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投稿時間から察している方もいるかもしれませんが、割りと寝ぼけながら書いています
あれ、これおかしくね?という設定だとか、こいつ口調変わってません?とかの告知なき変更は報告して頂けると幸いです 一応読み返したりはしているのですが、常時寝ぼけている状態の自分なもので…
試験が終わり、二階の観戦室に隊長達とイヴァンスが集まる。
「…その、なんだ。言わなくても分かるだろうが、試験は合格だ」
「ありがとうございます」
「ははは。予想通りといえば予想通りですが、イヴァンスさんは本当にお強い人だ。そんな人が味方になってくれるなら頼もしい事この上ないですよ」
「だな。これからは頼りにしてるぜイヴァンス!」
ラックルとラルアは新しき仲間を歓迎している。
「ふんっ、試験は終わったようだし後は俺抜きでも大丈夫だろう?先に失礼する」
サムはそれだけを伝えると早々にこの場を去っていった。少し空気を凍らして行ったサムの後をキリアンズがフォローする。
「サ、サムさんは少し仕事熱心な方なので。決してイヴァンスさんの事を嫌悪している訳ではないんですよ。それと、合格おめでとうございます」
それを聞いて安堵している様子のイヴァンス。
ギリアムは咳払いをして周りの注目を集めた。
「ま、一応形式としてな。えー、イヴァンスが零番隊の隊長になることに反対のものはいるか?」
その台詞を聞いて他の隊長達は目を合わせる。
「異論ありません」
「僕も無いです」
「私もない」
「勿論、俺もなしだ」
「なら半数以上の隊長達の許可も出た事だし、今ここでイヴァンスの竜討伐隊入隊と隊長の話は決定とさせて貰う。改めておめでとう、イヴァンス」
「皆様、ありがとうございます。この力存分に振るわさせて頂きます。それと、良ければ私の事はヴァンとお呼び下さい」
実力的には十二分の程を見せてもらった者達にとって反対する理由等無かった。竜討伐隊隊長になるには隊長の半数以上の同意が必要となるが、今ここに五人許可を出したことによりそれは可決された。
「ま、隊長とは言っても隊員は一人もいないがな」
「それは私一人だけの隊、という事ですか?」
「いや違う。軽く説明すると、だ。竜討伐隊には現在一から十番隊までが存在する。で、ヴァンには例外枠の零番隊の隊長となってもらうわけだが、その隊員は自力で集めてもらう事になっている。あぁ、零番隊ってのはクレセールを卒業せずに、ヴァンみたいに実力だけで竜討伐隊に入った奴への席みたいなもんだ。実際に活動するのはヴァンが初めてになるが、零番隊をどんな部隊にするかは零番隊隊長、つまりはヴァンに決めてもらう事になる。例外枠ってのがどんな理由で任命されるか分からねぇってんで、じゃあそいつの得意な事をやらせりゃいいじゃねーかって訳だな」
「一応の区分として防衛部隊、偵察部隊、救援部隊、復興部隊、討伐部隊の五種類ありまして、防衛部隊が一番隊、九番隊。偵察部隊が四番隊と六番隊。救援部隊が二番隊と八番隊。復興部隊が三番隊と五番隊。討伐部隊が七番隊と十番隊とそれぞれが担っています。ですが、他の部隊の手伝いをする事もあるので、あくまで主な仕事はという程度に覚えておいて下さい。後、ヴァンさんの得意不得意は分かりませんが、最初はそれぞれの部隊の手伝いをすると良いと思います。向き不向きもあるでしょうからね」
ギリアムの説明に補足としてラックルが付け足す。イヴァンスはなるほど、と頷きながら気になったことを問いかけた。
「ちなみに隊員は何処で集めれば良いのでしょうか?流石にそこらから集める訳にはいかないでしょうし」
「他の部隊からの引き抜きが主な手段だろうな。現役だから引き抜き直後も活躍出来るのは間違いねぇしな。ただ、当然ながら引き抜く部隊の隊長と本人の許可は得てもらうぞ。その辺りはヴァンの交渉次第になってるから頑張りな。後は一応、見込みあるタレントを引き入れるのもありだな」
「タレントというのはクレセールの生徒の事ですよね?」
「そうだ。偶に俺らも視察しにクレセールに行くことがあるが、そこで見込みのある奴を特進、つまりは引き抜きだな、をさせて竜討伐隊に入隊させる事もある。タレントにはそれを希望している奴らも居やがるから、一度覗いてみることもお勧めするぜ。光る原石が見つかる事があるからよ」
「隊員については分かりました。他に知っておくことはありますか?」
「特には無いな。さっきも言ったが零番隊が活動するのはヴァンが初めてになる。例外枠だけに色々と特例も認められるし、自分で好き勝手にしても良いぜ。一応零番隊宿舎に細かい規則とかが書いてある書類を用意してあるからそれを確認しておいてくれ。その内容に反しない事であれば大抵叶えてやれると思うぜ」
「そう言われると迷ってしまいますが、最初はラックルさんの言う通りそれぞれの部隊の見学に行こうと思います」
イヴァンスが方針を決めるとギリアムが声を上げる。
「おっと、そういやこいつを渡すのを忘れてたぜ。一番重要な物だ」
そう言ってイヴァンスに小石ぐらいの大きさの竜にX印がされた紋章、竜討伐隊の証を渡した。紋章には小さく零と書かれており、零番隊専用という事なのが分かる。
「零番隊の存在は事前に連絡はしてある。引き抜きがあるかもしれねぇって事もな。つっても隊員はお前さんの顔を知らねぇからそれが身分証って訳だ。無くすなよ?」
「…こうしてこれを貰う日が来るとは思っていませんでした。大切にさせて頂きます」
イヴァンスは感慨深い様子でそれを外套の右胸辺りに付けた。
「っと、そういえば制服とかは指定されているのですか?」
「いえ、個人の自由となっています。力、速さ、防御等多種多様な事に力を注いでいる者が多いので戦闘服は自前で用意することになっているんです。強いて言うならその紋章ぐらいですかね」
イヴァンスの服装は旅人がするような物で、軽装備の部類に入る。イヴァンスは魔法による身体能力の強化が出来ない為に、出来るだけ身軽にして速さを出すことにしているからだ。他の隊長達も軽装と重装で分かれている。
「ではこのままでも良いということですね。あまり重装備は得意ではないので助かります」
「そりゃあんな飛び方するなら重装備は向かないわな。あんな飛び方、初めて見たぜ」
『魔壁』による空を蹴る移動法の事だ。普通ならば『飛翔』を使って浮遊するからだ。ある程度の慣れは必要になるが、そちらの方が空を自由自在に飛び回れるし簡単だ。対して、イヴァンスの方法は難易度が高すぎて早々実演できるものではなかった。『魔壁』は多少の衝撃で壊れるため、如何にして少ない衝撃で跳躍するかが肝になり、更には何処に生成させどうやって跳躍するかも計算しなくてはならないし、相手の行動も予想しなくてはならない。『魔壁』の発動自体は誰でも出来るが、こんな使い方をするのはイヴァンスが初めてだろう。
「対空戦が出来なくてはドラゴンと戦うには不十分ですからね。私は魔力がなくて魔法が使えないので、こうするしか無いんですよ」
イヴァンスの発言に隊長達は驚きつつも、先程の戦闘の様子から察していた様子でそこまで動揺は無かった。
「あ~、戦い方を見て若干そんな予感はしてましたが。僕にはとても考えれない事です、魔法抜きでドラゴンと戦うだなんて」
「『魔力探知』の意味がなかったの理由はそれか。てっきり隠密系でも使っているもんだと思っちまったぜ」
「驚いた。使わなかったのではなく、使えなかったというのか。私も魔法が使えない状態でドラゴンと戦うのは流石に御免被るな」
良い機会だとばかりに皆聞きたかったであろう、隊長云々の話は終わりイヴァンス個人への質問が寄せられる。
「その武器は何だ?見た目は普通だが、耐久が中々なものだし魔装か?」
ギリアムが一番気になっているのはそこだ。魔装とは魔法が使えない者でも扱うことの出来る魔道具の中で、戦闘に適した効果を持つ物の事である。魔道具はそれ自体に魔力が込められており、魔力の無いイヴァンスの様な人物でも使えるのが一番の利点だろうか。注意点としては、蓄えられた魔力は消耗品であり無くなってしまえばその力を引き出すことは不可能となる。魔力があって、魔法が使えない人物なら補充も楽に済むが、イヴァンスの様な者だと死活問題となる。一応、魔道具店に行けば補充をしてくれるが料金がかなり高めに設定されている為、新しい魔道具を買ったほうが安いという事もある。ただ、魔装の中には一点物もありそれに関しては考える余地はあるだろう。
「いいえ、特になんの効果もないただの剣ですよ。耐久性だけは高めて貰いましたけどね」
イヴァンスは剣を抜き、それを周りに見せる。ギリアムは元鍛治師としての血が騒いでいるのか興味津々だったが、他は各々一度見て満足げだった。
「魔法が、魔力がなくなったのは原因に心当たりはありますか?もし差し支えなければ詳しく教えて貰いたいのですが」
そのまま続けてラックルが気になった原因について聞いていた。彼が生きてきた中でいきなり魔力がなくなるだなんて話は聞いたことはない。あったとしても魔力切れによる一時的な物だけ。
「心当たりは一つだけ。昔に対峙したドラゴンのせいでしょう。その時に目をやられまして、それ以来魔力を体に感じれなくなってしまいました」
そう言いながらイヴァンスは眼帯を外す。露わになった左目は眉から頬まである傷によって完全に塞がれているように見えた。
「ですので、てっきり竜討伐隊ならば私の様な者も居ると思っていましたが、その反応を見る限りは違うようですね」
隊長達はお互いに目配せをするが、皆否定するように首を振っている。イヴァンスの様に顔に傷を受けた者もいるが、そんな報告を聞いたことは一度もないという事だ。
「治癒魔法士に頼んでみましたが、傷自体が治る事は無かったので恐らく呪いの一種だと勝手に考えています。なので、今更かもしれませんがドラゴンからの攻撃は当たらないのが一番でしょう」
呪いというのは今一信じがたいが、結果であるイヴァンスが居る以上それを想定しなくてはいけない。
「とはいえ、これまでその様な報告が無いという事は私が対峙した個体だけの力なのかもしれませんね。その個体は既に居ませんし多少は楽観しても良いと思います」
言外に原因は倒したと言うイヴァンスに、頼もしさを感じるのは仕方のない事だろう。
「そうですね。しかし、とてもじゃないですが楽観視出来るものではありませんので、こちらでも少し調べておきましょう。もしかしたら治療法も見つかるかもしれませんから」
ラックルの言葉を最後にこの質問は終わった。イヴァンスが眼帯を付け直すと、次は俺だとばかりにラルアが手を挙げる。
「俺が聞きたいのはただ一つ。何故そんな実力を持っていて今まで竜討伐隊に志願しなかった?あんたの実力があれば例外枠として直ぐに認められただろうしな」
人間は原因無くして急激に強くなることはない。つまりはイヴァンスの実力は今より前から凄まじいものであったと予想できる。なのに、今まで何をしていたのか、不思議に思うのも仕方ない事だ。
「まず理由の一つとして、私が武者修行の旅に出ていて世情に疎いこと。十年程前からつい最近まで西の大陸に居ましたので、あまりこっちの情勢が分かっていなかったのです。竜討伐隊の存在も最近知ったばかりですし。二つ目に、機会に恵まれなかった事でしょうか。最低な考えではありますが、襲撃が無ければ私の実力を示す機会はありません。ので、今回の件が無ければ私が志願制度を知るまではここに来ることは無かったでしょう」
西の大陸。別名、死大陸と呼ばれるそこはドラゴンが根城にしている場所であり、不用意に足を踏み入れる者には死が待っている。海を隔てた場所にあるため、簡単に行ける場所ではないがイヴァンスの様に無謀な挑戦をする者は実は少なくない。ただ、あそこから逃げ帰る事すら至難の中、修行をしていて更には生存して帰ってくる者は恐らくこれまでで彼一人と思われる。
「死大陸!?そいつは…その実力にも納得できる修行方法だな」
「どちらかと言うと隠れ潜むの事が多かったですが。流石にあそこは数が多いのでずっと戦っていたらキリがありませんし。ただ、非常に良い修行環境であるのは間違いありません。…生きていられるかは保証しかねますが」
イヴァンスも流石に肩をすくめながら言った。竜討伐隊の隊員でも、そんな無茶はしないだろう。それこそ隊長達でも油断したら死んでしまうような場所を、イヴァンスは良い修行場所というのだから末恐ろしい。
「ま、理由は分かったぜ。あんたの強さの秘訣もな。間違いなくあんたなら討伐部隊は熟せるだろうな」
少し話に出た討伐部隊は主に西の大陸に遠征をしてドラゴンの数を減らす事が目的となっている。その仕事柄実力者が多い傾向にあるが、数の現象が絶えない部隊でもある。今はちょうど遠征の最中で討伐隊の隊長二人は居ないが、イヴァンスの事を喜んで歓迎する様子は想像に容易い。
ラルアは満足気に、西の方向を見る。さっきの話から死大陸の事でも考えているのだろう。隊長となり責任を負う今ではそう簡単に単独行動など出来はしないが、やはり闘争心は抑えきれないのだ。
「じゃ~僕はあの一撃で沈めていった技について聞きたいです」
「あれは闘気法という肉体活性法を利用した技になります。しかし、闘気法は肉体に相当な負担が掛かりますのでお勧めはしません。これは魔法が使えないなりの戦い方でして、魔法が使えるのならそちらの方が絶対に良いですよ」
簡単に説明すると心臓の動きを活発化させ、全身の血流を活性化。それにより普段出すことが出来ない肉体の限界を超えて動かせることが可能となる。イヴァンスの言う通り肉体への負担は相当なものであり、闘気法の際に出る熱気は全身を巡る活性化された血流によるもの。効果は絶大であるが、そのリスクも絶大なのが闘気法の肝だ。
「ってーとあれか。アレを使う度に寿命を縮めているようなもんか?」
「そうですね」
「そうですねって…。よくそんな技を普通に使いますね!?」
キリアンズの驚きは最もだ。いくら強力な力だからと自分の寿命を縮めるようなものを、普通ならば滅多に使おうとはしない。絶体絶命の危機だとか、切り札のような使い方をするべきだ。それを実力を確かめる試験とはいえ、そんな危険な技をこう簡単に使われて早死されては隊長としては困るものだ。
「ははは。私とてそう簡単には使いませんよ。今回は試験だからこそ私の実力を見てもらいたかったのです」
「その心意気は良く思うが、自分の命を粗末にするのはいただけない。ラルアの様な者ならまだしも君の体は普通の人間なのだろう?これからは隊を率いる者になるのだから、これからはその命をもっと大切にして欲しい」
リーンハルトの忠告にイヴァンスは肝に銘じます、と返事をする。
「なぁ、その闘気法ってのは簡単に習得できるものなのか?出来るんなら俺は覚えてみたいが」
話に上げられたラルアがイヴァンスへと問いかける。その問いにイヴァンスは申し訳なさそうにした。
「ダークエルフであるラルアさんでも肉体の負担はかかるので、あまり意味は無いと思います。魔法が使えるなら尚更の事です」
「なるほどな。俺の切り札の種類が増やせるかとも思ったが、そう簡単にはいかないか」
無理に覚えたいという訳でも無く簡単に引き下がるラルア。魔力という消費が必要なものの、魔法であれば効果は劣るが闘気法の代用は利く。自身の寿命を縮めてまで使うものではないのは確かだ。
「ではキリも良い事だし私の質問で最後にしようか。ヴァン殿が竜討伐隊に入隊した理由をお聞かせ願えるだろうか」
イヴァンスはリーンハルトの質問に対して既に似たような事をラックルに答えていた。しかし、あれが本心という訳ではなかった。勿論、それが嘘だという事ではないし生活の為、というのは多分に含まれているだろう。
「…。良くある話ですよ。私に色々な事を師事してくれた人をドラゴンに殺されましてね。それが理由ですよ。…西の大陸に行ったのも元々はそれがきっかけですから」
問いかけから数秒ほど経ってそう言ったイヴァンスの瞳は、この世界でよく見るものだった。親しい人を殺されて悲哀と憎しみが混ざった独特の瞳。竜討伐隊の隊員にも多いそれは、復讐者の瞳だ。復讐という原動力はとても強く、竜討伐隊の実力者の大半は復讐を目的にしている。
「そうか、辛い事を思い出させて済まないヴァン殿」
「構いませんよ。既に吹っ切れてはいますし、こうして竜討伐隊の一員になれたんです。ドラゴン達を滅ぼす夢を叶えるために頑張っていきますよ」
イヴァンスのその台詞に隊長達も頷き返す。何処か人間離れしているイヴァンスの実力とは裏腹に、彼はとても人間らしい感情を持っていた。その事に隊長達も安心し、信頼する事となる。
「さて、アルイストへの長旅、試験、質問攻めと長々とお時間を取らせてしまいました。今日はもうゆっくりと休んで下さい。零番隊の宿舎へご案内しますよ」
ラックルがそういうと他の者は各自に解散する事になる。
「じゃ、俺も仕事があるんで先に失礼するぜ」
「僕もお先に~」
「俺はちょいとドラゴン達の再現の練習でもするかな。訓練者としてヴァンの不慣れなって発言に火が着いちまったぜ」
「ほう、ならば私がその相手をしよう。私も少し暴れたくなっていてな」
ギリアムとキリアンズは先に階段を降り、ラルアとリーンハルトは訓練を始める用意をしていた。
「では参りましょうか。宿舎はクルセの中で中央区寄りになってますので少し歩きますよ」
「分かりました」
他の隊長達の様子を見た後に先を進み始めたラックルの後をイヴァンスは付いていった。
前書きで書いている通り時々読み返していまして、その際に色々と修正をしていたりしています
大きな修正等あればその時点での最新話と修正した話にて通知致します




