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セカンド・ワールド  作者: ここなっと
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呼ばれた理由

次話投稿。今回はコナンが初めて魔法(?)を使う場面です

ブンッ!ブンッ!


俺は一人、修練場で黙々と刀を振っていた。刀はもちろん、刃がついている金属製だ。正直、これを持っているだけで背筋が震える。戦いとは無縁だった俺が、魔物なんて想像もできない相手と戦う――そんなこと考えたこともなかった。体育以上のスポーツなんかもやったことがない。どう考えても死ぬ未来しかないので、少しでも鍛錬を積んでおくことにしたのだ。


「熱心ねえ」


ひょい、と異世界組が他に誰もいない修練所にアリスが顔を覗かせる。その手には串焼きが握られていた。


そう、普通に食える串焼きである。あの後判明したのだが、アリスはユニークスキル弱点解除を持っていることが判明したのだ。このユニークスキルは、俺のような何の変哲もない人間には何の効果もないが、アリスのような色々弱点が多い種族には高い効果を発揮する。血しか摂取出来ないとか、日光に弱いとか、その辺の弱点がすべて解消されてしまったのだ。完全に俺は吸われ損である。


「熱心にもなるわ。俺は戦闘とは無縁だったんだぞ。それがいきなり戦え、なんて言われたら焦りもする」


「コナンに関しては戦線に立たされる心配はないと思うけどねえ。戦死でもされたら未知の知識が全部ぱあだし。王様もコナンに関しては戦わせるつもりなさそうだし。わざわざ私を護衛につけたくらいなんだから」


俺の焦りに対してアリスはハムハムと串焼きを頬張りつつ、俺の不安を払拭すべく言葉を発する。


「そもそもアリスもユニークスキルが死んでるから外された側だろうが」


俺は口の中で小さく呟く。アリスにとっては強力なユニークスキルなのだろうが、俺にとってはどうでもいいものである。


ちなみにこのユニークスキル、というのはどうも異世界人が必ず一つだけ持つ、本来のスキルとは一線を画した力を持つスキルらしい。確かにアリスの持つ弱点解消は、本来種族が持つ特性を破壊する特殊な力だ。一線を画しているスキル、と言ってもいい。場合によりけりだが。


「私は別にいいのよ。ユニークスキルでの戦力向上は全く見込めないけど、今まで食べられなかったものが食べられるようになったのは大きいし、昼間に何のためらいもなく外に出られるようになったんだから」


アリスは嬉しそうに言葉を発する。その言葉に嘘偽りはなさそうだ。


「それにこれでも私は強いのよ?そりゃまあ、兄さまとの意見の違いによって束縛され、日の元に長時間放置されて死にかけたけど………」


嫌な死に方だな、それ。てかそんな理由で死にかけて召喚されたのか。


「真っ向から叩けば兄さまに負ける気はしないし、ドラゴンとかその辺の神獣相手じゃない限り私は負けないわよ」


「それフラグ。そもそもこの世界の魔物の強さわかってねえだろ」


ちゅーかドラゴンや神獣って。そこにも突っ込みどこあるわ。


「そんな大きく変わらないと思うけど」


ぽい、とアリスが食べ終えた串を投げ捨てる。その途中で串が燃え上がり、灰になった。


「それと変に体を鍛えるより、魔法使えるようにした方が早いわよ。何か魔法属性のスキル持ってない?私は火炎魔法と新たに血統魔法が使えるわよ」


「魔力操作と魔力変換はあるが………」


アリスが退屈そうに俺の素振りを見ながら助言をしてきた。俺はそれに応じるべく、手札を一枚公開した。このタイミングで公開すれば、アリスがある程度魔法の手ほどきをしてくれる可能性があるからだ。


「魔力操作と魔力変換って、どっちも属性魔法ないと意味ないスキルじゃない」


が、アリスがくれた言葉はダメ押しだった。


「どっちも属性魔法のスキルの変換効率を上げてくれるスキルよ、それ。両方持ってても特に意味ない」


「………」


理想の組み合わせか、と思っていたらただの死にスキルかよ。俺はため息一つついた。それからなんとなく、魔力を練ってみる。この辺はなぜか、感覚で出来た。これがスキルの恩恵なのかもしれない。が、この先どうすればいいのかわからない。


「その魔力を変換するの。ま、変換先のイメージをきっちり補完してくれる属性魔法スキルがないと難しいんだけど」


アリスが助言を飛ばしてくる。変換先のイメージ、ね。炎とかかな?ただどっから火種が湧いてくるのかがわからん。このまま熱へと変換してみるか。


右手の上で空間が歪む。高温がそこに生じているのだ。つーか、余波による熱波が手や顔に当たって熱い。


「熱いわ!」


魔法が使えた、という実感よりそんな実害に俺は適当にたまった熱をぶん投げる。投げれる時点でおかしいけど。飛んだ先は偶然か、試し斬り用のカカシ。熱はカカシに直撃、一気に発火してカカシを燃やし尽くした。どうやらかなりの熱量を持っていて、高温による自然発火したらしい。どんな熱量よ。


「………は?」


それを見たアリスが固まる。


「何いまの?透明な炎?聞いたことないんだけど?」


アリスが目を見開いて俺を見る。


「炎じゃなくてただの熱な。着火のやり方わかんねえから炎を出さずに熱だけだした」


「ちょっと待ちなさいよ!意味わかんない!なんで炎がなくて熱を出せるわけ!?」


俺の解説にアリスがあり得ない、と言葉に出す。いや、あり得るだろ。炎が出てる場合が一番わかりやすいんだろうけど、熱を出す方法は他にもいくつもある。電気ヒーターみたく電流を流すことで熱を出すこともできるし、エアコンみたく、空気を急激に圧縮することで熱を出すこともできる。赤外線でじわじわ暖めることも可能だ。これと同じように、俺は魔力を直接熱にしただけだ。自分も焼く、というしょうもない欠点があったけど。


「勉強不足だろ。火がなくても熱を出す方法ならいくらでもある。例えば摩擦。手を合わせて擦れば熱くなるだろ。それと同じように熱を出す方法ならいくつもあるんだよ」


「いやいやいや、今見せたのはそんな次元じゃないでしょ!燃えたよ?カカシ燃えたよ!?熱だけで燃えるわけないでしょ!?」


さすがに摩擦に関してはわかるのか、そこに対するツッコミはなかったが、それでもアリスは納得がいかないのか言葉を発する。


「燃えるぞ?全部の物質ってわけじゃないが、燃えるもんはある一定以上の温度になると自然発火するんだ。バカみたいな高温になったから自然発火した、ってとこだろ」


裏を返せば、それだけの高温が生じていた、ということになるが。数百度、もしかしたら数千度まで出ていた可能性がある。


「………そっか、あんたは異様な知識を大量に持っていたっけ。そのうちの1つってことね」


アリスが納得したようにつぶやく。俺から血を吸った時に得た、理解できない知識をフル動員させたのだろう。


「しっかし、思ったように魔法って使えないんだな。火を出そうにも熱しか出ねえし。光や音、風邪なら出せそうだけど一般的な水とか火とかは出せそうにない」


そもそも水はどっから出てんのだろうか。質量保存の法則を完全に無視してるよな。土とかを召喚するのもだけど。直接的なエネルギーなら魔力を直接変換させることで出来そうだけど。


それからいくつかのエネルギーへと魔力を変換させてみる。音、光、風など。小石などを重力に逆らって浮かべる、なんてこともやってみた。これらの、外部からエネルギーを与えれば出来そうなものはどれも出来た。


「………あんたは何がしたいのよ。最初以外、平凡な魔法みたいだけど」


「平凡なのか、これ」


俺が次々と発動させた魔法を見ていたアリスが呟く。その呟きに俺は、目の前で浮いている小石を見つめた。


「フロートっていう魔法ね。流石に自分とか重いものとかは持ち上げられないけど、そのくらいなら

難なく持ち上がるわよ」


アリスが俺と同様に小石を宙に浮かべる。飛行魔法とかはないらしい。ちょっと期待してたんだけどな。念のため、俺自身に同様にフロート?の魔法をかけてみる。そもそも俺の魔法が同一とは限らないし。


結果、重くて持ち上がらなかった。重量制限ありかよ。それ以外の魔法も、ただ単に光や音を出しただけだからなあ。後は風を起こしたり、水流を操ったりは出来そうだ。


「………アリス、その石を軽く、俺に投げてみてくれ」


そこで1つ、俺は別の魔法を思いついた。アリスは怪訝な顔をしつつも、放物線を描いて石を俺に投げてきた。俺はその石の運動エネルギーを反転させる。するとどうだろうか、俺に向かって飛んできていた小石は、空中でアリスへと飛ぶ方向を変えた。


「あだっ」


いきなり飛ぶ方向が反転した小石が、アリスの額を撃ち抜く。そんな強く投げたわけじゃないので、怪我とかはしてなかった。


「………」


アリスは無言で再度、石を投擲してきた。俺は再度、その運動エネルギーを反転させる。先ほどより強い勢いでアリスへと向かっていった。アリスはそれを転がるように躱し、今度は火の玉を飛ばしてきた。今度はそれを反転させようとし、失敗した。


「ぬおっ!?」


当たる直前でなんとか尻餅を付き、躱す。魔法には使えないらしい。魔法の原理がよくわかっていない、というのが主な理由だろう。


「ふっ!」


尻餅をついた俺に、アリスがひざ蹴りをかましてくる。反射的にそれの運動エネルギーも反転させる。するとメキッ、というヤバい感じの音がアリスの膝から響いた。


「え、あああっ!」


アリスがその場に落ち、のたうちまわる。


「え、おい、大丈夫か!?」


とても演技には見えないその姿に、俺は慌てて駆け寄る。


「な、何よ、その魔法。あり得ない。なんで受け止めるんじゃなくて、反射するのよ」


アリスが涙目で俺を睨む。


「それがあなたのユニークスキルね。理不尽の塊じゃない」


それから何故かそんな勘違いをした。勘違いされてても問題ないので、修正はしないが。


「膝、大丈夫か?なんかヤバい落としたけど………」


「………吸血鬼を舐めないで。このくらい、すぐ治るわ」


俺がアリスの心配をすると、アリスは涙目で俺を睨みながら問題ないと口にする。


「あ、あれ?治らない?」


何かしらの魔法を自分にかけていたアリスが、困惑したように呟く。


「よくわからんが、世界を渡った影響でも出てるんじゃないのか?スキル以外にも何かしらの影響が出ていてもおかしくないからな。俺だってなんかおかしい気がするし」


正直なところ、俺はそんなに身体能力が高くない。50メートル走、9秒台舐めんな。そんな人間が、長時間刀を振ってるのに全然疲れないってのはどう考えてもおかしい。俺の場合、プラス方向に変化しているが、必ずしもいい方向に進むとは限らない。アリスの場合、元から持っている高い能力の一部が消えた可能性がある。


「………確かに魔力が減ってる。これは確かに、予想外の影響ね」


アリスが親指の爪を噛む。俺はこっそり魔眼を使用し、アリスのステータスを見た。


『アリス・レーヴァント128歳

スキル: 吸血 火炎魔法 魔力変換 知識吸収 再生 血統魔法 覇眼 体術 刻印魔法

ユニークスキル: 弱点解除


吸血鬼の真祖の血を引く少女。民を大事にする法案をいくつも作成したが、それを問題視した血統主義の兄と敵対、闇討ちにあう。その後、異界へと転移した』


その辺の情報いいわ。てか128歳て。年齢詐欺もいいところだろ。


『レベル1

戦力 723


内訳

武術 28

魔力 532

体力35

精神 128』


そうそう、見たいのはこういうステータスーーじゃねえよ!?ゲームかよ!?わかりやすいけど!しかも魔力だけ数字がおかしい!それとレベルも低い!解析スキル、なんちゅう表示するんだよ!


ちなみに俺はどうなってんだ?


『新山 琥南 19歳

レベル1

戦力 225


内訳

武術 50

魔力 38

体力48

精神 89』


弱!俺、弱!?アリスが強すぎるだけの気もするが、俺、弱い!わかってたけど!


「あー、もしかして異世界にきたせいでレベル下がった、とか?」


魔眼と解析スキルの組み合わせを後悔するつもりはないので、俺は適当なことを言ってみる。


「あー、それはあり得る。私も鍛えなおさないとダメかあ。もうすぐレベル200だったのに」


通じたし。てかレベル200て。キャップ幾つよ。


「これでよし!」


アリスは無理やり魔力を壊した足に込め、修復させる。この時点で人間技じゃない。それから案山子に向かって人差し指を向けた。火の粉が指先から飛び出し、案山子に当たる。次の瞬間、案山子を火だるまにした。待て、なんでいきなり火がそんなに広がるんだよ。


「あー、やっぱ落ちてる。前なら案山子全部吹っ飛ばせたのに」


「俺は目の前の現象に自分の常識を疑いたい………」


普通、そんな風に燃えないぞ。


「あんたが言うな。あんたの方が常識外だから。レベルは知ってたみたいだけど」


俺が眉間を揉んでいると、アリスが半眼で俺を睨む。いや、リアルにレベルがあるなんて知りませんでした。スキルもだけど。


「でもこれは問題ね。他の人はレベルが下がってるなんて知らないはず。こんな状態で魔物と戦ったら、ユニークスキルとか関係なしに勝てないわよ」


アリスが考え込む。


「忠告はしに行こう。30人全員だ。俺とアリスはいいとしても、残り28人にもちゃんと知らせておかないと」


「賛成。その後に私たちも鍛え直すわよ。流石に準備不足でやられましたー、は勘弁したい。特に私はユニークスキルが戦闘向けじゃないし」


アリスも俺の意見に賛成してくる。その顔には少し、焦りが見られた。てか俺も鍛え直す、なのか?そもそも鍛えてないんですけど。


それから俺たちは二手に分かれ、同じ移転組のメンバーを探して忠告をすることになった。しかし、なんで王様は最初にこのことを言わなかったんだ?

フルカ〇ンター………?いえ、物理さんです。コナンは真っ当な攻撃魔法を一切使うことは出来ません

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