが亡くなり、葬儀や告別式が悲しみのなか執り行われた。そしてその後、アスペルジュ王国は後継者について考え始めた。サフリスが遺言書に家臣のホアキンを次の国王にするよう書いたが、サフリスの息子イフィーリオがその遺言書を無視して次の国王になりたいと言い始めたのだ。イフィーリオが王子で本来第一後継者であるはずの人だったので家来たちも強く反発できず、次の国王がなかなか決まらなかった。そんな状態が何ヵ月か続いたある日、イフィーリオがこんな状態が続くくらいなら俺が国王になる!と言い、反論を無視し撥ね付け、国王となった。

だが、イフィーリオはもっと贅沢をしたいからと言って国民の税金を増やしていったたりめちゃくちゃな政治をし続けたので国民からの支持率は過去最低となった。また、アスペルジュ王国は日に日に貧しくなっていったー


…最近アスペルジュ王国の様子を見ていなかったから少し見てみようかな。ホアキンは頑張ってるかな…。

…??

なんでイフィーリオが国王になっているんだ?ホアキンは?僕の遺書は?驚きすぎて疑問が止まらない。少し過去の様子を見るか。

…なるほどな。イフィーリオがわがままを言ったのか。そりゃあ、次の国王が自分じゃなくて家臣のホアキンなら驚き、反論を言うのは当然か。…でも、この政治の仕方には賛成できないな。1回あいつの夢に入り込んで注意するか。それであいつが聞き入れてくれたらいいんだが…。まぁ、とりあえずやってみるか。

イフィーリオは気持ち良さそうにふかふかのベッドで寝ている。枕元にはたくさんの果物もおいてある貧しくて今日食べる食べ物が準備できるかすらわからない国民の気持ちも知らずに。だから次の国王はホアキンの方がよかったんだ。

…これがイフィーリオの夢の中か…。なんだかカラフルだしふわふわしてるしなんか変な感じだな。…いや、そんなことをしている場合ではない!イフィーリオに忠告をしなくては!まず、イフィーリオを探そう。

ひたすらふわふわしている霧のような何かを手で退かしながらイフィーリオを探していたら見つけた。イフィーリオは夢でも贅沢をしていた。あいつめ…。まぁ、忠告をちゃんと聞いて反省し改めるといいんだが…。

「イフィーリオ、聞こえるか?」

「その声は父様…?父様は亡くなったはずじゃ…そうか、これは夢か。だから亡くなった父様がいても何も不思議ではないのか…。父様、いったいどうされたのですか?」

「僕はお前に忠告をしに来た。お前が国民の税金を増やして贅沢をしていると聞いたのでな。僕としては嘘だと信じたいことなのだが。」

「でも父様…」

「言い訳をするな!1国の国王たる者、誰よりも質素倹約を心がけ日々を過ごすのだと教えてきたではないか。もう忘れたのか?」

「忘れてはございません。しかし、私は国王の威厳を見せつけたかったのです。」

「その威厳は誰に見せつけるのだ?自分の威厳なんかより自国の国民の方が大切だと思えないのか?国民のための政治をしていけば威厳なんか自然に身に付く。 そんなことも忘れてしまったのか?僕はお前をこんな風に育てた覚えはないぞ。」

「…。しかし…」

「くどい!もういい。これから悔い改めろ。」

イフィーリオも反省してるようだしこれくらいでいいだろう。

「いいか。イフィーリオ。金輪際もう2度とこんなことはするな。」

「わかりました。父様。」

「わかればよいのだ。じゃあ、僕はもう帰ってしまうが、これからもお前のことを見守っているからな。くれぐれもまたこのようなことがないようにしろよ。」

じゃあ、もう帰るか。僕はまたあの霧のようなところを抜ける。

毎日人間界を見ていたいが、イフィーリオが頑張っているんだ。何も干渉しないのが優しさだろう。


そして、何ヵ月か経った頃、もう一度人間界を見てみたら、イフィーリオは全く反省しておらず、生活はむしろひどくなっていた。そして、民たちはさらなる貧困にあえいでいた。とある村に至っては一人、また一人と姿を消していた。他にも荒れ果てた畑、廃れた市場など、惨たらしい有り様だった。僕がしっかりイフィーリオを監視していたら…!

でも、何人かは目を輝かさせて同じ方向に向かっている。しかし、その顔は喜びの表情ではなかったので気にかかった。いったいなにをするんだろうか。少し見てみよう。

「皆、集まってくれてありがとう。俺たちはクーデターを起こす計画をたてている。今の国王イフィーリオはあまりにも酷すぎる。俺たちから税金を搾り取り、当人はばかでかい城で贅沢だ。先代の国王サフリス様はこんなことは絶対にしなかった。いつも国民のことを考えてくださって、ご自分から質素倹約に努められ、俺たちの税金を下げてくれた。あの幸せだった頃を忘れたのか?いや、俺は忘れていない。まだ遅くない。これからクーデターを起こし、あの平和だった世界を取り戻すのだ!」

『おー!』

なるほど、クーデターか。クーデターを起こすのはいいが、新しい国王に誰がなるかでいさかいが起きなければいいが…。

「次に、クーデターが成功したときに誰が国王になるか話し合いたい。それでまた争いを起こしたくないし。俺はクーデターが成功したらその時に全国民投票を行い、国王を決めようと思っている。これでいいか?」

『もちろんだ。』

人々な導きかたが完璧じゃないか。僕としてはこの人に今すぐ国王になってもらいたいくらいだ。だが、クーデターが成功するかどうか…。イフィーリオはもう何をしてもどうせ無駄だから僕はこっちに国王になってもらいたい。この人には国王の素質がある。まぁ、僕には見守ることしかできないが。


ー1カ月後、クーデターが始まった。そして、クーデターは無事成功した。イフィーリオは国民により殺されたのだー


「シルーザ、これでよかったのかな。」

「お前がいいって思うならいいに決まってるだろう。」

「そうか。ありがとう。」


ーある日、マルディークはデヴィナーという占いを得意とする神にこれからのアスペルジュ王国を占ってもらうことになったー


「デヴィナー、わざわざありがとう。」

「礼など要らぬ。最近のお前は見ていて不安になる。これでアスペルジュ国が平和であったならもう干渉をするのは止めることだな。」

「分かった。」

「マルディーク、心の準備はいいか?」

「ああ。」

デヴィナーの水晶玉を覗きこんだ。すると、僕の目の前にある光景がばっと浮かんできた。それは、クーデターのリーダーが仲間の幹部を殺し、自分が国王となりめちゃくちゃな政治をし、アスペルジュ王国を荒廃させ、ヴォライユ王国に攻められるという光景だった。そんなことはない。だってあんなに優秀なリーダーがそんなことをするわけがない。

「デヴィナー、お前の占いが外れることはあるか?」

「絶対にない。」

僕は怒りで目の前が真っ赤に染まった。人間というものはこんなにも醜く愚かだったのか。僕が今まで信じてきた人間の優しさは?美しい心はどこへ行ったのだ?人間は権力を前にするとこんなになってしまうのか。


…それならしかたない。壊れたものは壊して作り直すんだ。こんな汚いものは捨ててしまおう。キレイなものを僕は作りたいのだ。


なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。



なんでこうなった?



僕は僕の力で出せる最大の威力を持った雷を両国の城に打ち込んだ。当たり前だがどちらの国も壊滅的な被害を受けた。これでいいんだ。都市部と国の端はまだ壊れていない。キレイな人がキレイな国を作るといいが。


「マルディーク、お前変わったな。昔はマルディークが人間嫌いになればいいのにとか思ってたけど、俺よりお前の方が人間嫌いになってる気がするよ。だって、俺は今人間に同情してるんだぜ。こんな日が来るとはな。」


ーそしてシルーザはアスペルジュ王国、ヴォライユ王国の生き残った人々にある贈り物をした。それは、宗教と、生き残った人々を別の土地へ移して新たな国、リコメンサー王国を創ったのだ。果たして人間はいつまで同じことを繰り返すのかー




あなたは、それでも人間を愛することができますか?

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