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「もう少しで駐屯地ですよ。そこで手続きした後に宿舎へとご案内しますね」
「うぅ、緊張します」
「そんなに構えるなよ、ハンターになったんだからこれからは俺らの場所になるんだぜ」
「そうにゃ、気を張るだけ損にゃ」
「…おやあれは」
「おいなんか、…独特な格好の奴が近付いてくるぞ」
陽が完全に沈み人工的な明かりの中、イヴァンスと軽い荷物を持った三人は駐屯地の入り口で十数人程が集まっているのを発見する。それぞれが大きな荷物を抱えているのでどこかに行くのだと伺える。その中の一人が四人に気付いたようで、貴族が着ている衣装を戦闘用に改造した異質とも言える服装で、手を振りながらイヴァンスへと近付いてくる。
「そちらの三人が例の方々ですか?」
「はいそうです、ラックルさん。紋章ありがとうございました、お陰様で三人に無事渡せましたよ」
「昼間は驚きましたよ。偶然駐屯地に紋章を預けに来た時にヴァンさんに会えましたから。しかし…」
少し長い金髪を風に揺らしながらイヴァンスの後ろの三人を見つめる黒い瞳は、何かを探るようなものだったが直ぐに笑みへと変わる。
「いやはや、早速三人も入隊させるなんて行動力の高い人だ。ええと、一応自己紹介しておこうかな?二番隊隊長をしているラックルと言います。隊は違いますがこれからよろしくお願いしますね」
近付いてきた段階で気付いた二人は早々に、ラックルの名乗り後に気付いたカインは慌てて姿勢を正した。
「こ、こちらこそよろしくお願いします!零番隊に入隊しましたディーネ・アクロンです!」
「同じくネルにゃ、よろしくお願いしますにゃ」
「お、同じくカイン・シグニだ、です。よろしくお願いしますです」
変な語尾が付いているカインはネルに肘で小突かれていた。ラックルとイヴァンスはそれを微笑ましそうに見るとお互いに向き合う。
「昼にお会いした時にも言いましたが、今からキッカドゥに出る所だったので丁度良く零番隊の隊員さんに会えたのは良かった。将来も有望そうですし楽しみですよ」
「えぇ私には無い輝きを持つ子達です。良い勧誘になったと思っていますよ」
「それは良かったです。これから手続きですよね?では私達はお先に失礼します。また定例会でお会いしましょう」
ラックルは手を振りながら元いた場所に戻り、隊列を正してムールの方へと向かっていった。それを見ていた三人は思い思いの感想を呟いている。
「二番隊隊長ラックルさん…ヴァン隊長と同じく優しさと強さを秘めている凄い人ですね」
「今までは遠目でしか見たことなかったから気にならなかったが、急所は守れるだろうけどよりにもよってなんであんな服が基本なんだろうな」
「にゃー達もいつかあんな風に隊列を組んでどこかに行くのかにゃ。ああいうのはちょっぴり苦手にゃんだけどにゃ」
「それは今後次第ですね。さて、早く手続きを終わらせてしまいましょう」
手続きなどと言ってもそう手間のかかるものではなく、用意された専用の皮紙に求められたものを書くだけで、その内容は二つであり自身の情報と家族の所在のみ。そもそもハンターをハンターとして認可するのは紋章だけであり、公的にも紋章以外のものは必要としておらず、稀に成り済まし防止の照会をすることがあるぐらいだ。ではなぜ手続きを必要としているかだが、駐屯地引いては国が管理する為なのとは別に副次的効果がある。それはハンターが死亡した際の報告先登録であり、移り代わりの激しい竜討伐隊にとってはこちらが主要だとも言う人もいるぐらいだ。
なお本来は手続き終了後に所属先の紋章が渡されるのだが、イヴァンスが昼間に無理を通して紋章を先に受け取っていたので零番隊新隊員の三人は既に紋章を付けている。ちなみにイヴァンスは特例で入った故に手続き等を飛ばして紋章を渡された為、手続きをしておらずする気配もない。死なぬという自信の表れかあるいは…。
イヴァンスを除く三人が駐屯地にて奥の個室に案内されてイヴァンスが一人待つこと十分程、書き終えたらしい三人が案内人と共に戻ってくる。
「お疲れ様です。後は宿舎に荷物を置いて歓迎会を兼ねた食事にしましょう。皆さん、どこか行きたいお店などありますか?」
「わ、私はどこでも大丈夫です」
「俺もどこでも良いけどよ、どうせなら豪勢なところに行きてえな。アンタが金は出してくれるんだろ?」
「三人の歓迎会ですので勿論。ただ私はアルイストにはつい先日着たばかりなのでそういったお店に詳しくなく、希望があればと」
「あ、それじゃ行きたい所があるにゃ!最近出来たばかりの超美味しいって評判のお店にゃ!」
「あぁ、でもあそこは…ちょっと高すぎるんじゃ」
「金額については気にしなくても良いですよ。お二人も希望は無いようですし、ネルさんの場所にしましょうか」
「やったにゃ!人のお金で食う飯は美味しさ倍増にゃ!」
「はっ、たらふく食ってアンタの財布を軽くしてやるとするか!」
カインとネルの二人は既に食事の事に頭がいっぱいなのか浮かれて急ぎ足になっていて、それを少し遅れてイヴァンスとディーネが付いていく形になっていた。
「すみませんヴァン隊長、二人がはしゃいじゃって。厳しくしないとあの二人は聞かないので、気に障ることがあれば強く言って下さいね」
「私としては別に構いませんからね。変に気を使わせてしまって軋轢が生まれるよりかは、懇意にしてもらった方が連携も取りやすいでしょうし」
「ヴァン隊長が良いなら、良いんですけど」
「むしろ、今まで彼らのような方達と触れ合う機会の方が多かったものですから、ここに来てから敬意を持って接せられる事が多くて少し照れてしまいます。勿論悪い気持ちはしませんけどね」
笑みを浮かべながらイヴァンスはどこか遠い場所を見るように空を見上げ、釣られてディーネも同じ様に空を見上げた。既にミナトリアの停泊を終了して移動しているアルイストの上では星空の位置も少しずつ移動しているが、陽が沈んだ空には陽の光に負けじと頑張っている星々の輝きはとても綺麗な光景だ。
「私は暫く世界を旅していましたが、星空はどこで見たとしても変わらずにそこにあって、見る人を魅了する光景だと思っています。そんな素敵な星空を、安心して見れる人が少しでも多くなれるように頑張りましょうね、ディーネさん」
「っはい!」
「…ほらほら二人共。いくら明かりがあるといっても夜ですからはしゃいでいると転けてしまいますよ。それに宿舎の道はこっちです」
「子供扱いかよ!つうか俺らが宿舎の場所を知ってるわけ無いだろ!」
「じゃあにゃんで前を歩いてたのかにゃー?」
「お、ま、え、も、だ、ろ!」
少し気恥ずかしくなったのか、イヴァンスは前に出て二人の相手をすることにしたようだ。ディーネはそれを見てふふっと笑みを零し、胸に手を当てる。先程のイヴァンスの言葉を心に刻むように。
「ヴァン隊長の役に立てるように頑張らなくちゃ!」
そう言って前に合流して四人になった零番隊は、和気藹々としながら宿舎への短い道のりを歩いていく。
その後荷物を置いた一行が高級飲食店でカインは宣言通りイヴァンスの財布をかなり軽くすることになるが、イヴァンスは涼しい顔をしておりそれを見てカインはお腹を抑えながら悔しがるのだった。
かっこいいセリフを言おうとして滑ってる感
2000字程度なら一週間あれば出来そう?な気がする!
個人的にこのクオリティでは満足行きませんが投稿しないよりかはマシ、なのかなぁ




