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はじめてのちぅ

ブックマーク、評価ありがとうございます。


更新遅くてすみません。

 装備を整えた俺は大野さんと小西さんに別れを告げ、先生と走り始めた。


 ん? モブ班の田中たち? ああ、あいつらは先生しか見ていないから別にいいんだ。


 それで、俺と先生が向かっている村は、王都の東門から出て、街道をそのまま進み、つきあたりを森の広がる北の方角に向かってひたすら進めばモリマエの村と言う、田舎村にたどり着けるらしい。


 先生から聞いた感じでは近いような気がしないでもないが――


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 ――つきあたりはまだか……


 信じられない速度で街道を走り始めて一時間くらいだろうか、まだつきあたりにたどり着かない。


 ――苦しい……息があがる……


 それどころか、俺は徐々にではあるが疲れがたまるのを感じ早くも身体に違和感を感じはじめている。

 しかし隣を走る先生は、いたって平気そう。息が上がっている様子もなく、疲れている風にも見えない。


 ――あ……やばっ、遅れる……


 横に並んで走っていた先生が、俺が遅れたことで少し前に出た。


 ちらっ

 ちらっ


 先生が蹴り出すたびにスカートが舞い上がる。


 その際、布面積の少ない赤い物がチラチラと姿を現すが、今の俺に喜ぶ余裕はない。


 ――……あ、あかだ……先生熱血っぽいから、熱血の赤かな……


 それどころか、疲れて後ろ向きな精神状態になりつつある俺は――


 ――いいや違う、これは血の赤だ。今日は血の雨が降るんだ、きっと……


 勝手に変な連想をこぎつけては否定しようと首を振る。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


「どうした山野木? 首を振って、それにスピードが落ちてるぞ」


 俺のスピードが遅くなったことにやっと気がついた先生がスピードを少し緩めた。


「はぁ、はぁ……は、はい。はぁ、はぁ……少し疲れが……」


「そうなのか? 私はまだ余裕だが……」


 スピードを緩めたことで再び俺と並んだ先生が不思議そうな顔を向けてくる。


「はぁ、はぁ、地力の……はぁ、はぁ……差、じゃ……はぁ、はぁ……ないですか」


「地力?」


「はい。俺……はぁ、はぁ……高校入って、はぁ、はぁ……部活してないから……体力が落ちてるんです」


「……なるほど。私は毎朝、軽く十キロはジョギングしているしな……」


「はぁ、はぁ……きっと、そのせいです……」


「……うむ、これは盲点だったな。元々身体能力に違いがあったんだ。いくら加護を授かったからといってもみんながみんな同じ身体能力になることはない、か」


「そう、だと……はぁ、はぁ、思います」


「うむ」


 先生は納得したのか、そのまま俺のペースに合わせくれたが――


「ほら、またペースが落ちたぞ」


 そう言って俺の背中をトントンと軽く叩いてくる。


「あうっ……す、すみません……はぁ、はぁ」


 これ以上のペースダウンは許してくれないらしい。


「ほら、腕の振りが小さくなってるぞ」


「は、はい」


 それから三十分くらいだろうか、俺は息も絶え絶え。

 肩で息をしながら必死に走り続けると、ようやく街道のつきあたりにたどり着いた。


 その近くには野営用に少し開けた広場があり旅人? なのか、商人? なのかは分からないが、幌馬車が二台止まっていた。


 通常なら朝食をとっている時間なのだろう、幌馬車を壁がわりというか、視界を遮るようにして止めてあり、その奥からは煙が二つ上がっている。


 まあ、だからと言って俺たちには関係ないし、近づいていくようなことしないんだけど……


 ――疲れた……誰とも話したくない。


「よし、山野木。ここで10分休憩だ。予定では一気に走り抜けるつもりだったが、日頃走っていない山野木には無理だと分かったからな……」


「はぁ、はぁ……あ、ありがとう、ございます」


 そう言って、俺は息を整えつつ幌馬車から少し離れたところで適当な大きさの石を見つけた。


 ――ここでいいや……


 俺は、その大きな石に腰掛け、メイドのお姉さんにもらった水筒を取り出し勢いよく口の中に流し込んだ。


「ゴクッ、ゴクッ、グビッ……」


 途中から喉がカラカラだったんだ。


 汗をかき、喉も渇いていたためか、俺は勢いよく五口ほど飲み込んだ。


 ――ん?、


 六口目、七口目になると、なぜか口の中が痺れるような感覚に襲われ、すぐに激苦さが口の中いっぱいに広がってきた。


 ――ぶへっ!?


「がはっ、がはっ……」


 何とか口に含んでいた分は飲み込み、吹き出す事態は避けたが、あまりの苦さにむせて咳き込んでしまった。


 ――うう、なんだよこれ、激苦だよ。お姉さん……


 そこでようやくお姉さんが疲れに効く漢方薬だと言った言葉を思い出した。


「……しくしく……そうだった」


 ――あう……苦い、苦くてたまらない。口の中の苦さが取れない……


 苦くてたまらない俺は、口を開いたり閉じたりと、かなり間抜けな顔を晒していたのか――


「山野木、変な顔して何がそうだったのだ」


 俺の様子を黙って見ていたらしい先生も、同じような水筒に口をつけ普通に飲んでいたが、俺の顔がおかしかったのか、ふっと鼻で笑いながら俺のすぐ目の前にある小さな石に脚を揃えて腰掛けた。


「あ、先生……」


 俺の腰掛けた大きな石と、先生が腰掛けた小さな石とでは、俺が先生の方にちょっと視線を向けるだけで見下ろす形になってしまう。


 ――はうあ!?


 角度的に見ようとしなくても先生の短いスカートの隙間から赤い物が見える。


 ――これこそが……三角聖域……


 俺の視線が赤い物に釘付けになりそうなところで、はたと気づく。


 ――はっ!? もしや!


 女性は男性の視線に敏感で、あえて試すことがあると、何かのマンガで見たことがある。


 ――俺は試されてる、のか! そうか、危なかった。先生は、きっと俺と二人で行動する上で、本当に共に行動しても大丈夫な奴なのかどうか試しているに違いない。


 しかも、この試練に引っかかってしまうと、俺がむっつりスケベであることが公にされ、女子全員、いや男子全員からも白い目を向けられ、さらに孤立すること間違いないだろう。


 いやそんなもんじゃすまない。ファンクラブがあるくらいだし、殺気だった視線だけで俺は殺られる自信がある。


「ん? どうした山野木?」


 そう言った先生は、いつもの癖なのだろう、たぶん。

 長くて綺麗な脚を伸ばしたかと思うと、俺の目の前で普通に脚を組んで見せた。


 ――ぶはっ! 今一瞬先生のパ……赤い物がまともに……


「い、え……」


 ――堪えろ、堪えるんだ俺……ここで目を逸らすんだ。


 俺は吸い込まれそうになる視線を意識して、無理やり先生の()辺りに留めることに成功させた。


 ――ふ、ふぅ……


「……水筒の中、漢方薬だったのを忘れてたんです。これすごく苦いんですよ」


 俺はバレてないか冷や冷やしながら自分の水筒を振って見せた。


「ほう」


 すると先生の意識は俺の水筒にほうに向いた。


 ――はて? 水筒なら先生も持ってるよね?


 先生が、興味深そうに俺の手に持つ水筒をずっと眺めている。


「先生のそれは違うんですか?」


「ん? ああ、私のは普通の水だ、水。残念ながら、この世界の漢方薬ではないのだ」


 と言いつつ、すごく残念そうな顔をして自分の水筒を眺めては、俺の水筒に物欲しそうな視線を向けてくる。


 ――なんだろう。先生が俺の水筒をすごく飲みたそうにしているように見える……俺、口つけてるんだけど……まさかね。


「せ、先生も飲んでみます?」


 あまりにもじっと俺の水筒に眺めているものだから、つい、そう口にしてしまったが、俺は恥ずかしくなってすぐに否定しようとした。


「って、飲むわけないですよね。あはは……」

「おお、いいのか。悪いな山野木」


 だが、俺の言葉が伝わる前に、何か言った先生の手が凄い速さで伸びてきた。


「へ?」


 そして、気づいた時には、俺の手に水筒はなく、先生がその水筒をごくっごくっと喉を鳴らして飲んでいた。


 ――うわぁ、先生いい飲みっぷり……ってあれ……これって……か、か、か間接ちぅ、間接ちぅだ。


 見ている俺の方が恥ずかしくなり顔はおろか、耳まで熱くなり真っ赤に染まっていくのが分かる。


 けどそんな俺の顔を見て、勘違いしたらしい先生は――


「山野木すまない。そう怒るな。この世界の漢方薬がどんな物か飲んでみたかったのだ。

 思ってた以上にうまくて、つい飲み過ぎてしまったよ」


 と言って先生は空になった俺の水筒を申し訳なさそうに差し出してくる。


「か、カラ……」


「あ、いや。ほら、そうだよな山野木は、まだ喉が渇いていたのだな。よし、先生のを飲んでいいぞ。いや、飲んでくれ」


 勝手に勘違いしたのか、それとも誤魔化そうとしているのか、先生がとんでもないことを言い、今度は先生の水筒を俺のほうに差し出してくる。


「え?」


「ほら、遠慮するな。水分はちゃんと取っておかないと、後で身体に疲れがくるぞ。ほら、な、だからそう怒ってないで飲んでくれ、な」


「は、はい……」


 いつまでもバツが悪そうな顔をする先生に、悪い気がしてきた俺は、かなり戸惑いながらもちゃっかりと先生の水筒を受け取った。いや、受け取ってしまった。


 ――本当に……いいのかな。


 恥ずかしいので、上目遣いでちらりと先生を見るだけに留めるが――


 ――あうち。先生と目が合った……


 またまたカーッと顔が赤く染まっていくのが分かるが、やはり俺が怒っていると勘違いしている先生は。


「いいから飲め」


 と言いつつ、なんなら糖分でも取るか? 糖分はいいぞ。といちご味の飴玉までくれた。


「は、はい……」


 そして、恥ずかしと思いつつ飴玉もちゃっかり受け取った俺は、この日はじめてちぅをした。間接だけど……


 ――えへへ。やばい。嬉しくて天にも昇りそうな気分だ。


 そのあと、俺の記憶は曖昧だ。ふわふわとした気分の中、俺は一時間ほど走り続けたらしく、気づけばモリマエの村にたどり着いていた。


「なんだ。山野木はスロースターターだったのだな。先生は感心したぞ」


「え?」


 俺に満面の笑みを向けてくる先生が、俺の肩をトントンと軽く叩いてくる。


「そ、そうですかね」


 ――俺、覚えてないんですけど……


 見れば先生の額にもうっすら汗が浮かんでいるところを見ると、後半は先生の言う通りけっこうハイペースで走っていたらしい。


 不思議に思った俺は――


「能力が見たい」


 そう小さくつぶやき、ステータスを確認してみた。


 ――――能力――――

【名前】山野木 太郎

【性別】男

【年齢】17歳

【状態】健康

【恩恵】

 ☆没地神の加護

 ――適性スキル――

 〈軟化制限解除〉

 ――適性魔法――

 〈神紋魔法〉

 全玉系の紋 身体強化の紋

 ――アビリティ――

 〈体術D〉〈聞き耳C〉

 〈空気〉 〈体力B〉up

 〈脚力B〉up〈持久力B〉up

 〈筋力強化B〉up


 すると、アビリティが四つも上がっているじゃありませんか、俺は心の中でガッツポーズをとったまでは良かったが、その後、全身筋肉痛に襲われ、先生に運ばれるという情けない姿を晒していた。


 ――とほほ……


最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^


展開遅いですが、もうすぐといいますか、ようやく小さな戦闘に入れそうです。

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