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第263話


「船室はどうしますの?」

「ん?何処でも使って良いぞ?」

「じゃあ、私、つか・・・」

「それなら、私が司様の隣を」

「ちょっ、フレーシュッ」

「何ですか?お嬢様?」

「勝手な事を、するんじゃありませんわっ‼︎司さんの隣は私が・・・」

「何方も勝手だと思いますが・・・」

「何ですって、ルーナさん⁈」

「心外ですね」

「・・・」


 俺達は船室のフロアに来ていたのだが、女性陣の争いが始まり、俺は無言になっていた。


(隣といっても、完全に仕切られているから意味は無いと思うんだが・・・)


「ジャンケンで決められたらどうですか?」

「アナスタシアさん・・・。そうですわね」

「ええ、其れが早いかと」

「ルーナも依存はありません」

「では・・・」

「ええ⁈」

「アナスタシア様も」

「参加するんですか⁈」

「勿論です。私が勝てば隣が1つ潰れますので?」

「どうしてですの⁈」

「お嬢様の為です」

「・・・むう〜」

「あたしは、はしとった」


 ジャンケンに参加するのはミニョン、フレーシュ、ルーナ、アナスタシアの4人で、ディアはとっとと端の部屋へと駆けて行った。


「此処にはアンが居ないんだから、あんまり部屋を散らかすなよっ」

「わかってる、ちゅかさうるさいっ」

「・・・はぁ〜」


 俺が背へと飛ばした声を、流す様に応えたディア。

 ディアは屋敷に来る迄、自室を持った事が無く、部屋を片付けるという習慣が出来てなかった為、アンが定期的に一緒に掃除をしてやっていたのだ。


「それでは、始めましょうか」

「ええ」

「了解です」

「行きますわよ・・・。ジャンケン・・・」

「「「「ポンッ」」」」


 こうして、部屋割り決定ジャンケンが始まったのだった。


「じゃあ、昼食でな」

「お嬢様、やりました」

「お嬢様、諦めも肝心です」


 結局、ジャンケンの勝者はアナスタシアとフレーシュで、俺の船室はその2人の船室に挟まれる事になった。


「むう〜・・・、ですわっ」

「不満です」

「・・・まぁ、決まった事だから」


 俺は敗者である、ミニョンとルーナに励ましの言葉をかけながら、自室へと入っていった。


「ふぅ〜・・・」


 ベッドに腰を下ろし長めの息を吐く。


「十分だよなぁ・・・」


 最近は屋敷に慣れて来た為、一瞬昔住んでいたアパートを一回り狭くした様な船室が手狭に感じたが、そもそも持ち物は全てアイテムポーチに入れておける為、ベッドさえあれば、十分な広さと言えた。


「ん?」


 目に付いたのは部屋の隅に置かれた木箱。

 誰かの用意してくれた物でも入っているのかと思い、其れに近付き蓋に手を掛ける。


「何がは・・・」

「・・・っ⁈」


 木箱の蓋を開けると、その先に覗いたのは煌めく金色の髪を持つ、可愛らしさを感じる小さな後頭部。


「・・・な⁈」


 小さく声を漏らした・・・、刹那。

 俺は素早く木箱の蓋を閉じる。


「きゃっ‼︎」


 木箱の中から短く高い、小鳥の鳴き声の様な声が上がる。


「・・・はぁ〜」


 俺はその声に木箱の中の人物を確信し、短く溜息を吐いた。


「なぁ、アンジュ?」

「ふっふっふっ」

「・・・」

「本当に私はアンジュかしら?」

「・・・」

「確認した方が良いんじゃない?」

「・・・」


 木箱の中から聞こえてくる、悪戯っぽい声に俺は無言を貫き・・・。


「・・・」

「ちょっ⁈何よ、司‼︎」

「・・・」


 アイテムポーチの中から、なるべく重そうな物を取り出し、蓋の上へと置いていく。


「な、何し・・・」

「お〜い、誰かトンカチと釘を持って来てくれーーー‼︎」

「つ、司ぁ‼︎」

「早くーーー‼︎」

「ちょっと、私よ‼︎アンジュよ‼︎勘違いしないでーーー‼︎」


 俺が部屋の外へと声を飛ばすと、箱の中からアンジュが必死で此方に声を掛けて来た。

 ・・・いや、勘違いはしてないっ。


 その後、アンジュを木箱から出し、俺からの声に反応した他の皆が部屋に集まって来た。


「ア、アンジュ・・・、貴女⁈」

「ふっふっふっ、久し振りねミニョン」

「別に久し振りではありませんわ。司さんとローズの結こ・・・、っ」

「ん?どうした、ミニョン?」

「い、いえ、何でもありませんわっ」

「そうか?」


 2人は俺とローズの結婚式で再会していたのだが、アンジュの数年振りの再会の様な発言にツッコもうとしたミニョンは、何故か言葉に詰まっていた。


「それで何故、この方が船に?」

「俺も分からん?」

「ふっふっふっ」

「・・・」

「どうしやす、頭?密航は罪ですし、頭は陛下から授けられた船で活動してる訳ですから、此の件は重罪になると思いやす」

「ふっふ・・・、え⁈」

「このまま、魚の餌にしても構わないと思いやすが?」

「そうだなぁ・・・」

「ちょっ・・・、何言ってるの・・・、私は・・・」


 ナウタの不穏な発言に得意げな笑いをやめ、不安そうな表情で、短く呟く様に声を絞り出そうとするのがやっとのアンジュ。


「良しっ、じゅ・・・」

「ちょっと、司‼︎」


 俺がわざとらしく号令を掛け様とすると、一瞬で青ざめた顔に血色が戻り、俺へと声を上げて来た。


「だがなぁ・・・」

「司ぁ、お願い」

「・・・」

「むう〜、ですわっ」


 アンジュは先程から表情が忙しく、今度は縋る様な表情で首を傾げ、俺の顔を覗き込む様にし猫撫で声で頼んで来た。


「どうしますか、一度港に?」

「う〜ん・・・」

「アンジュ様は大丈夫な人質ですし」

「くっ‼︎」

「いや、このまま行こう」

「え?」


 アナスタシアからの確認に俺は一瞬悩んだが、短く答えた。


「良いの、司?」

「あぁ」

「ですが、司様・・・」

「やった、ありがとう司」

「・・・」


 アンジュは眩しい笑顔で飛び跳ねながら、俺へと礼を言って来た。


「アンジュの世話はアナスタシアに任せる」

「私がですか?」

「あぁ、頼んだぞ」

「ふっふっふっ、司」

「・・・何だ?」

「私だって子供じゃ無いのよ?自分の事位自分で出来るわっ」


 胸を張って俺へと告げて来たアンジュ。

 既に、何時もの調子を取り戻していた。


「何を言ってるんだ?」

「え?」

「自分の事は当たり前だろ?」

「じゃあ・・・?」

「アンジュ、お前にはアナスタシア教育の下、船の中の雑務をこなして貰う」

「ええーーー‼︎何でよ⁈」

「当たり前だろ?皆はゼムリャーを狩る為に来てるんだ。其々に仕事が有るんだ」

「なら、私も・・・」

「駄目だっ」

「何でよ⁈」

「お前は大事な人質だからな?」

「・・・っ‼︎」

「じゃあ、頼んだぞ、アナスタシア」

「司様・・・。かしこまりました」

「ちょっ・・・」

「はいっ、以上‼︎解散‼︎」

「待っ・・・」


 家事など未経験であろうアンジュは、俺へと再考を求め様としたのだろうが、俺はそれを無視して、解散の号令を出したのだった。


「司ーーー‼︎」

「・・・」


 早速、アナスタシアに腕を引かれて連れて行かれたアンジュ。

 こうして、俺達はアンジュを一行に加えたのだった。

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