表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/705

第83話


 ぶつかり合う軍勢の塊、渦巻く怒号の波に、俺は肩で息をしながら疲労困憊で生まれて初めて戦争という地獄を見た。

 昨晩の其れは此方側が一方的に打ちのめし、味方に負傷者が1人も出なかったので戦争と呼ぶには違和感が残った。

 然し今は目の前で、敵も味方も確認出来ぬ間に倒れゆく人々の山に、未だ見ぬ地獄としか形容する事が出来なかった。


(初めて魔法で疲労を感じているから気が弱くなっているのかなぁ・・・)


 其の人山の中でも目を惹くのはミニョンとルチルであった。

 2人はリアタフテ軍勢と共に突撃し、ディシプル軍と交戦していた。

 まずミニョンはいつも通り其の小さな身体の身軽さを生かし、自身で敵を仕留める事は狙わず、その身のこなしやロックシールドで相手に隙を作り、其れを俺と同じ様に後方に控えたフレーシュが矢を放ち突いていた。


(昨日はどうなる事かと思ったが、落ち着いて良かったな)


 俺はミニョンの実際の戦場での様子に一安心した。

 そしてもう1人・・・。

 ミニョンと同じ様にぶつかり合う軍勢の中で、頭2つ分は小さなルチル。

 彼女もいつも通り、ミニョンとは対照的に防具で身を包む敵兵の僅かな隙間である首への打撃や、ヒザ関節に撃ち込み倒した相手の顔面への追い討ちなどで戦果を上げていった。

 そんなルチルが自らの腰に巻いたアイテムポーチに手を入れ拳大の石を取り出した。


「ん?なんであんな物・・・?」

「たぁぁぁ‼︎」


 ルチルは其れを自らの前方にいた騎兵の馬に投げつけ、其方へ駆け出した。

 高い悲鳴の様な鳴き声を上げ、其の場で前脚を天に向かい蹴り上げる馬に必死にしがみ付く敵兵。

 ルチルは抜群の身のこなしで、敵兵の足を取り自らの身体をきりもみ式に回転させた。


「おぉぉ‼︎あれはっ⁈」


 敵兵は絶叫し、態勢を崩して馬から振り落とされ、足を押さえながら転がり、そのまま立ち上がる事は出来なかった。


「探検隊に入りたいです‼︎」

「え?」

「ん?」

「・・・大丈夫ですか、真田様?」

「あ、あぁ・・・」


 俺を心配する様な顔をしながら、此方から距離を取るフレーシュ。


(ちょっと失礼じゃないか・・・?)


 俺は少しだけ目尻を濡らしながらそんな風に思った。

 ルチルはそんな俺に視線を向け、其の控え目にして慎ましやかな胸を張り得意げにした。


「いや、俺が知りうる中でも無い部類に入るぞ?」

「えっ?」

「ん?」


 ルチルは最初、俺の発言が何を意味するのか分からなかったのか不思議そうな顔をしたが、視線を自身の其れに落とすと其の頰を染め立腹し、怒りの声を上げた。


「そうじゃ無いよっ‼︎今朝の話だよ‼︎」

「え?・・・あぁ、あれかぁ」

「もぅっ、後でローズに言いつけてやるんだからね‼︎」

「いやぁ、其れだけは勘弁を・・・」


 そうか今朝俺がルチルの衣服が汚れている事を聞いた時の・・・。

 そういえばあの時から何処か自信ありげだったからなと思い出した。

 後、ローズへの報告だけは本当に勘弁して下さい、お願いします。


「ふぅ〜、でも少しは回復してきたな」


 ぶつかり合う両軍勢を尻目に、休憩をとっていた俺は、自らの身体が先程より軽くなったのを感じた。


(一度消費した魔力ってこんなに早く回復するものなのか?)


 先程迄の疲労感が魔力消費によるものかも分からなかったが、関連付けれるものが其れしかないので一応そう仮定した。


(きっと此方の世界で生まれ育ち、魔法を使用する者には当たり前の知識なんだろうけど・・・)


 俺の知識は学院の授業とデリジャンによる補習が主で、授業で其れを習う事は無く、補習は人間教育の様なものに終始していた。


「真田様‼︎」

「ん?フレーシュ?」

「前方、集中して下さい‼︎」


 フレーシュからの檄に、自身の思考から引き戻された俺は、前方からディシプル兵が此方に向かって来るのに気づいた。


「悪い、助かった」

「・・・、私はお嬢様を守らなければいけませんので、ご自分で対処して下さい」

「了解‼︎」


 俺はそう返事をし、向かい来る敵に対して身構えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ