第十九話(最終話):永遠の箱庭、二人の楽園
それから、どれほどの月日が流れただろうか。
外界では、エルナを捨てた王国が跡形もなく滅び、新たな歴史が刻まれていた。しかし、精霊国と世界樹の森だけは、時の流れから切り離されたように、永遠の春を謳歌している。
「セフィ様、見てください! 今年も精霊の花がこんなに綺麗に……」
庭園を歩くエルナの姿は、数年前と変わらぬ美しさを保っていた。唯一の違いは、その尖った妖精耳が、彼女が完全にセフィロスの「対等な伴侶」となった証として、誇らしげに覗いていること。
「ああ、綺麗だね。……でも、私にとっては、君の微笑みの方が数千倍も輝いて見えるよ」
背後からエルナを抱きしめるセフィロス。 彼は相変わらずの溺愛ぶりで、少しでもエルナが庭仕事に没頭しようものなら、すぐに「私を構ってほしい」と甘えた声を出す、困った王様のままだった。
二人が手を取り合い、世界樹のテラスから、自分たちが守り、癒やした美しい世界を見渡す。
「昔、エルナは『道具』として扱われていた。……でも今は、この国の、そして私の『心』そのものだ」
「……はい。あの時、セフィ様が私を見つけてくださったから、私は『自分』になれました。……愛しています、私の大切な精霊様」
セフィロスは満足げに目を細め、最愛の妻の額に、慈しむような口づけを落とした。
「……私もだよ、エルナ。この箱庭で、永遠に君を愛し抜こう」
森の奥深く、誰も知らない二人の楽園には、今日も幸せな笑い声が響き渡っている。 かつての孤独な聖女は、今、世界で一番わがままで甘えん坊な精霊王に守られ、永遠の幸福という名の物語を紡ぎ続けている。
【―― 幸せな聖女と、執着の精霊王 大団円 ――】




