出会い
・・ザァザァ・・
聞こえてくる音。
・・・ド…ドク。
・・・なさい。
・・・ドクドク。
目覚めなさい。
誰かが、背中を押す。
・・・ドックン。
さぁ、扉を開けて。
「行ってきます。姉さん」
写真の中の姉さんはいつも穏やかで、僕を見守ってくれる。
姉さんが行ってた高校に、僕は行く。
姉さんがやりたいと思ったころを、僕は今やっている。
あの日。
母さんが、泣いた。
父さんが、ただ静かに見ていた。
そして、僕のすべてが変わった。
誰よりも側にいたい。
そう願った日からこの日まで、俺はあいつの側にいる。
「伊織(いおり)。今から、ゲーセンいかね??」
「やめとく。どうせ、あいつもいかないし」
「お前、そればっかだな」
悪友たちが、そう笑う。
「いいじゃんか、どうせお前らも一緒だろ」
「だな。あいつがいるから、ゲーセン行っても、面白いし」
「にしても、今どこにいるんだ??連絡付かないし」
「・・・どうせ、どこかで寝てるんだろ」
「探しに行くか」
俺は、そう言って、あいつを探した。
誰よりも大好きだったあの人を俺は傷つけてしまった。
誰よりも大切だったあの人から俺は大切なものを奪ってしまった。
俺の罪・・・
消えることのない癒えることのない傷をあの天使が癒してくれた。
たったの一言で。
それは、どんな言葉よりも今もそこにある。
俺の天使・・・
俺の隣に天使はいる。
死の天使。それとも…
あのとき舞い降りたのは・・・
覚えてるのは白い羽根。
「・・・ざめなさい」
あのとき聞こえたのは、誰の声。
「・・・ざめなさい。あなたの扉を開けて」
一筋の光。
暖かで、懐かしい場所…
消えていく、何か。
「・・・さぁ。早く・・・」
桜咲く。
ありふれたフレーズが、喜びの声になる。
「ぁ、あった」
僕は、握りしめた受験票を手にほっと溜息をもらす。
姉さんが半年だけ通った高校。
そこを受験すること。
それが僕の目標になったあの日。
これで、夢が一つかなう。
そう思うと、少しだけ、肩の力が抜けた。
『あなたは詩織(しおり)ではないのよ。あなたの好きな道を進んでいいの』
そう言って寂しそうに笑った母さんの顔が、浮かぶ。
「これで少しは、安心するかな」
誰にともなく呟いて、僕は、4月から通う学校の門を出る。
「会長」
更新は、かなり遅いと思いますが、少しずつでも前に進むような物語を書いていきたいと思います。
気長にお付き合いくださいませ。