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【完結】追放された無能聖女ですが、世界樹の精霊王に拾われて1000%偏愛されています 〜今さら戻れと言われても、もう「奥様」なので無理です!〜  作者: ましろゆきな
第一章:追放された無能聖女と、世界樹の精霊王 

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第二話:目覚めたら伝説の精霊に閉じ込められていました。〜私の世界は、彼の手のひらに〜

 1:楽園の目覚めとエルナの混乱


(ふかふかのベッド。エルナがゆっくりと目を覚ます)


「……え、あ……?」


 エルナの視界は、今まで見たことのない光景で埋め尽くされていた。 石造りの冷たい聖堂でも、じめじめとした衛兵詰め所の一角でもない。 天蓋から薄布が柔らかく垂れ下がり、部屋を満たすのは、どこか懐かしい森の香り。 自分の肌は、まるで上質な絹のようにつるつるだ。長年の疲労で酷使された痕跡など、どこにも見当たらない。


(夢、だよね……? いや、現実……?)


 そっと手を伸ばすと、そこに温かい感触があった。 自分の手を、大きな手が包み込んでいる。 恐る恐る視線を辿れば、そこには昨日、意識が途切れる寸前に見た、神々しい美貌の青年がいた。 銀色の髪は月の光のように輝き、深い森の瞳は、まるで遠い星々を見つめるかのように神秘的だ。


 青年――セフィロスは、エルナの手を握ったまま、彼女の顔をじっと見つめていた。その表情は、まるで古の絵画から抜け出た聖者のように、完璧に穏やかで優雅だった。


「……おはよう。私の愛し子」


 低く、甘く響く声。 セフィロスは、エルナが目覚めたことを確認すると、ゆっくりと顔を寄せてくる。 そのあまりの近さに、エルナの心臓がどきりと跳ねた。


(ひ、ひゃい!? え、えっと……なぜ、こんなに顔が近いのでしょうか? 夢じゃないんですかこれ!?)


 昨日の記憶は、霞がかったように曖昧だ。死の淵で出会った『精霊』と名乗る存在だったことは、かろうじて覚えている。だが、なぜ彼は私の手を握り、こんなに顔が近いのだろうか。 「夢です」と自己暗示をかけるが、彼の肌の温かさ、視線の熱が、それが現実だと突きつけてくる。 エルナの思考は混乱し、ただ「キョドる」ことしかできなかった。目線が定まらず、どこに視線を置けばいいのかも分からない。まるで初めて現代家電に触れる異世界人のような挙動不審ぶりだ。


 2:愛しき最推しへのカオスな歓喜


(……ああ、愛しい。ようやく目覚めてくれた、私の光。私の至宝。私の、最推し!)


 セフィロスの内側では、天地がひっくり返るような歓喜の嵐が吹き荒れていた。 数百年、いや、気の遠くなるような永い時を。 ただひたすらに待ち焦がれた『主』の気配。 それが、こんなにも傷つき、疲れ果てた姿で、自分の根元に倒れ込んでくれた。


(偶然? いいや、運命だ。君は私を求めて、私の元へ辿り着いたのだ。ああ、これぞ至高の邂逅!)


 目覚めたエルナの瞳が、自分の姿を映している。 その瞬間、セフィロスの胸の内では、あらゆる感情が奔流のように渦巻いた。


(この瞳が、私だけを映している……! そのままでいてほしい。永遠に私だけを見ていてほしい。この世の全てを消し去ってでも、彼女の視界を私で埋め尽くしてしまいたい。彼女の呼吸が、私以外を吸い込まないように、この腕の中に閉じ込めてしまいたい!)


 衝動的に抱き締め、そのまま融けて一つになりたいという欲望と、あまりの愛おしさに震える手。 決して離したくないのに、触れて壊してしまわないかという一抹の不安。 彼の「威風堂々たる精霊」としての完璧な表情の裏では、飛び上がりたい衝動と、エルナの全てを貪りたい欲望が綯い交ぜになった、甘美なカオスが爆発寸前だった。


(しかし、まだだ。永い時間で培った抑制力。このカオスを表に出しては、この子が怯えてしまう)


 セフィロスは、その感情の奔流を完璧に隠蔽し、ただ優雅に、エルナの震える手をそっと撫でる。 「さあ、もう恐れることはない。君を縛るものはすべて私が断ち切った。これからは、私の腕の中だけが君の世界だ」 その言葉は、まるで慈愛に満ちた子守歌のように、エルナの耳に届いた。 だが、その真意に気づく者は、セフィロスを除いて一人もいないだろう。


 3:チョロい二人の、甘すぎる共鳴


「……えっ、あの……。体が、すごく軽いです……」


 エルナはベッドの上で自分の手を握り、開き、その感覚を確かめる。 万年肩こりのようだった重圧が消え、視界は驚くほどクリアだ。何より、魔力回路の奥まで温かな力が満ちていて、まるで全身が「光の雫」に浸されているような心地よさだった。


「私が少し、手を貸しただけだよ。君の中にあった澱みを払い、私の魔力を分け与えた」


 セフィロスが事もなげに言う。 だが、それがどれほどの奇跡か、エルナには分かった。これほど濃密で優しい魔力を他者に、それも完全に馴染む形で分け与えるなど、人間には不可能だ。


(こんなに、体が楽なのは生まれて初めて……。この人、本当に悪い人じゃないんだ)


 前の国では、倒れるまで働いても「もっと出せ」と怒鳴られるだけだった。 けれど、この銀髪の精霊(?)は、見返りも求めず自分を癒やしてくれた。


「あの……ありがとうございます。……セフィロス様、ですよね? あなたは、私の命の恩人です」


 エルナは、それまでの戸惑いをどこかへ放り投げ、真っ直ぐにセフィロスを見つめた。 その瞳には、一点の曇りもない純粋な信頼と、深い感謝の光が宿っている。 あまりに過酷な環境にいたせいで、エルナの「警戒心」というハードルは、優しさ一振りで軽々と越えられてしまったのだ。


「――っ」


 その瞬間、完璧な「神の仮面」を被っていたセフィロスの喉が、小さく鳴った。


(なんだ、今の瞳は……!?)


 セフィロスの内心は、今や限界まで膨らんだダムのようだった。 自分を拒絶することもなく、それどころか、宝石のように澄んだ瞳で全幅の信頼を寄せてきている。 「好き」や「愛している」という言葉以上に、その無防備な視線は、セフィロスの独占欲という名の導火線に火をつけた。


(ああ……! チョロすぎる……! いや、私がではない、この子がだ! なぜ、こんなに無防備なんだ? 私がその気になれば、今すぐこの場で君を飲み込んでしまえるというのに……!)


 恍惚とした熱が、セフィロスの背筋を駆け上がる。 自分に向けられた信頼が嬉しくて、愛おしくて、そのまま彼女を押し倒して、二度と外の世界など見せないように閉じ込めてしまいたいという猛烈な衝動。 鼻の奥がツンとするような、泣き出したいほどの多幸感。


(ダメだ、落ち着け私。ここで理性を失えば、この尊い光を怖がらせてしまう。今は……今はただ、この『報酬』を静かに享受するんだ)


「……礼などいらないよ。君が私に触れさせてくれるだけで、それだけで私は……救われるんだから」


 セフィロスは、震えそうになる指先を隠しながら、エルナの頬をそっとなでた。 その手つきはどこまでも紳士的だが、瞳の奥には、今にもエルナを「食べて」しまいそうな、ドロリとした濃密な情熱が隠しきれずに漏れ出していた。


 4:聖なる果実と、精霊の不穏な喉鳴り


「お腹が空いたかな? 君のために、この森で最も甘く、滋養に富んだ果実を用意したよ」


 セフィロスが指を鳴らすと、どこからともなく精霊たちが現れ、宝石のように輝く銀色の皿を運んできた。そこに乗っているのは、見たこともないほど瑞々しい、淡い桃色の果実だ。


「わぁ……綺麗……。あの、いただきます!」


 エルナが自分で手を伸ばそうとした、その時。 セフィロスの大きな手が、そっと、けれど逃げられない強さでエルナの手首を制した。


「……セフィロス様?」 「ダメだよ、エルナ。君はまだ、指一本動かしてはいけない。私が君に、すべてを与えると決めたんだ」


 セフィロスは、優雅な手つきで果実を一口大に切り分けると、それを銀のフォークに刺し、エルナの唇へと運ぶ。


「さあ、口を開けて。……あーん」


(あ、あーん……!?)


 顔が、熱い。 こんなに美しい人に、赤ん坊のように食事をさせてもらうなんて、前の国では考えられなかった。恥ずかしさで爆発しそうになりながらも、エルナは断りきれず、小さな口をそっと開けた。


(※この先に挿絵があります)



挿絵(By みてみん)


「……ん……。あ、甘い……っ」


 果汁が口の中に広がると同時に、エルナの頬がふわりと緩む。 その無防備な、とろけるような笑顔。 それを見た瞬間、セフィロスの表面上の「微笑み」が、一瞬だけピクリと歪んだ。


(……ああ。なんて、なんて無防備に、そんな声を出すんだ……!)


 セフィロスの内心は、もはや「推しへの感動」を通り越し、獣のような渇望が暴れ回っていた。 果汁で濡れた彼女の唇。咀嚼するたびに動く、細い喉仏。 自分が与えたものを、彼女が体内に取り込んでいるという事実に、脳を焼かれるような独占的快楽を覚える。


(本当は、果実などではなく、私自身の魔力を、私自身のすべてを、その内側に流し込んでやりたい……。君を私の色で染め上げ、二度と他の何者も受け付けないように、隅々まで書き換えてしまいたい……!)


「美味しいかい?」


 口から出た言葉は、どこまでも慈愛に満ちた聖者の声。 だが、その視線はエルナの唇に釘付けになり、黄金色の瞳の奥では、どろりと濁った情熱が渦巻いている。


(触れたい。もっと深く、その柔らかい熱の中に。私が人の形をとったのは、君と『交わる』ためなのだから……)


 そんな真っ黒な本能を必死に押し殺し、セフィロスは「甘えん坊」を装うように、エルナの肩にふわりと頭を預けた。


「……エルナ。君が美味しそうに食べてくれるだけで、私は……気が狂いそうなほど、幸せだよ。だから、もっと私を頼って。私なしでは生きられないように、なっておくれ……」


「えっ……? はい、もちろんです!」


 エルナは、その言葉の裏にある「監禁一歩手前の執着」に全く気づかず、自分を救ってくれた優しい精霊様に、花が咲くような笑顔を返した。


(あ、この子……本当に、食べちゃいたいほど可愛い……!)


 セフィロスは、彼女の腰を抱き寄せる腕に、ほんの少しだけ――「愛撫」に近い力を込めた。

挿絵としてAIイラストを1枚挿入しました。ルビーナとヴィンセントのイメージを形にしてみましたので、楽しんでいただければ幸いです

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