幸福Ⅱ
幸福にの続編、書いてみました。
続編なので自分のイメージを裏切られる人もいると思います。
お母さんはおきない。
お母さんの体には虫がたかり、ひどく腐敗し始めていた。
僕は諦めて落ちているナイフを拾い、お母さんの指を一本切り落としてポケットに入れ、歩いた。
出口がどこかにあるはず。この細く息の詰まるような道から出られるはず。
4歩歩く。後ろを、お母さんの方を見る。不安しかない。何か心に穴が開いたような気がした。
ここはどこなんだろう。いい加減帰りたい。これは夢だから、きっと目から冷めればいつもの日常が・・・。
そう自分に言い聞かせた。
あの男の人は何でお母さんを殺せって言ったんだろう。不可解な楽器の音。お母さんに似た謎の女。
恐ろしい。
後ろを振り向くともうお母さんの姿は見えなかった。僕は前に進んだ。ナイフを握り締めて。
今このナイフを使って自分を殺すこともできる。難しいことではない。でも、もう少し歩いてみよう。
足はパンパンになり、足の裏には石が入っているようだった。
足が重い。うまく動かせない。
僕はついに、歩けなくなった。その場に座りこみ、顔を伏せた。
しばらくして意識が戻った。
顔をあげると、そこは僕の家だった。横を見るとお母さんが座ってテレビを見ている。
なんだ、やっぱり夢だ。よかった。
僕は自分の部屋に行こうと席を立った。ドアを開けるといつもの廊下が・・・無かった。
レンガ造りの壁に冷えた石の床、目の前には長い廊下、横にはらせん状の階段があった。
「ここは・・・?いったい・・・。」
きっとまだ夢の中なんだ。きっとそうだ。でも、今確かに目覚めたよな・・・。
そのとき、廊下の壁にきれいに並んだ扉のうちひとつが開いた。そこから女の人がでて来た。
僕は目を疑った。うそだ。だって目の前にいる女の人は、さっきの夢に出てきた、お母さんの髪の毛をわし掴みにしていた誰かなんだもの。
そのとき、奥の方からトランペットの音がした。心臓が止まりそうなくらいびっくりした。
「あら、なにしてるんですか。もう式典の開会式、始まってますよ。」
そこにいる誰かは僕に言った。
「式典・・・?」
僕は問い返した。
「何言ってるんですか。今日は大事なあなたの妹の誕生式典でしょう。行きますよ。」
妹?僕は・・・。
「僕は妹なんかいない!」
少し強めに言い返した。怖い。そのとき、ナイフの存在を思い出した。僕はとっさにポケットの部分を触った。ズボンの左ポケットに細長い金属のようなものが入っているのを確認した。
「寝ぼけているんですか?いいから、行きますよっ。」
そこにいる誰かは僕の腕を引っ張って廊下を進んだ。僕も仕方なくついていった。
連れて行かれた先には、大きな扉が待ち構えていた。
ぎぎぎいっと不気味な音を立てて扉が開いた。中にはたくさんの人が長いテーブルの前に並べられた椅子に座って僕の方に視線を向けていた。
「ここに座って。」
そこにいる誰かは小さな声で僕に指示した。周りから声が聞こえる。
「あのこって、王子でしょう?」「遅れてくるなんて、恥ずかしくないのかしら。」
やめてくれ。怖い。僕は左ポケットに手を当てた。
太鼓の音が鳴り響いた。前の広いスペースにきれいな金髪の女の子が出てきた。
僕にはわからない言葉を発して、皆から拍手をもらっている。
この子が、僕の妹・・・?
そのときだった。突然電気、いや、つるされていたランプの中の蝋燭の火がいっせいに消えた。会場は暗闇に包まれた。当たりはざわついている。
僕の妹と思われる女の子がいたスペースに明かりがともった。そこには信じがたい光景が
広がっていた。
女の子は不気味な死神のようなお面をつけた人に髪の毛をわし掴みにされていたのだ。会場に誰かの悲鳴が響き渡る。そのとき僕の隣の人が僕にぶつかった。
「あ、ご、ごめんなさい。」
暗闇の混乱の中で謝罪する。
「ああ。気にすんな。」
僕はまた、心臓が苦しくなった。
ああ。気にすんな。と言った人物は、僕のお母さんを殺せ、と言っていた不気味な男だったからだ。
手の震えが止まらない。男はもう消えていた。
そのとき、また新たな悲鳴が聞こえて僕は前を見た。恐怖以外の何も無かった。女の子はナイフで指を切り取られ、泣き叫んでいた。
会場が一瞬静かになり、その直後、パニックになった人々が出口に走る。僕は流れる人の波に逆らい、前に進んだ。自分でもなぜかはよくわからない。
会場から人がいなくなり、僕は死神のお面二人組みと向き合っていた。
「もういい・・・いいから・・・はやく殺して・・・お願い・・・。」
女の子は力なく嘆いた。僕はポケットに手をいれナイフを取り出し、しっかりと握った。
そして、女の子の髪を掴んでいる奴に向かって突き進んだ。ナイフはきれいに腹に入っていき、僕の手は血にまみれた。
あれ?・・・。
相手は気持ち悪いくらい笑顔のお面をしたまま倒れた。男の姿はもう無かった。逃げたのだろう。
僕は腰を抜かした。
「ナイフを・・・貸して・・・。」
女の子はまだ嘆いている。
僕は女の子をおんぶして会場の外に出た。警察らしき人がたてを持って張り込んでいた。僕はナイフを捨てて手を上げた。
女の子が説明してくれたおかげで僕は悪くないことが証明された。
お母さんが飛んできた。無事でよかった、と僕と女の子を抱き寄せた。
これは夢だ。僕の思い通りになるはずなのだ。
式典は中止され、僕たちには外出禁止令が出された。
でも僕はこの世界が気になってこっそり外に出ていた。
ここはお城のようだ。庭には気が生い茂り、さっきまでさ迷っていた道と似た道があった。
僕は吸い込まれるようにその道に入った。そこには女の子が倒れていた。指が1本無い。顔はぐちゃぐちゃで、もう確認することはできない。
そのとき、道は一気に伸びた。前へ、後ろへ、時間を無視してぐーんと伸びた。僕は流れに巻き込まれ、死体と反対の後ろ方向に進んだ。
放り出された。そこは病院だった。目の前には僕がいる。白衣をきた人が僕の顔に白い布をかぶせる。
「ご臨終です。」
と静かに告げる。
これは夢、だよね?
みんな、僕のこと見えないのかな。ねえ?夢でしょう?そのとき、僕は気づいた。僕のすぐ隣に、若い男のお兄ちゃんが座りこんでいる。
「僕はどうなるの?」
たずねてみた。
「ココまで来てまだわからねえか。珍しい奴もいるもんだ。死んだんだよ。察し悪い奴だな。」
死んだ?僕が?
その瞬間、空が歪み、白くなった。
あれ?僕は、ここで何をしているんだっけ。なんでここにいるんだ?何か忘れている気がする。すっきりしない・・・。
僕はまたさ迷った。誰か、殺してくれないかな。僕に気づいて。誰か。




