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第22話


 デリジャンに入学の条件として、唯一の魔術の使用禁止を提示された俺はその理由を問うた。

 デリジャンの説明は至って単純なものだった。

 強力にして強大過ぎるからだと。

 通常中級魔法により発生する魔空間はかなり強力なもので、並みの魔導士なら意識を保つのがやっとだ。

 それが、八連だと想像を絶する状況が発生する。

 今日の試験で多くの生徒が倒れてしまったのはそのためだと言われた。

 確かに昨日のローズの魔法披露の時も防魔套を羽織っていたしな。


「そういえば、試験場で魔石が黒く変色して崩れ落ちてきましたけど・・・」

「うむ、あれは『廃魔石』化じゃ」

「廃魔石化ですか?」

「通常魔石は複数回使用が可能なのじゃ」

「複数回ですか?」

「ああ、魔石は使用する度に蓄えられた魔力が減っていきやがて、ゼロになると再び魔力を込めて使えるのじゃ」

「なるほど」

「一般的な生活に使う分には長持ちするのだが、魔空間制御などに使う物は強力な負荷が掛かる事も多いので、短期間で廃魔石化しやすい」

「廃魔石になるとどうなるんですか?」

「魔石としては使用出来なくなる」


 まあ、そりゃそうだよな。


「じゃが、まいったのぅ」

「どうかしたんですか?」

「うむ、あれだけの魔石が一斉に廃魔石となるとのぅ」

「は、はぁ・・・」

「安全上の観点から、実技授業が行えなくなってしまうんじゃよ」

「・・・、申し訳ありません」

「何を言っておる。お主のせいでは無いよ」

「はぁ」

「お主が努力した結果なのじゃ、誇れば良いんじゃよ」


 デリジャンは教育者の鑑の様な発言に、俺は感動していた。

 そして、今日はもう帰宅し休む様に俺とローズに言って、自らは試験場へと戻って行った。

 予定にはない早退の為俺達は学院の馬車を借り、屋敷へ帰った。

 馬車の中でローズは少し考え事をしている様だった。

 俺達が屋敷に着くと丁度リールとアンが昼食を摂っていた。

 今日はお好み焼きの様だ、・・・もう何も言うまい。

 アンは口の周りに青海苔でヒゲを作っていた。

 リールに早退の理由を説明すると目を輝かせ喜び、俺の頭を撫で回してきた。

 ローズも誇らしそうにしていた。


(馬車の中の様子は俺の気のせいだったのかな?)


 そんな風に話していると、アナスタシアが食堂に来た。

 彼女は俺とローズを見て一瞬驚いた表情をしたが、俺達が今日あった事を話すと静かにおめでとうございますとだけ言った。


「そういえばアナスタシアは、さっきまでどこに居たんだ?」


 アナスタシアの事だから何か仕事をしていたんだろうけど、俺は何となく聞いてみた。


「はあ・・・」

「どうかしたのか?」

「ぷふゅ〜」

「ん?」


 アナスタシアは答えずらそうにしていて、アンは吹けもしない口笛を吹こうとして口の周りの青海苔が宙に舞っていた。

 いや、行儀悪いから。

 どうやら原因はアンに有るのだろうと、俺はアンに無言の圧力を送り続けた。

 最初素知らぬ顔をしていたアンだったが、なんといっても俺とアンは主従関係にあるのだ。

 俺が諦めず続けると、アンは観念・・・は、せずに話を逸らしてきた。


「そ、そういえば、アンもご主人様の魔法、見てみたいにゃ〜」

「・・・」

「きっと凄いんだろうにゃ〜」

「・・・」

「アンはご主人様の様な偉大な魔導師様にお仕え出来て幸せものだにゃ〜」

「・・・」

「う、うにゃ〜」


 そんな事を言ってきたアンに、アナスタシアはもしそのレベルの魔空間に踏み入ってしまえば、アンではたとえ防魔套10枚羽織ったとしても、全身の穴という穴から血が吹き出してミンチになってしまうと言った。

 ちなみにアンはその後あからさまに俺から距離をとった。

 いや、酷いだろう、ご主人様だぞ。

 結局アンは口を割らずに、俺はその場ににいても仕方ないので部屋に戻る事にした。

 部屋の前に着きドアを開けた俺の目に飛び込んできたのは、泥棒に荒らされた後の様な床に厨二アイテムやどこから持って来たかわからないゴミが散乱した状況だった。

 もしや、大魔道辞典が試験場に現れた影響かと思った俺だったが、いつの間にか背後に立っていたアナスタシアがアンが・・・、とだけ言った瞬間に理解した。


「他の箇所も有ったので手が回りませんでした、申し訳ありません」

「あ、いや、こちらこそお手数をかけました」


 結局部屋の片付けは夕食までかかり、その間アナスタシアに頼み部屋のドアに鍵を取り付けて貰った。

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