表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全ては竜の御心のままに  作者: 酢兎
竜争歴十六年 アルイスト連合国編
9/11

9

正直まさか感想を貰えると思ってなかったので 見た瞬間にやる気が溢れて続きをかき始めてました

相変わらずの遅筆ですが、ね

 それは見学を再開しようと第二棟へとイヴァンスが向かっている最中の事。二課生の制服を来た二人がイヴァンスの前へと立ち塞がった。


「おや、私の方に来るのは少し予想外ですね」


「気付いてたのにゃ?」


「見られてると気になってしまう性格でして。それで、何か御用でしょうか?」


 立ち塞がった二人は先程までイヴァンスとディーネを遠くから覗いていた、目つきの悪い男と獣人の二人だった。男は何かを考えている様子だったが、イヴァンスに尋ねられてこう切り出す。


「アンタ、ディーネと一体何を話していた?」


「隠すような事ではありませんし構いませんが、一応身分をお伺いしても?制服を見るにタレントの方だとは分かりますが」


「…二課生のカイン・シグニ。ディーネとは幼い頃からの付き合いだ」


 そう名乗った男はディーネと同じく二課生の制服を着ているが、当然男用なのでそもそもズボンだったり可愛さよりも素朴な雰囲気を感じさせる柄だったりと色々と異なっている。逆立った金髪とイヴァンスを睨むその鋭い赤い瞳からは、攻撃的な性格なのだと伺える。


「同じく二課生のネルにゃ。ディーとは一課生の時に知り合った仲にゃ」


 続いて獣人の彼女はディーネと同じく二課生の制服なのは違いないが、アレンジなのか緑の柄が少し加えられている。それが彼女の緑髪を映えさせており、その快活な笑顔と合わせて個性のある獣人だと分かる。

 イヴァンスは二人の名乗りを聞いて頷く。


「私はイヴァンス・ロア。つい昨日にハンターになったばかりの新米ですが一応隊長を任されています。彼女、ディーネさんには私の隊への勧誘をさせて頂きました。返事はまだ貰っていませんけどね」


 その発言を聞いた二人は目を合わせ何か意思疎通をしているようだ。


「アンタが?隊長?少なくとも俺の知っている隊長とは違うし、隊長が変わったなんて知らせもな…」


「バカイン!もしかしたら例の零番隊の人かもしれないにゃ!少し前に竜討伐隊から知らせがあったにゃ!本当だとしたら不味いにゃ」


「ええ、その零番隊の隊長です。こちらがその…」


 ネルの発言に乗る形でイヴァンスは自身の紋章を見せようとしたが、しかし残念ながらそれは不可能である。そう、イヴァンスが紋章を付けていた外套はつい先程ディーネに渡してしまっているからだ。…ハンターとしては間抜けがすぎる行動で、本来ならばこんな事は絶対にありえてはならないのだが…。


「…?なんだ、紋章を見せてくれるんじゃねぇのか?」


 ネルに口を抑えられていたカインはその手をどかし、イヴァンスの行動を怪しんでいた。ネルも同様なのだろう、さっきまでの慌てようとは裏腹に怪訝そうにイヴァンスを見ていた。


「いえ、ちょっとした手違いで。申し訳ありませんが、紋章をお見せすることは出来ません」


「アンタそりゃ無いだろ。流石にそれで認めてくれってのは通じないぞ。…アンタ本当にハンターか?」


「うぅん…。でも万が一があったら事だにゃぁ」


 カインは背中に担いでいる剣を右手で握りはじめ、少し緊迫した雰囲気が流れ始める。紋章を出せない自称ハンターという、怪しさの塊を前にすれば警戒するのも仕方ないだろう。ネルはもしもを考えてか手を出す様子は無いが、だが空気を察して少しずつイヴァンスとカインから距離を取り離れていっている。

 

「まぁ正直。俺としてはハンターかどうかなんてあまり気にしてない。一番重要なのはディーネに一体何をしようとしてるか、だ」


「それに関しては先程も述べた通りです。ですが、私が証拠を出せない以上は無意味でしょうかね」


 自身の失態が堪えているようでイヴァンスは苦い顔をしている。辺りは授業が近い為か人影はなく、薄っすらと人の声が聞こえてくる程度の静寂な空間を独特の緊張感が支配していた。


「…自称ハンターの不審者、か。万が一アンタが本物だとしても、紋章を見せなかったアンタが悪いってことで責任は負わねえぞ」


 イヴァンスに対して呟くカインは剣を握る手に力を込める。まさかイヴァンスもこんな事になるとは思っていなかっただろうが、紋章、引いては身分証明は大事な事なのだ。


「それに、もしアンタが本物なら俺の攻撃なんて余裕で捌いてみやがれ!」


 その言葉と共にカインはイヴァンスへと詰め寄る。その速度は相当なもので瞬き一つで十歩分の距離を縮め、既にイヴァンスの眼前に剣を振り下ろそうとしていた。その振り上げられた剣身は赤くなっており、とても普通の剣とは思えないもので、まともに喰らえばタダではすまないだろう。

 イヴァンスはその剣が振り下ろされる前に後ろに下がり逃れるが、カインはすぐさま振りの勢いを利用して左足の回し蹴りを放つ。それもまたイヴァンスは後ろに回避するが、カインは今度は両手で構えた突きを繰り出す。後ろには避けず横に逃れたイヴァンスをまたもカインの連撃が襲いかかる。幾度かの連撃を避け続けたイヴァンスは大きく後ろに飛び距離を開けた。


「逃げてばっかりじゃねぇか。その腰の物は飾りかよ自称ハンター」


 イヴァンスの腰の剣を指差して挑発するカインだが、イヴァンスはそれでも剣を構える様子はなく。


「クレセールでは対人戦闘も嗜むのでしょうか、中々良い連撃でしたよ。その剣への属性付与も素晴らしい。まともに打ち合えば生半可な武器ではすぐに駄目になるでしょう」


「アンタは先生か?そんな事が聞きたい訳じゃねえっ。おいネル、お前も…どこ行きやがったあいつ」


 カインがネルに呼びかけたが返事がなかった。彼は後ろを振り返るが、先程まで近くに居たはずのネルの姿はどこにもなく、先程の連撃の際にどこかへ行ってしまっていたようだ。


「はぁ。何なんだよあいつは」


 カインは一度ため息を吐くと再びイヴァンスへと肉薄し剣を横へと薙ぎ払う。イヴァンスは先程とは違い空へと翔ける。すると、カインの横振りの剣は途中から炎を纏いその射程を大きく伸ばしていった。もし先程の様にイヴァンスが後ろへ回避していたら間違いなく直撃していただろう。

 明らかに予備動作なしのその動作を避けられてなお、カインは剣身を炎で伸ばしたままで空に居るイヴァンスへと追撃するがイヴァンスは空を自由に蹴りそれを避け続けた。しかし、何度かの追撃の後カインはニヤリと笑う。

 カインは左手のひらをイヴァンスへと向けると、なんと剣の軌跡となっていた炎が空中にいるイヴァンスを囲う大きな檻となり、イヴァンスを空で捕らえた。


「俺特性の『炎檻えんかん』だ。中々立派なもんだ、ろっ!」


 カインの声と共に檻の範囲が徐々に狭まっていく。流石に空を蹴り続けることが難しくなったイヴァンスは腰の剣を握りながら落下する。


「いやはやお見事。タレントでもこれ程の実力とは、ディーネさんだけが特別だと思っていましたが、そうではなかったみたいですね」


 落下したイヴァンスは剣を抜き炎の檻を切り裂いて強引に突破した。と、同時にカインがイヴァンスに剣の切っ先を向けていた。剣に纏われている炎が切っ先に集まり、炎の塊となってイヴァンスへと射出されてボンッ、と爆発音がその周囲に響いた。先程の魔法の反動かカインは少し離れた場所に吹っ飛んでいるが、爆煙が漂っていることから間違いなく当たった事を実感しているのか、空に浮かぶ檻を消して煙が晴れるのを体勢を整えて待つ。


「まだその余裕そうな表情は崩れねぇ、か」


 爆煙が晴れた後、無傷のイヴァンスを見てカインは悔しそうな顔をしている。しかし直ぐに顔を引き締めると、左手に剣を持ち右手に集中し始めた。


「アンタが只者じゃないのはよく分かった。だが、だからこそそんな奴にディーネを近づけさせるわけにはいかねぇ」 


「カイン!」


 カインが右手から何かを生み出そうとした瞬間、大きな声がそれを制止させた。膨らんでいた魔力の塊はその声によって萎んで消え、カインは声の主へと意識を向けている。


「爆発音までさせて、結構派手にやったにゃ」


 丁度良く授業開始の鐘がゴーンゴーンと鳴るなか、そう言って現れたのはいつの間にか消えていたネルと、事の発端のディーネだった。



 先程の争いの最後はかなり目立っていたらしく、近くの建物からタレントが覗いていたりクレセールの教員が数人やってきたが、ディーネが持ってきていたイヴァンスの紋章を見せる事で、そこまで大きな騒ぎにはならなかった。

 その後イヴァンスはタレントの三人を授業へと向かわせて、やってきた教員にことの発端を話している。とはいえ紋章云々は省き自らの隊、零番隊の勧誘目的での手合わせだと簡単に説明していたが。

 

 そして時刻は昼過ぎ、イヴァンスはクレセールを一通り見終えて一度零番隊宿舎に戻ってきていた。


「ハンドマンとハンターそしてタレント、アルイストだけで相当数の戦力を抱えていますね」


 彼が今思い出している光景は昨日のロドリゴの件や、先程のクレセール見学中の出来事か。宿舎に用意されていた保存食を消化しながら彼は情報を整理しているようだ。


「しかし早速ディーネさんの様な方が見つかったのは幸いでした。誘いに乗ってくれるかはまだわかりませんが、上手く行けば三人の隊員が確保できそうですね」


 潜在魔力、並列発現どちらをとっても重宝する事であり、それを兼ねている存在となれば喉から手が出るほどだ。そんな存在がタレントで見つかったイヴァンスは幸運に感謝するほかない。


「とはいえ、埋もれていたというのもまた事実。流石に由々しき自体だと考えるべきですね。…いやしかし、カインさんの件もありますしもしかしてアルイストではその程度と、なる戦力なのでしょうか?ううむ、一度クレセールの教員に生徒の特徴や成績が分かる評価書の様なものがないか聞いてみるのも、ありかもしれません。…しかし紋章の事は気を付けないとですね」


 八人は食事が出来るであろう広い食卓で、一人食事を終えたイヴァンスは胸から外した紋章を上に掲げて、何かを考えるかのように見続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ