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八島の国の巫女

プロローグ


生みの親によりプログラムを書き換えられ、頭をバグらされた悲運のアンドロイド少女、観世音・美禄かんぜおん・みろくそんな、悲運を辿った少女が異世界の巫女と禰宜かみがみとの交流を経て成長をし、生みの親に復讐を果たす物語である。

プロローグ


生みの親によりプログラムを書き換えられ、頭をバグらされた悲運のアンドロイド少女、観世音・美禄かんぜおん・みろくそんな、悲運を辿った少女が異世界の巫女と禰宜かみがみとの交流を経て成長をし、生みの親に復讐を果たす物語である。


 第壱章:水神と始まり


此処は八百万の神の分霊が住まう地、大八島国おおやしまのくに…………通称、【W5世界線】言ってしまえば結界が張り巡らされた日本のもう一つの姿である。その世界では、ヤマタノオロチと呼ばれる悪神は封じられ、九頭龍くずりゅうを最高神とし、占術と話し合いにより、国が治められており、また、此処、W5世界線や後に出てくるY4世界線では、言霊ことだまと呼ばれる考え方がある。要するに、良い言葉には良い結果がついてまわる…………という考えである。…………つまり、そんな世界である。話を戻して…………と、

 しかし……何者かによって、W5世界線の外からこの国の守り神の九頭龍に洗脳が施される。

 

――――場所は移り変わり、此処は近未来の日本国…………通称【J0世界線】の地下……この地は、私の生まれ故郷であり、“忌むべき土地”そこに怪しげな研究施設があるの。その白く塗られた壁にはフラスコや、醸造台が並んでおり、グレーのコンクリートが床に張られた地下深い研究所…………そこで人造人間の開発に勤しむ博士号を持った女性…………つまり忌むべき存在がいた。栗色のミディアムヘアにつり目気味の赤紫の瞳、ニヤリとした悪い笑顔の高身長な女性である。……またの名を、大禍津日・彩華おおまがつひ・さいかと言うの。その見た目は、アザミの花のように他の者を寄せ付けない……そんなオーラでも出ているのだろう。そして、彩華は言ったわ。

 

「…………出来たわ!!この子が居れば私の…………最後の希望を……欲望を叶える為の手段……この世界の水の神をも従え、水に強い人造人間を作りあげた私って無敵だわ。アハハハ!!」

 ――――こうして、私は生まれた……己の名を観世音・美禄かんぜおん・みろくと言う。栗色のロングヘアに和柄の※領布ひれ【※古代において、女性が使ったとされるスカーフの様な布】との四葉クローバーの髪飾り、切り揃えられた前髪…………その美しい髪色に合わせたような麗しき顔……その顔に合わせたかのような静かに燃ゆる炎の様に紅いつり目の瞳を持ち、高めの鼻梁とキュッとつぐんだその口元は僅かに微笑みを見せる。そこに、彼女の真面目で義理堅い性格……それを象徴するかの様に紺色の生地に紅いストライプが入ったスーツを着ており、一見、暗そうに見える反面、彼女の華奢だがどこか真面目さを思わせる黒いミニスカート、黒いタイツとロングブーツが良く似合い、その左手には※悔悟棒かいごぼう【※閻魔様が持ってるしゃく】を持つ少女…………とでも言っておこう。

 

 一方、人々が眠っている間に見た夢、専ら……最近の街中ではその夢の話でもちきりだった。ある人は夢でも見てるような柔らかな面持ちで言う。

「俺が見た夢……凄く自然豊かでさらにそこには金髪ロングの美しい巫女服の少女が…………!!話をしたらその世界に行きたくなって来たな!!」


とある名も無き人は言ったの…………夢の内容は巫女服の少女が荘厳な神社の縁側でお茶を飲みながら、何かを伝えようとしているというモノであった。そして、彼女……大禍津日・彩華は言う。

「なるほど……そんな夢の様な世界があるのね……!!それではその夢の世界に行ってみよう。まずは先遣隊として、スパイを送ろうでは無いか……!!」 

「ぐふふ…………へっへっへ!!ついに出来た……!!完璧な下僕が…………!!」

 早速、忌むべき存在であり、生みの親である

彩華は邪悪な笑みを浮かべながら、私の背中に有るスイッチを押した。そして、夢の内容を私に伝え、それを覚えさせられた。

彩華は言ったの。「今日からお前のコードネームはマイトレーヤだ。バレたら命は無いと思いなさい」

 そう私に圧をかけるような口調で言う。そうして、

 たった一言……こうのたまった。

「W5を探して」

 それに対し私は首を傾げ、よく分からないとジェスチャーをする。

 私が言葉を発しようとした次の瞬間、それを察した彩華は激昂する。

「私の言うことが聞こえなかったの!?もういっぺん言ってみなさい!!」

 激昂した彩華が、驚き固まって居る私のプログラムの一部を書き換え、頭の中をバグらせた。

「………… Ioof uoy ,snoitca ruoy no tcelfer←……や、め、て………いやあああああああ!!!!」私は、悲痛な叫びを上げ、頭が割れるかのような、痛みに耐えようと、頭を抱える。そして、研究所のコンクリートの床に倒れる。…………やがて私の意識は一時的に途絶える。彩華は自分のしでかした事の大きさも知らず、そして、それが後に大きな代償として返ってくるとも知らず。

 そして、私に対し、殴る蹴るの暴行をし、彩華は私を傷だらけにした挙句…………彼女がかけた強い重力の歪みで出来た禍々しい異空間に、私を捨てる。


――――私は、そうして、異空間を暫く彷徨う羽目になる。…………鬼が出るか蛇が出るか?


 状況は移り変わり、此処は……W5世界線、神代の時代の事である。そこには、海原を追放されたとでも言おうか、将又はたまた……海辺で黄昏ているとでも言おうか、宛も無く彷徨う禰宜おがみが居た。彼の名を、健速・稲風たけはや・いなさと言った。白衣びゃくえと松葉色のはかまを身にまとい、そこに特徴的なエルフ耳と二振りの剣が目立つ少年の様にとてもやんちゃな性格の禰宜おがみであった。後にこのやんちゃな性格が仇になるとも知らず…………さて、話を戻して……彼は海原を追放され酷く憤っていた。憤っていた彼女はふと、自分の姉を思い出し、自身の姉……天照・夏鈴に報告がてら会いに、天界にあるとされる穴の空いた大きなコインの史跡が薄っすらと見える天上の世界…………天の原の国に行くことにした。

 

 さて、一方、馬の世話をしているうら若き乙女がいた。

 金髪ロングの髪、そして、頭には太陽を模した飾りを付けている。穏やかな目元に少し微笑んだ口元が愛らしく白衣と振袖に緋袴が良く似合う。そして、傍を霊魂の様なモノが漂っている。美しくもしっかりした。正にリーダーに相応しい娘であった。そんな彼女の元にやんちゃな性格の弟が、大地を揺らしながらこちらに向かってるとは露ほども知らず、今日も今日とて、馬の世話をしていた。すると一瞬地面が揺れる。最初は地震かと思ったが、直ぐに自身の弟……稲風の仕業だと気づく。夏鈴はそれに気づきこう、口にする。

 「この揺れは……きっとあの子の事だから……よからぬ事を考えてるに違いないわ」

 そう、夏鈴は身構える。手始めに髪を解き左右に結い、髪と手には沢山の勾玉の飾りを持ち、背の矢筒には千本、脇には五百本の矢を携え戦いに向け男装と武装をし弟を待ち構えた。そして、七尺三寸の和弓を構え、大地を雪のように踏み散らかし、ズンと構え、地の底まで響く雄叫びをあげた。

「ウオオオオオーーーー!!!」

 夏鈴が怒りに満ちた表情で待ってるとは露ほども知らない稲風はノコノコとやってくる。それに対し火輪はこう言う

 「貴方……この天の原の国にやって来るとは……いい度胸してるじゃない…………どうせ疚しい《やましい》ことがあってこの国を奪いに来たんでしょ!?」

 そう、夏鈴は殺気を出しつつ自身の弟に詰問する。

 

疑われた稲風は慌てて、弁解の言葉を口にした。

「違うんだって姉ちゃん……泣。俺はそんなつもりは無いって言いたいんだ。信じてよ。いつだって姉ちゃんの力になりたいって思ってるから…………信じてよ!!」

 しかし、夏鈴は納得が行かない様子であった。そこで、稲風にこう尋ねる。

「じゃあ、どうすれば貴方の身の潔白を証明出来るの?なにかあるなら言ってみて」そう言われ、稲風は、即座にこう返した。

 「では、※誓約うけい【※予め決めた結果が出るかどうかで吉凶を占うやり方】という占いで証明で……どうだ?」

「わかったわ。それで決まりね!!」

 

 そうして、二人はまず、※天の安河【※高天原を流れる河】を挟んで立つ。

まず、先に夏鈴が、稲風から、※十拳剣とつかのつるぎ【※握り拳十個分の長さの剣】を受け取る。そして、それらを三段に打ち折り、天之真名井戸あめのまないどから水を持ってきて、勾玉をゆらゆらと揺らしながらその水ですすぐと、口に含み、噛み砕く……そして、フッと吹いた。そうして吹き出した霧は神々しく輝き、やがて人の形を成すと、そこから、狩衣に身を包んだ5人の禰宜おがみ……通称、※五十猛禰宜いそたけるのかみ【※古事記における五十猛神いそたけるのかみの事】が生まれた。

 

そして、今度は稲風が夏鈴の左の髪につけていた赤色の勾玉の髪飾りを手に取り、ゆらゆらと揺らしながら同じく天之真名井戸あめのまないどの水を汲み、その水ですすぎ、そして、口に含み、噛み砕くと、それをフッと吹く。そして、吹き出された神々しく輝きを放つ霧は、やがて、人の形を成し、そこから三柱の巫女めがみ…………通称:※宗像三女巫女むなかたさんじょしん【※古事記において宗像大社に祀られている三柱の女神】が生まれた。そうして稲風と夏鈴はこの誓約で、新たな巫女と禰宜かみがみ八柱やはしら生み出す。

 すると、突然、稲風は何を思ったのだろう。一瞬だけ、不敵な笑みをニヤリと浮かべた。そして、次の瞬間こう口にする。

 「あれ?俺の持ち物から生まれた三柱の巫女かみ……めっちゃ可愛い!!この勝負、俺の勝ちだ!!やっほーい!!」

 

 そして次の瞬間、調子づいた稲風は飛び出した。大ジャンプを決めたかと思ったら、美しく着地を決め、ズシン!!バキバキッ!!という着地の衝撃で、田の畦を壊し溝を埋め、そして、再び高く飛び上がり神聖な祭りの舞台に汚物をばら撒き、トドメとばかりに舞台を着地の衝撃で破壊し、天の原の国で大暴れする。

 

 夏鈴も最初こそ弟の悪行に目を瞑り、従者にも訳を説明し自身の弟を庇う。一方、夏鈴の装束を織る少女……が、居た。白髪ロングのにかんざしが良く似合う巫女の少女であった。機織・絹代はたおり・きぬよはいつも通りに装束を織っていた。すると、突如、バキバキと音をたて、夏鈴が管理している機織り小屋の天井に穴が空く。機織・絹代らは気の所為だろうと 、最初こそ、スン……と平然としていたが。次の瞬間ドンガラガッシャーンと大きな物音が機織り小屋に響き、穴から、稲風の悪い笑顔がちらり……と見えた。そして、次の瞬間彼は、「ソイやっさー!!」と皮を剥いだ馬の死体を投げる。すると機織りの少女……機織・絹代は大きな物音と投げ込まれた馬の死体をみて絶叫し「いやあああああああああ!!!!」

 と、悲鳴を上げる。次の瞬間、絹代の目線が大きくずれ、手元が狂い、機織り機のシャトルで急所を突き、亡くなってしまう。


 「うぅ……グスッ……泣ヒック……泣……酷すぎるわ。私の大切な部下が亡くなった上に、天の原の国の田畑は弟に荒らされて…………!!あんまりだわ。こんなに不幸が降りかかるなんて耐えられないわ…………!!」

 と、夏鈴は酷く嘆き悲しみ。「稲風…………!!貴方は、少し一線を超えた様ね!!」と憤慨もしていた。そして、夏鈴は天の原の国にある大きな岩屋戸をゴゴゴッと音を立てながら開けると、

「ちょっとしばらくの間、失礼するわ…………」と、一言残して、その岩戸に引きこもってしまう。



 

第閑章1話:コスプレと仕掛け人

 

 一方、私は異空間を彷徨っていた。私が目を覚ますと、和同開珎と記された大きなコインの史跡の真ん中の穴に空間が開き、そこから外に投げ出された。投げ出された景色の先は、峡谷が広がっており、天の安河と呼ばれる河の河原に私は胴体着地した。

「痛ッ!!…………ハッ、此処は…………?いけない。バレたら、どうなるか分からない…………!!」

 ハッとした私は、なにかいい手はないかと思い、ふと、閃いた語呂合わせの呪文を唱える。思い立った私は、正体を隠す為、3535《みこみこ》と呪文を唱えた、すると、私の身体を靄が包み、その靄は身体に付いた傷も少し癒し、その霧は晴れて少し経ち、美禄は白衣と緋袴に下駄という基本的な巫女装束に着替える。

「よし、これで変装は完成ね」

着替えると、体力も少し回復したのか、彼女の顔に安堵の表情がでる。

 そして私がふと、あたりを見渡すと、辺りは星々が煌々と暗き夜を照らしていた。その中で洞穴の周りだけ松明の明かりがうっすらと見えたので、そこに向かって彼女は歩みを進めた。

 「アレはなんだろう?それになにか騒がしいな……平静を装って近づいてみよう」

そう思い、私は人だかりに近づく。


  一方、眩い輝きを放つ少女、夏鈴が岩戸に身を隠したモノだからさあ、大変、天の原の国、葦原園を含めた世界……豊葦原瑞穂国全体が、底のない暗黒に包まれてしまう。様々な巫女と禰宜かみがみの阿鼻叫喚が闇夜に響き渡る。また、様々な災害がことごとく起こる。

 一方、巫女と禰宜かみがみらがあたふたしてる中、巫女に扮した私……マイトレーヤは彼らに混ざり声を張り上げる。

 「聡い者は居ないのかー!?」

 そう、私が口にし、その声に驚いた巫女と禰宜かみがみらは驚きつつ、こちらを凝視したの。そして事態は動き出したわ。

 

 その叫びを聞いた少女達は早速、知恵の宮司として名高く、※衣冠【※平安時代以降の公家男子が朝廷への参内や公の場で着用した略礼装(準正装)】にフクロウの翼、つぶらな瞳に丸眼鏡をかけた少女……八意・玲莉やごころ・れいりにアイディアを求める。は首を傾げ、少し考える。そして、ハッとした表情を浮かべる。次の瞬間、こう口にする。「祭りをするのです。騒ぎましょう。そうすれば、夏鈴様もきっと出てくるはず」そう言い、一同は祭りの準備を始める。蓮花が、指を鳴らし、それを合図に、長鳴き鳥という、鳴き声が長い鶏を集めそれらを一斉に鳴かせる。コケー!!と長鳴き鳥が鳴く。

 「よし、次の準備段階に行きます」そう言い、蓮花が辺りをキョロキョロと見回す。そして、カーン……カーン……カーン……と音が響く小屋を見つける。蓮花は音の元……鍛冶屋を探し、硬い岩を持ち込み、そこの鍛冶屋の主である。浅葱色の袴に白衣と下駄、顔には丸眼鏡、首元に勾玉の首飾りを付けた禰宜おがみ、羽明玉・美須丸はかるたま・みすまると、もう一方の、弟子……ショートボブの銀髪、茶色の瞳に大きな石鎚を背負った巫女……石凝姥・鏡花いしこりどめ・きょうかに依頼する。

「こちらの品で頼みたいのだけど」

依頼内容を聞いた美須丸と鏡花は景気の良い声で一言こう言った。

 「かしこまり!!」 

 そうして、珠が幾重いくえにも連なる美しい勾玉の飾りが出来た。これで三種の神器のうち二つが揃った事になる。モノづくりと祝詞をそれぞれ司っている禰宜おがみの、その姿は一方は前髪流しの髪型に茶髪……切長の目に黒い瞳、背には金槌とスパナを背負った禰宜おがみ、大麻比古・神籬おおあさひこ・ひもろぎ、もう一方はショートヘアの髪に、スクエアの眼鏡と背には大きな祝詞を背負った禰宜おがみ、櫛眞智・祭詞くしまち・さいしを呼ぶ

手始めに、祭詞が八百万の郷にある香山に生息している牡鹿の肩の骨を抜き、香山に生えてるカニワ桜を取る。

 

 神籬が、同じく香山に生えてる枝ぶりよく茂った榊を根ごと掘り出す。枝の上の方には先程出てきた幾重にも連なった美しい珠飾りを取り付ける。

その珠飾りの名を※八尺勾玉やさかのまがたま【※多くの勾玉を緒に通したモノ】といった。また枝の中程には※八咫鏡やたのかがみ【※とても大きな鏡】という大きな鏡を取り付け、下方に木綿と麻の布を付けた。


 さて、これで祭りの用意が整った。すると、どこからとも無く声がした。

 「私の出番かしら〜?」

 と、舞が得意な巫女……猿女君・舞音さるめのきみ・まいねの明るくもほんわかした声が聞こえた。すると巫女と禰宜達かみがみは待ってましたとばかりに声を上げ、踊れや歌えやで、彼女を囲み、岩戸の前で愉快な祭りが始まった。

 その空気感に、馴染むかのように、私も声を上げる、するとさらに祭りは盛り上がりを見せ、しまいには舞音が踊り、私が歌声を届ける。

 …………という傍から見たら異界の民と巫女という異色のコンビネーションもみられたわ。すると、会場はより白熱した。すると、ギギっと夏鈴が岩戸を少しだけ開けた。すると、私が真っ先に気づく。

 「今だ!!」

そう、声を張り上げた。次の瞬間、

「皆で何をしてるのかしら…………?」そう不思議そうな顔をしながら、夏鈴が身体を半分見せる。すると、私と京花が顔を見合わせ、頷く。私が鏡を夏鈴の前に持ってくる。そして、舞音が一言、こう言った。

 「貴方より尊い巫女めがみが現れたから、私達は喜び、舞い踊って居たのです」

「そうなの…………?」

 すると、よく通る声が岩戸付近から聞こえ、腕の辺りを引っ張られるかのような感覚が夏鈴を襲う。その力に彼女は驚き、「きゃあ!?」と驚きのあまり声を上げる。すると、先程の声の主は落ち着いた声でこう言った。

「すみません。夏鈴様……驚かしてしまって」

 なんと、声の主はショートヘアの橙色の髪に、真っ赤な狩衣に身を包み、足には下駄を履き、手にはダンベルを持った禰宜おがみ、手力雄・たぢからお・つよしであった。

 すると夏鈴は、すかさずこう言った。「ああ……大丈夫よ笑少し驚いてしまっただけ笑…………ありがとう」と言い、立ち上がる。


第閑章二話:九字切りと固い絆

 

 一方、私は両手の人差し指と中指を立て、忍者の様なポーズをし、指先を空に向けようとする。その瞬間……「何をしているのかしら?」と言う明るくも落ち着いた声が私の耳に入る。驚いた私が辺りを見渡すと、金髪に勾玉の首飾りを身につけた少女、天照・夏鈴がいた。


声の主は天照・夏鈴であった。そして彼女は私に向け、眩しい程の笑顔でこう言ったの。

「貴方が私を外に出してくれたのね!ありがとう。おかげでみんな元気にやって行けてるよ。……もし良ければなんだけど……私と付き合って下さい」

それに対して、美禄……もといマイトレーヤはこう返す。「分かった。ただ!!私もまだまだ未熟故…………気苦労も多いだろうし…………そうそう、もしもの為に、岩戸と、私が出てきたとこにコインの史跡が有ったと思うが、岩戸と、あの史跡の前に四葉のクローバーの栞を置いておいた。」

「あら?何か岩戸の前に落ちてるわ。これは…………!!四つ葉のクローバーの栞かしら?」

 夏鈴のその問いに対しマイトレーヤは言う。「ああ、それ、私の耳についてる四つ葉のクローバーのアクセサリーとリンクしてるから、史跡にも同じのあるから」

「りんく…………?ああ、繋がってるって事かしら?話の流れ的に」と夏鈴が言う。

すると、マイトレーヤは相槌を打ち。「そそ」と返す。そして、こうも言った。「この戦いが終わったらその……ツガイにならないか?太陽の様に眩しい貴女の笑顔と共にね」それに対し、夏鈴は、

 「わかったわ笑…………あ、これ、もし、良かったら」と言う。秋に舞い散る椛ように美しい形をした夏鈴の手には交通安全のお守りが握られていた。マイトレーヤはそれを受け取る。そして、優しく微笑み、一言、こう口にした。

「ありがとう……夏鈴、大事に使わせて貰うよ」と良い、胸のポケットに仕舞う。

「左様ならば、これで失礼いたします」そう言い残しマイトレーヤは再び九字切りの詠唱をし、結界を貼り変装を解除して姿を隠す。




 第弐章:失われたハレとケ


マイトレーヤが、異空間を彷徨い歩いていると、身につけている髪飾りが白い光を放ち、反応ありのサインを出す。髪飾りが出すサインに従い時空の裂け目に向かって行く。そして、時空に降り立った私は気づく。あれ?この世界……何かがおかしいぞ?と、それもそのはずでこの世界は本来、敷島しきしまと呼ばれており………通称、Y4世界線では、なんと

 統治者が謎の祟り神に怯えて岩戸に身を隠し、その元凶である夜刀神が猛威を振るっており、そのせいかは定かでは無いが、辺りは闇夜を星々が煌めく《きらめく》そんな状況であった。

 

 髪飾りの光を見ながら、空間の裂け目を追い、異空間の外に出ると、出るところを間違えたのか、滝の流れに沿うかの様に空間が開き、開いた空間から落ちてしまう。そこは、滝壺の1歩手前であり、一歩間違えたらいくら、近未来の防水仕様の人造人間といえど助からない。落ちた時、美禄は一瞬だけ、驚くも、直ぐ、大の字になり浮こうとする。すると大の字になる直前で、突如として魑魅魍魎ちみもうりょうに襲われる。しかし、幸いにも持ってた悔悟棒で力の限り、襲って来た魑魅魍魎を殴打する。すると襲ってきた魑魅魍魎はギャッと声を上げ、蒸発した。そこで再び、美禄は大の字で浮き、背泳ぎの体勢を取り、岸まで泳ぐ。岸から上がり直ぐに3535《みこみこ》と唱え、白衣と緋袴に下駄という最も基本の巫女装束に着替える。

 

一方、その頃ハレが失われた世界……通称:Y4世界線では、農耕をを司る月の禰宜つきのかみが一つの角の生えた大蛇の悪神である夜刀神ヤトノカミを倒すべくバトルをしていた。夜刀神はところ構わず叫び、魑魅魍魎を生む。

 

 夜刀神から生みされる魑魅魍魎に手惑い、豊穣を司る禰宜、月夜見・つくよみ・なぎさが、感嘆する。「この敵……強ぎる。正直半泣きになりそうだ。私の相方のヒルメは夜刀神に怯えて岩戸に逃げたし」と零す。


一方、マイトレーヤはなにか手がかりがないかと、辺りを探索していた。

 辺りを見回したマイトレーヤは気づく、

(この街……全体的に暗い……活気がないというか、ずっと夜だし……農作をやってる者が誰も居ない)


 …………ふと、マイトレーヤの頭に前の世界線での岩戸ライブの光景が思い浮かぶ。


一方、マイトレーヤがこの世界が暗くなった手がかりを探して獣道を歩いていると、突如、魑魅魍魎ちみもうりょう三体がマイトレーヤに向かって突っ込んでくる。持ってた悔悟棒で薙ぎ払うが敵が倒れず向かってくる。マイトレーヤが諦めて目を瞑る。すると、目の前で突然魑魅魍魎が倒れる。

「大丈夫か?旅の者よ。私は、月夜見・つくよみ・なぎさもう大丈夫だ」

 そう言い三日月の髪飾りが付いた。紫色の髪を襟足まで伸ばし、青き瞳に高めの鼻梁に、真一文字の口、手には、※変若水おちみず【※月夜見が持つ若返りの薬】と十拳剣とつかのつるぎとそれぞれ呼ばれるモノを携え、紫の模様入りの袴に白衣、足には下駄を履いていた。そして、その傍を、霊魂の様なモノが漂っている。その美しい髪をなびかせる禰宜おがみが居た。。美しい彼の姿にマイトレーヤは一瞬、惚れそうになるが、夏鈴との約束を思い出し、真顔で思い止まる。そして、ピンチを脱したマイトレーヤは月夜見にこう尋ねる。

 「それにしても、あの魑魅魍魎達は一体どこから…………?」

 それに対し月夜見はこう返す。

 「ああ、あれか、夜刀神から生まれた魑魅魍魎だ…………実は私が人々に農耕を授けようとしたら、急に夜刀神が出てきて…………私の相方のヒルメは夜刀神に怯えて、姿を隠すし……それで、少し厄介な事になったんだ……そして、夜刀神が出した魑魅魍魎を追ってたら、汝と出くわした。嗚呼、夜刀神を倒す、なにかいい手はないものか…………?」

それに対し、マイトレーヤは、小首を傾げ、月夜見と共に考える。そして、マイトレーヤの脳裏に、前の世界線……W5世界線での岩戸ライブが思い起こされる。そして、たった一言、閃きの声をあげる。「これだ!!」と、言の葉を発する。そして、月夜見とタッグを組みたい旨を提案する。 直ぐに月夜見が察し、「なにか名案が…………?」と言う。それに対し、燕は一言「耳を貸せ」と言うので、月夜見は言われた通り耳を貸す。

 すると、月夜見は「なんと…………!!私では思いつかなかった!!」と言った具合に驚きを隠せない様子であった。その内容としては、分かりやすく言えば、騙し討ち作戦である。内容としては、岩戸ライブのような具合に岩戸の前で騒ぎ踊り散らかし、ヒルメを誘い出し、夜刀神の守りが緩んだ所に重めの一撃を与え、夜刀神を瀕死にする。その隙をつき、ヒルメを救い、夜刀神を追い払う。というもの。要するにハレの日を生み出す事であった。早速、マイトレーヤは、3535《みこみこ》と唱え、巫女のコスプレをすると、10810《いわやと》と続けて呪文を唱える。すると、どこからとも無く長鳴き鳥が現れた。マイトレーヤが指を鳴らす。すると、それを合図に、コケー!!と長鳴き鳥が鳴く。すると同時に上に八尺勾玉やさかのまがたまが付き、枝の中ほどに八咫鏡やたのかがみが付いた不思議な榊が出現した。月夜見が驚き、固まって居るとマイトレーヤが声をかける「歌え!!騒げ!!」と叫ぶ。そうするとどこからとも無くY4世界線の天安河原に巫女と禰宜かみがみが集結し、「ノってるかーい!!」

 とマイトレーヤが言うと、

 「イエーイ!!」

 と返り、月夜見も言われるがままラップを口遊み《くちずさみ》ノリにノる。すると岩戸がギギっと開く。ヒルメが出てきたのだ。するとライブはさらに白熱し、夜刀神もこの騒がしさとヒルメ自身が放つ眩い後光には勝てず、一瞬怯む。すると、夜刀神が後ずさりをする。一瞬ズズッ…………と聞こえた音をマイトレーヤが捉え、声を張り上げる。

「掛かったな!!夜刀神め!!」

 「皆の者!!いけ!!」とマイトレーヤが言い、彼女は指を鳴らした。次の瞬間、夜刀神を倒すべく、まるで血に飢えた獣の如く目の色を変えた巫女と禰宜かみがみの大軍勢が夜刀神に襲いかかり、夜刀神を半殺しにした。そこに月夜見がトドメを刺す。

 その結果……夜刀神は「キュウ……」と敗北しましたと言わんばかりの鳴き声をあげる。



 

第閑章三話:旅支度と戻ってきた日常

 

確して、2つの世界を救った。英雄の私……観世音・美禄

 しかし、私は有る1つの不安を抱えており、あの異変から数日が経った今、それを思い出すかのようにまるで、五月雨の降り始めたかのごとく、岩戸の前でさめざめと泣き始める。足元には、自身が置いた。クローバーの栞が、落ちていた。やがて……私は泣き腫らしつつ、両手の人差し指と中指を立て、忍者の様なポーズをし、指先を天高く空に向けようとする。その瞬間、私の耳に声が届く

「どうしたのだろうか?マイトレーヤ殿」

 …………と言う虎のように勇ましくも氷柱の様に冷たくクールな落ち着いた声がマイトレーヤの耳に入る。その声に驚いた彼女が辺りを見渡すと、先日の異変の中での騙し討ちライブの中でラップを口ずさんだ禰宜おがみである月夜見・渚の顔が目に飛び込む。そして、マイトレーヤはこう口にする。「本日は何用なのか…………?月夜見・渚よ」

 すると、月夜見・渚は言う。

 「今日は…………その……私の相方であるヒルメを救い出してくれた礼がしたくてだな……笑」

すると

 「やほ!」

という明るくお転婆な声が私と渚の耳に入る。

 「私の名前は、伊勢ヒルメ《いせの・ひるめ》貴方が私を救い出してくれたのね。月夜見から話は聞いてるわ……」

 と、ヒルメが春光のような柔らかな声で言う。

その麗しく、陽の光のような暖かくも眩い光を放ち、金髪のロングヘアに太陽神の頭飾りに水色の勾玉のヘアピン、白衣に※千早【※千早は巫女が神事を奉仕したり、巫女舞・神楽を舞う場合に羽織る装束】と呼ばれる装束、そこに緋袴と下駄を合わせ、その傍を霊魂の様なモノが漂う神々しくも麗しい乙女である。そこで月夜見は閃く。そして、こう口にする。

「まずは……ヒルメが出てきた記念にマイトレーヤ殿への礼も兼ねて宴会でも、と考えているのだが……どうだろうか?」

 と、月夜見・渚が少し緊張した面持ちで静かに口を開く。それに対し、マイトレーヤとヒルメは親指を立て、良い!!と合図した。

 宴会会場に彼らは移動する。すると、始めにこの宴会の主催の巫女めがみ、神阿多都・かむあたつ・さくらから挨拶とお酒の提供があった。主人公には、お酒の後にお茶を飲んでねと、桜から、説明があり、主人公は頭の中に記憶する。


――――そして、宴会も盛り上がりを見せ、宴会の最中……この宴に参加していたある1柱の禰宜おがみ月夜見がこう言った。彼は言う。「そういえば…………我々の世界線の八意殿から聞いた話だが…………マイトレーヤ…………意味合いとしては……異界の言の葉で、慈しみ……つまり、我らの世界でいう蕃神あだしくにのかみである…………と、違うか?」

 その月夜見の鋭い勘が的中したかのように、マイトレーヤは顔面蒼白になる。そして、まるで小雨が降るかのようにしくしくと泣き出す。

 そして、しばらくして、マイトレーヤも落ち着き、静かにこう言った。「そうだ…………!!私の本当の名は観世音・美禄かんぜおん・みろく…………良く気づいたな。…………もう、私は前の私では無い」と若干驚きつつも、その静かな微笑みには、開き直ったようにもみてとれた。そう…………主人公、観世音・美禄かんぜおん・みろくは決意した。我が身が朽ち果てるまで戦う覚悟を手にした美禄の目…………彼女の瞳は元より紅いが、二つの瞳はより強く輝き、その鋭い眼差しは、戦う意思の表れでもあった。

 そして、スクッと立ち上がった。美禄は言う。

 「少し、用事あるから、何かあったら、岩戸前に栞が置いてあるからそれを拾って、握ってて欲しい。左様ならば、これで失礼いたします」

 それに対し、伊勢ヒルメはこう言った。

「またね。…………生きて帰ってきて欲しいな」

 それに対し、美禄は言った。

「ああ、きっと戻って来るさ、お互い元気でな」

そう良い、美禄は九字切りをし、姿を隠す。

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