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私の魔法使い  作者: 小高まあな
第一章
5/27

1−5

 次の日は、土曜日。学校は休みだったので、朝から図書館に向かった。あの人達がいつくるかわからなかったから。

 私が行くと、すでにあの人達は来ていた。

 レファレンスカウンターで、彼女がなにか必死に訴えている。

「ノート、昨日忘れてっ」

「昨日ですか? そうですねー、ノートの忘れ物はなかったですねー」

「でもっ」

 ぐっとカウンターに身を乗り出す彼女のを、ややぞんざいに彼が引き止める。

「声でかい」

「だって」

 振り返った彼女は涙目だった。

「ないものはないんだってば。あきらめろって」

「でもっ」

「なんのノートだか知らないけど、そんな大事なものならちゃんと持っとけ」

「……そうだけど」

「すみません、万が一あったらとっておいてください」

「あ、はい、それは勿論」

「お願いします。……だから、真緒、今日は帰ろう」

「だけどっ」

 カウンターからてこでも動かない、と言った顔をした彼女に、彼は苦虫をかみつぶしたような顔で頭を掻く。

 これ、のことだ。

 鞄からノートを取り出す。

 本当は今日、しれっとカウンターに渡しておいて、素知らぬフリをしておくつもりだった。ずるいことだとは、わかっていたけれども。

 どうしよう。

 こんなに大事になって、今更でていくなんて怖くてできない。恥ずかしい。

「真緒」

 だけど、彼女はあそこで、あんな風に泣きそうになっている。それを見過ごすこともできない。

 しちゃいけない、と思う。

 大きく深呼吸。

 仕方ない。

 持って帰ったのも私で、拾ったのも私で、悪いのは私だ。

 どきどきと、心臓がうるさい。

 カウンターに近づいて、声をかける。

「あのっ」

 盛大に裏返った。

 咳払い。

「あ、あのっ、こ、これですか?」

 言いながらノートを差し出すと、泣き出しそうな顔をした彼女がこちらを見て、ノートを見て、ぱああああっと顔を明るく、笑顔にした。

「あたしのっ!」

 ぴょんっと跳ねるようにして、私の手からノートを受け取る。

 嬉しそうにそれを胸に抱く。

「あ、あのっ、昨日落としたの、拾ってて、あの、間違えてっ、持って帰っちゃってて、すみませんっ」

 彼女はまったく訊いてはいないが、言い訳を繰り広げる。

 彼女は浮かれたようにノート見つめて笑っている。

「礼を言え、おまえは」

 そんな彼女の頭を、彼は軽く叩き、

「すみません、ありがとうございました」

 私に向かって頭を下げる。

「あ、あ、いえ、すみません」

 私も慌てて頭を下げる。

 持って帰っちゃって、すみません。

「ありがとうっ!」

 彼女もぴょこんっと頭をさげた。

「お騒がせしました、すみません」

 彼はカウンターの人にもそう言って頭をさげ、

「ほら、帰るぞ」

 彼女の手をとると、すたすたと、流れるように図書館から出て行ってしまった。あまりに速い動きに、なにも言葉がかけられなかった。

 カウンターのお姉さんを見ると、展開の早さに圧倒されたような顔をしていた。

 が、私が見ていることに気づくと、

「忘れ物は届けてくださいね」

 感情を持て余したかのように言われた。

「……すみません」

 ぺこり、と頭を下げると、逃げるように奥に向かった。

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