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セカンド・ワールド  作者: ここなっと
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世界情勢

今回は初めてこの世界を構成する国が明かされます。

「何?世界情勢が知りたい?」


俺はシャネルと別れた後、ガイアにこの世界について色々問いただすことにした。


「ああ。正直俺たちはこの世界について何も知らない。この世界でこれから生きるにあたり、それはまずいだろ?だから教えて欲しいんだ。ドラコみたく、力のみを信望しているなら話が違うんだろうが、俺にとって、知識が一番の生命線だから」


俺は頷く。知識は物理的な力以上に、強力な武器となる。知らないと知ってるじゃ、天と地ほどの差が出てくるのだ。そもそも俺たちを召喚したこの国が、俺たちの味方であるとは限らない。ただ利用するため召喚された、という可能性も否定できないからだ。


「ふむ、まあコナンならいいだろう。ただそれだと、質問内容が漠然としすぎている。もう少し知りたいことを絞ってくれ」


ガイアは頷く。その言葉に引っ掛かりを覚えた俺は、まずはそれを問いただす。


「俺ならいい、ってどういう意味だ?」


まるで他の人では問題になる、という風に聞こえてしまう。


「こちらの人手が有限、ということだ。異世界の住人全員を相手にしている余裕はない。毎回、一か月もすれば10人以下に減っているからな。見込みのある奴以外、あまり手間をかけないようにしているんだ。非情かもしれないが」


「………ほんとに非情だな。お前たちに呼ばれて俺たちはここにいるんだ。なのに、適応できなかったから見殺しにするのか?」


ガイアの言葉に、俺は腰の刀に手が伸びかかる。何故か体がそのように反応した。無意識の領域で動けるように、体が覚えていたのだろう。迷惑な話である。もっとも、化物ステータスを誇るガイアに、炎を出せる刀一本で勝てるとは思えない。それに俺は、物理攻撃には強いが、魔法攻撃に関してはからっきしなのだ。弱点が浮き彫りになっている。


「そうだな。それは否定しない。ただ、本来は死んでいる奴を呼んでいるんだ。生き残るためのチャンスを与えている、という考え方もできる」


「………」


俺が構えたのにも関わらず、ガイアは気にせずに説明を行う。ステータス差とリフレクションのことを考えて、手を出す必要がない、ということなのだろう。リフレクションは強力な魔法だが、結局は防御魔法である。対応できる攻撃が飛んでこなければ、無力だ。


「………考え方の違い、か。それで俺には教えてもいい、と思ったのは、俺が高い可能性で残るからか?」


俺は構えを解き、ガイアに重ねて質問する。


「ああ。頭がよく、強力なスキルを保持している。なにより記憶がなくとも、かなりの実戦経験を積んでいるのだろう。今の動き、無駄がなかった」


「………それは俺にはわからないけどな」


覚えのない実戦経験など、あってないようなものだし。


「それに所持している知識もかなり特殊だ。この国としても、コナンを失うのは避けたい。お前の知識のごく一部だけでも、どれだけの富を生み出すのか、わかったものじゃないからな」


「………それなんだが、あまり教えられないかもしれん。俺の知識が足りていない、というのもあるが、あまりにも異質な知識は世界のパワーバランスを崩しかねない」


「ふむ」


俺の言葉にガイアは顎を摩る。


「だから世界情勢を聞きたいのか。正確にはこの世界の文化レベルを。どこまで知識を公開していいのか、見極めるために」


「ま、そうだな」


俺が何を言いたいのかをガイアが読み取ってくれる。話が早くて助かる。


「正直なところ、文化レベルに関しては実際に街に出て見てもらうしかない。口で説明しても伝わりにくいからな。案内人を付け、好きなように見学するのが一番だ」


あっさりと自由に街に出ていいと、許可が出る。見張り役がつくのは仕方ないとはいえ。狩りには馬車を使用していたので、街の様子はわからなかったのだ。


「案内人の手配には少し時間がかかる。それまでは我慢してくれ。急ぎではないしな」


「それは別に構わない」


時間がかかるのは仕方のないことだし。下手な人を当てるわけにはいかないからな。


「それと世界情勢だが、これに関してはこの世界に存在する4つの大陸と6つの国について説明させてもらう」


ガイアがどこからともなく地図を取り出す。そこには大まかな世界地図が書かれていた。正確な地形を測量する技術はないのだろう、楕円形で大陸が描かれていた。


「まず俺たちがいる大陸と国はここだ。イリーヌ王国。大陸名もイリーヌだ。主にデミヒューマンやドワーフが暮らす国になる。技術大国だ。異世界人を召喚する技術があるのは、イリーヌだけだ」


楕円のうち一つをガイアが指さす。


「一つの国が、一つの大陸を支配しているのか………」


なんというか、途方もない規模の国である。


「他の大陸も皆、そうだぞ。一大陸一国だけだ。もっとも、この世界に後どれだけの大陸があるかわからんから、本当にそれで正しいのか、と言われたらわからんけどな。もともとはいろんな小国があったんだが、戦争やら紛争やらが絶えずに、最終的に一つの国が支配するようになった」


ガイアがなぜ、このような世界になっているのかを説明してくれた。そして、この地図が不完全なことも。航海技術がそこまで発達していないのだろう。


「次に――」


「ちょっと待て、一大陸に一国しかないのはわかった。けど、それならなんで6国説明しようとしたんだ?数が合わないぞ」


ガイアが説明を続けるので、俺は思わず口を挟んでしまう。根本的な部分がおかしいからだ。


「その疑問も含めて説明する。まずはここだ」


ガイアは後で、と俺の疑問への回答を保留にした。それから別の楕円を指さす。


「これがフォルトナ帝国。神人と呼ばれる、同種族以外を人として扱わない奴らが巣食ってる国だ。イリーヌとは仲がよくない。というより、フォルトナ帝国が浮いていると言っていい。この国に住んでいる多種族は皆、神人に精神を縛られ、支配されている。いわば奴隷だ」


「貴族至上主義、みたいなものか。ろくな国じゃなさそうだな………」


話を聞いて俺は顔を顰める。


「実際、支配の魔法がなければ既に滅んでいるであろう体制だ。神人自身もかなり戦力が高いから、他国が手出しできない面もある。そのためどの国も関りがない。コナン達も関わるなよ」


ガイアが釘を刺してくる。俺は頷く。それからガイアは、別の楕円を指さす。


「で、ここがルーン商業国。主にヒューマンが支配している国だ。名前の通り、貿易で成り立っているような国だ。酒の生産も盛んだ。ここは先ほど言ったフォルトナともある程度の国交があるが、かなり吹っ掛けているらしい。他国にはそんなことしてないが。ヒューマンが特に多い地域だから、コナンも将来行くことがあるだろう」


「ふうん。国によって種族が異なっているのか」


だからこのイリーヌ王国にはヒューマンが少ないのか。いろんな種族がいるみたいだけど。ガイアは最後の楕円を指さす。


「フォン共和国。エルフが主に支配している地域だ。農業が盛んな国でもある。ここが生産する食物は栄養価が高く、味もいい。自然も豊かだ。ただ、その分魔物も多い」


「ふむふむ、それで残りは?」


簡単だが、地図に書かれている4国について説明を受けた俺は、残りの2国について聞く。するとガイアは、何を血迷ったのか、地図のど真ん中、どの大陸でもない場所を指さした。


「アーデル帝国。地下にある国だ。主に魔族が支配している。血統至上主義だが、フォルトナ帝国に比べたらはるかにマシだ。地下にあるから日の光はほぼない。鉱石や宝石を輸出することで国益を守っている。後地味に国を出る者が多い。地下の生活に嫌気がさした平民が逃げ出すんだ」


「地下かよ!?わかるか!」


想定外の場所に国があった。しかも魔族が支配している地域って。ガイアの出身地だったりするのか?魔族だし。


「最後にハーメル王国。空に浮かぶ国だ。主に有翼種、というより有翼種しかいない。たどり着けないからな。6国の中で、一番謎が多い。有翼種から話を聞く以外、知る術がないためだ」


最後にガイアは、地図の上空で拳を握る。とんでもないところに国を作ってる種族があるものだなあ。


「つーか、有翼種って、もしかして天使?」


なんとなく聞いてみたくなったので、俺はそんなことを聞いてみた。


「天使というのは神の使いだろう。有翼種はそんなものじゃなく、戦闘民族だ。主に魔物やダンジョンを狩りに飛び回っている。固体の戦力なら、多種族を寄せ付けないほどだ」


有翼種と天使は別物らしい。てかダンジョンもあるのかよ。


「ちなみにコナン、人が空を飛ぶ方法とかないのか?いやまあ、どんなに文明が発達してようが、そんな夢みたいな話あるとは思えないが」


「飛べるぞ。もっとも、航空力学に関しちゃ、俺はなんも知らんから一切合切教えることは出来ないけど」


ガイアが空を飛ぶ方法について聞いてきたので、俺は正直に答える。


「マジか!?それならわかる範囲で、情報提供してもらってもいいだろうか?途方もない技術だぞ、人が空を飛ぶのは!」


俺の言葉に、ガイアは強く揺すってくる。あまりにも強く揺さぶるものだから、目が回る。


「や、やめてくれ………」


俺は弱々しくガイアを止める。その言葉に応じて、ガイアは俺を揺さぶるのをやめた。


「さっきも言ったとおり、航空力学に関しちゃ俺は何も知らない。すっごく簡単に、扇風機や紙飛行機の説明をするくらいになるぞ?それでもいいか?」


「構わない。そもそもその二つすら、よくわからん」


俺の言葉にガイアが頷く。てか紙飛行機がわからんて、どういうことよ。ただのおもちゃだろうが。あ、紙が希少なのか。


「ならいいけどさ。ただその前に、その有翼種に会うことって出来る?その手のこと、教えてもいいのか聞いてみたい」


ついでに会ってみたい。天使ってわけじゃないみたいだが、翼の生えた人というのを。どんな翼だろうか。


「………掛け合ってみるが、あまり期待はするな。あまり技術には興味のない種族なのだ。この国にも住んでる有翼種はいない。そもそも会うのが難しい」


他国との連絡手段も限られている感じだな、これは。となると、提供する知識に関しても慎重にならざるを得ない。情報伝達技術一つにしろ、それだけで世界情勢を動かしかねないからだ。あまりイリーヌ王国だけに肩入れしすぎない方がいい。


「じゃ、その辺の話は有翼種に許可を貰ってからで。それとまず俺が教えられるのは、情報伝達の手段かな。これを6国ないし、5国に無償提供したい。これがあれば、理論上光の速度で情報伝達が出来る」


情報伝達の手段があるのとないのとでは天と地の差がある。今回のように、必要なことを伝えられない、ということが生じるかもしれないからだ。だからあえて各国に無償提供することでその手間を省きたい。5国なのは、フォルトナ帝国に提供するかどうかが微妙な線だからだ。


「………そんな手段が存在するのか?」


ガイアが疑念の目を俺に向けてくる。信じられないのだろう。俺はスマートフォンを取り出す。


「本来これは情報伝達のために造られた機器なんだ。離れたところにいる人と会話することは当然として、映像なども送ることが出来る。電波――伝達手段の利権料がとんでもなく高いのと、それは俺じゃ再現できないから魔法か何かで補う必要があるけど。けど、同じように俺が知っている知識を魔法として落とし込むことは可能だと思う。飛行技術にしろなんにしろ、まずはこの情報伝達手段の開発から着手してみたい」


いきなりハードルが高いかもしれない。けど、魔法だと念話、と呼ばれる会話手段が異世界物の物語で有名だ。それをベースにすれば可能だと考えている。中継基地とか必要になるかもしれないが。


「………なるほど、だからコナンはそいつの機能のほとんどが失われてる、なんて言ったのか。本来の使用目的は情報伝達であり、その伝達手段がコナンの記憶にある世界じゃないと使用できない、と」


俺の説明にガイアがスマートフォンを見る。


「そういうこと。さすがにそればかりは、どうしようもない」


俺はスマートフォンを懐にしまう。


「それとだな、コナン。お前は無償提供言ったが、それは出来ない相談だ」


それからガイアは、そんなことを言ってきた。


「確かに無償提供をしてくれるのはありがたい。だが、考えてみろ。お前はこの世界に生活する基盤があるのか?まずはそれを固める必要があるだろう。国からの保障も、いつまでも続けられるわけじゃないんだ。利権料も技術提供料も貰っておけ」


「あー………」


ガイアの言葉に、俺は視線を彷徨わせる。確かに国からの生活保障を受けているので、お金は必要ない。必要ないが、いつまでもそれが続くわけじゃないのだ。それを考えたら今のうちに生活費を稼いでおくか、安定して稼げる方法を確立しておく必要がある。それを考えたら、技術提供料を貰っておいた方がいいのだ。


「けど、どこに請求するんだ?各国に提供しようって言ってるんだぞ?」


俺は率直な疑問をガイアにぶつける。


「それはこちらに独自のルートがあるから心配するな。お前のような、行き過ぎた文明社会から来た奴はごく少数だが、いないわけじゃないからな。そういう時のために独自ルートが引かれている」


「あー、似たようなこと、やってるのね」


納得できた。どれだけの期間、異世界召喚をやってきたのかは知らないが、前例がいないわけじゃないのだ。それなら伝達ルートが存在してもおかしくない。マージンは取られるが、任せてしまっていいだろう。俺はまず、どのように情報の伝達を行っていくのかの仕組みを作る必要がありそうだ。

はい、すごく適当な組み方です。しかも後々追加可能なヌルい仕様………

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