表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふたり並んで  作者: ユウリ
9/11

激突男子

「やめて、ユウキ!」


 両手でユウキの体を押しやろうとするけれど、毎日の部活で鍛えられたユウキの体は、わたしの力ではびくともしない。


 どうしてこんなことになったの?


 涙で視界が歪む。


 みんなから好かれている人気者のユウキ。いつも笑顔のユウキ。わたしは、彼をこんなにも追い詰めていたの?


 そのとき、背後でドアの開く音がした。玄関に光が射し込む。


「なに、やってるんだ?」


 頭上から、かすれ気味の声が降ってきた。


「ナカ? おまえ、どうして……」


 ユウキが動揺したその隙をついて、わたしはユウキの腕の中から逃げ出した。ナカが、わたしをかばうように体を割り込ませる。


「おまえがなんの目的もなくおれに関わってくるなんて、考えられない。なにかあるんだろうと思った」

「どういう意味だよ」


 ユウキの顔が引きつったように歪む。


「おまえがおれに近づくのは、おまえにとってそれがなんらかのメリットになるときだけだ。そのことを思い出した。たとえば内申書のために、先生に好印象を与えたいときとか、気になる女子の気をひきたいときとか、な」

「たとえそうだとしても、他人に関心のないおまえには関係のないことだろ」

「ああ。だからこれまで関与しなかった」

「じゃあ、なんでここに現れるんだよ!」

「おれのせいで誰かに迷惑がかかるのは嫌なんだ。こいつは連れて帰る。じゃあ」


 ナカがわたしの手をつかんで外に出る。


「待てよ!」


 呼び止めるユウキの声を聞きながらも、ナカは足を止めない。

 道路に出たところで、わたしは振り返った。

 ユウキが泣きそうな顔で玄関に立っているのが見えた。


「ユウキ、ごめん」

「ミサちゃん……」

「本当に、ごめんなさい」


 それだけ伝えると、わたしはユウキに背を向けた。

 ユウキに対する気持ちはぐしゃぐしゃで、まだ整理できていないから。

 相変わらずふらふらしているナカと並んで、歩き出す。

 こんな状態なのにわたしのために来てくれたんだと思うと、涙が出るほど嬉しかった。


「ありがとう」

「自分のためだから」


 ナカはうつむきがちにぼそっと呟く。

 そんなナカの不機嫌そうな横顔を見つめていたから、気づくのが遅れた。


「あ!」


 わたしの声と、ナカが電信柱にぶつかった鈍い音が響くのは、ほぼ同時だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ