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全ては竜の御心のままに  作者: 酢兎
竜争歴十六年 アルイスト連合国編
5/11

5

この話をするにあたって前話の

~こうしてイヴァンスのアルイスト連合国訪問の初日の幕が下りたのだった。~

という部分を消しました

というか書いた覚えが無いものなんですが、寝ぼけていたのでしょうか←


 イヴァンスとラックルが訓練所の外に出ると太陽が沈み始め、夕日によって町並みが紅く見えていた。鍛錬終わりのハンター達も帰路に付いているのか、人通りが多少増えている。


「零番隊の宿舎は外側、ムールの近くとなってますので少し歩きますよ」


 そもそも、イヴァンスが来るまでは零番隊の宿舎というものは存在していなかった。竜討伐隊ドラゴンバスターズ創立以来初めての零番隊の稼働となるのだからそれも当然である。零番隊という制度自体は当初から用意されていて、それ相応の実力者が見つからなかったという理由だが、そもそもがクレセールのせいというかお陰というか。クレセールの教育課程により相当数の実力者が誕生し、零番隊へのハードルが相対的に上がってしまった事が原因の一端なのは違いない。それを責めることは誰も出来ないだろうが。話がズレてしまったが、それ故に今回の為に零番隊用に新しく宿舎を用意されていた。他の部隊に比べて大きくはないが、十数人程度ならば困る事はない程には大きく造られている。


「そういえば聞きそびれていたのですが、明日からの予定等は決まっているのですか?」


「三日後に隊長全員が集まる定例会がありますので、ヴァンさんにはそれまで隊員集めをして貰おうと思っています。短い期間ですので見つからないかもしれませんが、その場合は別に構いません。三日後の定例会では特に重要な話はありませんから、ヴァンさんにとっては今日会えなかった隊長との顔見せが主になると思います」


 ラックルと歩くイヴァンスは時折通り過ぎる隊員達の視線を集めていた。見知らぬ誰かが隊長であるラックルと話しているのだから、気になるのも無理はない。新人にしては時期が遅い為例の零番隊の人かも、と予想するのは簡単だからだ。流石に二人に話しかけようとする猛者は居ないが、注目の的になるのは仕方のない事だ。


「では早速ですが明日はクレセールに向かうとします。何か手続きとかは必要でしょうか?」


「特に必要ありません。紋章を見せれば通らせて貰えると思います。しかし、どうして先にクレセールへ?やはり現役であるハンターを引き抜いた方が即戦力になって良いと思うのですが」


 ラックルの問いに頭を掻きながら少し気恥ずかしそうにイヴァンスは答える。


「少しクレセールを覗いてみたくて。私自身これまで独学でやってきましたから何か参考になる事が無いかな、と。勿論勧誘は行いますのでそこはご心配なく」


「そうでしたか。ただ、先月に多数の特進を行ってますので勧誘の方はあまり期待はしない方がよろしいかと」


「でしたら、もう最初から見学目的で行った方が良さそうですね」


 微笑みながら言うイヴァンスにラックルも釣られて笑みを浮かべていた。何処か硬い雰囲気のあるイヴァンスが冗談を言うとは思っていなかったのだろう。イヴァンスは半分以上は本気で言っているのだが、それは気付かぬが花というものだ。


「はは。三日後の朝に宿舎へ迎えを出しますので、その時まではヴァンさんの自由にしてくださって大丈夫ですよ。隊員集めは勿論して欲しいですが、ヴァンさんの実力であれば強制はしません」


 そもそもな話であるが零番隊は他の隊長と同じように、現隊長半数による認可制だ。隊長達にもそれぞれの基準があり、それさえ満たせば零番隊隊長に認められる訳で、実際の戦闘力を重視しているかというと少し違っている。だからこそ実力不足な隊長を補佐する要員として、隊員集めを推奨しているのだ。しかし、イヴァンスの実力は他の隊長達に匹敵するほどであり、その隊員の必要性は薄れる訳だ。


「そう言って頂けると助かります。では明日はクレセール、その次はここでハンターの鍛錬の様子でも観察しようと思います」


「分かりました。もし何か困った事がありましたら最初に案内された館に行って下さい。あそこは案内所を兼ねている連絡施設になります。場所の説明や、誰かに連絡する際は利用して下さい。後、ヴァンさんは通信魔法を使えませんので、お手数ですが何処かに出掛ける際もここに報告をお願いします」


 現時点でのイヴァンスの弱点といえば、やはりこれだ。あらゆる連絡手段を魔法に頼っている現状では、魔力の無いイヴァンスにとって辛い状況となっている。緊急の際や実戦での連携等、これまでイヴァンスは一人で戦っていたので不必要だったが、これからはそうも言っていられないのだ。しかし、イヴァンスとてその辺りの事を考えていない訳ではない。


「その件ですが、これを使おうと思います」


 イヴァンスが懐から取り出したのは紅い宝石を吊るしたペンダントだった。高価なものに見えるが、特にそれ以外に特徴があるように見えないただの装飾品にしか見えない。


「それは?」


「通信型の魔道具です。これは持っている者同士なら連絡を取り合うことが出来ますので、通信魔法代わりに使えます。アルイスト連合国内なら通信できますので大丈夫ですよね?」


「アルイスト全土をですか!?…ヴァンさんは中々希少な物をお持ちですね。それだけの範囲があれば問題ありません」


 魔道具自体は昔から普及されている物であるが、その効果によって価値が激変する。しかし、その大きな理由は需要の無さからくる供給不足だ。そもそも魔道具は魔法を使えない者の為の道具であり、魔法を使える者にとっては発動が楽になるな、ぐらいの認識であり必需品ではない。だから実戦での魔力節約の為の魔装や攻撃系魔道具ならまだ需要はあるが、それ以外の魔道具はあまり出回らないのだ。

 

「これも貰い物なのですけどね。数はありませんので取り敢えず一つだけ渡しておきます」


 イヴァンスは紅いペンダントをラックルに手渡すと、そう言って大事にして下さいねと付け足す。


「はい、大切に預からせて頂きます」


 ラックルは手に持ったペンダントを見るが、手にとってみても魔力も感じず本当に魔道具なのか分からないでいた。


「紅い部分に触れてると通信可能な相手が脳裏に浮かびますので、そのまま相手を選んでいただければ繋がります。それとお互いに触れていなければ通信できませんので、お気をつけて下さい。私は常に付けておりますので必要の際はお呼び下さい」


 胸元から同じペンダントを見せながらイヴァンスは言う。


(失礼ながら試運転させて貰っています。この声が聞こえていますか?)


(はい、聞こえていますよラックルさん)


 イヴァンスの話を聞きラックルは物は試しと紅い宝石に触れ、問題無く作動している事を確認した。距離までは今は試せないが、イヴァンスが嘘を付く必要も無いのでそこも大丈夫だろうとラックルは判断した。


「問題無い様なのでこちらは案内所で保管させて貰います。この事は他の者にも知らせておきますので、緊急の際はこちらを使って連絡させてもらいます。…緊急事態なんて起きないに越したことはありませんけど」


 ラックルの最後の呟きにイヴァンスも頷いて同意を返していた。平和こそが一番なのは誰もが思うことだ。


「おっと、ここが目的地の宿舎になります」


 どうやら話をしている間に着いたようで、二人は立ち止まり宿舎を見る。二階建ての長屋の様な見た目の宿舎は木造であり、鉄製が多い周りの物から少し浮いている雰囲気を感じた。


「…どうも、態々新築していただいた様子。零番隊とはいえ、数々のご配慮感謝します」


「いえいえ、その代わりと言っては何ですがこれからビシバシ働いてもらう予定ですから。あ、それから宿舎の中もイヴァンスさんの自由に模様替えしてもらっても大丈夫ですよ。中は必要最低限の物しか置いていませんので殺風景ですし。あと、……」


 他にも宿舎内の簡単な見取り図をイヴァンスに教えた後、ラックルは宿舎前から去っていった。 

 

「ふーむ。やはり早々に人を増やしたい所ですねぇ」


 一人には広すぎる宿舎に入りながら、イヴァンスは呟く。奥まった場所に建てられた零番隊宿舎は人通りも少なく、とても静かでイヴァンスはそれが落ち着かないのだろう。野宿の多かったイヴァンスにとって野外での静けさは気にならないが、逆に屋内が静かなのは気になるのかもしれない。

 そんな事を考えながらイヴァンスは一階奥の隊長室に入っていく。机と椅子と棚等、ひどく殺風景ではあるが当面必要そうな物は揃っているので暫く問題無さそうだ。机の上には話に出ていた資料が置かれており、イヴァンスは椅子に座ってそれを読み始めた。



 決して多くはないが少なくもない資料をイヴァンスが読み終えた頃には太陽も完全に沈んでおり、外は暗くなっていた。そういえばと、イヴァンスは朝から何も食べていない事に気付きどうするか考える。ラックルの話ではここに食材はなく保存食ぐらいしか置いてないそうだ。なので、夕食はザンサで取って下さいとラックルに伝えられていた。


「ま、空腹の状態で寝るのもよくありませんし、行くとしますか」


 ラックルも言っていたことだし特に咎められる事は無いと思い、イヴァンスは隊長室を出て宿舎を出てザンサへと向かった。

三人称視点の地の文が説明文になっていると思う今日このごろ 三人称ってなんだっけ(哲学

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