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第230話


「司が戻ってからにして貰おうと思って」

「そうかぁ・・・」

「どうかの?」

「勿論、手紙で返事をさせて頂いた通り、構いませんよ」

「そうか、それは助かる」

「ただ、正直疲れてますし、これから人も迎えに行かないといけないので・・・」

「うむ、明日以降で構わんのじゃ」

「助かります」


 俺が披露と予定を訴えると、グリモワールは軍が王都に帰還する迄時間は大分あるとの事だった。


「司」

「あぁ、子供達は気になるが、ルーナも放って置けないしな」

「・・・分かったわ。早く帰って来てね」

「勿論」


 そうして、俺は学院へと飛び立った。


「ふぅ〜・・・」


 俺は長時間の飛行の疲れを癒す様に、魔力回復薬を飲み干し一息つき、ルーナの待つザックシール研究室へと向かった。


「あら?」

「すまない、待たせたな」

「ルーナなら、出てるわよ」

「そうか」


 久し振りのザックシール研究室。

 フェルトは机に向かって作業中で、背を向けたまま俺を迎え入れた。

 聞くとルーナは購買へと買い出し中との事だ。


「あの娘達は?」

「まだ、ディシプルだよ」

「そう。戻ったら、此処に連れて来なさい」

「・・・あぁ」

「ふふふ、楽しみね・・・」

「・・・」


 今回の事件の犯人である、フレーシュとアンジュの事を尋ねて来たフェルト。

 2人がまだ戻って無い事を伝えると、口元だけで嗤い、防魔套代わりである眼鏡は妖しく輝いていた。


(まぁ、フェルトもそう無茶はしないだろう)


 きっと・・・。


「でも、丁度良いわ」

「ん?何がだ?」

「はい、此れ」

「え⁈・・・い、いや、えええーーー‼︎」

「ふふふ」


 フェルトが示して来たのは、転移の護符。

 今回の件があったのに、フェルトは笑いながら其れを渡して来た。


「お、おい、フェルト?」

「あの娘達を連れて来たのは司よ」

「いや、でも・・・」

「ふふふ、はい」

「・・・」

「どうしたの、司?」

「分かったよ」

「ふふ、ありがとう」

「はぁ〜・・・」


 押し切られる形で、仕方なく其れを受け取った俺。


「とりあえず、此処で魔力を込めるぞ」

「ええ、構わないわ」

「・・・良し」


 俺が護符を手にし、其処に魔力を注ぐと、護符は柔らかな光に包まれた。


「これで・・・、何処で使うんだ?」

「そうね・・・、校門で良いわよ」

「あぁ、分かった」

「いってらっしゃい、司」

「いってきます」

「ふふ、ふふふ」

「・・・」


 俺は護符を握り校門へと向かった。


「はぁ〜、着いたかぁ・・・」


 途中でルーナにでもすれ違えば、フェルトを諦めさせる説得の協力をしてくれるかと期待していたが、結局出会す事は無かった。


(まぁ、初回の事故は原因が分かっているのだし・・・)


 とりあえず今のところは、フェルトからの発明品を指定通りに使用して失敗は無いのだし、今回は大丈夫だろう。

 俺はそう思い、覚悟を決めて護符へと魔力を送った。


「・・・くっ」


 今度は護符から強い光が発せられ、一瞬で全身を包み込み、そのまま宙へと引っ張られる感覚が襲って来た。


「・・・」

「え?司様?」

「あれ?ルーナ?」

「あ、え、え〜と・・・」

「・・・」


 気がつくと室内に居て、眼前にはルーナが居た。

 一糸纏わぬ姿で、純白の肌を露わにして・・・。


「そ、その・・・」

「な、何で・・・」

「どうしたの、ルーナ?」

「・・・フェルト?」

「あら?司?」


 布地の衝立の外から掛かったフェルトの声に、実験の成功を理解した・・・、刹那。


「きゃあぁぁぁ‼︎」

「わ、悪い。すまないっ、ルーナ‼︎」

「と、とにかく、出て下さいっ‼︎」

「は、はいっ‼︎」


 衝立を倒さんという勢いで外に出た俺。


「ふふ、そんなに慌てる必要無いでしょ?」

「い、いや、でも・・・」

「今更じゃない?」

「マスター‼︎非道いですっ」

「ふふふ、そう?」


 衝立の中から掛かったルーナからの非難の声にも、フェルトはどこ吹く風の様子で応えるのだった。


(とにかく、転移の護符が成功して良かった)

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