第247話
「きゃあっ‼︎」
「だ、大丈夫か⁈」
「え、ええ・・・」
「ふぅ〜」
「すいません、大きな声を上げてしまいましたわ」
「いや、俺もこんなに威力が有ると思わなかったんだ。すまない」
「いいえ、大丈夫ですわっ。ドンドン来て頂いて構いませんわっ」
「あぁ、頼む」
翌日、ミニョンの授業が終わるのを待って神木の下に来た俺達。
昔、大魔導辞典に記していた、水属性の魔法はかなりの威力で、ミニョンの生み出したロックシールドを、真っ二つにしたのだった。
その後、小一時間程ミニョンの詠唱した岩の盾を、俺は魔法で裂いていったのだった。
「ふぅ〜、大丈夫か、ミニョン?」
「はっ、はっ、はぁ〜・・・、ですわ」
「良し、休もう」
「え?いや、まだ大丈夫ですわっ」
「いや、魔力切れになると危険だから、休もう」
「は、はいですわ」
神木の下に腰を下ろした俺とミニョン。
俺達は魔力回復薬を飲み干し、ひと息ついたのだった。
「司さん?」
「ん?何だ?」
「今回のディシプルの一件、お疲れ様でした」
「あぁ、ありがとう」
「私も参戦出来れば良かったんですけど・・・」
「まぁ・・・」
「むぅ〜・・・、ですわ」
今回は俺は単独行動で、実際に参戦したフレーシュの側にも居てやれなかったからなぁ・・・。
そう考えると、ミニョンの参戦が無かった事は、俺としては良かったのだが、ミニョンはやはり不満そうだった。
「でも、今回の件は、学院生には願っても無いチャンスですけど」
「チャンス・・・、なのか?」
「ええ。復興に向けての作業や、魔空間の発生した街へダンジョンから魔物も出てきますわ」
「あぁ、就職先が増えるって事か」
「そうですわ。既に仮卒の認定を受けていた学院生の多くは、来年の春迄ディシプルでバイトをしたり、私達の同級生もかなりの数、単位の調整をしながら、向こうでバイト兼実習をしていますので・・・」
「へぇ〜・・・」
まぁ、この世界で学歴は上流階級の見栄位しか、価値が無いらしいからなぁ・・・。
既に、就職先があるのなら、其処でバイトをして過ごす方が、将来の為にはなるだろう。
「司さんはどうしますの?」
「俺か?」
「ええ」
「まだ、決まってる事は無いよ」
「本当ですの?」
「あぁ・・・」
食い下がるミニョンに、俺は躱す様な返事しか出来なかった。
事実、まだローズにゼムリャーの件は伝えていなかった。
(フェルトに船を改造して貰えれば、一応毎日屋敷に帰れる予定でいるが・・・)
ただ、コストの事を考えると、なるべく転移の護符の使用回数は抑えたいところだった。
「そろそろ、大丈夫ですわ」
「そうか、じゃあ再開しようか」
「はいですわっ」
そうして、俺達は時間迄魔法の訓練を繰り返したのだった。
そして、翌日・・・。
俺は日課の凪の魔力発散を済ませ、ディシプルへと飛んで来ていた。
「ふぅ〜・・・、着いたかぁ」
今日の目的は2つ。
1つはディシプルへの転移の護符のセット。
もう1つは、船乗りの用意だった。
転移の護符は、国王から許可証を得て来て、関所にセットする事が出来たのだった。
船乗りについては、フォールに紹介を頼もうと思ったが、先ずは街の状況を確認しようと、関所から街へと向かうのだった。
「おぉ・・・」
思わず漏らした感嘆の声。
街は未だ焼け跡のままだったが、路上に色々な商品を広げ、威勢のいい声を上げ客を呼び込む商人達。
街を行く人達の表情も、色彩豊かで様々で、以前の様な無色の無表情ばかりでは無くなっていた。
「正しかったんだよな・・・」
人知れず呟いた台詞。
それは今回の件、事故から始まった事だったし、捕らえたルグーンにも死なれてしまったが、それでも、自身の行いが間違えていなかったと、確信出来たのだった。




