【短編】フェイテルリンクこぼればなし。~お城の晩餐によばれます!~
こちらは、「フェイテルリンク・レジェンディア ~訓練場に籠もって出てきたら、最強になっていた。バトルでも日常でも無双します~」https://ncode.syosetu.com/n0664js/で浮いたSF世界に浮かぶ、ファンタジー惑星でのお城での晩餐な話を再編集した外伝的話になります。
本編を読んでからだと、より楽しんで頂けるかもしれません。
■登場人物紹介
・スウ(本名:鈴咲 涼姫):フェイテルリンク・レジェンディアの主人公。コミュ障の陰キャのボッチだけれど、3倍の速度で時間が流れるVR訓練場に籠もり、クリア不能と言われる超難易度クエスト〝〈発狂〉デスロードに〟、実質9年打ち込んだ事で、遂にクリア。訓練場から出てくる。
すると本人も気づかない内に逸般人な戦闘機パイロットになっており、無双しまくった結果、一式 アリスや、リッカと友達になれた。
頭のおかしな思考や言動、行動で周りをドン引きさせたり、笑わせたり、庇護欲をそそらせたりの百面相な精神模様。
・一式 アリス(本名:八街 アリス):イギリス生まれ日本育ちで、日本文化大好きっ子。モデルに女優、声優などなど、なんでも出来るスーパーウーマン。得意なのは剣道で、本編中この年の夏には、インターハイで優勝している。
飄々とした性格で、スウが大好き。尊敬している。
つい先日、スウの唇を強引に美味しくいただいた所。
・リッカ(本名:立花みずき):コンパクトな体型のチビっ子少女。ただし見た目はエグイほどの美人と言われる。剣道では八街 アリスのライバルで、初対戦時には、その剣の腕で八街 アリスを恐怖させた。武家の娘であり、本編中では脅威の剣術を、度々披露している。
インターハイでアリスに負け2位に甘んじたが、その剣の冴えは相変わらずの模様。
◆◇◆◇◆
わたしの名前は八街 アリス。謎の宇宙人(実は、未来人)の始めた宇宙を舞台にしたデスゲーム――フェイテルリンク・レジェンディア(安全だと思われていましたが、最近本当にデスゲームだとバレた)でトップランカーをやっています。
フェイテルリンクが本当にデスゲームだった事がわかり、以前人を見殺しにしてしまっていたスウさんが凄く後悔して、フェイテルリンクを安全なゲームにしようと立ち上がりました。
そこでヒントがあるという、ファンタジーな惑星「ファンタシア」にやって来たのです。
わたしは大切なスウさんに何かあっては一大事なので、スウさんを守るために付いてきました。
あ、スウさんもわたしも性別の属性は女です。
スウさんは化け物みたいな戦闘機乗りだったり、なんでそんなに知識が豊富なの!? とか、なんで素早くそんな作戦思いつくの!? などと、ところどころ人間を止めてますが、それ以外が壊滅的なんです。
酷いコミュ障だったり、自己評価がブラックホールの底レベルで低かったり、優しすぎたり。
なので放っておけない人なので、付いて来ました。
リッカこと、立花 みずきも付いてきてくれました。ただの剣道少女であるわたしと違い、実戦剣術を身につけているので、非常に頼もしいです。
そうしてやって来た冒険者ギルドの建物で、バルム・ラティウグと名乗ったドワーフの男性が、ティターという持ち運びお琴みたいな楽器を ジャラジャラジャラーン と鳴らしました。
上手いですね・・・・流石本職の吟遊詩人。
現代日本のプロにも劣らぬ腕前。
まあ、この人もプロなんですから、当たり前ですか。
彼はスウさんのいさおしを、歌にするのが使命の吟遊詩人らしいです。
従者なんだとか。
スウさん貴女・・・・従者までいたなんて、わたしは知りませんでしたよ。よほど大暴れしたんですね。
わたしたちは今、ファンタジーな酒場で、昼食を摂りながら話しています。
このファンタジーな惑星で知り合った、猫獣人のトリテさん、虎獣人のヴァンデルさん、あとバルムさんも一緒です。
にしてもここの食事、硬いパンや、大味で水っぽい野菜です。
肉に胡椒どころか塩すら掛かっていません。
これでも、この酒場で一番の定食らしいです。
これでは舌鼓は打てませんね。なんて思っていた所へ、小綺麗な男性が飛び込んできました。
「スウ殿、スウ殿はおられますか!!」
そうしてスウさんの顔を見つけて、顔をほころばせます。
ちなみに言語に関しては、超科学で翻訳インプラントを受けているので問題ありません。
「おおおっ! スウ殿」
「あ・・・アンドリュー様の騎士さん・・・!」
「はいテデテです! 久しいです!」
アンドリュー様はこの国の現・国王らしいですね。
「ひ、久しいって言っても、3ヶ月くらいしか経ってませんよ?」
「何を仰る、4ヶ月ではないですか!」
言いながら男性がスウさんの前まで来て、肘をナナメ45度にして胸に手を当てて、ナナメ45度にお辞儀。
スウさんが、一瞬考えて返事します。
「あ・・・・そうか、この惑星は一日が20時間しか無いから・・・・まあ、3ヶ月も、4ヶ月も、そんなに差は」
「我々は、貴女様を一日千秋の思いで待っておったのです! ――前回はセーラ様とティタティー様にしかお会いにならなかったようですし。我が王も残念がっておりました」
「スウさん、この方はどなたですか?」
わたしは尋ねました。
「えっと」
スウさんが説明しようとすると、男性がわたしのサイドに移動して、またも胸に手を当てナナメ45度にお辞儀してきました。
「これは淑女の方の前で失礼致しました。わたくしはアンドリュー王の近衛騎士、テデテ・ドロウズと申します」
ふむ、この国では「紹介無しで女性に話しかけるのは、失礼」ではなく「女性に紹介させるのが、失礼」になっているのでしょうか?
まあ、女性に対しサイドに回ったのは良いマナーですね。威圧感が消えます。
しかし、
「騎士なんですか? ファンタジーの騎士って、もっとこう鎧でガチガチに固めて」
わたしが言うと、騎士さんが微笑みました。
「我ら万事、常に備えているとは言え、平時の町中で鎧を着て歩き回る様な狂人はおりませぬ」
「アリス、いくら騎士でもずっとプレートメイルで歩き回っていたらそいつは、気が触れてる」
虎獣人のヴァンデルさんにまで、言われてしまいました。
するとリッカも、
「うむ、わたし達の国の過去には友を見殺しにしてしまった事から、常に鎧を着けていた武士がいたが・・・・ちゃんと狂人扱いだったな。凄まじく強い人物だったが」
「サブカルに毒されすぎでした」
サブカルには、たまによく常に鎧つけてる騎士とか出てくるんですもの。
「さて、スウ殿。今度こそ、我らと我が王に貴女を歓待させて頂きたい」
「えっ!?」
王様の歓待ですか・・・本当に前回は何をやったんですか、スウさん。
スウさんは配信もやってるんですが、前回ここに来たという時、ほぼ配信していなかったので、アーカイブを見ても分からないんですよね。
「いやっ、でもっ、私達やることが!」
するとリッカが、石みたいに硬いパンをノコギリみたいなナイフで切り、口に入れて「歯が折れそう」と、顔を顰めながら言います。
見事に切りますね、私がやると、凄く時間が掛るのに手早い。
流石剣術家の娘。やはり切ることに関して、わたしとでは熟達度が違いすぎますね。
「急ぐ旅でもないんだから、いいだろー。セーラ様や、アンドリュー様にも挨拶していけば。多分隠居したバルバロン様も喜ぶぞ。ティタティーもいるだろうしな。――てか硬いな、このパン」
セーラ様はこの国のお姫様です。
硬いパンに苦戦するリッカを見かねたスウさんが、アドバイス。
「そ、それはスープに浸すんだよ」
「なるほど・・・・とりあえず、今日はお城の食事が食べたいぞ」
「む・・・むう・・・」
唸るスウさんですが、押しに弱い彼女は結局首を縦に振り、お城に一泊することになりました。
お城に宿泊ですか。ちょっと楽しみです。
現代地球でお城に泊まるのは、一般人ではほぼ不可能ですからね。
という訳でお城に到着です。
湖に浮かぶ城で、質実剛健な城でした。
権威を豪華に飾った様な城ではなく、実用性を考えられた、砦と城の中間みたいな城です。
スイスのシヨン城に似てるでしょうか? 大きさは、こちらの方が随分と大きいですが。
湖に浮かんでいるのもそっくりですね。
天然の要砦という感じです。
そんなお城の中庭でセーラ様に迎えられました。
「スウ様、アリス様、お久しぶりです!!」
「あ、セ・・・セーラ様、お久しぶりです」
「お久しぶりです。セーラ姫!」
「本当にアリス様なんて、8ヶ月ぶりですよ」
セーラ姫がわたしに抱きついてきます。
そして頬にキス。
「『欧米か?』」
「イギリス人が、それを言わないで?」
スウさんにサクっとツッコミを入れられました。
セーラ姫は、スウさんにも抱きついて、キス。
『欧米か?』。
微笑んでいたセーラ姫が、何かを思い出したよように顔を挙げました。
「そうだ、スウ様! 報告したかったんです――三圃制農法! 第一圃目が終了しまして、第二圃目もすくすく育っております!」
・・・農法? そんなチートまでしてたんですか。
「それは本当に良かったです! マメを、植えている所でしょうか」
「はい!」
「マメ科は、地面の窒素を回復しますからね。クローバーでも良いですよ」
セーラ姫が首を傾げます。
「窒素とは?」
「いえいえ」
スウさんのはぐらかしの言葉を聞いて、わたしはふと、
「マメ科を植えるなら、葛が楽――」
「恐怖の侵略生物を持ち込もうとするな」
スウさんに、裏手ツッコミされました。
ですね葛はほっといても増えますが、一回植えたら恐ろしいことになるんですよね。
葛に対抗できる生物がいないアメリカで、大変な事になってます。
「kudzu」で検索したら、建物も木も葛が覆い尽くす、ホラー映像が見れます。
成長力もすごいし、除去も難しいという。
セーラ姫が右に傾げた顔を、左に傾げられました。
ちょっとカワイイ。あっ、スウさんが可愛い女の子を見て、変態の顔になってますね。
「クズ?」
スウさんの変態の顔が、引き締まりました。
「いえ、やばい植物なんで気にしちゃ駄目です。植えるならクローバー辺りで・・・――それより、この世界ちょっと回転速度が速いので、大きな嵐が起きないかと心配だったんですが、上手くいってよかったです」
「世界の・・・・回転速度・・・? 確かに、どの地域でも嵐は恐ろしい災害です」
「やっぱりなんですね」
「スウ様、嵐の被害を減らすいい方法は知りませんか?」
「うーん、防風林くらいしか思いつきません」
スウさんが強い風に煽られた、カーリーヘアを押さえながら言いました。
確かに、この惑星はなんだか風が強いんですよね。
スウさんは前に、なんか美味しそうな名前・・・コリコリ力? みたいな説明をしてくれましたが、よく分かりませんでした。
「―――それは、我が国でも昔から農地は背の高い木で囲むようにしております」
「ですよねぇ――あとは・・・安定して作物と手に入れるための温室くらいしか」
「温室とは?」
「えっと、農地をガラスなんかで囲むのです。すると、中が暖かくなって作物はスクスクと育ちます。冬でも、夏の作物を育てられすらします」
「冬でも夏の!? ――凄いですね。ですが、ガラスは高いです・・・・ちょっと現実的ではないですね」
「ですよねぇ。私が魔術で作れる第一遷移金属を透明にするには化合物にしないと難しいですし」
スウさんは、第一遷移金属を量子魔術で作れます。
ちなみに覚えた方法はチートです。
「・・・・流石に石油を見つけるのは難しい――天然ポリマーを作るにも高度な技術がいるし」
「やはり難しいですか」
いくらチートのスウさんでも、自然相手は厳しい様です。
流石に無理ですよねぇ。
「――じゃあ、ガラスを安くしますか」
「「へ」」
わたしとセーラ姫の声が、ハモリました。
「いや、私が作った高炉って、ガラスの大量生産にも関わってるんですよ」
高炉というのは初耳です。
「高炉?」
わたしが尋ねると、スウさんが説明してくれます。
「鉄の大量生産を可能にする、温度を無駄にしない炉の事」
それ、15世紀頃の奴じゃないですか!?
「えっ!? ――そ、そんなの作ったんですか。ファンタシアで!?」
「う、うん」
そりゃ、英雄扱いになってる筈ですよ。
「というか、ほんとにチーターですね」
「だろ?」
わたしが呆れると、メイドさんと服について話していたリッカが、横から言ってきました。
セーラ様が、スウさんに嬉しそうに尋ねます。
「では、温室の説明を晩餐でしてくださいますか?」
「もちろんです。会話のデッキがあって助かるくらいです」
スウさんは、会話デッキっていうのが無いと話せませんもんねぇ。
よく『山札切れ』起こしてますが。
すると、リッカが大喜び。
「よし、お城の晩餐だー! 昼食は味がしなかったからなぁ」
「口を慎みなさい。――と、言いたいところですが、塩も振ってないんですから流石にちょっと・・・・」
「では、料理長に腕によりを掛けさせますね」
その後、王という方に呼ばれましたが、先代王にも呼ばれました。
どっちから行ったら良いんだろう。やっぱり現・王様かな? と思っていると、まだ若い王様が現れ「先に父様に」と苦笑いされました。
王様は苦笑いしながら続けます。
「父様は学士スウの事となると、目の色が変わるんで・・・」
なんて言ってました。
学士スウ? ――目の色が変わる?
前回スウさんがここに滞在したのは一週間位だって聞いてましたが、貴女たった一週間で何してんですか。
わたしはスウさんのアグレッシブすぎる功績に若干引きつつ、先代王バルバロン様の私室という場所の大きな扉の前まで案内されました、そうして執事さんが豪奢な扉を開くと、
「おおおっ!! スウ殿ぉ――ッ!!」
巨躯の老人が、スウさんに突進するように走ってきました。
声も滅茶苦茶でっかい人でした。
そして、スウさんを ガバァ っと抱きしめます。
この人が先代の王様ですか。
スウさんが苦しがってるんですが、早く離してくれませんかね。
「バ、バルバロン様、お元気そうでよかったです。・・・・で、でも、苦しいです」
「おおっ、すまぬ! 喜びのあまり、つい」
「そんな・・・私は別に再会を喜んでもらえるような・・・・」
「なにを仰る!! 儂の命を救ってくれたのみならず、第二王子、第三王子の命すら救ってくれた!! そしてこの国の民全ても救ってくれた!! どころか神官が言うには、この大陸民全てを救ってくれたそうではないか―――ッ!!」
えぇ・・・・。
一国や、大陸全土を救うとか、ガチ勇者じゃないですか。
たった一週間くらいで何してるんですか、あの人。
スウさんが、謙遜を返します。
「大陸全土を救っているのは、皆さんのお力ですよ」
「マゼルナの簒奪を防いでくれたのは、汝であろう! 汝がおらねば、リメルディアは消えておった!!」
「えっと・・・・」
困惑のスウさん。いつもの事です。
「とにかく今日は、最高の歓待をさせて貰うぞ!」
バルバロン様が後ろを振り返り、手を叩きます。
「宴だ! 宴の準備だ!!」
執事さんが深々とお辞儀をしました。
「はっ! ――先王、セーラ姫が既に」
「うむ、善きに計らうのだ!!」
結局、現・王様にまともに会えたのは宴の席でした。
というわけで宴になりました。
凄い長いテーブルが設置された部屋に行くと――おお、豚の丸焼きです。豚の丸焼きがあります。
初めて見ました。
食事が始まると、リッカが猛然と食事を食べ始めました。
どこの少年漫画の主人公ですか。
マナーとか、置き去りにしてます。
いま長いソーセージ1本を、吸い込みましたよ?
わたしはゆっくりと食事を始めます。淑女ですから。
あ、このジビエらしい鹿肉、すごく美味しい。
大きめのステーキみたいなお肉なんですが、すごく柔らかくなるまで煮込まれてます。
でも中心部分はレアっぽくて、レアな部分は元々柔らかくて――どうやってるんでしょうか・・・?
塩味も、旨味もしっかりしていて、舌が喜んでいます。
でも、わたしはきっちりとマナーを守りますよ。淑女ですから。
ナイフとフォークで音を立てず、ゆっくり食事を楽しみます。
「ワインは何になさいますか?」
老執事さんに尋ねられました。
「あ・・・・未成年なんで、お酒は」
「この国で16才は立派な成人ですよ」
うーん――以前スウさんは断っていましたが、郷に入っては郷に従えという言葉もありますし。
「では、この鹿肉に合う物を」
「畏まりました」
私と同じ様に、なんのワインにするか尋ねられていたスウさんが、少し上座からビックリするようにこちらを見ています。
「飲むんだ?」
「こちらの文化ですから」
「・・・・なるほど。じゃあ、私も――執事さん、美味しいやつお願いします」
「畏まりました」
スウさん、その頼み方はワインを選ぶソムリエさんが困りそうですよ。
リッカが、フォークを掲げながら言います。
「わたしも飲むぞ! 高いヤツ!」
あ、あの子は・・・・なんて頼み方を・・・。
「畏まりました」
老執事さん、眉一つ動かさない。
この執事さん、出来る・・・。
「ははは、楽しんで貰えている様だね」
王様もワインを注文しながら、微笑んだ。
「うん、滅茶苦茶旨いぞ!」
「リッカ殿にも我々は恩がある。心ゆくまで楽しんでくれ――もちろん、セーラを護ってくれたアリス殿も」
わたしも昔この惑星に来て、その時ドラゴンからセーラ様を助けたんですよね。
まあ、ほとんどスウさんが助けたような物でしたが。
「ありがとうございます」
わたしがお礼をすると王様は微笑んで、ちょっと上座にいるスウさんを見ました。
「さて、学士スウ、ガラスを安くするとは?」
「あ、それですね。――えっと、すでにガラスがあるという事は、硅砂や、石灰、ソーダ灰なんかは手に入るんですよね?」
「ああ、我が領土にも産地があるね」
「じゃあ後は簡単です――」
スウさんが、身振り手振りで説明しています。
相変わらずの物知りっぷりです。
老執事さんが、台車を押すメイドさんを連れて戻ってきました。
メイドさんや執事さんがワインを持って、それぞれに運んでいきます。
わたしにも執事さんが、ワインを持ってきてくれました。
「こちらはモルテラート産のルナシア、891年のヴィンテージです。このワインは糖度が高く、厚い皮のブドウを使用しており、しっかりとした渋みが特徴です。また香りはプルーンのような甘い芳醇な物を楽しめます。891年は特に温暖な気候に恵まれた年で、非常に評価の高い一品となっております。鹿肉との相性も良く、肉の味を引き立てることでしょう」
「ありがとうございます」
老執事さんがワインを、デキャンタという、空気とワインを混ぜる器に一旦移し替えました。
私は、テーブルに置かれたワイングラスを持ち上げます。
ちなみにテーブルに着いている全員に渡されたグラスが、全部違う形をしてます。
本格的ですねぇ。
私のは、大きめの丸っぽいグラスですね。
デキャンタから、ワイングラスに赤い液体が浅めに注がれました。
わたしはすこし、グラスを回して香りを楽しんでみます。
お父さんがこうしてました。
確かに甘い果物の様な香りがします。
老執事さんが、お辞儀をして立ち去り、部屋の後ろに控えました。
わたしが顔を上げると、スウさんに凝視されていました。
彼女はぎこちなく、わたしみたいにグラスの中の液体を回します。
そして香りを嗅ぎました。
「うぉっ、芳醇すぎる。鼻が痛い」とか言ってます。
やはり、あちらも良いワインみたいですね。
リッカは、値段を聞き出したのか「タケー!」とか言ってます。
ほんと自由奔放ですね。
さて、わたしは食事を楽しみましょう。
お肉を切り分けて一口。そうして咀嚼して飲み込んで、ワインをちょっと回して、一口含みます。
「むっ」
確かに渋みがお肉の味を引き立てています。
着飾った王女様の様な味わいですね。
着飾りながらも、肉という王を立てる淑女の様なワインです。
流石、王宮に使えるソムリエさんのオススメ、大当たりです。
わたしの真似をしていたスウさんからも、「おひしっ!!」なんて声が聞こえてきました。
スウさんが、なんだか王族のみなさんに微笑ましく見られています。
小動物感がいいですよね。
スウさんのワインはボトルのままですね。
隣のリッカは「うんまっ」とか言ってます。
わたしがワインを飲み切る前に老執事さんが寄ってきて、またワインを注いでくれます。
そして、
「アリス、アリス」
リッカがわたしの肩を叩いてきました。
「どうしました?」
「ワイン、一口交換しない? ――すごいぞ、味がめちゃくちゃ良いのに、嵐で葡萄が殆ど採れなかった年の超希少なワインなんだって!」
・・・・この人、まさか高級ワインで一口をやりだすのですか・・・?
いや――わたしも普段からスウさんと一口をやってる女子高生ですが、ここで一口の提案は流石にドン引きなんですが。
「なぁなぁ、しようよ。スウもしようよ!」
リッカは上座の方にいる、スウさんにも尋ねています。
「えっ、いいのかな・・・?」
リッカが王様を振り返ります。
「いいよな、アンドリュー!」
「もちろん、構いませんよ」
王様を呼び捨て・・・・なんなんだ、この人。
「アンドリュー王、リッカが無作法ですみません」
わたしは一応、謝っておきます。
「はっはっは、むしろ彼女の在り方は好ましいですよ」
「そ、そうですか。寛大なお言葉、ありがとうございます」
するとリッカに執事さんが、
「では、新しいグラスをお持ちします」
と言います。
まあ、そうですね。新しく注げばいいんですよね。
するとこのチビっ子、
「違う違う! 同じグラスを使うから親密感が深まるんじゃん!」
執事さん、一瞬停止。
あの出来る執事さんを凍りつかせるとは、このチビっ子、大したもんです。
「なるほど・・・確かに、その様な作法も聞き及んでおります」
まあ・・・・お酒の廻し飲みで士気を高めたり結束を高めたりなんて言うのは聞きますけど、どこの部隊ですかここ。
というわけでわたしはリッカとグラスを交換して、一口。
「なるほど。香りが強くて、甘いですね、このワイン」
複雑な味わいです。
老成した森の賢者が語りかけてくるような、深い味わいです。
「アリスのは渋いなあ・・・」
スウさんともグラスを交換。
白ワインですか――なるほど、だからデキャンタを使わなかったんですね。
スウさんはお魚メインに食べてるんですね。
「むっ、すごく甘いですね。あと氷で冷やされてるんですね」
元気な若いパリピが、ダンスしているような味わいですね。
スウさんの苦手なタイプの味わいかと思いきや、そうでもないようです。
「アリスのは、本当にお酒って感じする」
それぞれ違いが面白かったです。
ところでスウさんが、わたしのワイングラスを見つめています。
何か思い出している顔ですね。
ちなみに最近スウさんとはキスしました。まあ、わたしが強引に唇を奪ったとも言いますが。わたしの舌でスウさんの口の中を蹂躙してみました。
スウさんの頬が赤いです、多分キスを思い出してますね。
という感じに、食事は恙無く終わりました。
「どこが?」というツッコミはしてはいけません。
〜〜〜
本編ではスウが、無双しまくります。
そんな無双でよろしければ https://ncode.syosetu.com/n0664js/ にTo be Continued!お願いします。




