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セカンド・ワールド  作者: ここなっと
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王への謁見

今回は王様への謁見と、他の種族の登場です

翌日、今回召喚された30人は王への謁見として、謁見の間に集められていた。合計30人、全員が別世界からやってきたらしい。姿格好や服装が全員、まちまちだ。異世界の文化や血筋を取り入れる、という言葉は本当なのかもしれない。そう思わせるほど、俺たちはまちまちだ。


だってまず、隣にいる男が蜥蜴を思わせる尻尾を生やしてるんだもん。爬虫類のような翼もあるし、角も生えてる。何こいつ?ガイアのおっさんより無茶苦茶なんですけど。


ちなみに俺は一晩経って、ある程度頭の中を整理した。異世界召喚とかスキルとか、色々突っ込みたいところが多いが、それはもう受け入れるしかない。


それとスキルについて。これは一種の才能、と考えた方がよさそうだ。ぶっちゃけると、対応したスキルがなくても努力次第でどうにでもなるものである。魔眼とか次元収納とかは不明だが、魔力操作や魔力変換、刀術などは努力次第でスキルがなくても、ある人と同等以上の力を出すことが出来る。体格差とかはどうしようもないが。


「ちっ、いつまで待たせるんだよ」


隣の蜥蜴男が舌打ちと共に悪態をつく。さっきからずっとイラついている。歳は俺と同じくらいだろうか。昨日のおっさんの年齢から考えると、俺の感性なんてあてにならんだろうけど。100歳オーバーだもん。見た目30代くらいなのに。


あ、魔眼は使ってないよ。いちいち使うもんじゃないし、あんなものに頼ってたら、人間不信になりそうだ。色々黒い部分も見えそうで。おっさんは見た目の割にいい人だったけど。魔族なのに。


「待たせたな」


隣の蜥蜴が貧乏揺すりを始めたことろに、豪華な服を着た一人の男性が後ろのドアを開けて入ってくる。立派な髭を蓄えている。肌は焦げ茶色で、背は低い。なんかドワーフっぽい。


「私がこのイリーヌ王国国王、ガルガン・イリーヌ・ガルマディア14世だ。よく来た、異世界の住人の諸君。君たちを歓迎しよう」


俺たちの前にある豪華な椅子に腰かけ、王はそう口を開く。


「けっ、最後に来た癖に偉そうだな」


すると隣にいた蜥蜴男がそんなことを言い放つ。それからどこからともなく、どでかい剣を取り出して王に突きつけた。周囲の護衛の人が臨戦態勢に入る。俺は無言でそいつから離れる。


「てめえが国の一番っていうなら、力を示してみろよ。俺のいた世界じゃ力がすべてだ。てめえが俺より強えなら従ってやる。が、そうでないなら俺がトップだ」


「すげえ暴論」


そいつの言葉に、俺は思わずぼそっと呟いてしまう。弱肉強食、それがそいつのいた世界の掟だったのだろう。


「はっはっは。今回もなかなか粋がいいのがいるな。が、あいにく私は剣を持たん。戦う力はない」


剣を向けられた王は、楽しそうに笑う。こんな感じになったのは、はじめてじゃないのだろう。慣れているようだ。世界ごとに文明差があるのなら、弱肉強食の世界があってもおかしくない、ってことね。実際、そいつの言葉に頷く奴らがちらほらいる。


「野蛮な奴ら」


俺はそれを尻目に小さく呟く。


「あん?」


すると蜥蜴男が俺を睨む。


「てめえ、俺が野蛮だってか?」


聞こえていたらしい。俺はため息をついて、そいつと睨み合う。


「そうだろ。なんでわざわざ力を示さなきゃならん。強けりゃいい政治が出来んのか?上に立つってことは人をまとめ上げるってことだ。そこに力は必要か?必要なのは信用と信頼、人を引き寄せるカリスマだ。人々の生活をより豊かにしようとする苦悩が出来る頭脳があればなおいい。力なんて不要だ。そんなのが必要なのは戦争屋くらいだ」


俺は吐き捨てるように言葉を紡ぐ。


「ああん?力ない奴に人をまとめ上げる力があるわけねえだろ」


蜥蜴男が俺に剣を突きつける。よくあんなもんを片手で持てるな。てか俺みたいなのがまともに食らったら即死だろ、それ。震える体をごまかし、俺は懐からスマートフォンを取り出し、画面を相手に突きつける。


「誰がそう決めた?お前の価値観で物事を図るな」


精一杯の虚勢を張り、俺はそいつを睨む。


「秒速30万メートル、光の速さで俺は指先一つでその一撃をお前に咬ますことが出来る。剣よりずっと早く、お前を貫くぞ」


それからブラフを吐き捨てる。その言葉に周囲が身を硬くする。蜥蜴男も顔を硬くした。


「は………?光属性の魔法を指先一つで発動するってのか?あ、ありえねえ………!」


「あり得る話だ。俺のいた世界じゃ、こんなもん誰もが持ってるもんだけどな。そんな世界に武力行使で人をまとめ上げられるか?必要ねえだろ。誰もが同じもん持ってんだ。政治屋に必要なのは人望だけだ」


嘘は何一つつかず、俺はブラフを張り続ける。魔法なんてわけわからんもんがある世界だ。嘘なんて見抜かれる可能性が高い。なら、何一つ嘘を言わず、はったりで相手の戦意を削ぐ。光の速さ(画面の光)で相手の網膜を貫くことくらい、わけないからな。ダメージは全く入らんけど。剣より早いのもまた事実。攻撃力が全くないだけで。


「ふむ………」


王様が面白そうに俺を見る。が、ぶっちゃけると俺にそれを見返す余裕はない。一歩間違えば、俺は死ぬ。


「………ちっ」


蜥蜴男は剣を仕舞う。それに倣い、俺もスマートフォンを懐にしまった。


「お主たちの意見はわかる。もし儂に従う理由がない、というものは出て行ってもらって構わん。話を聞く価値がある、と思った者のみ残れ」


俺たちが互いの武器(?)を仕舞ったのを見計らい、王様はそんな妥協案を告げる。それと同時に扉が開いた。蜥蜴男は無言かつ大股で、出て行った。それに倣い、20人ほどが出て行ってしまった。


「野蛮な奴、多いな」


俺は肩を竦め、ため息をつく。俺は出ていかない。長いものに巻かれた方がよさそうだからだ。命がけのブラフとか、勘弁してもらいたい。


「はっはっは。今回は面白い奴が残ったな」


王様が残った俺を見て笑う。今ので注目を集めたらしい。残った他の異世界人も、俺を恐れるような目で見ている。


「はったりですよ、全部。こいつに相手を攻撃するような機能、ありませんし」


誤解されたままにしておくのもあれなんで、俺は再度、スマートフォンを取り出して見せる。それから画面を点灯させた。


「元いた世界で日用的に使っていた道具ですが、ここじゃただの光る板でしかないです。それももって後数日だけでしょうし」


電源を落とし、俺はスマートフォンを懐にしまう。


「ほう、ヒューマンがブラフでドラコノイドと渡り合ったのか!なおさら面白い奴だな!」


すると王様が豪快に笑う。


「ふーん、ブラフ、ねえ」


すると今度は異世界人の1人が俺の目を覗き込む。赤い瞳に金髪ロング。人形見たく白い肌と整った勝気な顔の少女。こんなのもいるのか。


「あんたも変わった臭いがするのね。ま、この世界の住人や他の異界の奴らも変な臭いばかりだったけど」


「犬か、あんたは」


臭いって。わかるわけねえだろ。


「残念。ヴァンパイアよ」


まさかのヴァンパイアだった。


「………ニンニクと銀の十字架、仕入れる必要があるな。それと白色LEDは有効かな?それとも赤外線?紫外線?太陽光は常時あるわけじゃないし」


「なっ!?」


俺の呟きに、少女は恐れたように身を引く。


「あ、あんた、なんで私の苦手なものを知ってるわけ!?一部聞きなれない単語あったけど!」


「………ここはテンプレなんだな」


昨日のおっさんのせいで、どこまでテンプレなのかわからなくなってたため、なんとなく安心感があった。身の危険が減ったわけじゃないが。


「ふむ、今回は大当たりが一人、混じっていたようだな。かなり進んだ文明を持った世界から来たと思われる」


王様は楽しげに俺を見る。スマートフォンといい、俺のヴァンパイアに対する知識といい、かなり発展した文明から来たと思われたらしい。


「申し訳ありませんが、一概にそうは言えないかと。俺の知っている知識なんて、所詮学生レベルですので。何より、使うことは出来てもその理論はわかってません。そもそも魔法なんて俺のいた世界にありませんし、人間以外の種族もいません」


「………何?魔法も人間以外の種族もない世界、だと?聞いたことがない」


王様が腰を上げる。


「なるほど、本格的に特殊な人材が来たようだ。イリーヌ王国代表として、お主を歓迎しよう」


「………そりゃどうも。こちらとしたら連れてこられた、って感じですけど」


王様が俺に対して歓迎の意を示すと、俺は首を横に振る。


「けど死ぬ寸前だったんでしょ?私も兄さまに殺されるところだったわ。助けられた、と考えることもできるはずよ」


ヴァンパイアの少女が口を挟んでくる。それもそれで突っ込みどころ満載な内容だ。


「残念ながら、俺はこっちに来る瞬間、何してたのかすっかりなのよ。ただ寝てただけの気もするし、道路歩いてただけの気もする。それとも授業中だったかな。ショックのあまり、一部の記憶が欠落した、と考えるべきだろうけど」


部分的な記憶喪失である。あまりにも部分的すぎて何の支障もきたしていないが。


「ふーん、あんたも苦労してるのね。あ、私はアリスよ。アリス・レーヴァント。高貴なるレーヴァント一族の血を引くもの――といっても、ここじゃなんの意味もなさそうだけど」


「俺は新山 琥南。ただの一学生だ」


ヴァンパイアの少女が名乗ってきたので、俺も名乗り返す。なんか貴族っぽい少女みたいだけど、俺には関係ないし。向こうもそれがわかっているのか、威張ってくることはなかった。


「コナン、って言うのね。早速だけど、血頂戴」


それからアリスはいい笑顔で、俺に血液を求めてきた。


「断る」


俺はその要求を一言で斬り捨てた。なんで献血活動をしなきゃならん。


「えー!なんでよ!減るもんじゃないでしょ!」


「減るわ、普通」


血だぞ血。吸われたら普通、減る。


「お腹すいたのよ!ヒューマンの血以外、飲めないのよ!」


アリスが涙目で訴えてきた。あまりにも残念すぎる。ヒューマンの血以外飲めないって。


「なら俺以外の誰かに頼めよ。他にもヒューマンぽいの、いっぱいいるだろ」


俺が適当に他の(俺の感覚で)歪さがない人を指さす。


「………全員、デミヒューマン、混血種よ、この場にいるの」


するとアリスが震えながら驚愕の事実を告げる。


「いないわけじゃないが、この国じゃ絶対数はかなり少ないな」


そこに王様が口を挟んでくる。というか、俺たちは今王様の御前だ。何呑気に話してるんだよ。


「だから飲ませて!ほんとに私の死活問題だから!」


アリスがなおも俺に頼み込んでくる。


「タダとは言わないから!私にやれることは何でもやる!死ぬよりマシよ!」


それからすごいことを口にした。何でもやる、と来ましたか。


「意味わかって言ってるか?」


思わず俺は額を抑え、アリスを見る。


「わかってるわよ!」


アリスは当然、とばかりに胸を張る。俺の考え方が異常なのか、それともアリスがまだ幼いだけなのか。


そう、どう見てもアリスは幼い。おそらく十代前半かそこらだろう。まだそこら辺の知識がないのだろう。俺はため息一つつき、左腕を突き出す。


「少しだけな。見返りとかは気にしなくていい」


「ありがとー!」


アリスは俺が突き出した腕に嬉しそうに噛みつく。それから血を吸い始めた。かなり痛い。


「ご馳走様!」


すぐにアリスは腕から口を離す。さほど血は抜かれなかったようだ。


「お主も人がいいな。ヴァンパイアにわざわざ血を恵むとは。相手によっては血液全部を吸い取ったり、眷属化してしまう奴もいるんだぞ」


王様が笑いながらその行為を見つめる。


「血を全部抜き取れば困るのはこいつの方です。眷属化に関しては初耳ですけど」


予想はしてたけど。ただまあ、魔力耐性のスキルがあるし、なんとかなった可能性がある。


「眷属化するメリットないもん。眷属からは血を吸えなくなるし」


アリスが胸を張ってそんなことを言う。そっちも死活問題に直結するらしい。


「そうだったな。なら相手の知識やスキルのコピーなどは行ったのか?」


王様は笑みを深めながらアリスにそんなことを聞く。ちゅーかそんな能力あんのかよ。チートじゃねえか。


「んー、貰おうとしたけど、スキルは魔力耐性の影響で取れなかった。知識に関してはチンプンカンプン!なにこれ!?」


アリスはあっさりやろうとして失敗したことを告げる。それから眼を丸く開いて頭の上に大量のはてなマークを浮かべた。当然だ。俺の持っている知識は高校2年生相当。それ以前の知識もあるが、まず読み解けるのは最新の知識からのはずだ。そこにある前提知識が足りてなければ、わかるはずもない。何よりアリスはまだそこまで脳が発達していないはずだ。


「ほう、それほどまでの知識があるのか」


王様が興味深そうに俺を見る。まったく、面倒だ。


「俺の事ばかり気にしててどうするんですか。他にもいるでしょう?」


俺は王様に諭し、それから睨みつける。


「それと俺たちをここに、この世界に呼んだ本当の理由、教えてもらってもいいですか?知識とか血筋とか、そんなのだけが理由じゃないでしょう?」


俺のその言葉を聞いた王様は一度目を見開き、それから豪快に笑う。


「はっはっは!お主は本当に大当たりのようだな!確かに“今回”は少し、事情が異なる!」


王様は俺を見るとにやりと笑う。


「今回は魔獣が大量発生していてな、それの対処を異世界人にお願いするつもりだったのだ。なんせ異世界人には、この世界の住人では決して現れることのないスキルの数と、ユニークスキルがあるのだからな!」

王様の前で喧嘩始めるとか、やばい………

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