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【完結】追放された無能聖女ですが、世界樹の精霊王に拾われて1000%偏愛されています 〜今さら戻れと言われても、もう「奥様」なので無理です!〜  作者: ましろゆきな
第二章:聖女の帰還と精霊王のジェラシー 

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第十四話:聖女の「めっ!」と、不埒な闖入者

「……なんだか、今日は空気が刺々しいような……?」


 エルナは、首を傾げた。 精霊国の空はいつも澄み渡っているはずなのに、今日は朝からセフィロスの周囲だけ、絶対零度の吹雪が吹き荒れそうなほど重苦しかった。


 その理由は、広場に到着した「北の人間帝国」からの親善使節団にあった。


「おお……なんと神々しい。彼方こそが、噂に名高い『救いの聖女』エルナ様か!」


 使節団のリーダーである若き公爵が、エルナを見た瞬間に雷に打たれたように硬直した。そして、無謀にも彼女の手をとり、騎士の礼を尽くそうと跪いた。


「その真珠のような肌、慈愛に満ちた瞳……。どうか、我が国の凍てついた大地にも、その光を分けてはいただけないだろうか」


「えっ、あ、あの……お顔が近いです……!」


 エルナが困惑して後退りした、その瞬間。


 ドォォォォン……!!


 晴天の霹靂。広場のど真ん中に、凄まじい威圧感を伴った魔力の柱が立ち昇った。 セフィロスの背後には、もはや隠す気もない「死の精霊」としての冷酷な幻影が揺らめいていた。


「……私の妻に、その汚れた手で触れようとしたのか? その腕、根元から凍らせて粉砕してあげようか」


「ひっ……!? な、なんだ、この寒気は……!?」


 公爵はあまりの恐怖にガチガチと歯を鳴らし、精霊たちは「王様、やめてください! 国際問題になります!」とパニック状態で右往左往している。


 セフィロスの瞳は完全に「無」の色。彼にとっては、エルナ以外の人間がどうなろうと知ったことではなかった。


「……セフィロス様」


 静かですが、芯の通った声が響いた。 エルナが、怒りに狂う精霊王の前に立ちふさがったのだ。


「エルナ、どいておくれ。この虫けらを処理しないと、私の気が済まないんだ」


「ダメです。セフィロス様、やりすぎです!」


 エルナは、ぷうっと頬を膨らませると、セフィロスの美しい頬を両手で「ムギュッ」と挟み込み、至近距離で彼を真っ直ぐに見つめた。


「そんなに怖い顔をして、力を使うのは……『めっ!』です! 皆さんが怖がっているのが分かりませんか?」


「…………めっ?」


 セフィロスは、虚を突かれたように目を見開いた。 最強の精霊王に対し、正面から叱りつける人間(※もう半分精霊ですが)など、世界のどこを探してもエルナしかいない。


「……そんな顔をしても、許しません。今日はもう、お仕事が終わるまでおやつもお預けです。わかりましたか?」


 エルナの「キリリ」とした叱責。 すると、どうだろう。先ほどまで世界を滅ぼさんばかりだった死のオーラが、一瞬で霧散した。


「………………」


 セフィロスは、エルナに頬を挟まれたまま、しゅんと肩を落とした。 ……かに見えたが、その黄金の瞳は、怪しいほどに輝いている。


(ああ……。怒っているエルナも、なんて愛らしいんだ。私を教育しようとするその眼差し、その指先の感触……。たまらない。もっと、もっと私を叱ってほしい。もっと私を独占して、私だけの正義になっておくれ……!)


「……わかったよ、エルナ。君が悲しむなら、この男の命は取らない。……その代わり」


 セフィロスは、エルナの手を頬から引き剥がすと、手の甲に深く、誓いを立てるように唇を寄せた。


「おやつ抜き、という刑罰は……夜、二人きりの時に、他の形で埋め合わせてもらうからね?」


「え……? あの、それはどういう……」


 セフィロスは、使節団を「透明なゴミ」を見るような目で見送りながら、勝利者の笑みを浮かべた。 怒られて「しゅん」としているはずが、実は「エルナに特別に構ってもらえた」ことに最高潮の悦びを感じている――この腹黒精霊の教育は、まだまだ先が長そうだった。

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