5/6
第五章 薔薇と泥の結晶
数年後、王都の薔薇園に新たな像が建てられた。
『平民の才能を守った三人の女性』
シャーロット・ウェストン、アルガ・セレステ・クライン、そして王女セリーヌ。
アルガは再び王都を訪れていた。
もう金髪は三つ編みではなく簡素に結び、高価なドレスではなく平民の服を着ている。
「アルガ様……今では子どもたちの先生なんですね」
振り返るとかつてのクラスメートが立っていた。
「もう、様付けはやめて、アルガでいいわ」
「でもあなたは伝説ですよ。貴族が平民の味方になるなんて……誰も想像できなかった」
「身分なんて生まれた偶然。でも心の在り方は自分で選べる──それだけよ」
その夜、王太子テオドールが彼女に会いに来る。
「改革は進んでいる。でもまだ差は残っている。君の力が必要だ。王宮の改革委員会に戻ってもらえないか?」
アルガはしばらく考え、こう答えた。
「いいえ。私は戻らない。変化は王都の上からではなく、泥の底から始まるのです。でも協力はしますわ。──友として」
テオドールは初めて彼女に敬礼する。
「……ありがとうございます、アルガ嬢」




