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第181話


「司っ‼︎」

「ローズ、戻ったよ」

「ええ、無事で良かったわ。子供達とアナスタシアは・・・?」

「子供達は大丈夫だ・・・」

「そうっ。・・・え、は、って?」

「・・・」


 族達が退いた事で、俺達も屋敷に戻りローズの迎えを受けた。

 問い掛けに答える俺に、表情への不安の色を増すローズ。


「悪い、とにかく医師の用意を頼む」

「え、ええ‼︎」

「・・・ふぅ」


 俺は屋敷の中へと駆けて行くローズを、息を吐きながら見送った。


「てめぇも少し休め」

「ケンイチ様・・・」

「こんなバテ切ってる奴がウロウロしてても邪魔だ」

「・・・はい」


 ケンイチからの言葉に、俺が自身の部屋へと向かおうと歩き出そうとすると、背後から声が掛かった。


「司様・・・」

「アナスタシア⁈」

「すいません、気を失っていました」

「大丈夫か?」


 戦闘終了後に確認すると、痛みからか気絶していたアナスタシア。

 屋敷に到着して目を覚ましたらしかった。


「私の事は・・・、それよりお子様達は?」

「2人共無事だっ。ケンイチ様が軍を連れて助けに来てくれたんだ」

「そうですか・・・。良かった」

「・・・」


 アナスタシアは、お前は大丈夫なのかと問い掛けたかったが、其れを出来なかった。


(瞳に全く生気が無い・・・。視力はもうっ)


 此処に戻る時、俺は少しでも早くアナスタシアを医師に診て貰う為に空の移動を提案したが、ケンイチによるとアナスタシアは搬送に気を使わなければいけない状態らしく、地上での移動となった。


「司様」

「どうした?」

「お子様達は・・・?」

「あぁ・・・」


 俺は子供達を抱いてくれていたバドーから受け取り、アナスタシアの元へと連れて行き、其の手を取り子供達へと導いた。


「此処に・・・」

「あぁぁぁ・・・、良かったぁ」

「・・・っ‼︎」

「司様・・・」

「何だ?」

「お嬢様とお子様達をお願いします」

「・・・」

「司様?」


 やはり既に視力は失っているのだろう。

 アナスタシアは俺が返答せずにいると、俺へと問い掛けて来た。


「おいっ」

「・・・断る」

「てめぇ・・・」

「・・・バドーさん。お願いします」

「・・・お、押忍」


 ケンイチから飛んで来る声を無視し、俺は子供達と再びバドーへと預け立ち上がった。


「司様、いらっしゃらないのですか?」

「・・・っ⁈」


(もう、聴力も・・・)


 俺は其の顔を直視する事は出来ず、アナスタシアの手を握り締めた。


「司様ですか・・・、つか・・・」

「アナスタシアッ‼︎絶対だっ‼︎絶対助けてみせるぞ‼︎」

「・・・司様?」


 俺はそう宣言し、アナスタシアやケンイチに背を向ける。


「おいっ、てめぇ」

「すいません、出掛けて来ます」

「あん?」

「・・・」

「・・・ちっ‼︎さっさと行けっ」

「・・・はいっ‼︎」


 俺は闇の翼を広げ夜空へと学院へと飛び立った。

 屋敷に着く迄に、ケンイチから教えられたアナスタシアの病。

 俺の知り得る中で、唯一其れを治せる可能性のある人物。

 其の人物は今其処で、ルーナの治療を行なっているだろう。


「待っていろよ、アナスタシア・・・」


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