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先生は文化系じゃないの?

更新遅くてすみませんm(__)m

 今日の訓練は中止になり、どの班がどの国に向かうのか先生がくじ引きで決めていた。

 今は現地に向かう各班と、各国の使者たちと打ち合わせに入っている。ダの兵士が頻繁に行き交っているところを見ると今日の午後にでもみんなは出発しそうな感じだ。


 ちなみに、俺の小耳に挟んだ感じでは、向かう班の内訳はこんな感じだ。


 委員長班が、男三女三で風の国ユ。

 運動部班が、男三女三で火の国ウ。

 ヤンキー班が、男三女三で水の国シ。

 イケメン班が、男二女四で光の国ヤ。

 モブ班が、男四女二で土の国ダ。


 あ、班の名前は俺が勝手にそう心の中で呼んでいるだけだから、気にせずさらっと流してほしい。


 ――ん?


 ひとり蚊帳の外の俺が、ボーっと突っ立っていると、ふとこちらを見ている女子生徒と目が合った気がした。


 ――えっと……小西さん、大野さん?


 なんと彼女たちが俺に向かって小さく手を振ってくる。思わず口元がにやけそうになるが――


 ――いかんいかん。


 これで彼女たちから好意を向けられていると勘違いしたらダメだ。

 誰も見てないと思うが、周りを気にしつつ俺も小さく手を振り返しつつ思う。


 これはだぶん、今俺たちがいる国がダの国だから、モブ班に入った彼女たちは、また一緒に行動することなるよ、と親切に教えてくれた。それだけのことなのだ。


 ――ふー。危なかった。


 まあ、別に誰も興味がないと思うが一応、モブ班のメンバーは田中、鈴木、川田、小谷の男四人と、訓練中一緒だった小西さんと大野さんの計六人だ。


 一応、隣で腕を組んで我が子を見守るかのような目で、皆の行動をじっと眺めている先生に尋ねてみる。


「あの、先生」


「なんだ山野木」


「先生と俺は、まずはモブ……じゃなくて、ダの国に残る六人と行動を共にすることになるんですね」


「!? ん、んん……」


 俺がなんとなく尋ねた質問に、先生を狙っていたらしいモブ班の男たちが、ピクリと反応したのは別にいいんだけど、その尋ねた先の先生が、なぜか俺から顔を背けてしまった。これはもう嫌な予感しかしない。


「……あー、そ、そうしたいのは山々なんだが……山野木すまない。

 じつはな、ダの国王に別件を頼まれていて、私たちは先にそちらを始末してくることになった」


「……始末?」


 ――なにその物騒な単語は……聞きたくないんですが。


「そうだ。なあに、訓練所の魔導人形並みに弱い相手らしいからな。心配することはない」


 ――へぇ、あれって魔導人形っていうんだ。あれくらいの強さなら俺でもヤレるし、大丈夫だな。よかった。


「先生がそういうなら……俺は別にいいんですけど」


「そうか、そうか。やはり私の目に狂いはなかったな。きっと山野木ならそう言ってくれると思ってた。お前が期待通りに育っていて私はうれしいぞ」


「!?」


 先生が、それはもう、うれしいそうに俺の肩を優しくポンポンと叩いてくる。

 おかしい、美人の先生に触れられてうれしいはずなのに、うれしくない。


「……先生ははじめから俺が残ると……」


「当たり前だ。担任の私が生徒たちのことを知らずしてどうする」


 ――でも、それって、はじめから俺がひとり残ると分かってたってことだよね。

 事実だからいいんだけど……なんだろう。このやりきれない気持ち……俺、泣いてもいいだろうか。


「山野木。明日は、夜明けとともに現地まで走っていくからな。今日は早めに寝るんだぞ」


「はい?」


 先生が唐突に変なことを言った気がした。だぶん俺の聞き違いだ。もう一度尋ねてみよう。


「先生すみません。よく聞きとれなかったもので、もう一度言ってもらえませんか?」


「ん、そうなのか? まあ、大した話じゃないが、夜明けとともに現地まで走っていくから、今日は早めに寝ろと言ったのだ」


「え……」


「山野木、これはちょうどいい機会なのだ。我々は加護によって得た、身体能力の限界を一度知っておくべきなのだ。訓練のためのダンジョンでは十分な能力確認ができなかったからな。ほら、ある有名な兵法書にもあるだろう……なんだ知らないのか?」


 先生が笑みを浮かべて、何からしらの兵法書について語っているが、終始自分の両手をにぎにぎしている。見るからにやばい。どこぞの戦闘民族のような雰囲気がひしひしと伝わってくる。


 ――……あれ? 先生って文化系じゃあ……部活顧問だって美術部で、絵を描く姿が清楚な感じがして、すごくいいってみんなが……


「そ、そうですか……あの……先生って文化系だった気がするんですが……」


「ん? 私の体力が不安か?」


「あ、いえ……」


 ――俺の方が不安なのです。


「心配無用だぞ。私はこう見えて体育会系なんだぞ……あ、部活顧問は文化系だが、あれは教え子に頼まれてな、私も断れんのだ」


「そ、そうなんですか」


「それに私は回復魔法が使える」


「ははは……それならよほどのことがない限り、大丈夫ですね」


 ――や、やばい。これはバレる。手に汗かいてきた。何かいい手は……


「そんな顔をさせて……すまないな。無理を言ってることは分かっているが、今のうちに確認しておきたいのだ。

 集団行動の中ではこんな機会はもうないだろうから。何か、問題が起こる前にやれることはやっておきたいのだ」


 ――俺は自分のことでいっぱいいっぱいなのに……せめて俺も、皆のように身体能力が……身体能力……


「そう、ですね……では先生……」


「ん?」


「先生って身体強化系の魔法なんて使えませんよね? ははは……」


 俺はダメ元でそう尋ねていた。そんな魔法がないなら、体力アビリティを磨く。それでダメなら、今の俺に、打つ手はないだろう。

 その時は正直に話すしかない。だぶんみんなから置いていかれて、もっと惨めに感じるだろうけど……迷惑はかけられない。


「ん? 回復魔法の中にあるから使えるな。でもな、今でも己の限界を把握していないのに、これ以上身体能力を上げても仕方ないと思うが……先生は危険だと思うが」


「そ、そうですよね。ははは……いや、俺、よくその手の小説とか読んでて憧れって奴ですか……

 別に体験したいわけじゃなくて、誰かに使ってどれくらい効果あるのか興味があったというか、知りたかっただけです……ははは……」


「ほう。なるほど。それは私も興味あるな」


 そういうと先生は付き添いのイケメン執事に向かって手招きした。


「コウサカ様、どうかされましたか?」


 先生の目の前まできた、先生付きのイケメン執事がごく自然な動作で片膝をついた。


 ――む。


 さすがイケメン、何をやっても様になるのが悔しい。


「私の魔法に身体能力をあげる魔法があるのだが、どれくらい上がるのか確認させてくれないか。今後の参考にしたいんだ」


「そのような魔法が、それならば是非、私でお試しくださいませ……」


「すまないな。助かるよ」


 そう言って先生は一度、そのイケメン執事を走らせたり跳躍させたりしたあと、身体強化魔法を使った。


 ピロピロン♪<身体強化陣を覚えたよ>


 ――よしっ。やった。


 結果は三倍ほど、そのイケメン執事の身体能力が上がっていた。


「うむ。これは……使えるかもしれないな」


 これには、話し合いの終わっていた生徒たちや各国の使者まで、興味深そうに眺めていて、いつしか先生は今後の日程の確認を取り始めていた。


 俺はまたひとりになってしまったが、今日の夜は、早く寝るどころか、覚えたばかりの身体強化の魔法陣を試さなければと、深いため息をついた。

最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^

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