第十五話:精霊王の歪んだ反省会
夜、世界樹の最上階にある寝室。 月明かりが差し込む中、セフィロスはソファに深く腰掛け、眉を下げて「しゅん」としたオーラを演出していた。
「……やはり、私は失格なのかな。エルナを喜ばせたいだけなのに、いつも君を困らせてしまう」
「セフィロス様……。反省してくださるのは嬉しいですが、そこまで落ち込まなくても……」
エルナは、自分が少し言い過ぎたかとおろおろしながら、彼の傍らに歩み寄った。すると、セフィロスは待っていましたと言わんばかりに、彼女の手をとり、自分の頬にすり寄せる。
「ねえ、エルナ。君は昼間、自分のことを『私の妻(奥様)』と言ってくれなかっただろう? ……それが、私の胸をこんなに締め付けるんだ」
「それは、だって! 私はまだ、貴方の奥様じゃありませんからっ!」
エルナが顔を真っ赤にして叫ぶと、セフィロスはしゅんとなるどころか、黄金の瞳を「カッ」と見開き、満足げに鼻を高くした。
(……『まだ』と言ったね? つまり、未来の確定事項として受け入れているということだ。ああ、なんて素晴らしい響きだ……!)
「なるほど、そうか。……なら、『未来の奥様』。私を深く傷つけた罪を償うために、いくつかお願いを聞いてくれるかな?」
「罪って……。……わかりました、私ができることなら」
エルナの「善意」という名の白旗を確認し、セフィロスの唇が不敵に吊り上がる。
「まず、一つ目。……今から私が眠りにつくまで、私のことを『セフィ様』と呼んでほしい」
「はひっ!? せ、セフィ……様……!?」
「呼んでくれないと、また昼間のように理性が暴走して、あの公爵を氷漬けにしに行ってしまうかもしれない」
「うっ……。わかりました……せ、セフィ様……」
消え入りそうな声で呼ぶエルナ。その破壊力に、セフィロスの理性がミシミシと音を立てて軋む。しかし、彼の無理難題は止まらなかった。
「二つ目。……私は、君が私の髪に触れてくれないと、魔力の循環が滞る『不治の病』にかかってしまったみたいなんだ。だから、膝枕をして、私が満足するまで髪を撫で続けてほしい」
「膝枕……。そ、それくらいなら……」
エルナの膝に、その美しい銀髪を預けるセフィロス。彼はエルナの太ももの柔らかさを堪能しながら、さらにとんでもない難題を口にした。
「最後だ。……『未来の奥様』として、私の唇に、私への愛を込めた『おやすみの呪文』を刻んでほしい。……言葉ではなく、もっと直接的な方法でね」
「それ、ただのキスじゃないですかぁぁぁ!」
「いいや、これは『儀式』だよ。……さあ、エルナ。君が私を甘やかしてくれないと、私は明日、また嫉妬で世界を滅ぼしてしまうかもしれないよ?」
「……っ、もう、わがままが過ぎます! この、甘えん坊精霊様……!」
エルナは涙目になりながらも、未来の夫(自称)の暴走を止めるため、観念して彼の上に顔を寄せた。
セフィロスは、自分の「無理難題」を必死に叶えようとするエルナを眺めながら、勝利の美酒に酔いしれるような心地で、彼女を深い愛の迷宮へと引きずり込んでいくのだった。




