おバカな生き物
ブックマークありがとうございます。
更新遅くなりました。
すみませんm(_ _)m
「ふへへ……」
にやにやが止まらない。
――やったぜ俺。
――――
――
俺はあれからヘロヘロになるまで走り続けた、けど……結局、体力や脚力、持久力のアビリティのランクを上げることはできなかった。というのも、自覚なかったが普段から運動をしていない俺の足は、ダンジョン内を全力疾走していた時点ですでに限界を超えていたらしい。
頑張ってる俺って格好よくない? と張り切って走り始めたまでは良かったものの、たった2周走っただけで、俺の足は鉛のように重くなってしまった。
俺の両足がぷるぷる動きたくねぇと訴えてくる。
――も、もうダメだ……
ついに俺はヘロヘロふらふら、一歩も動けなくなりその場に座り込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
そこで俺は、腹筋、背筋、腕立て伏せなどの筋肉トレーニングへと変更した。
――……
ごめんなさい、見栄を張りました。
本当は部屋に帰ろうと思ったけど一歩も動けなかった俺は、仕方なく横になって休んでいた。
だけど、薄暗く誰もいない中庭に何もせずに横になっているとダンジョン内のことが頭に過ぎり急に不安になってきた。
それで余計なことを考えないようにと、始めたのが筋トレだったってわけなんだ。
――――
――
「ふへへ……」
筋トレ始めた俺を褒めてあげたい。
――増えたよ。増えたんだ。うへへ。
成果は上々だった。動けなくて不安になり、なんとなく始めた筋トレだったけど、ちょっとやっただけで、なんと〈筋力強化D〉のアビリティが増えた。
嬉しくて何度も能力確認をした。見間違いはない。
――これで、小西さんたちが使っていたショートソードくらいは扱えるようになったかな……へへへ……は!? これならもっとやればすぐにランクアップするんじゃないのか?
そうしたら山田が持っていたロングソードなんかも軽々と待てちゃったりなんかして……
俺の妄想は膨らむばかりだった。
――うへへへ。
嬉しすぎてにやにやがとまらない。俺の顔は緩みっぱなしだった。
「はっ!? これはひょっとして!!」
慌てて俺は上着をめくり腹筋を確認する。
――……
次に、胸板や腕にも触れてみた。
――……おかしい……
憧れの細マッチョへの道は、思った以上に険しいようだ。
その後は、調子に乗ってやり過ぎた筋トレで、違和感だらけの身体を引きずるように部屋へと戻った。
――――
――
翌朝
「ふぁぁ……」
気分良く目が覚めた俺はすぐに〈筋力強化D〉のアビリティがあることを確かめた。
――よかった……夢じゃなかった。
ホッとした俺は今日一日の予定を思い出した。
――そうだったな……
今日は俺たちのパーティーが一番にダンジョンに入ることになっている。
まだ少し薄暗いが、日が昇って部屋全体が明るくなってきていた。
――遅れたら山田に何を言われるか分からないし……起きるか。
俺はそう思い上体を起こそうとした。
「いっ、いててててててぇぇ!! いてぇよ」
全身に尋常じゃない痛みが走り起き上がることができなかった。
間違いなく筋肉痛だ。しかも未だかつて経験したことないほどの痛みがありまったく動けない。
「ぁぅ……ぐぐぁ……」
――こ、これは……アビリティの副作用か? 急にアビリティを身に付け全体の筋肉が強化されたから?
ただ、調子に乗って筋トレをやり過ぎだけの話だったのだが、この時の俺は冷静でなくそんな簡単なことにも頭が回っていなかった。
俺がベッドから起き上がれず、筋肉痛の痛みに悶えていると、トビラを軽く叩く音が聞こえた。
――だ、誰?
「失礼します」
俺が返事する間もなく、いつものメイドのお姉さんが綺麗なお辞儀をして入ってきた。昨日より随分と早い出勤? だ。
――ちょ、ちょっと今は色々とまずい……
俺は慌てて起きようとするも痛くて身体を動かすことができない。
「勇者さま朝です……」
メイドのお姉さんはそのまま俺の側までスタスタ歩み寄り、俺のベッドの側までくると一礼した。
――ん?
メイドのお姉さんとバッチリ視線があったが無表情だ。俺に起きろと言っているのだろう。
「あ、その……ちょっと待って……」
「申し訳ございません。今日は遅れることができませんので……」
俺は抵抗する間もなく、ガバッと布団をめくり取られてしまった。身体は痛くてボロボロのはずなのに、朝の生理現象はしっかりと起こっていた。
「ぁぁ……」
――うおぉぉぉ……また見られたぁ!!
だが、今の俺に、それを隠す術がない。メイドのお姉さんが無表情に俺を見下ろしている。視線が怖すぎてメイドのお姉さんなに顔を向けることができない。
「あ、あはは……す、すぐに起きますから……あっちを向いてて……ください」
俺の小さな抵抗は虚しくも、メイドのお姉さんに届いていないようで、俺の身体を眺めだんまりと立っている。
――見ないで!!
「身体が痛いのですね」
急にそんなことを言ったメイドのお姉さんは、俺の身体を勝手に触れるとゆっくりマッサージを始めた。
――ひ、ひぇぇ……や、やめて……色々とマズイ……
「……ぁぁ……だ、大丈夫……です、からぁぁ……」
「勇者さま……むり……さい」
メイドのお姉さんが何やら呟いていたが、それを聞いている余裕は俺にはなかった。
だって柔らかなお姉さんの身体が直に感じられ、通常なら嬉しい展開だと喜ぶべきところなのだが、隠したいところを隠せない俺には拷問でしかなかったのだ。
――――
――
羞恥心と引き換えに俺の身体はどうにか動けるくらいになった。
これもメイドのお姉さんのお陰だ。無表情なのにうっすらと汗を流しながらも一所懸命にマッサージしてくれた。申し訳なさでいっぱである。
まだ痛みはあるが、寝起き時より大分マシになった。これはもう、メイドのお姉さんには足を向けて寝られない。
そう思い俺は――
「ありがとうございます」
気持ちを込めてお礼を伝えたのだが。
「務めです。では私はお食事をお持ちしますのでしばらくお待ちください」
俺から逃げるように部屋から出て行った。
――朝から嫌なもん見せてしまったもんな……だって隠せないんだもん。しょうがないよ。
心身ともにショックを受けつつも――
――……お姉さん柔らかかったな……えへへ。 って、何を考えてるんだよ俺は……
男の性には逆らえなかった。男とは、おバカな生き物である。
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