表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/705

第165話


「ふざけるなっ‼︎」

「・・・何がだ?」


 理不尽な状況での降参に憤りを隠せない俺。

 だが、ラプラスはそんな俺に対し、不遜な態度で応じてきた。


「当然だろ?最初に仕掛けて来たのはお前の方だぞっ」

「・・・」

「其れにダンジョン攻略は目前なんだぞっ」

「・・・なるほどな。だがな・・・」

「何だっ?」

「ふぅ〜・・・。そう熱り立つな」

「・・・」


 ラプラスが何か言おうとするも、俺は此奴を早く仕留めてしまいたかった。

 その為、急かす口調は乱暴になり、其れをラプラスは注意してきた。


「お前は我が仕掛けたと言ったが、此処は我が住処だぞ?其処に侵入者が現れ荒らせば、当然対応するだろう?」

「・・・」


 其れは魔物を倒しに来たから・・・。

 そう告げようとして思いとどまった。


(基本的に魔物達はダンジョンから出る事は無いからなぁ)


「其れにな・・・」

「・・・何だ?」

「くく、ダンジョン攻略と言ったが其れは無理な話だ」

「何だとぉ・・・?」


 両腕を失い、其の身には無数の傷が刻まれ、自身よりかなり小柄な俺に見下ろされている状況にもかかわらず、ラプラスは不敵な笑みを浮かべ、俺の目標達成を一笑に付してきた。


「・・・ぺっ‼︎」

「・・・っ」

「見てろ?」


 ラプラスの態度に再び憤りを隠せなくなる俺。

 だが、ラプラスは何のつもりか、自身の下唇を噛み切り壁際へと吹き飛ばし、俺へと声を掛けてきた。


「行くぞっ」

「・・・な⁈」


 ラプラスがそう言うと下唇の肉片は、飛ばした先で突如として俺の身体程に膨張し、此奴が先程迄戦闘で使用していた魔法と同じレベルの爆発をした。


「何だ・・・、今のは?」

「くく、我が全身は血肉から其の奥の骨格に至る迄、爆破のエネルギーが流れている」

「・・・な」

「我が生あるうちは我が制御下にあるが、我が死すれば制御を失い、全身は爆発してしまうのだ」

「・・・つまり、お前を倒すと?」

「ああ、お前達も木っ端微塵だ」

「・・・」


(どうするかな・・・)


「おい、皆んなっ‼︎」

「・・・」

「・・・ん?皆んなっ‼︎居ないのかっ‼︎」

「くく、話をしたいのか?」

「え?」


 仲間達にも意思を確認しようと声を掛けてみるが、返事は返って来ず、代わりにラプラスから妙な声が掛かった。


「どういう事だ?」

「くく、待っていろ」

「???」

「くくく・・・」


 ラプラスが下卑た笑みを浮かべると・・・。


「司様っ‼︎」

「ルーナか⁈」

「はいっ、すいません。捕まってしまいました‼︎」

「何だって⁈」

「くくく・・・」

「何をしたっ、お前‼︎」

「くく、あれを見てろ・・・」

「・・・?」


 ラプラスがあれと言い、最後に斬り落とした右腕を顎で示すと・・・。


「何っ⁈」

「くくく、どうだ?」

「此れは・・・」


 奴の斬り落とした右腕は、完全に胴体から離れているにもかかわらず、地を這い其れだけでまるで意思を持った様に動き出してしまった。


(あれ・・・?左腕が・・・?)


「無い・・・。無くなってる」

「くく、気付いたか?」

「・・・っ‼︎皆んな、もしかして手に捕らえられたのかっ?」

「はい⁈どうして⁈」

「すまない・・・。今、此奴から知ったんだ‼︎」

「・・・大丈夫です‼︎」


 消えていた左腕にいつの間にか捕らえられていた仲間達。

 俺は仕方ない事とは言え、自身の注意力の低さを呪った。


「皆んなを解放する気は・・・?」

「有るさ」

「えっ⁈」

「但し、お前が敗北を認めればな」

「・・・っ⁈」


 捕らえた仲間達を解放する気は有る。

 意外な返答だったが、其の条件は俺にとって、やはり厳しいものだった。


「・・・ちっ」

「くく、どうする?」

「皆んな‼︎」

「どうしたんですのっ‼︎」

「俺に命を預けてくれるか‼︎」

「何んだと・・・⁈」


 俺が皆の意思を確認しようと声を掛けると、ラプラスは意外そうに驚いた。


「どうだっ?」

「当然ですわっ‼︎」

「ミニョン、ありがとう」

「当たり前でしょう、司様‼︎」

「フレーシュも、良く言ってくれた」

「・・・司様」

「ルーナ・・・?」

「下らない事を聞かないで下さい」

「・・・」

「ルーナは司様無しでは生きていけないのです‼︎次にそんな事をルーナに聞いたら怒りますよ‼︎」

「ルーナ・・・。すまない、ありがとう」


 俺からの問い掛けに了承を示してくれたミニョン、フレーシュ、ルーナ。

 俺は皆から勇気を貰うのだった。


「いやだっ、ちゅかさにいのちなんてあずけられないっ‼︎」

「・・・」

「あん?お前ら子供なんて連れていたか?」

「・・・」

「ちゅかさっ、よけいなことしないでこうさんして、ちゅかさだけやられろっ‼︎」

「・・・」


(ディアの野郎・・・)


 いつの間にか幼児形態へと戻っていたディア。

 彼奴は当然のごとく俺へと敗北を認める様求めてきた。


「ありがとう、ディア‼︎」

「・・・え?ちゅかさ?」

「お前みたいな小さい子供に言われて気が付くなんてな」

「じゃあ・・・」

「皆んなっ‼︎俺は今から此奴を倒す‼︎」

「えっ???」

「ディアの一言で覚悟が決まった‼︎」

「なにいってるの、ちゅかさ???ディアはそんなこといってないっ‼︎」

「・・・」

「ちゅかさっ‼︎ばかっ‼︎あんぽんたんっ‼︎おんなったらしっ‼︎」

「・・・」


(さてと・・・、やるか)


 俺はラプラスに止めを刺そうと剣を構えて、一つ気になる事を思い出した。


「そういえば、ルチルは‼︎」

「まだ、気を失ってますわっ‼︎」

「そうか・・・」


(流石にルチルにだけ確認しないのは・・・)


 俺は未だ意識の戻らないルチルに覚悟を問えない事に、躊躇が生まれてしまった。


「・・・おいっ」

「何だ?」

「俺が敗北を認めれば本当に皆んなを助けてくらるのか?」

「・・・くく、我は言った筈だ。女に手は上げぬとな?」

「・・・そうか」

「司様‼︎駄目です‼︎」

「ルーナ・・・。すまない、此処まで来たのに」

「・・・」

「ラプラス、俺の負けだ。皆んなを解放してくれ」

「司様・・・」


 ダンジョンのボスを此処まで追い詰めての敗北宣言。

 俺は苦渋の決断をする事になったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ