再び
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更新遅くなりました。
すみませんm(__)m
メイドのお姉さんが、入念にマッサージをしてくれているが、俺は今、さらなる試練を与えられている。
「いて、いてて……ああっ」
メイドのお姉さんの柔らかな両手が、俺の脚を優しくマッサージしてくれたはいいが、それが、どんどん上に上がってきているのだ。
――や、やばい……太ももは……
「ぁぁ……そ、そこからは……」
――その先には……俺の分身が元気よく背伸びしているのです。
俺は少しばかりの抵抗をと思い身体を少し捻ったのだが、それがまたよくなかった。
「勇者様……動かないでください」
メイドのお姉さんは俺が動いたことを不愉快に感じたらしく無表情なのに、心なしかその語気が強い。
いや、無表情だからこそ凄味があるというか、汚いものを見せるな、とでも言われているように感じるのだ。
「いや……でも……」
「……仕方ありませんね……勇者様、失礼いたします」
そして、メイドのお姉さんは俺の言葉に耳を傾けるどころか、メイド服を少しめくり上げると――
「え?」
――ええっ!
わざわざ俺のベッドの上にまで上がってきたのだ。めくれ上げたメイド服の裾からお姉さんの綺麗な太ももが姿を現わす。
「ちょ、ちょっと……お姉さん」
慌てて声をかけるが、それさえも聞き入れてくれず――
「動かないでください」
そして、何をするのかと思えば俺の片脚に両膝で添え固定するかたちで挟みこみ、そのままスッと腰を下ろした。
「!?」
お姉さんに視線を向ければ、その先には純白が見え、なおかつ、柔らかさが直に伝わってくる。
――のおぉぉ!
俺の背伸びしていた分身がとんでもないことになった。
――――
――
「勇者様……」
――羊が千二百三十二匹……羊が千二百……三十三匹……
無心になりたかったのに無理だった俺は、羊の数を数えてそちらに意識を向ける、という苦肉の策でどうにか――
「ううっ、昨日につづき……」
乗り越えることができなかった。
「二度目だ……」
あれもこれも全て見られた気がする俺はもうお姉さんのお婿さんになるしかないと思う。
「いえ、四回目です……それで、お身体はどうですか?」
――え?
全身マッサージを終えたメイドのお姉さんが意味深な言葉を言いながら俺の顔を覗き込んできた。
「は、はい。大丈夫です、もう痛くありません。ありがとうございます」
まともに顔を向けることのできない俺は、顔も見ずにお礼を伝えると慌てて起き上がり、メイドのお姉さんが準備してくれていた新しい騎士服に袖を通した。
その際、ちらりと見えた、お姉さんの額には薄っすらと汗が浮かび上がり、髪も少し乱れていた。
――あっ……
ありがたく思いながらも、恥ずかしさのほうが勝り、それ以上は何も言葉を発することができないまま俺はテーブルに腰掛け、準備してあった朝食をいただいた。
着替えから朝食から、ほんとメイドのお姉さんには頭が上がらない。
「お、お姉さん。いただきます」
「少し冷めてしまいましたが……」
「だ、大丈夫です。俺にはこれで十分ですから」
冷めたモノを取り替えようとする、メイドのお姉さんの手を必死に遮り俺は食事に口をつけた。
――ただでさえイヤなもの見せているのに、これ以上は、申し訳なさすぎて……うっうう。
朝食を食べながら、色々と尋ねたいメイドのお姉さんを何度か横目に見るが――
――話しかけづらい……
これはメイドのお姉さんが綺麗な顔をしているのもいけない。なおかつ無表情ってのも。
ほら、クラスメイトでも美人系の人ってなんだか声をかけづらかったりするよね? そんな感じ。って、あれ、俺だけ?
ま、まあ、俺の場合、ここ最近は何だかんだで小西さんや大野さん、それに山田とか話してはきたものの、基本的に高校一年と二年、まともに会話なんてしていないから、他人との距離感がわからなくなっている。
だから、誰にでも気軽に声をかけれなかったりするんだ。
――はぁ、なんて情けないんだ……
俺が自分の不甲斐なさを感じつつも、黙々と食事を摂っていると――
「山野木。起きているか!」
バーンッとノックもなし部屋のトビラが開き、先生とその先生の世話係であるイケメン執事が入ってきた。
「せ、先生……」
「ほう。起きていたか、感心感心」
そう言って俺の座っているテーブル席の真向かいに腰掛けた。
「私もここでいただこう」
「はい?」
「なんだ、不服か? 不服なら……」
「いえ。そんなことないです」
すでに、イケメン執事が部屋の外からキッチンワゴンを押してきて、すぐに先生の目の前に食事を並べ始めている。
すでに心が憔悴している俺に今さら帰ってくださいなんて言う気力はない。
「まあ、なんだ。山野木が起きていてよかったぞ」
「そ、そうですか」
「ああ、私はまだ、山野木は寝ていると思っていたんだがな……ははは」
寝ていたらビンタして起こしてやろうと思っていたぞ、と恐ろしいことを言って笑い続ける先生に呆れながらも、メイドのお姉さんのほうがまだいいと、先ほどあれだけ辱めに合わされたのに、優しくされたからそう思う俺って……
――やばいおかしくなってる。もしや、これは恋か? ……いやいや、まさかね……
そんな検討違いのことを考えてしまった己を、バカだなあ、と思いつつ首を振り視線を先生に戻した。
「……あの、なんか先生。今日はやけにテンション高くありません?」
「おお、分かるか山野木。先生は己の限界がどれほどなのか気になって二時間ほど前からストレッチをしていたのだ。身体もほぐれてバッチリだぞ」
「ははは……」
――あまり張り切ってもらうと、俺はついていけるか不安になるなんだけど……というか早くしすぎてストレッチ意味ないんじゃ……
「さて、時間が惜しいから食べながら今日の予定を伝えるぞ」
「は、はあ」
先生の話はこうだった。
ここから馬車で二時間ほど離れた村の付近にオークが住み着いたらしく、それを討伐に向かわせる王国騎士たちに協力して欲しいと、王に頼まれたのだとか。
ただ、このオーク。オークだけに数が多く、今も勢力を広げ近隣で、幅を利かせていたゴブリンの勢力をも取り込んでいるとか、いないとか。
確証はないが、下手をしたら二つの勢力と交戦することになる。
このままでは、近隣の村を襲うのも時間の問題で、大変なことになるだろうということで、すでに王国騎士団の五十騎が昨日のうちに向かっているらしい。
「でも、先生大丈夫ですか? オークやゴブリンって言ったら、女性は……色々と危険なのでは?」
――ほら、エロゲームだと、ねぇ……そんなイメージしかないんだよね。
俺の質問に、俺以外の先生は首を傾げ、イケメン執事は眉間に皺を寄せ、メイドのお姉さんは小さく首を振る。
――あれ? 俺何かおかしなこと言った?
「女性が危険ってのは先生よく分からないが……魔物だからな。人族はみな襲われて危険なようだぞ」
「男もですか?」
「その質問の意味がよく分からんのだが……聞いた話では、なんでも人族なら性別に関わらず見境なく襲ってはミンチにして喰らう。
ほかの魔物よりも変に知識があるため備蓄している穀物類までも根こそぎ奪い取っていくらしいぞ」
――ええ、この、世界のオークやゴブリンって……凶暴?
「で、でも先生。昨日は魔導人形と同じくらいのヤツって……」
「ああ。それは間違いない。ただ数が多いってだけだ……」
「……」
――嫌だ……嫌な予感しかしない。
「よし。食事も終わったことだし、そろそろ行くぞ」
「えっ、ちょっと先生。まだ準備が……」
――心の……
「何を言ってる山野木。もう食べ終わってるじゃないか……ほら、行くぞ。
兵舎に寄って武器も選ばないと行けないんだ」
「え、あ、ちょっと先生。引っ張らないでください……あ、お姉さん行って来ます」
無理やり、先生に手を引かれたので、俺は引きずられるかたちになったが、ちょうどメイドのお姉さんと目が合ったので、どさくさに紛れて行って来ますの挨拶をした。
――挨拶、これ基本。少しずつ会話できるようになってやる。
「はい。お気をつけて」
今日の予定を聞いていたメイドのお姉さんとイケメン執事とは、この場で別れ、俺は先生と兵舎に向かい武器を選ぶことにした。
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