召喚者は召喚されたがそれを理解するのには時間がかかる。
「よくぞ来て下さった。勇者殿よ。」
俺は気付くと、西洋風の建物の中にいた。
周りにはローブを被った人たちと装飾の派手なおじさん達もいた。
俺は頭をフル回転させて、今の状況を理解しようとする。
確か通っている高校に登校していて、それで気づいたらここにいたと。
そして、この見知らぬおっさん達、髪の毛も金ピカだったり銀色だったりで明らかに日本人じゃない。
つまり、この状況は・・・テロリストによる日本人誘拐事件だ‼︎
そんなわけないのだが。
だが、おかしいぞ、誘拐事件ならあの魔法陣は説明がつかない、は!そうか。
「おい、聞いているのか?」
そんなことを考えているうちに、おっさん達の中でも一際は偉そうな奴が話しかけてくる。
これはもしや、ウワサの異世界召喚だー‼︎
で、この人たちは俺のことを勇者って呼んできてるから俺は勇者だ‼︎
そして、勇者といえば魔王退治、そしてハーレムーーーーー!!
「国王様、こやつはもしや伝承にあった勇者ではないのかもしれません。」
国王と呼ばれている一番偉そうな奴の隣にいた(見た感じ)二、三番目に偉そうな奴が言った。
つ・ま・りこの人たちの言うことを聞けば俺の時代がくる?カモォーン、マウィ、セェンチュリィー!
だがだが、
「うむ、その様じゃのう、伝承にあった勇者はこの世界の言葉を話せることができるとあったが、こいつは話すどころか意思疎通も出来ておらぬ。カッ、どうやら時間の無駄だったのう。勇者ではないクズなどいらぬは。ここから追い出せ。」
は、クズ?
俺は聞き捨てならない事を言われた。
「おい、おっさん今俺のことをクズって言ったか?」
俺はおっさんを睨みつける。
おっさんは今まで黙っていたおれが喋ったことに驚いた顔をし、ローブを着た男たちがおれを怒鳴りつける。
「貴様!役立たずの癖に国王様に向かって無礼な口の聞き方を!」
役立たず?俺が?ふざけるな!
俺の心の怒りを知らずに、国王と呼ばれるおっさんも俺に怒鳴りつける。
「ハッ、やっと喋りおったと思ったらその口の利き方は何だ!貴様はやはりクズではないか。いや、ただのガラクタに過ぎぬかもしれないな。」
あーだめだわ。この人たちは召喚した人をただの道具としか思っちゃいないわ。
そういう奴らはだいたい悪人って相場が決まっている。そんな奴らは裁きを下そう。
「火玉」
俺は異世界にいったら必ず使うだろう魔法第1位の魔法(そんなランキングがあるかのか?)を唱える。
するとそソフトボール程の大きさの火の玉が現れて、そのままおっさんに飛んでいく。
おお、魔法が打てた!魔法ってあったんだ。
異世界だからって事で、ダメ元で試してみたけどできてよかった。
「国王様‼︎」
ローブをきた人たちは、急いでおっさんの周りに障壁の様なものを作るとそれに飛んでいった火の玉が当たり弾ける。
「ひぃいい!!」
障壁の中にいたおっさんは悲鳴をあげる。だが、そんなんじゃ俺をゴミ扱いした事の償いにはならないぞ。
「貴様、わしを誰だと思っている!誰でもいい、この者を殺せ!」
「「「「「「ハッ、」」」」」
「燃え盛れ、ファイヤーボール」「吹き飛ばせ、ウィンドボール」「凍りつくせ、、アイスボール」「鳴り響け、サンダーボール」「塗り潰せ、ダークボール」
おっさんが命令するとローブのきた人たちが 俺に対して、火の玉、空気弾、氷の玉、雷の玉、闇の玉、などを撃ってそのすべてが俺を目掛けて飛んでくる。
上等だ、受けて立とう。
出てこい、かっこい技の名前、
「龍の咆哮」
またしても魔法陣から出てきた、しかしその凄さはファイヤーボールの比ではない魔法。
ドラゴンブレスは俺に飛んできた魔法とぶつかると同時に相手の魔法を分解、消滅させながらも全く勢いを衰えなかった。
そして床をえぐりながら飛んでいく衝撃。
おっさんは驚きを隠せないように叫んだ。
「ば、バカな宮殿魔導師の魔法を相手にいとも容易く競り勝つだと!?」
てか、おい、いつの間に側近たちも障壁の中に入ったんだ?
まぁ、そこが安全とは限らないがな。
ドラゴンブレスは障壁に当たっても消える事なくその威力を発揮し、障壁にめきめきとヒビを加えていく。
王宮魔導師たちが横から障壁を修復していく。
だが、それよりも壊れるスピードの方が早い。
「ひぃいい!!殺す気か!今すぐやめろ!殺す気か!」
大丈夫、一般高校生には殺しなんて御恐れた事できませんから。
ちょっと、恐怖を心に刻み込んでもらうだけですから。
そして、遂に障壁がパリッっと音を立てて割ると同時に、ドラゴンブレスがドッゴーンと爆発してその部屋が吹き飛んだ。