第71話
週明けの放課後。
フェルトからの呼び出しを受け、俺はザックシール研究室へと来ていた。
「で、用って何だ?」
「ええ、ルーナの銃の炸裂弾が用意出来たからそのテストをしたかったのよ」
「おぉ、ついにっ」
「・・・」
フェルトは手に其れを乗せ俺へと示してきた。
其れはフェルトの手から少しはみ出ていて、何やら紋章の様なものが刻まれていた。
「此れって?」
「制御装置の一種よ。ルーナから送り込まれた魔力で作動するわ」
「前の弾には無かったよな?」
「ええ、あれはただ発射するだけだもの」
フェルト曰く弾を発射するのみなら、銃に有る制御装置で可能である。
然し此の炸裂弾は別の機能を有している。
「其れって・・・」
「司からのリクエスト通りに、どの距離で弾を炸裂させるかはルーナが制御出来る様にしたわよ」
「・・・フェルトって」
「何かしら?」
「いや、本当に凄い奴だったんだなぁ・・・」
「ふふ、そうかしら?」
フェルトは俺の感嘆にも微笑を浮かべるだけで、手のひらの弾を遊ばせていた。
「ただ、注意点が二つ有るわよ」
「二つ?」
「ええ、一つは此の弾の素材はかなり貴重な物で予算的に現在用意出来たのは30発よ」
「1発幾ら位なんだ?」
「約5万オールよ」
「じゃあ・・・」
全部で150万オールって事か・・・。
かなりの金額に俺は驚いたが、フェルトも貴族なのだから実家からそれ位の援助はあるのかな?
ただ其れを聞くのは憚られた。
(聞いてしまうと今の関係が終わってしまいそうな気がするんだよなぁ・・・)
「そういえば・・・」
「どうしたの?」
「ああ、5万オールって事はワーウルフの魔石と同じ位だよな?」
「ええ・・・、ふふ」
「何が可笑しいんだ?」
「今ワーウルフで元が取れると思ったでしょう?」
「ああ、違うのか?」
「此の弾の威力だとワーウルフなんて、魔石ごと木っ端微塵にして赤字にしかならないわよ」
「あっ」
「ふふ」
(それもそうか、確かめといて良かったな)
「それじゃあ行きましょうか?」
「ああ」
「・・・了解です」
その後俺達は前回使用した場所へと移動し、的を設置していった。
「ふぅ、こんなもんか?」
「そうね」
的はルーナの立つ位置から約500メートルの距離に5本と、約1キロの距離に5本立てた。
俺達は1キロの地点の的から離れて立った。
「此れ構ってちょうだい」
「此れは盾か?」
「ええ、破片が届くと危ないから」
「なるほど、了解した」
俺はフェルトから渡された鋼鉄製の大盾を構え、フェルトはその背後についた。
盾には覗き穴の様な部分が有り、其処には透明な強化ガラスのような物が付いていた。
「ルーナ〜‼︎」
「はい、マスター‼︎」
「先ずはあの5本の的を破壊してちょうだい‼︎」
「了解です‼︎」
俺とフェルトは先ず1キロの地点の的を破壊して貰う事にした。
「距離はどうやって調整するんだ?」
「それは銃の制御装置で、弾に刻まれた制御機能に特殊な詠唱の様なものを行うのよ」
「ふ〜ん」
「ふふ、解ってないでしょ?」
「うっ・・・」
「まあ良いわ、取り敢えず使用して正常に作動すれば問題無いのだから」
「そうだな」
「いきますよ司様、マスター‼︎」
「ああ、頼む‼︎」
ルーナはアイテムポーチから銃を取り出し構えた。
流石にこの距離では表情は確認出来なかったが、その立ち姿で集中している事は伝わってきた。
ルーナがトリガーを引いたのだろう、彼方側から弾が飛んで来るのが見えた。
弾が的に近づくと、刻まれていた紋章が輝きを放ち、その瞬間爆音と共に弾が破裂してしまった。
「うぉっ‼︎」
俺は身体の内側の臓器が全て振動する様な感覚に、かなり驚き声を上げてしまい肝心な所を見逃してしまった。
「あ、あ・・・」
「どうやら成功の様ね」
「・・・ごくっ」
的は穴だらけになってる物や、引き千切れている物、吹き飛んでいた物も有る。
俺は自身で依頼した物だったが、その威力に息を呑む事しか出来なかった。
(こっちに飛んで来なくて良かったぁ〜)
俺は手に持つ大盾に、仕事の必要が無かった事に内心喜んだ。
「じゃあ次に行きましょうか?」
「あぁ、そうだな・・・」
その後500メートル地点のテストもし、こちらも見事成功となった。




