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第265話


「司様ー‼︎」

「ん?ルーナ、来たのか?」

「何が?」

「あぁ、海龍の群れに当たったらしくてな・・・」

「え?」

「もう、終わったけど」

「え?」


 甲板から掛かった声に振り返ると、其処にはパーティ全員揃っており、其の目を白黒させていた。

 所要時間10分と掛らなかっただろう。

 海龍の群れは海上に浮かび、其の腹を見せていた。


「よっ・・・、と」

「司さんっ」

「ミニョン」

「大丈夫でしたの?一体何が・・・?」

「うん?まぁ、何も危険は無かったし、大丈夫だぞ?」

「そうですの・・・?」


 皆、俺の魔法は見ていなかった様で、船の進行方向に浮かんでいる大量の海龍の死体に、ただただ夢でも見ているような様子だった。


「頭ぁ‼︎」

「あぁ、ナウタさん」

「へへ〜」

「おっ⁈おぉ・・・、どうかし・・・」

「頭ぁ、お見事でやすっ‼︎」

「「「うっすっ‼︎」」」

「・・・っ⁈」


 ナウタを先頭に甲板に膝をつき、額まで擦り付けん勢いで頭を下げた乗組員一同。

 俺はその勢いに押され、飛び退きそうになった自身の足に、必死に力を入れて抑えた。


「今のが頭の魔法ですかい?」

「え、えぇ、まぁ・・・」

「あっしも、それなりの数の魔導士を見ましたけど、此れ程の魔法を使える魔導士は一度も見た事がありやせんぜ?」

「は、はは、そうですか?」

「へいっ。フォールの旦那から話は聞いていやしたが、此れは流石にフォールの旦那が敗れたのも納得です」

「いやぁ・・・」


 ナウタの称賛の言葉にも、眼前に広がる屈強な漢達の膝をついた光景に、俺は微妙な言葉で返す事しか出来なかった。


「ですが、此れはひと財を成せますぜ?」

「え?まぁ、魔石を国に渡せばそれなりの報酬は得られるでしょうけど・・・」

「いや、海龍の身ですよ、頭?」

「海龍の身?」

「へいっ」


 ナウタ曰く、海龍の肉はかなりの美味で、其の腹の部位の脂身は鮪の大トロに勝り、背の部位の肉の弾力と淡白ながらコクのある味わいはクエを凌ぐと言われているらしい。


「あっしは、皮を塩焼きにするのが好きですがね」

「へぇ〜」

「殆ど、市場に出回りやせんからね」

「そうなんですか?」

「へいっ。例え1匹狩れたとしても、奴らは群れで行動しやす。他の海龍に邪魔されて、其の身を解体する事は殆ど不可能です」

「じゃあ、たまに出回るのは?」

「へいっ。群れからはぐれた奴を狙って、船団で協力し狩るのが一般的です」

「なるほど」


 そう考えると、眼前に広がる光景は宝の山なんだろう。


(魔石は国王に渡すにしても、肉は俺の1人取りでも問題無いだろう)


 実はアークデーモンから得た報酬は殆どフェルトに渡しており、ルーナのメンテナンスや色々なマジックアイテムの開発に消えており、決して潤沢とは言えなかった。


(国王からも船以外に報酬は貰ったが、ローズに無理を言って受け取って貰ったしな)


 リールもローズも俺から生活費を受け取る事を嫌がったが、流石に1年以上タダ飯食いで、学費の面倒迄みてもらうのは問題だからな。


「良し、フレーシュ」

「はい」

「ルーナとディアとアナスタシアにスピードエフェクトを頼む。三人は魔石の取り出しと肉を捌いてくれ」

「はい」

「え〜」

「了解です」

「分かりました」

「司さん、私は?」

「ミニョンは船上で辺りを監視を頼む。フレーシュも皆に魔法を使用した後は監視で」

「はい」

「私は何もしないわよ」

「期待してないから安心しろ、アンジュ」

「ちょっと、司‼︎」

「・・・」

「あたしはいやだっ」

「ディア。我儘を言うなら、晩飯は抜きだ」

「むぅ〜」

「ディア、お前が屋敷で自由に過ごせているのは、俺がお前を引き取ったからだ」

「・・・」

「あまり、我儘が過ぎるなら、陛下にお前を受け取って貰い、監獄で余生を過ごして貰う事になるぞ?」

「ふんっ」


 1人不満な態度のディアに、俺は諭す様な口調ながら、究極の選択を迫った。

 そもそも、ノイスデーテだからと言う理由で、渋々ディアを引き取る事を受けたのだ、其の事でディアが協力的で無い以上、今回の魔石を納めるついでに、国王にディアを押し返す事だって可能な筈なのだ。


「分かったな?」

「いいもんっ、かえったらママにいいつけるもんっ‼︎」

「好きにしろ・・・」

「・・・ふんっ」


 文句を言いながらも、九尾の銀弧の形態になるディア。

 彼女とて、現在の状況にミラーシに居た時よりも満足しているのだろう。

 其れを失う程愚かでは無いのだった。


「俺が先ず魔法で切れ込みを入れる。其処から裂いていってくれ」

「了解です」

「はい」

「・・・ふんっ」


 俺は空に飛び、漆黒の剣で海龍達に切れ込みを入れて行き、その後空中で警戒に当たるのだった。

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