ホラー館 第2話 「キモ試し」
これは、都内のある大学の
テニスサークルであった、実話です。
そのサークルは、
毎年夏、軽井沢へ合宿に行きます。
最後の晩は、キモ試しで盛り上がります。
キモ試しのコースは、真っ暗な森の中。
お化け役は、
後ろから背中をたたく役、
モンスターのマスクをかぶって飛び出す役、
血だらけになって道に寝転がっている役……。
首吊り役のお化けは本格的でした。
まず太いロープで、先にきちんと体を木に縛り、
別の縄を首にもかけます。
本当に首を吊っているようにみえました。
決まりがありました。
女の子同士でジャンケンをして、
勝った順から、一緒に歩くパートナーの男の子を選べました。
選ばれなかった男の子が、お化け役に回ります。
その晩、
男女が、二人一組になり、
懐中電灯を手に、森の中へ出発しました。
5分たったら、次の組がスタート。
お化け役が、2人を脅かすたびに
暗い森のあちこちで、楽しそうな悲鳴があがりました。
やがて、キモ試しが終わりました。
「さあ飲み会だ」と、お化け役のみんなも、引き上げてきました。
でも、首吊り役のA君だけが、戻ってきませんでした。
みんなで探しに行きました。
A君は同じ場所で、
まだダラーンと木にぶら下がっていました。
A君は、本当に首を吊っていました。
A君には、好きな子がいました。
でも、その子は、キモ試しのパートナーに、別の男の子を選びました。
背が高くてテニスがうまいB君。その二人が最後の組でした。
二人の話では、
首吊り役のA君をみて、彼女が「キャア~」と叫び、
隣のB君に抱きついたそうです。
そして、二人で気味悪そうに、A君を見上げました。
A君がそのあと、本当に首を吊ったのか、
間違って首に縄が引っかかったのかは、今もわかりません。
ただ、A君が最後にみたのは、
体を寄せ合って逃げていく、二人の後ろ姿でした。
(了)