第31話
俺達はその場を後にし、ダンジョンのより深くへと進んで行った。
所々にワーウルフの死体が落ちていたが、その仕留め方からローズの手による物だと理解出来た。
「それにしても鮮やかだよね〜」
「そうだな」
ルチルに聞くと、冒険者登録を済ませて無いローズは今回がダンジョンデビューとの事だ。
それなのにこの手際の良さである。
(ただ、人は精神的に追い詰められた時の方が集中力が増し、限界を超えた力を発揮する場合もあるからなぁ・・・。そして、そういう時ほど緊張の糸が切れると一気に・・・)
ダメだなとは思いつつも、底に行く程増してくる独特の瘴気に俺は不安を拭えなかった。
「・・・待って」
「ん?」
「あれ・・・」
ルチルに止められ、示された先には三匹のワーウルフがいた。
その足下には一体のワーウルフの死体が横たわっていた。
「何してるんだろう?」
ルチルが疑問を口にしたが、俺には連中が仲間の死を悼んでいる風に見えた。
ただそれはそれである。
この首を差し出す訳にはいかないし、奴等を倒さなければ先には進めない。
俺とルチルは顔を見合わせた。
「ルチル、一匹頼めるか?」
「うん、でも司大丈夫?」
「ああ、俺は遠距離から魔法でいかせてもらう」
「了解っ」
そう言ってルチルは足音を立てない様に、死角からワーウルフに近づいて行った。
俺は詠唱をし暗闇を駆る狩人を発動した。
闇の狼に先頭のワーウルフが気付いたが、俺はその頭上を跳び越えさせて、奥の獲物を狙わせた。
見事に獲物の首の付け根に牙を立てた狼に、他の二体は一瞬ドギマギしたが、直ぐに頭を超えられたワーウルフが俺に突進して来た。
(俺を倒せば消える事が感覚的に解ってるのか?)
そんな風に冷静に状況を把握出来たのは、突進して来たワーウルフとすれ違いにルチルが、もう一体のワーウルフに駆けていたからだ。
間合いを詰めるルチルに対しワーウルフは、その丸太の様な右の腕を振り下ろした。
危ないっ、俺はそう思ったがルチルは冷静にその健康的な右足を踏み込み半身になってその攻撃を躱し、藍色の毛先だけがハラリと舞った。
(風はアゲンストだなぁ)
昔会社の駐車場の草むしりをしている時に上司がそんな事をしていたのが何となく思い出された。
ルチルは踏み込んだ足に力を込め、左足でワーウルフの顔面にソバットを決めた。
ルチルは体勢を崩した相手の後頭部を左手で掴み、美しい開脚でのフェイスクラッシャーを決めた。
「白だ・・・」
俺はあまりの美しさに見惚れてしまった。
・・・勿論その連携の流れの美しさにだっ‼︎
俺に突進していたワーウルフは、仲間達の絶命に気を取られたのか、隙を見せたので俺はアームから借りた剣を抜きそのワーウルフに斬りかかった。
ここに来るまでに見た死体で、こいつの弱点は胸だと解っている。
予想通り俺の斬撃にワーウルフはかなりのダメージを受けた様で、防御の構えに入ったので背後から闇の狼に襲わせ、体勢を崩し胸を剣で一突きした。
「ふぅ、片付いたな」
「そうだね」
「でもフェイスクラッシャー使ったのは意外だったぞ」
「フェイスクラッシャー ?」
聞いてみるとルチルは意識せずに使っていたらしい。
(う〜ん、ナチュラルボーンだな)
俺達は三体の死体から魔石を取り、一応最初から倒れていたワーウルフにも取り残しが無いか調べてみると、魔石は見つからなかったがその傍に一つのアイテムポーチが落ちていた。
「これは・・・ローズの物だよ」
「何っ?」
何故かローズのいない所から出てきたポーチに俺は不安が募った。




